坂東玉三郎、大阪松竹座でお正月公演! 中村壱太郎と魅せる初春特別舞踊公演
坂東玉三郎 初春特別舞踊公演(撮影/森好弘)
2018年1月2日(火)より大阪松竹座で坂東玉三郎 初春特別舞踊公演が上演される。玉三郎が大阪松竹座で初春公演を勤めるのは4年ぶり。今回は中村壱太郎と彩り豊かな5演目を披露する。玉三郎が会見で、見所などをユーモアたっぷりに語った。
新年の幕開けを華やかに寿ぐ、彩り豊かな舞踊公演を
ーー2018年のお正月は、大阪松竹座公演で幕開けです。
平成26年に(中村)七之助さんと2人でお正月を開けさせて頂いて以来、大阪松竹座では4年ぶりのお正月公演でございます。今回も(中村)壱太郎さんとふたりで彩りに富んだ舞踊をお見せできれば。前回は暮れから風邪をひいて声が出なくなってしまい、ごあいさつを七之助さんに代わって頂いたこともありました。お陰さまでセリフのない舞踊公演でしたので舞台に支障はなく、たくさんのお客様にご来場いただきました。口上でのやりとりもお客様が親しみを持ってくださり、かえって楽しんでいただけたのかなと思ったほど(笑)。今回は裃を着ての『口上』ですが、楽しいところがあってもいいのかなと。今回は風邪をひかずに勤めたいと思います。
ーー演目は、玉三郎さん、壱太郎さんによる、元禄期の華やかな花見の風情を描いた『元禄花見踊(げんろくはなみおどり)』に始まります。
『元禄花見踊』は、平成16年12月に歌舞伎座で上演するため『阿国歌舞伎夢華(おくにかぶきゆめのはなやぎ)』として、出雲阿国のと花見踊りを入れ込んだ大きな出し物として作っていたのですが、今回はそこから出雲阿国の部分を抜き取り、純粋に『元禄花見踊』として踊ります。今回は壱太郎さんのほか、総勢10人ほどで華やかな雰囲気の中、お見せできればと思います。
ーー『秋の色種(あきのいろくさ)』は美しい秋の情景を歌った長唄の名曲による、季節感溢れる舞踊です。
平成28年11月に初めて八千代座公演で花柳壽輔さんに振付をお願いし、『秋の色種』を一人の踊りにして上演しました。29年10月の歌舞伎座では梅枝さん、児太郎さんと三人で踊り、二人にはお琴を弾いていただきました。今回もその形をとって壱太郎さんにはお琴を弾いていただきます。できれば私も……、と思っていますが、今、色々と考え中です。
「大変素晴らしいこと」と玉三郎も期待する、『鷺娘』は壱太郎の初役で
ーー『鷺娘(さぎむすめ)』を本興行では初役となる壱太郎さんが勤めます。引き抜きやぶっ返りなど大きな演出も見ものな、女方の魅力が詰まった長唄の名作です。
本人は遠慮していたようですが「『鷺娘』を踊りたい」と、秘かに目論んでおられたようです。お手並み拝見ですね(笑)『鷺娘』は古典と言われて来ましたが、古典的なしっとりとしたものというよりは、舞台機構を使った非常に派手な出し物として生まれてきたわけですから、いろんな型があっていい。若い方たちに踊っていただくのが、大変素晴らしいことだと思っています。
ーー最後は、玉三郎さんによる美しく気品にあふれた吉原絵巻『傾城(けいせい)』を。
『傾城』は平成23年10月、日生劇場で『英執着獅子(はなぶさしゅうちゃくじし)』の一部を入れた大きな出し物として初めてやらせていただきました。翌年6月には南座、そして29年1月に歌舞伎座でも上演させていただき、もともと傾城の風情を踊るものですが、『籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)』の縁切りに出てくる〈風薫る…〉のところが有名で、そこは夏の場面。その後、秋を表すところもあり、襖の向こう側で雪を降らせる演出もさせていただいて、大劇場にも対応できる演目にしてきました。
ーー全体を通して、日本の四季や風情が情感たっぷりに立ち上ってくるような構成です。
そうですね。お話をいただいたときに、日本の春夏秋冬をどうにかお正月にお見せ出来たらと思いました。壱太郎さんは演目が決まってから、大変緊張されていましたが、すごくしっかりされた方なので大丈夫だと思います。
ーー壱太郎さんとの共演は初めてでしょうか?
ほとんど初めてと言っていいでしょうね。ただ、壱太郎さんは色んなお役で分からないところがあると「どうしたらいいでしょう」と、必ず部屋へやって来られます。どんな方でも、ここだけはちゃんと抑えておくように、というお話をしたり、度々いらっしゃるので大変親しくもさせてもらっています。また(壱太郎の母で日本舞踊家の)二代目吾妻徳穂(あずま・とくほ)先生とは親しくさせていただいたので、繋がりがあるのだと思います。壱太郎さんは大変勉強家で、平成27年6月の博多座『芸道一代男』では、娘役で裾をからげて芝居をしているときに足元がとてもきれいで良いなと思ったんです。これはかなり踊りの勉強をしているのだろうと、非常に印象に残りました。なかなか自分でも難しいことなので先輩がましい言い方ですが、きちっとなさっていて非常に嬉しかったですね。七之助さんにしろ壱太郎さんにしろ、いつまでもお子さんだと思っておりましたら、昨今は「大人との芝居」という思いが強くなってきました。ゆだねられるところもあり、頼れるところもあって、ありがたいと思っております。
ーー近年、若手の女方さんとの共演も多い印象です。意識的にされている部分も?
伝えたい思いは根本的にあります。でも、一番は、若い方とやることで「力を借りる」ということがありますね。私自身が助けてもらえる気がするんです。皆さん精一杯やってくださるので。邪魔をする気もありませんが、若手を育てようともあまり思っていません。一緒にいるだけでいいんじゃないかなと。『京鹿子娘五人道成寺(きょうがのこむすめごにんどうじょうじ)』でも見ていただくとわかるのですが、皆さんそれぞれの受け止め方をされていてビックリしましたね。(技の継承について)同じ古典芸能の友人が「なし崩しに伝える」と言っていましたが、言い得て妙だなと。誰々に何々を伝えようと思わず、聞かれたら言う、聞かれなければ黙っている。これがいいと思います。
取材・文=石橋法子、写真=森好弘
2018年1月2日(火)~26日(金)午後2時開演(※但し、5、12、19日は午後6時開演、11日は休演、4日は貸切)
■会場:大阪松竹座
■出演:坂東玉三郎、中村壱太郎
■料金:一等席18,000円、二等席20,000円、三等席7,000円
■公式サイト https://www.shochiku.co.jp
【演目】
一、 お年賀 口上<坂東玉三郎、中村壱太郎>
二、 元禄花見踊<坂東玉三郎、中村壱太郎>
三、 秋の色種<坂東玉三郎、中村壱太郎>
四、 鷺娘<中村壱太郎>
五、 傾城<坂東玉三郎>