待望の再来日! ミュージカル『オペラ座の怪人~ケン・ヒル版~』製作発表レポート

レポート
舞台
2018.6.12
登壇者の(左から)別所哲也、ジョン・オーウェン=ジョーンズ、遼河はるひ

登壇者の(左から)別所哲也、ジョン・オーウェン=ジョーンズ、遼河はるひ

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今夏、東京にオペラ座の怪人が帰ってくる――。渋谷・東急シアターオーブにて今年8月、5年ぶりの6度目の来日となるミュージカル『オペラ座の怪人~ケン・ヒル版~』が上演される。この舞台の製作発表が都内にて行われ、ファントム役のジョン・オーウェン=ジョーンズ、そして本公演の応援サポーターを務める別所哲也遼河はるひも共に登壇した。

「オペラ座の怪人」をイメージした舞台セットを背景に会見が行われた

「オペラ座の怪人」をイメージした舞台セットを背景に会見が行われた

本公演で上演されるのは、ガストン・ルルーの小説「オペラ座の怪人」初のミュージカル化として、アンドリュー・ロイド=ウェバー版に先立つ1976年に初演されたケン・ヒル版。原作に忠実なストーリーで、ロイド=ウェバーと製作者のキャメロン・マッキントッシュがこのケン・ヒル版を見たことがロイド=ウェバー版『オペラ座の怪人』を創作するきっかけになったという、ミュージカル『オペラ座の怪人』の原点と言うべき作品である。劇中で使われる楽曲は、ビゼーやドヴォルザーク、モーツァルトらといった大作曲家たちが手掛けたオペラのアリアなどにケン・ヒルが自作の歌詞を乗せている。ロイド=ウェバー版とはまた違った世界観で、オペラ座で繰り広げられる物語がリアルに体感できるはずだ。

意気込みを語る、ファントム役のジョン・オーウェン=ジョーンズ

意気込みを語る、ファントム役のジョン・オーウェン=ジョーンズ

本公演のファントム役、ジョン・オーウェン=ジョーンズはイギリス出身の俳優・歌手で、ウェストエンド『オペラ座の怪人』でファントム役としてこれまで約2000公演に出演、ウェストエンド史上最多出演数を誇っている、まさにファントム役のエキスパートともいうべき存在だ。2014年にコンサートで来日以降、『ミュージカル・ミーツ・シンフォニー』への出演や、ソロコンサートなどで日本でもその圧倒的な歌唱力を披露してきたが、本公演が待望の来日ミュージカル初主演となる。

ジョン・オーウェン=ジョーンズを見つめる別所哲也

ジョン・オーウェン=ジョーンズを見つめる別所哲也

別所はそんなジョンのことを「ミュージカル俳優をやっている僕にとって、ジョンさんは尊敬する憧れの人」と称し、「その憧れの人が、僕の憧れの作品でもある『オペラ座の怪人』に出演する、それを日本で見ることができる本公演に、今から興奮を隠せない。ロイド=ウェバー版は美しいメロディーや恋物語が印象的だが、この(原作により忠実な)ケン・ヒル版でジョンさんが演劇的にどういったアプローチをするのか、オペラの難しい楽曲にどう挑むのか、非常に楽しみ」と期待にふくらむ胸の内を語った。

「オペラ座の怪人」への愛を熱く語る遼河はるひ

「オペラ座の怪人」への愛を熱く語る遼河はるひ

遼河も「中学生の頃に、宝塚を見るよりも前にロイド=ウェバー版『オペラ座の怪人』を見て虜になりこれまで十数回見た。そして昨年12月についに本場ロンドンで見ることができた。そんな愛して止まない作品『オペラ座の怪人』の応援サポーターを務めることを光栄に思っている。宝塚ではアーサー・コピット版に出演したこともあるので、(自身の経験として)いよいよ残すはケン・ヒル版、と今回の上演を楽しみにしている」と『オペラ座の怪人』への愛を熱く語った。

ファントムの仮面を手にするジョン・オーウェン=ジョーンズ

ファントムの仮面を手にするジョン・オーウェン=ジョーンズ

ファントム役への思いを聞かれたジョンは「ミュージカル俳優を目指す者にとってアイコンのような、象徴的な役。若い頃にオペラ座の怪人を見て、ファントムはぜひやってみたいと思った。今回はその作品のケン・ヒル版を日本で演じることになり、大変光栄に思っている。ケン・ヒル版は(これまで演じてきた)ロイド=ウェバー版が生まれる原点となった作品なので、私自身ファントムという役を(ロイド=ウェバー版とは)また違った視点から新しく作り上げていきたいと思っている」と新たな挑戦への思いをのぞかせた。
また、オペラの要素が強いケン・ヒル版の音楽について聞かれると「確かに楽曲はオペラ調だが、私はこの作品を“役者”として取り組んでいきたい。この物語の内容や役柄を、役者として歌を通して伝えていくことが、“オペラ”という(楽曲の)性格の部分を気にすることよりも大切だと思っている」と、より俳優としてのアプローチを追求する姿勢を強調した。
それを受けて別所も「ジョンさんが俳優として作品にアプローチすることで、どういった物語が花開いていくのかとても興味深い。この作品は演劇ファン、ミュージカルファン、オペラファン、すべての人が見て納得できる素晴らしい作品になると期待している」と見どころを述べ、遼河は「ロイド=ウェバー版は恋物語が心に響く要素でもあるが、ケン・ヒル版は怪人を取り巻く人々の描写がユーモラスで巧み。原作に最も忠実と言われるケン・ヒル版を見ないことには、オペラ座の怪人は始まらないのでは、という思いがある」とストーリー部分への期待を語った。

ジョン・オーウェン=ジョーンズの話に聞き入る別所哲也と遼河はるひ

ジョン・オーウェン=ジョーンズの話に聞き入る別所哲也と遼河はるひ

これまでロイド=ウェバー版でファントムを演じて来たジョンにとって、ケン・ヒル版のファントムとの違いをどう感じるのか? という司会者からの質問には「原作は同じなので物語として違いはない。私自身がこの役をどう解釈していけばよいのか、演出家や他のキャスト達と一緒に考えていきたい。これまでロイド=ウェバー版で学んだことを一度忘れて、まっさらな気持ちでこの作品に新たなアプローチをしたい」と語るジョン。別所も遼河も、ジョンの俳優としての“覚悟”とも言うべき力強い言葉に尊敬の眼差しを向けていた。

日本が大好き、と会見冒頭から語っていたジョンだが、ここでケン・ヒル版に出演することになった驚きの経緯が明かされた。「今回ケン・ヒル版のオファーを受けた最大の理由は、日本で公演をするから。日本に来るのはもう5回目だが、これでようやく日本の舞台で、温かい日本のファンの前で役を演じることができる、それが一番楽しみだ」と、日本のファンへの思いと、日本での初ミュージカルへの意気込みを聞かせてくれた。

「高い高いところから」を歌うジョン・オーウェン=ジョーンズ

「高い高いところから」を歌うジョン・オーウェン=ジョーンズ

そしてジョンの歌唱披露が行われ、ケン・ヒル版でもっとも印象深いファントムの持ち歌である「高い高いところから」を聞かせてくれた。なんと、この曲をマイクの前で歌うのは今日が初めてで、稽古もしていないので緊張した、というジョンだったが、その美しく確かな歌声が響くと、会見場の空気は瞬く間にファントムの世界に一変。この曲は、ビゼー「真珠採り」から“耳に残るは君の歌声”のメロディーにのせて、ファントムの思いを切々と歌い上げるラブソング。約3分間、ジョンの歌声でファントムの世界へ旅した会場内からは大きな拍手が沸き起こり、別所と遼河は「ファルセットの繊細な美しい歌声は、まさにシルキーボイス」「ケン・ヒル版の世界を垣間見ることができた。本公演が楽しみでしょうがない」と興奮した様子で感想を述べた。

質疑応答で、俳優人生のターニングポイントを尋ねられると、ジョンは「ウェストエンドでジャン・バルジャンのアンダースタディ(代役)に入っていたとき、本来のジャン・バルジャン役が事故に遭ってしまい、自分が舞台に立つことになった。その1回目の公演のとき偶然キャメロン・マッキントッシュが見に来ていて、そのままその役をもらうことができた。当時26歳で、ジャン・バルジャン役をやるには若すぎたけれど、このような機会は二度とないと思って両手でつかみに行って現在に至っている」、別所は「20歳のときに初めてミュージカル俳優として『ファンタスティックス』という作品で舞台に立ったときと、帝国劇場『レ・ミゼラブル』のジャン・バルジャン役をオーディションで獲得したとき」、遼河は「宝塚歌劇団2年目のとき『ウェストサイドストーリー』をやることになり、ブロードウェイから演出家や振付家を呼び、全キャストオーディションが行われた。そのときジェット団のメンバーに選ばれて、出演者の中でも下級生だったのでがむしゃらにやった」と各人とも、訪れたチャンスをしっかりつかんだエピソードを披露。

和やかな雰囲気で登壇者も自然と笑顔に

和やかな雰囲気で登壇者も自然と笑顔に

また、「ジョンさん自身と怪人との共通点はあるか?」という質問には登壇者3人で顔を見合わせて笑ってしまう場面も。遼河が何やら囁くと、ジョンは「美しい声だ、と答えるように遼河さんに言われた」と笑顔を見せた。

ジョン・オーウェン=ジョーンズ

ジョン・オーウェン=ジョーンズ

最後に、本公演に向けてのメッセージを一人ずつ。

ジョン「ロイド=ウェバー版から初めてケン・ヒル版を見るお客様は、ぜひまっさらな心で見に来て欲しい。新たでユニークなオペラ座の怪人を楽しんでもらえると思う。私自身、これまで様々なミュージカルナンバーをコンサートで歌ってきたが、ケン・ヒル版のナンバーは一度も歌ったことがない。日本で初めてミュージカルを披露するのも楽しみだし、これまで歌ったことがないケン・ヒル版のナンバーを披露するのも楽しみにしている。日本に来るたびに素晴らしい経験をさせてもらっているが、ケン・ヒル版の『オペラ座の怪人』に参加できることが、もしかすると人生で最高の経験になるかもしれない。先のことはわからないので、私が日本で役を演じる機会はこれが最初で最後になるかもしれない。だから(次の機会を)待たずにぜひ本公演に来場して欲しい」

別所哲也

別所哲也

別所「名作というのは、人生の様々な節目で出会うと、その度に違ったメッセージを受け取ることがある、そんな奇跡のようなものを持っていると思う。この作品を知っている人もそうでない人も、曲を聞いたことはあるが舞台で見たことがない人も、ジョンさんのバージョンをロンドンに行かずしてここ日本で見られる、この貴重な機会を逃さないで欲しい。この物語はまさに劇場にいるオペラ座の怪人=ファントムが心揺れながら人間らしさを見つけていく物語であるということを、ぜひ劇場で、ジョンさんの歌声で体感してほしい。必ず素晴らしい発見があると思う。」

遼河はるひ

遼河はるひ

遼河「10代からオペラ座の怪人を見てきて、10代、20代、30代、40代、と見た時の年代ごとに思うところや心打たれるところが違ったので、いろいろな年齢層の人が感動できる素晴らしい作品だと思う。若い人も、まだミュージカルを見たことがない人も、この素晴らしい作品を見て欲しいし、ミュージカルをよく見る方も、ケン・ヒル版はあまり日本で上演機会がないのでこの機会に見て欲しい。」

フォトセッションで笑顔を見せる三人

フォトセッションで笑顔を見せる三人

フォトセッションでは「今日一番の笑顔をお願いします!」というリクエストにちょっとおどけた表情をしてみせたり、囲み取材では「(シアターオーブのある)渋谷でやってみたいことはありますか?」という質問に「マリオカートに乗ってみたい」と答えたり、お茶目な面もたっぷり見せてくれたジョン。公演の魅力がしっかり伝わってきたうえに、終始和やかな良いムードで進行した製作発表だった。

本公演は8月末~9月頭。ジョンが東京に“ファントム”として帰ってきて、その歌声と演技で“オペラ座の怪人”の世界へといざなってくれる時を心待ちにしよう。

取材・文・撮影=久田絢子

公演情報

ミュージカル『オペラ座の怪人〜ケン・ヒル版〜』
 
原作:ガストン・ルルー
脚本・作詞:ケン・ヒル
日時:2018年8月29日(水)〜9月9日(日) 全16公演
会場:東急シアターオーブ (渋谷ヒカリエ11階)
出演者:ジョン・オーウェン=ジョーンズ
料金:S席 11,800 円、A席 8,800 円、B席 6,800 円
 
主催:キョードー東京/テレビ東京 企画招聘:キョードー東京
公式HP:http://operaza2018.jp/
問い合わせ:キョードー東京 0570-550-799(平日11:00~18:00/土日祝 10:00〜18:00)
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