立川こはる&春風亭ぴっかり☆インタビュー 『明治座らくご祭2018~わっと笑って年越そう~』の見どころとは?

インタビュー
舞台
2018.12.1
(左から)春風亭ぴっかり☆、立川こはる

(左から)春風亭ぴっかり☆、立川こはる

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2018年12月12日より5日間、東京・明治座で『明治座らくご祭2018~わっと笑って年越そう~』が開催される。期間中は5日間連続×毎日4席、あわせて19名の落語家と1名の講談師が登場する。落語ファンの方々だけでなく、明治座という劇場のファンの方々にとっても、気になるイベントではないだろうか。昨年に続く出演となる立川こはると、今年初出演の春風亭ぴっかり☆(以下、ぴっかり)。女流落語家二人に、見どころを聞いた。

お客さんの半数が、初めての落語会

——昨年に続く出演のこはるさん。お芝居『ふるあめりかに袖はぬらさじ』で明治座の舞台に立たれた経験がおありの、ぴっかりさん。おふたりにとって明治座で落語会が開かれることに、どのような思いがありますか?

こはる:明治座は明治座でも、会場は、明治座の「食堂」です!(笑)

ぴっかり:その違いは大きいです!

——では質問を変えます(笑)。明治座5階、「菊の間」での落語会はいかがでしたか?

こはる:やっぱり食堂は食堂なのですが、そこは明治座なんです! どのお席からでも、こちらの姿が見えるよう、高座の高さを工夫してくださったり、お客様が落語を聞きやすい環境を作ってくださったり。噺家としてもとても落語をやりやすかったです。それから、よく落語会に行かれるというお客さんからは、椅子が豪華というご意見も。「食堂の椅子が豪華で緊張した」と伺いました(笑)

——落語会の後には「打ち上げ」(※前日までに要予約)があります。特製のお弁当が提供され、出演者の方々もいらっしゃるそうですね。

こはる:打ち上げでは高座からおりた噺家たちの、意外な側面もみられるかもしれません。他の古典芸能では、なかなかない機会ですよね。こちらからお客様に話しかけに行くこともありますし、日によってはイケメン落語家がお酌をしにいくこともある、「かも」しれません。

ぴっかり:かも、ですね?!

こはる:それを一切相手にせず、お客様同士でお食事や日本酒を楽しんでいただいても構いません(笑)。かしこまらずに気軽に参加いただければよいのではないでしょうか。

(左から)立川こはる、春風亭ぴっかり☆

(左から)立川こはる、春風亭ぴっかり☆

——ちなみに昨年は落語会と打ち上げを通して、お客さんの約半数が、初めて生の落語を聞く方々だったそうです。

ぴっかり:えーー!

こはるさん:多いですね!

——行ったことのない寄席よりも、明治座であることが足を運びやすかったのかもしれません。5日間とも大変盛り上がったと聞きましたが、落語初体験の方にとっても、テレビで見るのと生でみるのでは、違うものでしょうか?

ぴっかり:別物ですね。ぜひ生の落語を体験してほしいです。

こはる:私は大学時代、落語に興味はなかったのですが、流れで落語研究会に所属していました。テープやCDで落語を聞くことはあっても、それが全然面白く感じられませんでした。寄席に行ってみても、落語を知らない人がイメージするとおりの落語。

ぴっかり:「おじいちゃんの落語家が、着物で昔ばなしをしている」みたいなイメージですか?

こはる:そうそう。うまく聞き取れなくて、寝てしまったり。でもある時、当時の二ツ目さんがやっていた落語会を鈴本演芸場でみて、初めて「こんなに若い人たちが、こんなに面白いことをしているんだ」と感動したんです。それが、柳家三三師匠や古今亭志ん丸師匠、桃月庵白酒師匠や三遊亭歌奴師匠など、今や大人気の錚々たる師匠方。勢いもあり、話もリアルに伝わってきました。

ぴっかり:出演者の年齢が近い方が、共感してもらえる部分はあるかもしれませんね。

ーーその意味で、勢いのある次世代エースがそろった今回の「明治座らくご祭」は……

こはる:はじめての方にもぴったりです!

(「ありがとうございます!!」と明治座担当者)

バラエティに富んだ5日間

4名×5日間。左列より、出演日順。

4名×5日間。左列より、出演日順。

——出演者は5日間とも二ツ目の方が3名に、真打が1名です。

こはる:ぴっかりさんの出る15日、すごいですね。歌太郎兄さん、三度さんって、昨年と今年の、NHK新人落語大賞の王者ですよ。

——若手落語家の登竜門で、本選に出るだけでもステイタスだと聞きます。こはるさんとぴっかりさんも本選にお出になっていましたね?

こはる:5日間どの日も、NHK新人落語大賞本選に出場していたり、他で賞をとっている若手ばかり。二ツ目の中でも、失敗のないメンバーばかりがそろってますね。……って自分で言っちゃいましたが(笑)、万が一失敗しても大丈夫なんです! トリは、人気と実力のある真打の師匠方がとってくださいます。だから私たち若手は、安心して思い切ってできるんです!

「失敗がないっていっちゃったね」(ぴっかり☆)「失敗しても大丈夫」(こはる・左)

「失敗がないっていっちゃったね」(ぴっかり☆)「失敗しても大丈夫」(こはる・左)

——こはるさんが出演される、13日の見どころをおしえてください。

こはる:トリは、円楽一門の真打、三遊亭兼好師匠です。円楽一門の真打。若手三人が無茶をしてもすべて受け止めて、ネタにしてくれる、器の大きな師匠です。三四郎兄さんは、上方落語。鯉八くんは、新作落語。私は古典落語で女流。内容も言葉もバラバラな4人でやるリレーの形も楽しんでいただけると思います。

——ぴっかりさんが出演される、15日の見どころはいかがでしょうか?

ぴっかり:先ほどお話に出た三度さんが新作落語、歌太郎兄さんが古典落語をされると思います。そこに女流で私が入り、トリは遊雀師匠。古典を、ポップに聞きやすく演じられるエネルギッシュな大先輩です。古典の概念が変わるような、はじめての方にも楽しんでいただける落語を聞かせてくださいます。

——他の日は立川晴の輔師匠、三遊亭夢丸師匠、笑福亭たま師匠がお出になります。

こはる:落語5派(落語協会、落語芸術協会、落語立川流、円楽一門会、そして上方落語協会)。色んなタイプがそろいましたね。

ぴっかり:講談の神田松之丞さんもいますしね。5日間とも、面白いバランスになると思いますよ。

目指す先は、同じ山のてっぺん

ーー女流お二人のご出演も、この会をよりバラエティ豊かなものにしていますね。こはるさんとぴっかりさんは、同じ2006年の入門なのですね。

ぴっかり:こはるさんの方が7カ月先輩です。当時は、女流落語家は十数名しかいませんでしたから、同期に女流がいるとは思いもしませんでした。それが入門2日目で、こはるさんにお会いして。

こはる:よみうりホールの楽屋! 私は見習いとして(談春)師匠のかばん持ち。ぴっかりちゃんは小朝師匠についてきていて。お互いに「え?」ってなったよね。あの瞬間は、すごく印象に残ってる。

ぴっかり:本当に衝撃でした。スタッフさんかな?  と思ったり、「えっ、……女の人??」と思ったり。

こはる:ちょっと、それどういう意味?!(笑)

ーーその頃のお互いの印象は、記憶にありますか?

こはる:前座同士が楽屋で雑談をするようなことはありませんから、当時は、お互いのことをよく知りませんでした。二ツ目になり、二人で取材を受ける機会があり、そこで「この人は根性のあるサバけた人だ! 仲良くなれる!」と思いました。同業の勘といいますか。落語家同士で分かるんですよね。「この人はあまり修行をしてきていないな……」とか。

ぴっかり:(大きく頷き)分かります。

こはる:その取材での受け答えを聞き、ぴっかりちゃんは、キチッとやってきた人なんだなと感じました。

立川こはる

立川こはる

——ぴっかりさんの目に、こはるさんはどう映りましたか?

ぴっかり:立川流始まって以来の女流ですからね。そこに飛び込んだ勇気たるや、尊敬の念しかありません。私はこういうキャラクターでやらせていただいていますが、こはるさんは男の人と同じ土俵で、男の人と並んで落語を聞かせることができます。女流がもっていないものを、もっている。

——たしかに、ぴっかりさんは女流だからこその落語へのアプローチを模索し、こはるさんは、伝統にのっとった男性と同じアプローチで勝負をされています。

こはる:談笑師匠がそんな私たちを「高い山を、違う側から登っている」とおっしゃっていました。二人は違う方角から登りはじめているけれど、目指す先は一緒。同じ高い山のてっぺんなんだろうな、と。

ぴっかり:その言葉を聞いた時は、とてもうれしかったです。

春風亭ぴっかり☆

春風亭ぴっかり☆

——最後にSPICE読者の方々に向けて、お誘いのメッセージをお願いします。

こはる:演劇や音楽などにご興味のある方ならば、まず一度、生の落語を聞きに足を運んでみてください。それが大きな一歩となるよう、落語を楽しむきっかけとなるような落語会にしたいです。ぜひ『明治座らくご祭』にお越しください。

ぴっかり:お食事や日本酒もいただけて、なおかつ、タイプの違う4人をいっぺんに見ることができる、なかなかない機会です。初めての方が、生で落語を体験するのにうってつけの会だと思います。勇気をもってお越しください!

『明治座らくご祭2018』は、2018年12月12日より5日間の公演。打ち上げでは、明治座特製のお弁当の他、日本名門酒会が厳選した日本酒も用意されるという。

(左から)立川こはる、春風亭ぴっかり☆

(左から)立川こはる、春風亭ぴっかり☆

取材・文・撮影=塚田 史香

公演情報

『明治座らくご祭 2018 ~わっと笑って年越そう~』
 
日程:2018年12月12日(水)~12月16日(日)
場所:明治座5階「菊の間」
開演時間:
【平日】落語会18:30/打ち上げ20:30
【土日】落語会15:00/打ち上げ17:00
※打ち上げは希望制となります。打ち上げのみの参加はお断りいたします。
※打ち上げのお食事は、お一人お一人にお弁当をご用意致します。ワンドリンク付き。
※打ち上げへの参加出演者メンバーは変更になる場合がございます。ご了承ください。
※5歳以上有料/4歳以下のお子様は保護者1名につき1名まで膝上鑑賞無料、お席が必要な場合は有料。

価格:全席指定:¥2,800 全席指定(打ち上げつき):¥5,800
 
出演:
12日(水)立川晴の輔、春風亭正太郎、柳亭市弥、三遊亭わん丈 
13日(木)三遊亭兼好、桂三四郎、瀧川鯉八、立川こはる 
14日(金)三笑亭夢丸、立川吉幸、柳家わさび、柳亭小痴楽 
15日(土)三遊亭遊雀、三遊亭歌太郎、春風亭ぴっかり☆、桂三度 
16日(日)笑福亭たま、神田松之丞、春風亭昇也、立川寸志
 
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