朱鷺と人間の愛の舞劇『朱鷺』日本ツアー決定、上海歌舞団プリンシパル朱潔静&王佳俊が大阪で見どころを語った
舞劇『朱鷺 -toki-』合同取材会より(撮影/石橋法子)
2015年の日本ツアーで12万人を動員した中国舞劇『朱鷺 –toki-』が今秋、再演される。古代、近代、現代へと1000年もの時を超えて受け継がれる朱鷺の精ジエと人間の青年ジュンとの愛と宿命を描いた物語。人類が文明の発展と引き換えに無くしたモノの大きさに警鐘を鳴らすメッセージ性の強い作品でもある。舞劇は中国の民族舞踊とバレエ、コンテンポラリーダンスなどを組み合わせ、台詞を使わず音楽と踊りだけで表現する中国発祥の舞台芸術。中国14億人の頂点と言われる精鋭ダンサーが集う上海歌舞団で、国家一級演員の称号を持つプリンシパルの朱潔静(ジュ・ジエジン)、王佳俊(ワン・ジヤジュン)が、大阪の合同取材会で見所を語った。
「心身が朱鷺と一体化した今『朱鷺』を踊る運命にあったのだと実感しています」(朱潔静)
ーー2014年10月、東京・新潟・佐渡・甲府で上演された世界初演のプレビュー公演を含め、3度目の来日公演が決定しました。上海の姉妹都市、大阪での上演は今回で2度目です。
朱潔静(ジュ・ジエジン/以下、朱):過去2回の公演では、日本のお客様から驚くほどの反響をいただきとても嬉しく思いました。今回は前回よりも良い作品をお見せしなければいけないと、プレッシャーを感じています。初演から200回以上公演を重ねてきましたが、今回が本公演だという意気込みで団員たちもリハーサルを重ねています。自分たちも新たな発見をしていきたいですし、衣装、美術、照明、音響は新しいものにしたいなと考えています。
朱潔静
王佳俊(ワン・ジヤジュン/以下、王):私は1幕では古代の農民、青年ジュンを演じます。上海と日本とでは、お客様の反応も似ていますね。例えば、1幕で朱鷺の精ジエが自由で幸せに過ごしていると、お客様の表情もニコニコと微笑んでいます。その後、ジエの存在が危ぶまれるとお客様の表情も苦しそうに変化する。国は違っていても、心は共通だと感じます。再び大阪で公演できることに感謝いたします。
王佳俊
ーーお二人は公演を前に、新潟・佐渡市にあるトキの森公園、佐渡トキ保護センター(一般には非公開)を訪れ、朱鷺の生態や剥製などをご覧になったそうですね。
左から王佳俊、朱潔静
朱:本作は、普通の舞踊に加え朱鷺の形態を模写した表現も含まれます。そのため、佐渡の施設では朱鷺が飛ぶ直前の形態を観察したり、最後の日本産の朱鷺「キン」の剥製を目にした時はすごく感動しました。この作品で王さんは人間ですが、私は朱鷺なので頭を左右に振るしぐさや、足元の赤色も赤い靴の衣装で真似したり。なかでも頭の上に手を乗せたポーズは、朱鷺を形作る上で重要なポイントです。プレビュー公演では振付を覚えて披露することに一生懸命で、2回目の公演では朱鷺の気持ちが自分の気持ちとシンクロしてくることを感じました。3回目の今年はリハーサルでも完全に朱鷺と一体化しています。私は朱鷺を踊る運命にあったのだなと実感しています。
朱潔静
「最新と最高の技術で、日本のお客様を満足させる自信があります!」(王佳俊)
ーー1,000年もの時空を超えた物語の中で、ご自身が一番グッとくる場面は?
朱:この作品は全2幕、3部構成です。1幕は人間と動物が大自然の中で共存していた古い時代。とても幸せな雰囲気が、美術や衣装の淡いピンク色でも表現されています。2幕は近代で人間は忙しく働き、経済発展のために次々と環境を破壊していく。舞台の色合いも黒っぽいものへと変化していきます。やがて棲むところを奪われた朱鷺は、絶滅の一途を辿り、現代では剥製となり博物館で展示されています。その姿を老人となったジュンが見つめている。人間が環境を破壊したことで、ジエは剥製となって今目の前にいる……。私にとって一番胸に迫る場面です。観客も同じように静かな悲しみに心動かされているのが、舞台上にいても伝わってきますね。
左から王佳俊、朱潔静
ーー王さんはジュンの魂を受け継ぎながら一人三役を演じられます。
王:1幕では農民の青年として、朱鷺の精ジエと運命の出会いを果たします。二人はとても美しい気持ちで満たされています。2幕では弱ったジエを介抱するカメラマンとしてただ見守ることしかできず、朱鷺たちが次々に命を落としていく。そして博物館で剥製となったジエと対峙する場面では、自分も歳を重ねて老人となっている。とても悲しい気持ちでジエを見つめています。場面を経るごとにお客さんの感動が伝わり、自分も踊りながら感動しています。
王佳俊
ーー最後にメッセージを。
朱:朱鷺は日本と中国、両国にとって特別な存在の鳥ですが、20世紀の乱獲と深刻な自然破壊により絶滅の危機に晒されています。両国が国を挙げて保護活動に立ち上がり、現在中国では約2,000羽が生存しています。人間と動物の共存、世界の環境問題は人類の宿題ですね。この作品では朱鷺は美しいものの象徴であり、朱鷺の絶滅を描くことで自然破壊に対する問題を提起しています。作品を通して、それらのメッセージを国内外に発信していきたいと思います。
朱潔静
王:日本の方は朱鷺に特別な愛情があると思いますので、我々団員も今まで以上に練習して、最新で最高の技術をお見せしたいですし、僕たちは日本のお客様を満足させる自信があります(笑)。興奮と驚きに満ちた公演になるよう準備していますので、9月13、14日は大阪のオリックス劇場でお待ちしております!
左から王佳俊、朱潔静
取材・文・撮影=石橋法子
<東京公演>
2017年8月29日(火) - 8月30日(水) Bunkamura オーチャードホール
2017年9月6日(水) - 9月10日(日) 東京国際フォーラム ホールC
2017年9月2日(土) - 9月3日(日) 愛知県芸術劇場 大ホール
2017年9月13日(水) - 9月14日(木) オリックス劇場