音コン1位の歓びと留学への決意を新たに、鈴木玲奈が華やかで和やかなひとときを披露

レポート
クラシック
2017.12.20
鈴木玲奈

鈴木玲奈

画像を全て表示(8件)

“サンデー・ブランチ・クラシック” 2017.11.12 ライブレポート

今年10月に行われた「第86回日本音楽コンクール」声楽部門で1位を授賞した、ソプラノの鈴木玲奈が東京・渋谷のeplus LIVING ROOM CAFE & DININGで毎週日曜日に開催されている『サンデー・ブランチ・クラシック』に登場した。聴き手の心をほっと和ませるような安心感のある歌唱、和やかなトークも板についていて、満員の客席は盛り上がり、1曲歌い終わるたびに「ブラボー」が飛び交っていた。

「今日は、コロラトゥーラ・ソプラノのプログラムを用意させていただきました。ソプラノの中でも一番高い声で、華やかで……」と、鈴木が得意とするコロラトゥーラの説明を盛り込んでご挨拶。

鈴木玲奈

鈴木玲奈

1曲目の「私は夢に生きたい」は、『ロメオとジュリエット』のヒロイン、ジュリエットの恋に恋する初々しい思いだ。グノーの清らかな旋律から、後の悲劇など誰が考えようか。明るく柔かなハイソプラノが心地よい響きで、会場を包んでいく。鈴木が「朝の満員電車で聴くのが好きです。ゆるやかできれいな曲で、イライラしがちな電車の中でも、心が穏やかになります」と話してくれた2曲目のマスカーニの「アヴェ・マリア」も、歌い終える頃には場内の隅々に温かなムードが充満した。

鈴木玲奈

鈴木玲奈

ここで、鈴木は音楽の都・ウィーンに留学して研鑽を積むことを報告し、ヨハン・シュトラウス2世の「春の声」を披露した。ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の正月祝賀演奏『ニューイヤー・コンサート』でもおなじみの華やかなワルツだが、一般的にオーケストラ演奏を聴く機会の方が多い。ピアノの旋律とリリカルに呼応しながら、春を迎える幸せを歌う鈴木。ピアニストの前田美恵子とは大学時代から組んできた仲で、息もぴったりだ。日中の最高気温が零下というウィーンの厳しい冬が終わりを告げ、日ごとに春の気配を感じるうれしさが伝わってくる。

前田美恵子

前田美恵子

続く、モーツァルト『後宮からの逃走』の「優しさにお世辞をまぜて」や、プッチーニ『ラ・ボエーム』の「私が街を歩くと」も、楽曲の解説を交えつつ歌い上げる。モーツァルトの「優しさにお世辞をまぜて」は、昨年、鈴木が日生劇場でオペラ・デビューしたときに歌った思い出の歌。役どころは、ヒロインのコンスタンツェとともにトルコの太守に捕らえられた侍女・ブロンデだ。知恵がよく働く人で、荒っぽく言い寄る男に「そんな言い方ではダメですよ、お世辞を混ぜてやさしく言ってこないと、女性とつきあえませんよ……」と、かわすときの歌であることを説明。プッチーニの「私が街を歩くと」は、「お騒がせなムゼッタが、きれいな衣装をまとってパトロンとカフェにやって来たら、そこに前の彼がいて、お互い思いが残っているのに素直に言えなくて『私が街を歩くと、男の人が注目して……』と歌ってしまいます」との説明に、どちらもピッタリのチャーミングな役で、オペラのシーンが浮かんでくる。 

鈴木玲奈

鈴木玲奈

最後は、オッフェンバックの『ホフマン物語』で素晴らしいコロラトゥーラを歌う人形の「オランピアの歌」。主人公のホフマンが夢中になった女性の一人は人形だったというわけで、鈴木はゼンマイ仕掛けの人形に扮し、一人でやまびこのように呼応したり、高声を発しながら回転したり……。人形のゼンマイ音はラチェットで表現。前田が要所でラチェットを回すと、ゼンマイが巻かれて人形が元気を取り戻す。鈴木がコミカルな機械動作を交えて、妙趣に富んだパフォーマンスを披露し、観客は大いに沸いた。

鈴木玲奈

鈴木玲奈

終演後、楽屋で鈴木は「今日は留学前の最後のコンサートでしたが、客席と距離が近くてアットホームな感じで、お客さまがリラックスして聴いてくださっているのがわかって、ほっとしました」。

「日本音楽コンクール」優勝については「憧れのコンクールだったので、驚きとうれしさでいっぱいでした。会う人会う人から『おめでとう』と言われたのは初めてです。これから2年間、ウィーンで勉強します。歌にスケール感が出るように頑張りたいです」。

前田美恵子、鈴木玲奈

前田美恵子、鈴木玲奈

ピアニストの前田に、鈴木の長所を尋ねると「学生の頃から明るい性格はモチロンですが、舞台に出たときに存在感があって、スター性が垣間見えていましたね。一緒のステージもやりやすく、楽しいです」。

鈴木は「母がピアノを教えていたので、私も弾いていましたが、とにかく子供のときから歌が好きで、母に『ステージで横向きで演奏するより、前向いて歌うのが好きだったのね』とか、毎朝ハイCで『おはよう~!』って起きてきたとか言われています(笑)。ウィーンでひとまわり大きくなって帰ってきたいです」

前田美恵子、鈴木玲奈

前田美恵子、鈴木玲奈

取材・文=原納暢子 撮影=岩間辰徳

サンデー・ブランチ・クラシック情報
12月24日(日)
鈴木舞/ヴァイオリン&加藤大樹/ピアノ
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円

■会場:eplus LIVING ROOM CAFE & DINING
東京都渋谷区道玄坂2-29-5 渋谷プライム5F
■お問い合わせ:03-6452-5424
■営業時間 11:30~24:00(LO 23:00)、日祝日 11:30~22:00(LO 21:00)
※祝前日は通常営業
■公式サイト:http://eplus.jp/sys/web/s/sbc/index.html?
シェア / 保存先を選択