若旦那、チャラン・ポ・ランタン、MAGUMI&杉本恭一ら『THE GREAT SATSUMANIAN HESTIVAL 2018』DAY1【与論ステージ】レポート
DJみそしるとMCごはん
THE GREAT SATSUMANIAN HESTIVAL 2018
2018年10月7日(日)鹿児島市・桜島多目的広場&溶岩グラウンド【与論ステージ】
■大山百合香
与論ステージ、2日間のトップは奄美出身のアーティスト。初日は、沖永良部島出身の大山百合香。まず自身の三線、アコースティックギター、パーカッションの3人の音が鳴り、そこにそっと乗るように「永良部の子守唄」を歌い始めた瞬間に場の空気が変わった、その声の力で。続く「海の青 空の青」も、みんなじっと聴き入り、歌が終わるとドーッと拍手。
大山百合香
「鹿児島のみなさん、おじゃったもんせ、大山百合香です! 晴れたね、すごいね、みんな持ってるね!」とその拍手に応え、オーディエンスにハンドクラップを求めながら「星の歴史」。沖永良部島出身で鹿児島の高校に行っていた話をはさみ、「みんなの大切にしているものを思い浮かべながら聴いてください」と歌い始めた「夏のしずく」では、「海の青 空の青」を超える大きな拍手がステージを包む。CMに起用されたモンゴル800のカバー「小さな恋のうた」では、「星の歴史」を超えるハンドクラップが巻き起こった。ラストは、「ぶちかましたいと思います!」と、オーディエンスにカチャーシーを教えてから、沖永良部島の民謡「永良部百合の花」でパーッと明るくシメ。聴かせ、歌わせ、踊らせる、フェスのハイライトがすべてあるようなステージだった。
■ReN
ReN
サウンドチェックで「スタンド・バイ・ミー」を披露したあと、アコースティックギター1本を抱えてステージに現れたReNは「Aurora」から本番をスタート。「今日しか出せない音を1個1個組み立てていきます」という言葉のとおり、ループステーションを駆使して、アコギのフレーズやボディを叩く音をリアルタイムで多重録音をしながら、音を作り上げるのがReNのスタイルだ。
ReN
強い日差しを浴びながら、全身でリズムを刻む激しい演奏を終えると、「やべ、汗かきすぎて、前が見えない」と苦笑いをする場面も。何重にも声を重ねて圧倒的な昂揚感を作り上げた「Life Saver」のあと、後半は野性味を帯びたパーカッシブなアコギのループで踊らせた「Shake Your Body」、穏やかなメロディに揺れた「Friends Forever」。ふと気づけば、集まったお客さんのハンドクラップも巻き込みながら、一緒にステージを作り上げている。ひとりだけど、ひとりじゃない。いまのReNが作り上げるのは、そんなステージだ。そして、ラストソングは今年リリースされた最新EPのタイトルトラック「存在証明」。“自分とは何なのか?”を問いかける真摯な眼差しが眩しかった。
■BRIAN SHINSEKAI
BRIAN SHINSEKAI
「僕も桜島までフェリーで来た。もう本当に絶景で、いつもテンション上げるために聴く曲があるんだけど、そんなの必要ないくらいだった──」。10月24日に配信リリースされる「三角形のミュージック」を1曲目に歌い終えて、BRIAN SHINSEKAIはそんなMCをした。ツアーもまだ東名阪しかやったことがなくて、鹿児島はもちろん九州でライブをすることも初めてとのこと。というわけで、全身気合いの塊状態で本日を迎えた様子である。
BRIAN SHINSEKAI
続く「東京ラビリンス」の重いキック音と流麗なメロディで、遠巻きに観ていたオーディエンスも惹き込んで行く(じわじわと前ににじり寄って来る人、多数)。そこから曲間なしでなだれこんだ「TRUE/GLUE」では、Bメロでハンドクラップ、サビで腕を左右に──という彼のアクションにみんなつられて腕が挙がる。トランシーでアッパーな四つ打ちの「トゥナイト」が終わった時の「ひゃーっ!」という歓声に、「いや、マジありがとうございます!」と素で応える感じもいい。ラストは「ルーシー・キャント・ダンス」でこの日いちばんのピークを迎え、BRIAN SHINSEKAIの記念すべき九州初ステージは終了した。本人、相当達成感あったのでは、と思う。
■DJみそしるとMCごはん
DJみそしるとMCごはん
時刻はちょうど昼飯時。左右に美味そうなフェス飯のテントが並ぶが、与論だって負けちゃいない。ステージにはDJみそしるとMCごはんが登場し、美味しい料理(のレシピ)をダダダっと放つ。まずは「ピーマンの肉詰め」で観客の腹具合をサクッとうかがった後は、みんな大好きなカレーにまつわる「スプーンガールのマイカレー」。おみそはんの独特なゆるいラップとローファイなトラックに合わせて、皆の体も心地よさそうに揺れる。
「鹿児島と言えば、こんな曲があるんですが」と前置きをして披露したのは、「かごしまフィーバー」。次々と飛び出る鹿児島リリックには観客も思わず拍手! さすが、「鹿児島は第二の故郷」と言うだけある。フリースタイルバトルに出たいというおみそはんの熱い思いが曲になった「甘辛MCバトル~たまごやき編~」。1人でMCバトルを繰り広げるという珍曲だ。3つの声色を使いこなしてバトルを成立させた。
DJみそしるとMCごはん
「どんまい」ではミニ石井竜也(という名のマペット)を迎え、マペットが生み出すホッコリした雰囲気で本人がいないデメリットや違和感をポジティブな空気に変えた。ふんわりとしたステージ運びは一見するとマイペースだが、実は無駄な動きが一切ない。ステージ前にはどんどん観客が吸い寄せられ、最後には全員が手を左右に振るぐらいの一体感を生み出した。熱いライブばかりが全てじゃない。ゆるくたってみんなは一つになれるんだ。すごいぞ、おみそはん。
■MAGUMI&THE BREATHLESS GUEST:杉本恭一
MAGUMI&THE BREATHLESS GUEST:杉本恭一
与論ステージの折り返し地点はスカパンク界のレジェンド・LA-PPISCHのボーカルMAGUMIが率いるアコースティックユニット、MAGUMI&THE BREATHLESS。そこにギタリスト・杉本恭一を迎えたスペシャル編成のステージだ。
「すげえビックリ。桜島、えらい近いね。わたくし、隣の熊本県人ですけど、こんなに近くに桜島を見たのは初めてです。今日はのんびりした曲ばっかりするけえ、ゆっくり楽しんで帰ってはりよ」と、地元の方言のまま語りかけると、「1曲目」からライブはスタートした。島本亮が奏でるアコーディオンが哀愁を醸し出すアダルトなバンドサウンドにのせて、MAGUMIがロマンチックなメロディを紡いでゆく。
MAGUMI&THE BREATHLESS GUEST:杉本恭一
MCでは、杉本との共演について、「俺が中学校から、良いことも悪いことも全部一緒にやってきた、ギター、杉本恭一」と紹介。ピアノのフレーズが感傷を誘う「柘榴」、歌謡テイストに杉本が弾くオリエンタルなギターと口笛が優しく寄り添った「歌姫」のあと、大人の渋みが漂うステージを「MARACAS MAN」で締めくくると、「まだまだフェスは始まったばっかり。ゆっくり楽しんでちょうだい!」と呼びかけた。
■チャラン・ポ・ランタン
チャラン・ポ・ランタン
時間どおりに始まると思っていた自分がバカだった。定刻前に与論へと向かっていると、遠くから聴き馴染みのあるハーモニーが聴こえてくる。もう歌ってる、チャランポの2人が「恋のバカンス」を歌っている。駆け足でステージに到着すると、もも(Vo)が言った。「改めまして! チャラン・ポ・ランタンです!」
チャラン・ポ・ランタンは鹿児島初上陸。初見の観客が多い中でのパフォーマンスとなったが、2人にとっては何の支障もない。逆に、ここでどれだけの注目を集められるかワクワクしているように見えた。
チャラン・ポ・ランタン
「みんな、夏は大好きかなー? 私は大っ嫌いだーっ!」という小春の絶叫を合図に始まったのは、「ヒキコモリ」のコール&レスポンス。聴けば一瞬で分かる、ベイ・シティー・ローラーズ「サタデーナイト」の替え歌カバー「ソトデナイ」だ。“サタデナイ”と“ソトデナイ” ――こんな秀逸な日本語カバーが近年あっただろうか。歌が始まった瞬間、客席には笑いが溢れ、曲終わりには今日一番の拍手喝采が2人に送られた。
この反応を受けて、百戦錬磨の2人はセットリストを臨機応変にチェンジ。しっとりめの曲を用意していたというが、若者言葉てんこ盛りの「「お茶しよ」」に切り替えた。これが功を奏し、ぐいぐい観客のテンションが上がり、ぐいぐい人が集まってくる。続いては、「進め、たまに逃げても」をショートバージョンで切り上げ、すぐに「ムスタファ」へと繋ぎ、最後は「最後の晩餐」に着地。曲が進むに連れて、チャランポの2人も高揚しているのが容易に伝わってくる。
チャラン・ポ・ランタン
最後は恒例の写真撮影OKタイム。「写真撮るなら、11月23日のNHKホール、観に来てね!」と巧みに宣伝を盛り込む小春。そして、歌うは「愛の讃歌」。中盤からはスタッフに肩車をさせたももが、PA卓の前までやってきて声高らかに歌い上げた。いやあ、素晴らしい。全てのライブを観たわけではないが、断言したい。今日のベストアクトはこの人だと。チャランポ、きっと鹿児島単独公演できるよ!
■中 孝介
中 孝介
三線を手にしてステージに登場した中 孝介は、このフェスに参加できた喜びを表し、与論にまで足を運んでくれた観客に対して謝辞を述べた。そして、これから歌う曲について丁寧に解説した後、「よいすら節」を歌い上げ、まずは自らのルーツを明確に示した。続いては、チェロとピアノも参加して「空が空」を披露。ワンコーラスごとに沸き起こる観客の拍手が温かい。
中 孝介
中が「夏夕空」を歌ったのは、正に空が茜色に染まっているタイミングだった。暦の上ではもう秋だけど、今日の陽気は夏が帰ってきたよう。この曲は、中の歌声は、そんな気分を一層もり立てるには十分だった。中は一言一言、丁寧に言葉を紡いでいく。そんな彼の歌に聴衆はじっと耳を傾けるのだった。後半に向けて徐々にドラマチックさを増していく「moontail」は今日のハイライトと言えるだろう。最後に歌ったのは「花」。バイオリンにNAOTOを加え、より情感のこもった歌を披露した。音楽と鹿児島に対する中の愛情が透けて見えてくる、温かな30分だった。
■NISSAN あ、安部礼司~BEYOND THE AVERAGE~ with Caravan
NISSAN あ、安部礼司~BEYOND THE AVERAGE~ with Caravan
毎週日曜17時、TOKYO FMはじめJFN37局ネットで2006年から続く人気ラジオドラマ『あ、安部礼司』に、ゲストミュージシャンとしてCaravanが参加するという企画。『あ、安部礼司』の登場人物である4人(の声優)が登場、その4人が演じるドラマに、Caravanがギターで劇伴をつけていく、という趣向でした。
NISSAN あ、安部礼司~BEYOND THE AVERAGE~ with Caravan
目をつぶって聴いていれば普通にストーリーを楽しめるが、目を開けて、4人の声優のまんなかでうつむき気味に座って、ギターを弾いたり弾かなかったりしているCaravanの姿を観ながら聴くというのは、なかなかにシュールな体験でした、ファンとしては。で、ドラマが“ハチドリがどうのこうの”みたいな話になったところでCaravanが「ハミングバード」のイントロを弾き始めたりして、“あ、ドラマに劇伴をつけるだけじゃなくて、ドラマの展開をCaravanの曲に寄せてもいるのか”と納得。二度目の「ハミングバード」は、イントロだけでなくフルコーラス歌ってくれた。で、そこからドラマが再開し、いろいろあって最後に行き着いたCaravanの曲は「ほんのすこしだけ」。これもフルコーラス歌ってくれて、美しく終了しました。
■若旦那
若旦那
熱狂の連続だった1日目の与論ステージのトリを飾ったのは、湘南乃風の若旦那だ。サウンドチェックを終えたあと、「このまま始めちゃおうか」と、リラックスしたムードでライブはスタート。
「今日はスナフキンみたいな恰好で来ました(笑)」と、アコースティックギターを掻き鳴らす佇まいには、湘南乃風で見せる厳つい雰囲気とは一味違う“歌うたい”らしさが漂っている。「俺は鹿児島のじいちゃんとばあちゃんに育ててもらって。今日は墓参りついでにライブをしにきました」。そんなふうに鹿児島が自分にとって縁の深い場所であることを伝えると、歌詞の節々を<桜島>に変えた「純恋歌」を皮切りに、感情をダダ漏れにしたパワフルな歌唱で聴き手の心にダイレクトに揺さぶりをかけていく。
若旦那
暗闇の中をがむしゃらに走る「トンネル」や、フォーキーなメロディにのせて“生きる意味”を問いかける「欲しいものなら」のあと、渾身のメッセージを残したのはラストソング「花束」。遠回りな比喩を抜きにして、泥臭い男の生き様を誇り、ただ愚直に<頑張れ>と大声で叫ぶナンバーは、決して器用ではないが、心から信じることのできる魂の歌だった。
若旦那
取材・文=阿刀“DA”大志(DJみそしるとMCごはん、チャラン・ポ・ランタン、中 孝介)/秦理絵(ReN、MAGUMI&THE BREATHLESS、若旦那)/兵庫慎司(大山百合香、BRIAN SHINSEKAI、NISSAN あ、安部礼司~BEYOND THE AVERAGE~ with Caravan)
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イベント情報
(鹿児島市桜島横山町1722-17)