アートフェア東京 エグゼクティブ・プロデューサー來住尚彦が語る「アートによる街作り」とは?【連続インタビューVol.2】

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2019.2.27

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東京国際フォーラム・ホールEにて、3月7日から4日間にわたり開催される「アートフェア東京2019」のエグゼクティブ・プロデューサーである來住尚彦氏へのインタビューの第2回目。來住尚彦氏が、アートの世界に飛び込んだ理由、そして「アートフェア東京」を通して街を、そして日本をどのように変えていこうとしているのか。連続インタビューVol.1はコチラ
 

 

赤坂BLITZと赤坂サカスを作った後は
まったく違う場所に自分を置いてみたかった

――前回は「アートフェア東京」が目指すもの、そして來住さんが「アートフェア東京」に関わるまでをお聞きしましたが、改めて赤坂BLITZを作り、そして赤坂サカスを作るという、エンターテイメントの世界から、いきなりアートの世界に飛び込まれたのでしょうか?

 「クリエイターって何なのか?」ということを考えた時に、やっぱり全部ゼロに戻せる自分を作れるかどうかというのがあるんです。赤坂BLITZでやったこととか、赤坂サカスを作って色々と楽しかったことというのは、一切忘れないと新しいものを作ることは絶対できないよなと。新しいもの作ると言っているのに、原型はこれじゃないですか? ってバレちゃいけない。でも実は「アートフェア東京」の作り方と、赤坂BLITZ、赤坂サカスの作り方って基本的に僕の中では変わってないわけです。それを人から見ると分からないようにやっている。それはどうするかというと、先ほどはゼロに戻すと言いましたけど、ゼロはちょっとつらいので(笑)、骨組みだけ残すんです。元々男だったのを骨まですることによって女に変えてしまうとか、そんな人がびっくりするぐらいのところまで変えられるかというのがクリエイティブの楽しさだと思うんです。

――新しいものにチャレンジするのは怖い部分もあったのではないでしょうか?

そうですね。でも、どれだけゼロに近づけるか。でも何も無くなってしまうと自分の思考回路も止まっちゃうから、どこまで残すか、ということを考えるのが、モノ作りの基本のような気がして、それは今後も何か新しいものにチャレンジする時が来たら、必ずやらなくちゃいけないかなと思っています。

AFT2019参考出品作品 「ブラー、ブラー、ブラー、」メル・ボックナー

AFT2019参考出品作品 「ブラー、ブラー、ブラー、」メル・ボックナー

――同じ人間がプロデュースをするのであれば、普通はどこか類似点があるはずだけど、そこを人に感じさせないというのは難しいことですよね。

赤坂BLITZと赤坂サカスって今考えると実は似ているんです。BLITZは1996年に作ったんですけれども、僕が出した企画というのは2000人ぐらいのライブハウス。それにオフ・ブロードウェイとブロードウェイ、マジックハウス、あとオペラハウスの5個を赤坂に作りたかったんです。そしたらみんなにライブハウスぐらいにしておけと言われて(笑)それで赤坂にBLITZを作ったんです。その後に1ヶ月ぐらいアメリカの色々なところを旅させてもらって、その時に見たものが原型になって実は「赤坂サカス」ができたんです。オペラハウスはないけど、でかいモールがあったり、結婚式場があったり、ギャラリーがあったり、毎年スケートリンクのある広場があったりという原型は1996年に作っていたんです。だから僕の中では赤坂BLITZと赤坂サカスって兄弟という感じなんです。だからこそ、次にやる時は全然違うフィールドにあえて自分を置いてみたかったんです。

AFT2019参考出品作品 ローマ 紀元前1世紀 青銅

AFT2019参考出品作品 ローマ 紀元前1世紀 青銅


アートが街に加わることによって面白い街が出来上がる。
そして日本の面白さを分かりやすく伝えることが大事

――「アートフェア東京」でアートが街に根付くことによって、街はどのように変わっていくと思われていますか?

ロンドンにニューボンドストリートという通りがあって、そこは元々ギャラリーや画廊がたくさん集まっていた場所が、いつの間にかファッションブランドが集まるブランド街になったけど、2012年ロンドンオリンピック開催の年になると、ギャラリーや画廊が戻ってきて、ブランドとギャラリーの通りになり、より面白い街になった。それがどういう効果を生んだかというと、街全体の売り上げが上がったと言われています。ブランドショップとギャラリーが一緒の通りに並ぶことによって、その街に来る人たちが変わったんです。

――ファッションとアートが共存する街、通りになったことで、面白さが増えて訪れる人たちが変わっていったと。

例えば、僕の友達の中国の富裕層の方々が言うには、「銀座が、なんだか分からないけどガヤガヤしているのではなくて、もうちょっと良い空気感を作って欲しい」と。銀座にはブランド店がたくさんありますが、例えば銀座になぜルイヴィトンが出店するのかというと、ロンドンやパリのように、ギャラリーとブランドショップが一緒にあることが最高の道、街であるからです。

――アートとファッションなどが共存する街の雰囲気が大事なのですね。

そうですね。銀座ってやっぱりすごい場所で、今の形になるまで色々な紆余曲折があったと思うのですけど、先ほどの文化の話ではないですが、歴史の積み重ねがあって、日本を代表する街であり、海外からも期待されている街なんだと思います。そんな街で2020年の東京オリンピックに向けて、実は僕らができることというのはたくさんあるのではないかと思うのです。
僕ら日本人は何をすればいいのかと言うと、アートの魅力を感じさせる街にする。日本には様々な職人たちが磨き上げてきた技術もあるし、そういうものが集まる場所を作ることができれば2020年以降も、もっともっと面白い東京になるんじゃないかなと思っています。

 

AFT2019参考出品作品 大紋手高麗金襴花兎(角倉金襴)

AFT2019参考出品作品 大紋手高麗金襴花兎(角倉金襴)

――その一翼を來住さんが作り上げているわけですね。

そういう面白い街にすることの全部は、僕にはできないとは思うのですが、アートの力でできることはまだまだあると思っています。そして、こういうことを色々なところでお話することで、多くの方を動かしていくことも可能なんだと思います。

――それこそ、先ほど言われていた色々な人たちに伝えていくことが大事になると。

 「アートフェア東京」で言うと、2019年は「アートフェア東京2019」の会場だけではなく、六本木や天王洲、羽田空港など様々なところでアートを展開するで、“3月はアートの月なんだ”というふうに日本に住む方々、特に東京に住む方々が思い、そして海外の人々に伝えていく。例えば僕たちが行っているような「アート好きは3月に東京に来ればいい」というプランニングであったり、例えば「日本の秋の味覚を楽しむなら10月、11月に来ればいい」といった、分かりやすいプランニングを立てて提示することによって、海外の方々がもっと日本に来てくれるようになると思うんです。

――確かに季節ごと、月ごとに魅力があれば、それを目的とした人たちが集まりますね。

あと、夜をどういうふうに面白くするのか、ということも考えています。僕この間までは、アート、建物、ファッション、エンターテインメント、フードというカテゴリーを考えていたので、それに「夜」を入れて6つで考えていたんです。ですが、これが間違っていた。

――夜はカテゴライズにならないと?

そうなんです。例えばアートも、昼のアートと夜のアートがあるんです。あと食事に関しても昼の食べ物と夜の食べ物がある。夜の建物、昼の建物の面白さがある。全部昼と夜を用意することで、実は5つの面白さが10個の面白さになるんだと。それぐらいちゃんとプロデュースすることによって、東京が面白い街になると思っています。だけど、それを実現しようとするとどうしても仲間が必要なわけです。だから話を皆さんと共有していきたいと思っています。

アートフェア東京」は、最近完成したものから、縄文土器など5000年ぐらい前のものまであります。どれが好きでもいいんです。何千点ものアート作品がある中から絶対好きなもの、気になるものが見つかります。そこになかったら「來住さんないですよと」と言ってもらって構わない。

「マンダリンダック by Max Esser」cc‐548(独)マイセン1924-34年

「マンダリンダック by Max Esser」cc‐548(独)マイセン1924-34年

――「アートフェア東京」を通して自分のアートを見つけてほしい。もし見つからなかったら言ってほしいと。

音楽が僕らの生活に溶け込む流れはすでに分かっています。次はアートの流れがちょうど来ていて、どこが始点かはまだまだ僕らには分からないけど、5年ぐらい経った時に、もしかしたら「あそこが起点になったかもしれませんね」って話せるようになりたい。それはもしかしたら、2019年なのかもしれない。それってやっぱり、終わってからじゃないと始まりは分からないんだろうなと思います。ただ間違いなくアートが生活に繋がることは始まっていて、僕らがアートを感じて生活する、“Art Life”は育っている。それは皆さんと一緒だからこそ作り上げることができる。そういったことを感謝しながら、2019年の「アートフェア東京」も作っています。

來住尚彦氏の話はまさに多岐にわたる。なぜ多岐にわたるのか? それはアートというものを通して、街をそして日本を面白くするという想いがあるから。その想いを伝えるために様々なことを考え、誰にでも伝わるように話をするからだ。2019年3月7日(木)~ 3月10日(日) 4日間にわたって開催される「アートフェア東京2019」。來住氏が言う「3月はアートの月」を体感してみてはいかがだろうか。

Vol.3も掲載予定。こうご期待。

イベント情報

『アートフェア東京2019』

開催日程:
2019年3月7日(木)~ 3月10日(日)
※最終入場は各日終了30分前(※3月7日(木)は招待制)
会場:
東京国際フォーラム・ホールE
及びロビーギャラリー(東京都千代田区丸の内3-5-1)
入場料:
前売券/1DAYパスポート 4,000円 (税込)
当日券/1DAYパスポート 5,000円 (税込)
※小学生以下は、大人同伴の場合に限り入場無料

公式ホームページ:https://artfairtokyo.com
 
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