MotoGP TMのチャンピオンシップを占う日本GP開催 マルケスが連覇をするか天王山の戦いに注目だ
現在、チャンピオンシップをリードするマルク・マルケス(スペイン)。この日本GPで3連勝をもくろむ
全18戦あるMoto GPもアラゴンGP(9月24日決勝/スペイン)で14戦を消化し、残るは4戦となった。そのアラゴンを制したのは、2013年に最年少の20歳でチャンピオンになった天才ライダーのマルク・マルケス(スペイン/Repsol Honda)だった。前々戦サンマリノに続く2連勝で今季5勝目をあげ、総合224ポイントでチャンピオンレースで優位に立っている。
同点の首位だったアンドレア・ドヴィツィオーゾ(イタリア/Ducati)が、アラゴンでは精彩を欠き7位となったため16点の差となった。そのアラゴンでPPをとり4位に入ったマーベリック・ヴィニャーレス(スペイン/Movistar Yamaha)が196ポイントと、まだまだチャンピオン争いの行方は混とんとしている。
次戦は毎年、チャンピオンの行方を決定づけるレースともいえる日本GP(10月13~15日/ツインリンクもてぎ)だ。ブレーキングに厳しく、コーナーも多いツインリンクもてぎなだけに、各チームはタイヤ選択などの戦略を含め、必勝態勢で臨む。マルケスが3連勝すれば絶対的有利に立つ。それを是が非でも阻止したいドヴィツィオーゾ、ヴィニャーレスら歴戦のライバルたち。コンストラクターズ争いも、上記のホンダ、ヤマハ、ドカティの各ワークスチームにほぼ限られた。思惑が入り乱れる天下分け目の戦いは、もうすぐ日本で合戦の火ぶたが切られる。
2輪のF1ことMotoGPは、実際にサーキットに行くと鳥肌が立つほど興奮するレースだ。色々なレギュレーション変更を経てはいるが、マシンのクオリティは年々上がっている。ホンダ、ヤマハ、ドゥカティなど、世界のトップメーカーが作るレース専用車は、今や約240馬力、最高速が350㎞にも達するモンスターマシンだ。ストッピングパワーやボディ剛性、カウリングの形状なども毎年改良が加えられ、年々ライダーのテクニックも上がり、よりファンが興奮するレースを演出している。
実際に300㎞を超えるコーナリングで肩がぶつかり合いながらバトルしていることもあり、ライダーたちはまさに命懸けで、一つでも上の順位を勝ち取ろうとしている。加速スピードはあのF1をも凌駕。300㎞に達するまでわずか12秒足らずというのだから、常人には理解できない領域だ。それでもライダーたちはそのスピード領域で、マシンを左右に倒しながら、一瞬の隙を狙ってオーバーテイクを試みる。
そもそも2輪の場合はコックピットなどの筐体で守られているものはなく、ほぼ生身の人間がむき出しだ。4輪よりも不安定なマシンを体いっぱい使って捻じ伏せ、最大60度近くも傾斜させながらコーナリングを回る。抜きつ抜かれつのレースは4輪よりその頻度が多く、実際に最もエキサイティングなレースなのだ。そんな命懸けのバトルが展開されるMotoGPは、一旦虜になるとそこから抜け出せなくなるのだろう。
話を今季のMotoGPに戻そう。ここ数年、2人の天才ライダーでチャンピオンシップを分け合ってきた。一人はもちろんマルク・マルケス。そしてもう一人は同じスペイン人のホルヘ・ロレンソ(スペイン/Ducati)だ。2013年、2014年を連勝し、昨年も戴冠しているマルケスだが、ロレンソも2010年、2012年、2015年とマルケスと同じくMotoGPを3度制している。
ところがこのロレンソ、蜜月だったヤマハと別れ、今年からドゥカティに乗っている。マシンの特性の違いからか今年は満足な成績を残せていないが、ロレンソには2007年のケーシー・ストーナー(オーストラリア)以来の「ドゥカティを優勝に導く」目標があるはずだ。そういう理由もあり、今年はチャンピオン争いに食い込めていないが、ロレンソが熟成を高めてきたドゥカティがどれだけの走りをするのかも、日本GPでの見どころの一つとなるだろう。実際、アラゴンでは予選2位のフロントローに立ち、決勝でもトップを独走。今季で一番長くレースを引っ張っていたのは、明るい材料となっている。
前戦アラゴンで驚くべきパフォーマンスを示したのは、もはや伝説ライダーと言っていいベテラン、バレンティーノ・ロッシ(イタリア/Movistar Yamaha)だ。125㏄時代を含め、過去9度ワールドチャンピオンになっている“史上最強のライダー”でもある。熱狂的なファンがいることでも知られているこの名ライダーも、今年38歳となる。しかし、2011年~2013年の不遇な時代(総合7位、6位、4位)を乗り越え、ここ数年はロッシらしさが戻ってきた。
2009年以来のチャンピオンを目指し、今季第8戦のオランダGPでも優勝を果たしたが、9月にモトクロスでのトレーニング中に右足を骨折。第13戦のサンマリノGPの欠場を余儀なくされた。それでも現在、チャンピオンシップポイントは168と5位につけている。欠場を噂されたにもかかわらず参戦した先週のアラゴンGPでも、右足の痛みを抱えながら23周を走り切り、ファンの快哉を浴びた。このロッシの熱い走りがもてぎで見られると思うだけで、バイクファンには堪らないはずだ。
コンストラクターズではRepsol Hondaが394ポイントとリードはしているものの、Movistar Yamahaが364ポイントとピッタリ追走。サンマリノでのロッシの欠場が響いたが(ヤマハは代役を立てなかった)、ロッシがアラゴンで好走しただけに、まだまだどうなるかは分からない。Ducatiも314ポイントと少し離されてはいるが、ロレンソ&ドヴィツィオーゾもコンビで上位入賞すればその差をググッと詰められる。有力ライダーが転倒リタイヤでもすれば、勢力図は一気に変わるため、三つ巴の構図は変わらないはずだ。
マルケスとスペイン選手権で競い合い、来年トップカテゴリーのMotoGPに昇格する日本の天才ドライバー、中上貴晶(Moto2)も凱旋帰国する。Moto2最後のレースとなるだけに、日本のファンに優勝の二文字を届けたい気持ちでいるに違いない。Moto GPでは現在チャンピオンシップで4位(170ポイント)につけているダニ・ペドロサ(スペイン/Repsol Honda)もアラゴンで2位と表彰台に登り、MotoGP初タイトルを狙っている。ホンダ一筋17年目で、125㏄、250㏄時代にチャンピオンにはなっているものの、2位3回、3位も3回とどうしてもMotoGPの頂点に届かない。まさに欲しいのはMotoGPのチャンピオンの称号だけだ。
来月のツインリンクもてぎは、今季のチャンピオンシップに重要なレース。ライダー、コンストラクター、チームのさまざまな思いが交錯する、今季最もエキサイティングなバトルになるだろう。