氣志團、ACIDMAN、EGO-WRAPPIN'、水カンら桜島の麓に豪華アーティスト集結『THE GREAT SATSUMANIAN HESTIVAL 2018』DAY1【薩摩ステージ】レポート
THE GREAT SATSUMANIAN HESTIVAL 2018
2018年10月7日(日)鹿児島市・桜島多目的広場&溶岩グラウンド【薩摩ステージ】
開会宣言
■岡崎体育
岡崎体育
発起人のタブゾンビが「構想から13年。いろいろな人の協力で開催することができました!」と、“ヘス”開催に寄せる熱いを想いを語ったあと、薩摩ステージのトップバッターに呼び込まれたのは、音楽シーンの常識を打ち破るテクノデストロイヤー・岡崎体育。ジャンケンで勝った人だけがジャンプできる「R.S.P」、コール&レスポンスの難易度が異常に高すぎる「Call on」など、初っ端からシュールなネタでお客さんの心を鷲掴みにする。
岡崎体育
「岡崎体育がいちばん好きだっていう人、どれぐらいいる? ……少なっ! 興味本位で寄ってみようかって人? ……多いっ!」と、自虐的なトークも絶好調。だが、後半はネタなしで、“岡崎体育、実はかっこいいサウンドもいけるんですよ”的な流れを作るはずが、まさかの「XXL」で音が消えるというトラブルが発生。一瞬“これもネタ?”というムードが漂ったが、これは本気のトラブル。「この大ピンチをどう乗り切れるか、必死で頭を働かせています」と焦りながらも、咄嗟に「にんげんっていいな」で大合唱を巻き起こしたあたりに、いまやフェス常連アーティストに名を連ねる岡崎体育の、土壇場の底力を見たステージだった。
■テスラは泣かない。
テスラは泣かない。
本当に、嵐のようなステージだった。GO! GO! 7188に続く地元の雄、テスラは泣かない。後半のMCで村上学(Vo,g)は「世間はもうすっかり秋ですけど、鹿児島は10月でも夏ですよね。夏フェスですよね? 日本でいちばん熱い日にしましょう!」と言ったが、まさにそのとおりになった。
「ダーウィン」でスタート、ヨコとタテが入り交じるこのバンド特有のバンドグルーヴで、オーディエンスを巻き込む(それぞれ揺れたり飛んだり腕を挙げたりとバラバラなのがこのバンドっぽい)。続く「アンダーソン」では一転、サビできれいに揃ってすごい数の腕が振り上げられ、「名もなきアクション」のダンスビートで、それが各自思い思いのステップに変化していく。
テスラは泣かない。
「今年バンド10周年で、このヘスの一回目に出演できて光栄でございます。10年間いろいろあったけど、ほんとバンド続けて来てよかったです」と、村上学。「アテネ」で存分に踊らせ、「サラバ」でさらにそれに火を注ぎ、ラストは「Like a swallow」。ピアノの飯野桃子が一瞬楽器を離れて前に出た時以外は、基本、さしてオーディエンスを煽ったりしないのに、思うさまみんなを巻き込み続ける、圧巻の時間だった。
■雨のパレード
雨のパレード
「ただいま!」。メンバーの大半が鹿児島出身という雨のパレードは、故郷への凱旋を誇るような第一声からスタートした。大澤実音穂(Dr)と是永亮祐(Ba)が繰り出す躍動感のあるグルーヴと深遠なサウンドスケープにのせて、福永浩平(Vo)は激しく身体を揺り動かしながら、静かに、だが熱い衝動を漲らせてメロディを紡いでゆく。
雨のパレード
山崎康介(Gt)が奏でるシンセが口火を切った「Shoes」でシンガロングを巻き起こすと、「このグラウンドは幼稚園のときにサッカーの試合に出てました。そのとき、インタビューで“将来、何になるの?”って聞かれて、“サッカー選手です”って答えたんですけど(笑)、また違ったかたちで戻ってこられてうれしいです」と、喜びを伝えた福永。同郷の先輩・タブゾンビをゲストに呼び込み、タブの実家“ブックセンターめいわ”に足繁く通っていたという地元トークでは、珍しく九州の訛りで嬉しそうに喋る姿も。そして、タブのトランペットが郷愁を誘う「Hometown feat.TABU ZOMBIE(from SOIL&"PIMP"SESSIONS) 」から、ステージを桜色に染めた卒業ソング「MARCH」まで、どこか普段の“クールな雨パレ”とは一味違う雰囲気を見せたのは、紛れもなく故郷の空気のせいだろう。
■Nulbarich
Nulbarich
「今日は仲間に入れてくれてほんとありがとうございます。一生懸命がんばりますんで、一緒に楽しみましょう」「今日は桜島より先に噴火させましょう。黙らせましょう、桜島」というJQの言葉でスタート。
「Follow Me」ではフィールドいっぱいの掌が左右に振られ、「NEW ERA」ではその掌の振りが前後になる。最初からホーム状態、というか未見だった人も今この瞬間を待っていた! というムードに満ちている、最初から。
Nulbarich
「みなさんに協力してもらいたいことがあって。一緒に歌ってほしいんですよ」と「On and On」でシンガロングを求め、「今度はこっちから踊らす番ですね」と、美しいグルーヴを描く「Zero Gravity」へ。曲の後半で演奏を止め、「ありきたりなところで止めてやったぜ。だいたいこのあとサビが来るんでしょうね。知ってる人は一緒に歌ってください、知らない人は適当に踊ってください」と、オーディエンスをピークに導いていく。「さっき『知らない人は適当に踊って』って言ってごめんなさい」となぜか丁寧に謝ってからのラストチューンは、Nulbarichのポリシーが歌われる「Almost There」だった。最後にJQ、「楽しかったよ。ありがとう」。
■水曜日のカンパネラ
水曜日のカンパネラ
1曲目「贏政」と2曲目「シャクシャイン」は、例によって、何もないガランとしたステージの上で、コムアイひとりでパフォーマンス。「桜島! お好きなように楽しんでって!」という言葉をはさんでの「ウランちゃん」ではステージ床に金色のバルーンが敷かれ、それがじわじわと大きくなり、次の「桃太郎(Remix)」ではステージ上部に届くほど膨れ上がり、コムアイがバルーンの海の中で歌っているような按配になる。
水曜日のカンパネラ
バルーン、ステージからはみ出る大きさに。コムアイはいつの間にか舞台を下り、柵前で歌っている。そのコムアイをバルーンが飲み込む。前方のオーディエンスも一緒に飲み込む。バルーン、そのままオーディエンスの手で、フィールドの中央まで運ばれて行く。コムアイはバルーンを出て、客席を練り歩き、PA横に立てられた脚立に上がる。そのまま脚立の上で5曲目「南方熊楠」を歌い、ラストの「キイロのうた」へ。歌い始めると、3つのバルーンがオーディエンスの上を運ばれ、彼女の方へ向かう。コムアイ、脚立を下りてバルーンと一緒に退場した……のか? 私の位置からは目視できませんでしたが、歌い終えた時にはバルーンはフィールドを出ていて、彼女はいなくなっていた。
■ACIDMAN
ACIDMAN
「ミレニアム」「スロウレイン」と、繊細さと激しさ、クールさと熱さを自在に行き来する、“ACIDMANならでは!”と言いたくなる代表曲の二連打でスタート。そこから「もっと行きましょう!」と「ある証明」に入った瞬間のカタルシス、すごかったし、そのあと曲間なしで「MEMORIES」のイントロを奏で始めた瞬間も鳥肌ものだったし、その「MEMORIES」がサビに差し掛かった時のエモさも、何かもう洪水のようだった。
ACIDMAN
淡々と、自分たちのペースで、しかし一瞬一瞬気持ちを込めて、演奏し、歌っていくことで、すべての瞬間がピークのようなかけがえのなさを放つ、ACIDMANのライブ。ライブなんだから当然、コンディションや状況や環境等で、日によって若干の出来不出来はあるだろうが、今日はピークというか沸点なステージングだったのではないかと感じた。
ラストは「こんな時間にやる曲ではないですが……」という大木伸夫(Vo.g)の言葉から始まった「アルマ」、極限まで音数の少ないこの曲でオーディエンスを巻き込んでいく時の吸引力、やはり、圧巻と言うほかないものだった。あと、一度だけはさまれたMCは、やはり今日も、宇宙の話でした。
■EGO-WRAPPIN'
EGO-WRAPPIN'
中納良恵、本日の第一声は「サツマニアーン!」。1曲目の「黒アリのマーチングバンド」を歌い終わるや、「めっちゃ気持ちええやん! もっと気持ちよくなりたい人―!」と叫び、「BRAND NEW DAY」へ。<あの日見た夕日を探しに>と歌う中納良恵を、まさに夕日が照らしているというずっぱまりな画になる。
EGO-WRAPPIN'
次は美しいダブチューン「a love song」でちょっとクールダウン、ただし会場のあまりのムードのよさに中納良恵、曲間で「イェーイ!」と叫んだりする。さらに「ヒットチューンを取り揃えて来ましたんで、みんな底が抜けるぐらい大暴れして!」と投下されたのは「サイコアナルシス」、そして出た、「くちばしにチェリー」。「夜はこれから!」と絶叫した中納良恵、柵前に下り、ロースピーカーに上がってシング&ダンス。曲後半のブレイクではオーディエンスを煽りまくった末に、「はいどーぞ!」と、めいめい勝手に嬌声を挙げさせてからもう一度サビに。完全にピーク。なのでこれで終わりかと思ったら、ダメ押しで「GO ACTION」。中納良恵また柵前に下り、今度は隣の大隅ステージまで移動して歌いまくり(もう次のTKのバンドが準備している前で)。かっこよすぎ、もう。
■氣志團
氣志團
とっぷり陽の暮れた桜島に向けて、氣志團が最初に放り込んだのは、綾小路翔のアカペラから始まる「落陽」だった。最初は少々驚いたが、この時間帯、このロケーションにぴたりとハマる重厚なパフォーマンスが漢(おとこ)臭くていい。続く「我ら思う、故に我ら在り」でエモ度はさらに増していく。しかし、これが後半への壮大なフリだということを、このときはまだ誰も知る由もなかった……。
代表曲「One Night Carnival」で大いに盛り上がった後のMCでは、白鳥松竹梅(Ba)と星グランマニエ(Gt)が鹿児島市出身で、当フェスの主催者でもあるSOIL & "PIMP" SESSIONSと高校の同級生だということが明かされた。更に、翔の祖母も鹿児島出身だというではないか。これには客席からどよめきの声が上がった。
氣志團
そして、話は今回マキシマム ザ ホルモンの出演が叶わなかったことに及び、まさかの「恋のメガラバ」と「One Night Carnival」のマッシュアップ「One Night Carnival 2018~恋のワンナイ~」が実現することに。ボーカルは、翔がマキシマムザ亮君、早乙女光(Dance & Scream)がダイスケはんのパートを担当。これには驚いた。何が始まるのかと戸惑っていた観客も気付けばヘドバンの嵐。
しかし、この盛り上がりに不満げなのが光だ。自分たちのオリジナルバージョンよりもホルモンバージョンのほうが盛り上がったことに納得がいかないという。その訴えを受け入れた翔は、“ホルモンの曲を使って盛り上がりを捏造しようとしたこと”をメンバーと共に謝罪。そして、新曲を披露するというではないか。曲は、「One Night Carnival」とDA PUMP「U.S.A.」のマッシュアップ「One Night Carnival 2035~O.N.C.~」! まさかの「One Night Carnival」3連発という荒業に観客は大喜び。複雑なアレンジを完成させるだけでなく、“いいねダンス”までしっかり会得しているメンバーには感服である。
結局、この曲でライブは終わったのだが……5曲中3曲が「One Night Carnival」だったのだが……ま、まぁ、楽しかったからいっか! 最後に、「O.N.C」のサビ頭の歌詞は“カモン、One Night Carnival”と“俺のとこ来ないか”だったことを報告しておきたい。いや~、よく考えたもんだ。
氣志團
取材・文=阿刀“DA”大志(氣志團)/秦理絵(岡崎体育、雨のパレード、)/兵庫慎司(テスラは泣かない。、Nulbarich、水曜日のカンパネラ、ACIDMAN、EGO-WRAPPIN')
>>【ライブレポート】10/7(日)薩摩ステージ
>>【ライブレポート】10/7(日)大隅ステージ
>>【ライブレポート】10/7(日)与論ステージ
>>【ライブレポート】10/8(月・祝)薩摩ステージ
>>【ライブレポート】10/8(月・祝)大隅ステージ
>>【ライブレポート】10/8(月・祝)与論ステージ
イベント情報
(鹿児島市桜島横山町1722-17)