美波、ROLLY、真心ブラザーズ、星屑スキャット、DJダイノジら新鋭からベテランまでが入魂のパフォーマンス『THE GREAT SATSUMANIAN HESTIVAL 2018』DAY2【与論ステージ】レポート

2018.10.9
レポート
音楽

カサリンチュ

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THE GREAT SATSUMANIAN HESTIVAL 2018
2018年10月8日(月・祝)鹿児島市・桜島多目的広場&溶岩グラウンド【与論ステージ】

■カサリンチュ

カサリンチュ

2日目も桜島は爽快な晴れ空が広がった。発起人のタブゾンビが「鹿児島に音楽を広めたいという夢が叶ってうれしいです」と念願のヘス開催に寄せて開会の挨拶をすると、与論ステージのトップバッター・奄美大島出身の二人組カサリンチュが登場。まるで本物の楽器が鳴っているようなコウスケのヒューマンビートボックスにのせて、タツヒロがアコースティックギターを弾きなが伸びやかな歌声を届けてゆく。

カサリンチュ

冒頭から「ファンキーコウウンキ」で集まったお客さんを踊らせると、地元・鹿児島にできた新しいフェスの誕生を喜び、「どんなに大きなことでも、最初はひとりから始まる。ちょっとした一歩から進んでいくんだと思います」と語りかけて、「NEW WORLD」へつないだ。“仲間”をテーマにした初披露の新曲バラード「満月」から、タツヒロが軽快にホイッスルを吹き鳴らした「夏が終わる前に」、遊び心満載のリズムが楽しい「やめられない とまれない」へ。“四苦八苦”も“逆境”も、なんとか笑いに変えて突き進んでいくカサリンチュのポジティブなパワーを浴びて、きっと今日も素敵の1日になると、そんな予感に心踊る最高のスタートダッシュだった。

 

■美波

美波

「嘘つきな大人にはなりたくないです」。アコースティックギターを爪弾き吐き出した、そんな言葉から、現役大学生シンガーソングライター・美波(みなみ)のステージがはじまった。大人になる前の葛藤を鋭利な言葉で綴った「正直日記」を、荒々しい歌唱で届けた1曲目。悲痛なほど感情を剥き出しにした、その生々しい歌を聞けば、彼女の音楽に影響を与えているのが尾崎豊だというのも頷ける。

美波

「もっと盛り上がって行こうよ!」。遠巻きに見るお客さんにも声をかけて、「ライラック」や「Prologue」といったアップナンバーで果敢に攻めた中盤。その姿は、今年2月にメジャーデビューしたばかりで、この『サツマニアン・ヘス』が初のフェス出演だとは思えないほど堂々としている。最後の1曲を残して、美波は「音楽を辞めたい時期があった」と明かした。「どんなにやっても誰にも届かなくて、苦しくて。それで、不満に思ったことは自ら動かないとダメだってわかりました。そして、いま……私はここにいます。本当に幸せです」と。そんな自分の経験をもとに、誰かの背中を押せたらという願いを込めたラストソング「main actor」は、この日いちばんの渾身の歌だった。


■ROLLY

ROLLY

「あちらでは打首獄門同好会がやっているときに、私を見にきてくださったみなさんは神様です」。グラムロックな出で立ちで登場したROLLYは、事前にTwitterでも予告していたとおり、アコースティックギターの弾き語りステージ。吉田拓郎の「たくろうチャン」を「ROLLYちゃん」に変えてカバーした1曲目にはじまり、千賀かほる「真夜中のギター」、中川五郎「主婦のブルース」など、敬愛する70年代ジャパニーズポップを(少し桜島風に歌詞を変えたりして)次々にカバーしていく。

ROLLY

薩摩ステージのほうから打首獄門同好会の演奏が聴こえてくると、「お、始まったな」「打首獄門同好会さんは面白いですよ、「(カモン)諭吉」とか「布団の中から出たくない」とか」「あっちに行ってもいいですから」と、独特のマイペースなトークでも楽しませてくれる。終盤、すかんちの「ROLLY HORROR SHOW」や「うそつき天国」で大歓声を巻き起こしたあと、シューベルトの「アヴェマリア」に歌詞をつけて、“最後の地球人”の歌へと仕立て上げたラストナンバーまで、それは、まさに歌とギター1本で巻き起こすエンターテイメント。一度味わえば、完全にROLLYの虜だ。

 

■sachi.

sachi.

「鹿児島で言うのは、アレなんですけど……オンナ長渕剛って言われたりします」。そんなふうに自分のことを紹介した東京都・練馬区生まれのシンガーソングライターsachi.は、サウンドチェックで「乾杯」をカバーして集まったお客さんの心を掴んだ。ギターをジャキジャキと掻き鳴らしながら届けた「くらえ青春」を皮切りに、全力の助走でガツンとぶつかっていくような体当たりの歌は、“21歳”という年齢には不釣り合いなほど、泥臭い。

sachi.

「私はライブハウスが大好きです。そこで奇跡みたいな瞬間をたくさん見てきました」と伝えて、そこに語り尽くせないほどの葛藤があることも曝け出した「ライブハウスのひきこもり」は、sachi.というシンガーソングライターが何を大切にしながら日々歌い続けるのかが目に浮かぶようなナンバーだった。「弾き語りでもロックンロールできるっていうのを見せたいです」と言って、何の疑いもなく「ロックは死なない」と宣言するラストナンバー「ロックンロール イズ ノット デッド」まで、全5曲。そのパフォーマンスは、彼女が胸に真っ直ぐな芯を持つ、信頼できるロックシンガーであることを十分に伝えるステージだった。

 

■真心ブラザーズ

真心ブラザーズ

14時を過ぎ、まだまだ強い日差しが降り注ぐ与論ステージ。「あのさ、ちょっと待って! 俺のほうだけ日なたなんだけど……」とボヤいたYO-KINGの言葉から、弾き語りスタイルによる真心ブラザーズのライブが始まった。フォーキーなメロディを紡いだ「GREAT ADVENTURE FAMILY」にはじまり、ロックンロールなコード感に言葉遊びをのせた「軽はずみ」へ。豪快で伸びやかなYO-KINGの歌声は野外のステージによく似合う。哀愁のブルースハープを聴かせた「マイ バック ページ」では、お客さんが飛ばすシャボン玉が音楽に寄り添うように、ふわふわと漂う光景も素敵だった。

真心ブラザーズ

桜井秀俊がメインボーカルをとる「Z」が始まるころ、薩摩ステージのほうからTHE BAWDIESの爆音が聴こえてくると、「負けないで、桜井」「このステージ、真心ブラザーズ feat. THE BOWDISだ!」と、その状況を楽しみはじめたYO-KING。終盤には、「どか~ん」と「サマーヌード」という二大名曲を惜しげもなく披露した真心ブラザーズ。緩くて、楽しくて、心地好い。そうやって、自分たちのスタンスを築き上げていた彼らは、いよいよ来年結成30周年を迎える。

 

■DISCO MAKAPU‘U(川辺ヒロシ & サイトウ “JxJx” ジュン)

DISCO MAKAPU‘U(川辺ヒロシ & サイトウ “JxJx” ジュン)

ようやく陽が傾き始めた。心地よく吹き抜ける風とともに与論ステージに現れたのはDISCO MAKAPU’Uの2人。川辺ヒロシ(TOKYO No.1 SOUL SET)とサイトウ“JxJx”ジュン(YOUR SONG IS GOOD)によるDJユニットだ。オルガンを交えた極上のファンクハウスチューンに吸い寄せられるように人々が集まってくる。ああ、これは楽しい。30分じゃ絶対に足りないヤツじゃん。この2日間ですっかりロック漬けになっていた鼓膜の、まだ鳴らされていなかった部分が心地よく震える。

DISCO MAKAPU‘U(川辺ヒロシ & サイトウ “JxJx” ジュン)

和音階を使ったキラキラした弦楽器フレーズが印象的なハウスチューンで少しムードを変えたあとは、スチールパンやホイッスルが鳴り響くトロピカルな展開に。マキシマム ザ ホルモンやPIZZA OF DEATHのTシャツを着た人々が足を止め、楽しげに体を揺らしている光景にうれしくなる。後半戦に突入すると、彼らのプレイに黙っていられなくなったのか、SOIL & “PIMP” SESSIONSの社長がステージに飛び入りし、さらに与論ステージを盛り上げた。少々疲れが出てくる時間帯ではあったが、2人のプレイが至福のカンフル剤となった。いやぁ、音楽って本当に素晴らしい。

 


■Rei

Rei

アコギを手に現れたのはRei。一言も発することなく、挨拶代わりにブルージーでテクニカルなギタープレイを披露すると、観客から一斉に歓声が湧く。そして、歌い出すのは「my mama」。ギターだけでなく、彼女はボーカルも一級品だ。パワフルで艶のある歌声が耳朶を鋭く打つ。

気付けばスタート時よりも多くの人がステージの周りに集まっている。ステージの大きさの違いもあり、薩摩と大隅の音に負けてしまいがちな与論だが、この演奏と歌なら向こうのステージまで十分届くはずだ。それぐらい彼女の音楽は強い。

Rei

落ち着いたトーンのMCを挟み、ロカビリーな「Tumblin’」、そして「Route246」をプレイ。25歳という若さながら円熟味溢れるパフォーマンスで観客を魅了する。皆の興奮がさらに高まったのはラストの「BLACK BANANA」。イントロで魅せたインプロビゼーションをはじめ、躍動する彼女のパフォーマンスに自然と手拍子が起こり、最後は軽くアンコールがかかるほどの盛り上がりとなった。数々のギタリストが恐れをなして逃げ出しそうなぐらい、とんでもないステージだった。

 

■星屑スキャット

星屑スキャット

星屑スキャット

星屑スキャット

星屑スキャット――ミッツ・マングローブ、ギャランティーク和恵、メイリー・ムーの3人による音楽ユニットだ。結成は2005年で、実は活動歴は長い。

華やかなイントロに導かれ、きらびやかに着飾った3人がステージに現れると、与論ステージは一気に新宿二丁目へと変貌を遂げた……なんて書いてしまうとネタっぽく捉えられてしまうだろうか。誤解しないで欲しい。この3人のハーモニー、絶品である。オリジナルなアレンジを加えた「仮面舞踏会」のカバーなんて、思わず「おぉ……」と声が漏れてしまうほど見事だった。初見の観客がほとんどだったが(ミッツ調べ)、盛り上がりはすごい。

もちろん、トークだって面白い。「やだ、MIYAVIが始まったわよ。大丈夫?」「3人揃ったオカマ見るの初めてでしょ?」などなどのパンチラインを放ちつつも、いざ歌に入るとガラッと顔つきが変わるのだからさすがだ。

星屑スキャット

「新宿シャンソン」や「半蔵門シェリ」(作詞作曲ミッツ!)を始め、振付も含めて極上の歌謡ショーを繰り広げる3人。彼女らの声質が近いこともあり、ハーモニーの美しさがさらに際立つ。気付けばラストの「君の瞳に恋してる」の日本語カバーまであっという間。無性に水割りが飲みたくなる30分だった。最後に3人に対して謝りたい。ネタ要員だと思っててごめんなさい!


■DJダイノジ+よしもと芸人

DJダイノジ+よしもと芸人

定刻になってもDJダイノジは与論ステージに現れない。理由は、その時間に大隈のステージ上にいたから。説明すると、DJダイノジは大隈での出番が19:50まで、そして与論のステージには19:50に現れる予定だった。一体このタイムテーブルはどうなっているのかと最初から不思議に思っていたが、やはり普通に押した。そして、定刻から10分が経ったときに「どうも~!」という声とともに現れた、よしもと芸人パイナップルつばさが。彼が前説として一生懸命ステージを温めたのち、鹿児島出身コンビ・キカンタレによる漫才「ヒーロー」が始まる。

そのあと、大隈でDJを終えたばかりのダイノジが満を持して登場。しかも、まずは漫才を披露するというではないか。ロックフェスで彼らはDJとして出演することが多いだけに、漫才はかなり珍しい。

DJダイノジ+よしもと芸人

残り15分になったところで、お待ちかねのお見送りDJがスタート。ポルノグラフィティ「ミュージック・アワー」から始まり、T.M.Revolution「HIGH PRESSURE」とテンポよく繋いでいき、そんな彼らのDJプレイを鹿児島のご当地アイドル・サザン☆クロスが全力で盛り上げる。

後半は、観客をしゃがませ、サビで跳び上がらせたTRF「survival dAnce~no No Cry More~」、みんなでランニングマンのステップを踏んだ三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE「R.Y.U.S.E.I.」、何度も何度も「ハーイ!」を叫んだB’z「ultra soul」と定番曲の目白押し。今年最大の“みんなのうた”となった「U.S.A.」では、いいねダンスをしながらウォールオブデスをカマすというわけのわからない展開に。

最後はサザン☆クロスの「しろくま▼ランデブー」で大団円を迎えた。実は、この曲がキュートでキャッチーな掘り出し物のアイドルソングだった。そんな興味深い発見もありつつ、与論ステージは2日間の幕を下ろしたのだった。(※▼=ハートマーク)

DJダイノジ+よしもと芸人


取材・文=阿刀“DA”大志(DISCO MAKAPU‘U、Rei、星屑スキャット、DJダイノジ+よしもと芸人 )/秦理絵(カサリンチュ美波ROLLYsachi.
※都合により一部写真掲載がない場合があります。

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