KEYTALKの素顔に迫る・第3回「首藤義勝編」
首藤義勝
KEYTALKのベース・ボーカルを担当する首藤義勝。「自分がバンドで食べるとか無理でしょ」と思っていたという彼は、いかにして今の立ち位置に至ったのか。いまや小野をして「義勝が作る曲がKEYTALKの王道だ」とまで言わしめるソングライターでもある首藤に、少年期からバンドを始めた頃、KEYTALK像についてまで語ってもらったパーソナル・インタビュー。
――そもそも楽器を弾き始めたのは、いつ頃ですか?
「中学二年生ぐらいの時です。親が音楽が好きで、家に普通にギターがあったり、トランペットやピアノもあったので。ギターとトランペットは親父がやっていて、母親がピアノを弾いていて、そんな影響もありましたね。当時は野球部だったんですけど、野球部の友達同士でバンドを組んで、スピッツやミスチルをコピーしてました。その時がたぶん一番楽しかったですね、ベースを弾くということだけで言ったら(笑)。毎日家に帰ったらすぐにベースを弾いてました。中学二年生から高校三年生まで、ずーっとそうでしたね。高校時代は特にバンドにのめりこんでました。県立なのに校風が自由で、制服もなくて茶髪ピアスもOKで……どんどん頭が悪くなる感じだったんですけど(笑)。あの高校で軽音楽部に入っていなかったら、今も続けてないと思います」
――その頃はもう、将来はミュージシャン志望だった?
「いえ、最初は普通に大学に行って就職するんだろうなと思ってたんですけど。みんなが大学受験の準備をし始めた頃に、ちゃんとした職業につくのは“俺にはちょっと合わないかも”と思って、大学に行くのをやめて、音楽系の専門学校に行きました」
――それは録音の技術を学ぶコースでしたっけ。
「そうです。最初は裏方で音楽に関わる仕事ができればいいなと思いつつ、バンドも続けていたんですけど。その時すでにKEYTALKのメンバーと出会っていたので、バイトしながら学校に通ってバンドもやって、という生活を続けてました」
――今思うと、裏方になろうとしたのは、なぜだったんでしょうね。
「まさかバンドで食うとか無理でしょ、みたいな。自分がやるようなことじゃないのかなと思ったりしたので。それは今でも思ってるんですけど」
――今でも?
「はい。だから不思議ですね」
――小野くん、八木くんとは高校時代からバンドを組んでいて、みんな大学や専門学校に進んだあとに寺中くんが登場して、今のメンバーが揃うわけですが。その頃はもうバンドで行こうと決心していた?
「そうですね。(小野)武正が当時からバンマスで、MUSICMANという本を見て、知ってるアーティストが所属しているレコード会社や事務所に片っ端からデモCDを送って、その中から返事をもらえたのが4~5社だったかな。それで何か“急に本格的になってきたな”みたいな、人ごとのように思ってたんですけど(笑)。もちろんそれまで業界の大人の人たちと話す機会もなかったんで、これはちょっと“真面目にバンド活動をしていかなきゃ”って、“みんなについていかないと”という感じでしたね」
――曲はもう書いてたんですか。
「当時は作ってないです。インディーズ・デビューするかしないか、その頃からですね。見よう見まねで作り始めたのは。最初は、自分が作った曲をライブでやることすら恥ずかしかったんですけど。発表会みたいで嫌だなと思っていて。でもだんだん楽しくなって、曲作りのコツもわかってきて、どんどん書くようになって……という感じですね」
――さらに、ボーカリストにも挑戦するようになって。
「最初はベースを弾いてただけだったのに。曲を作るメンバーがほかにいて、ボーカルもほかにいて、でも人が楽しそうにしてると自分もやりたいと思って、“俺でもできそうだ”と。できないんですけど、ずっと見よう見まねでやり続けて。歌も最初はとても人前で歌っていいレベルの歌じゃなかったんですけど。ずっとツイン・ボーカルでやらせてもらって、今では完全に二人で歌うバンドになりました」
――それはどんどん、自分の中の可能性の扉が開いていくような感じだった?
「“俺でもできるんだ”と思う瞬間が、だんだん増えていった感じですかね。曲を作ったはいいけど、別にそんなにいい曲じゃないなと思ったりもしたし、歌も、ライブを録画したものを見直して“全然歌えてないな”とか、最初はそんなのばっかりだったんですけど。だんだん“いいね”と言ってもらえたり、自分でもレコーディングが終わったあとに聴いてみて“いい曲作れたな”とか、少しずつ楽しいと思えることが増えて行った感じです」
――曲作りに関して、影響を受けたアーティストはいますか。
「大元にあるのはたぶんサザンオールスターズですね。小さい時から親の影響で、生活の中でずっと耳にしていた音楽だったので。あとは、なんだろう? 親父が大好きなビートルズとか、カーペンターズとか、ユーミンとか、そういう感じですかね。家の中や車の中でしょっちゅうかかっていたのは、そういう音楽です。知らず知らずメロディの癖とかで、子供の時に聴いていたものがアウトプットされてる感じだと思いますね」
――スタンダードなものが多いですね。
「そうですね。メロディはそういうものに影響を受けてるかなと思います。リズム感とかは流行りをちょっと気にしたりもするので、また別なんですけど。でも大元のメロディの部分は、小さい時に聴いていたものが染み出しているのかなと思います。自分の作る曲が目指すところもそこで、メロディが強いものを常々意識してます」
――これは以前に小野くんが言っていたことですけど、「義勝が作る曲がKEYTALKの王道だ」と。
「そうなるように、ということは常々意識してます。みんないい曲作るんで、負けたくないという気持ちもありますね」
――そんな風に一歩ずつ進んできて、武道館まで到達したというのは、義勝くんのミュージシャン人生を考えると、なかなかすごい展開だと思うんですが。
「そうですね。まさかまさかの」
――率直に聞きますけど、成功した、という実感はありますか。
「いや、全然そういう感じではなくて。ちょっとずつ、じわじわと、だんだん会場が大きくなってきたなというところで、武道館まで来たという感じなので。ただ特別な場所だというのはわかるので、いっぱいある目標の中の一個が叶ったという感じです」
――では、義勝くんにとってKEYTALKとは?
「アットホームな職場です(笑)」
――それは何より(笑)。そういうメンバーの関係は、ずっと変わってないですか。
「変わってないですね。みんな、ふざける時はふざけるんですけど、真面目な話をする時には急に真面目になるし。かと思えば“じゃあおつかれさまでした”となったら、またふざけるし。何かを決めたわけじゃないですけど、みんなが楽しくやれるバランスみたいなものを、それぞれがちゃんと分かってるんだろうなと思いますね」
――いいバンドだと思います。
「そうですね、良かった。これでピリピリしていたら、嫌ですもんね(笑)」
撮影=風間大洋 インタビュー=宮本英夫
6th SINGLE「スターリングスター」
1.スターリングスター
フジテレビ系アニメ「ドラゴンボール超(スーパー)」エンディング・テーマ(10月4日〜)
2.鏡花水月
3. summer end
グッズ付き(「KEYTALKオリジナルネックストラップ付きパスケース」)
10,000枚完全限定生産盤(CD+GOODS) VIZL-887 ¥2,200+税
通常盤(CD) VICL-37103 ¥1,200+税