まらしぃだから成しえた10周年を締めくくるベストアルバムに込めた思いとツアーについて深く聞いてみた

インタビュー
音楽
2019.3.2
まらしぃ

まらしぃ

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動画サイトへと、様々なゲーム音楽などのピアノカバー動画をアップしたところから、その才能とスキルが世の中に認められ、あっという間に世間に知れ渡り、数々のCM音楽やゲーム音楽もてがけるようになり、はや10周年をむかえるまらしぃ。アジアツアーと、ファイナルは幕張メッセでのライブも控える彼に、10周年を記念して発売されるベストアルバムと、これからについて聞いてみた。

──4月24日にベストアルバム『marasy collection marasy original songs best & new』をリリースされます。昨年は活動10周年ということで、いろいろと振り返る場面も多かったと思うのですが、今回のベスト盤の企画はどういうところから立ち上がったんですか?

オリジナルアルバムを3枚作っていたので、タイミング的にそろそろというところもあったんですが、やっぱり大きな理由としては、最近僕のことをYouTubeから知ってくださった方々が増えてきたんですよね。海外の方々もいらっしゃいますし、幅広い方々が聴いてくださるようになって。そういう方々に、僕は自分の好きな曲──たとえばアニメ、ゲーム、ボーカロイド、その他いろいろ弾きますけど──をカバーしているだけではなく、オリジナル曲も作っていますよと知っていただきたいなと思ったんですよね。あと、一応引っ張りますけど、まだ10周年イヤー中なんですよ(笑)。

──失礼いたしました……。

今年の8月12日まで10周年イヤーなんです。

──(笑)。大事なことですね。この10年、まらしぃさんとしてはご自身の名前が広まっていくのをどう見ていましたか?

僕は本名で活動しているわけではないので、“まらしぃ”としてやっているときは“まらしぃ”なんですけど、中の人というか、家でゴロゴロしているときはもう本当にしょうもない感じであって(笑)。だから、自分の名前をいろんな人に知ってもらえたり、ピアノを聴いてもらえるようになっているのをちょっと引いた位置で見ていますし、その感覚は10年前から同じですね。もちろん名前を知ってくださることは嬉しいんですけど。

──一歩下がって全体を見ているというか。

そうですね。上から見ている感じでもないし、ちょっと遠目から見ている感じが近いかもしれないです。

自分としてもやってみてのお楽しみなところもあります

まらしぃ

まらしぃ

──ベスト盤の収録曲はまらしぃさんがセレクトされたそうですが、これまでの歴史をまとめるのは大変でしたか?

結構悩みました。入れたい曲を挙げていったらCDに収録できる時間をオーバーしてしまったので、どの曲を断念するかという話をずっとしていたんですよね。やっぱり自分の作った曲ですからどの曲にも愛着はあるんですけど、ベストに入れるということは、みなさんに代表して聴いてもらう曲になるわけですから。選ばれなかった子たちに対して、“ごめんね……”っていう気持ちはやっぱりありますね。

──その中でも、これは絶対に外せない!と思った曲はありますか?

そういう曲たちが主にDISC1に入っているかなと思います。ボーカロイドで作った曲とか、CMで使っていただいた曲とか。あとは、自分の好きなゲームをイメージして作った曲とか、ゲーム内のBGMに使ってもらえるようになった曲とか、結構思い入れのある曲がいっぱい入っているので。​

──アルバム全体の流れを考えつつ録っていったんですか?

流れというよりは、熱を持っていた順に録っていったというか。レコーディングは3回のクールに分けて録るのですが、最初のクールでは絶対に「アマツキツネ」は録ろうとか。そこは曲に優劣をつけているわけではなくて、やっぱり自分のベストですから、やる気に満ち溢れている曲から順に録って、すべて録り終わったらちょっと一歩引いて見て調整しようと思っているんですよ。レコーディングもまだ最後のクールが残っていますから(取材は2月下旬)、そこは自分としてもやってみてのお楽しみなところもあります。​

──そこは、まらしぃさんが大事にしている「まずは自分の好きなことをやりたい」というのが忠実に出てますね。

そうですね(笑)。動画も計画的に撮るタイプではなくて、モチベーションがあるときは結構集中して撮りますし、落ち着きたいときは1ヶ月ぐらい撮らなかったりしますから。レコーディングも自分の気分でやらせてもらえているのはありがたいなとは思いますね。“早く曲順を決めてください”とは言われますけど(笑)。

──確かにそろそろな時期ではありますからね(笑)。作るのが大変だった曲はありますか? 難産というか、なかなか出てこなかった曲というか。

たとえば、このメロディーの処理にちょっと困ったなというときは、普段から何か浮かんだらメモしておく習慣があるので、その中から漁ってドッキングさせたりすることはありますけど、難産だったことはそんなにないですね。でも、出来たときは“めっちゃいいのできたんじゃない!?”って思うんですけど、一晩置いて翌日聴くと、もうちょっと簡単にしようかな……ってちょっと日和るんですよ(笑)。

──(笑)。確かに、この曲どうやって弾いているんだろうって思う曲は多いです。「Love Piano」なんて、指の動きが速すぎて何が起きているんだっていう。

速いですよねえ(笑)。あの曲は、温まっていてノリノリになっているときに出てきたものが気に入ったので、これをちょっと整えてみようというところから始まっていて。元々はYAMAHAさんの企画用に書いたんですけど、「ピアノが好き」というテーマがあったので、楽しい曲にしたいなとは思っていたんです。テンポも少し速めで、聴いていて軽やかな気持ちになるものにしたいなというイメージはあったんですけど……まあ、ちょっと詰め込みすぎたかなって、録るときにちょっと後悔しました(笑)。

──まらしぃさんが最初に作った曲となると、「夢、時々…」になるんですか?

そうです。あの曲はボーカロイドのカバーアルバムを出すときに、自分もボカロ曲を作ってアップするといいんじゃないというところから始まったんですけど。作ってからもう9年ぐらい経ちますけど、最初の頃は結構いろいろあって……(笑)。

──というと?

ピアノの動画を投稿するときって、出来の良し悪しとか、ある程度自分の中で踏ん切りがつくんですけど、(初音)ミクさんの曲といいますか、作曲というのは今までやっていなかったことだったので、動画をあげるときにすごい吐き気に襲われて……(苦笑)。

──(笑)。緊張しすぎて、えずいてたと。

はい(苦笑)。動画を投稿する画面のところまで行って、あとはボタンを押すだけなのに30分ぐらいその状態で固まってましたからね。“これで本当に大丈夫かな……”って。ボカロ曲をあげるときは今でもやっぱり緊張します。

もうちょっと女の子の恋愛っぽい雰囲気にならないでしょうか?

まらしぃ

まらしぃ

──あとは、CM、ドラマ、映画と様々なタイアップ曲を手がけられてきましたが、お話が来たときはいつも密にやり取りをされて作っていくんですか?

そういうときもありますね。たとえば、チームしゃちほこ(現・TEAM SHACHI)さんの「黒ノ夜明ケ」は、メーテレさんが企画した舞台「黒鯱」の主題歌として書いた曲で。最初の打ち合わせで、“こういう世界観で、舞台がこうなっていて、ヴィジュアルはこういうイメージで”ということをものすごく丁寧に説明していただけて、“こういう曲がいいんです”というオーダーをいただいて。そこからスタートしたのがすごく印象的でした。あと、名古屋のテレビ局だったので、僕の家から近いんですよ。学生時代に何回もこの前を通っていたなあ……って。

──まさかこの場所にこういう形で来ることになるとは……という。感慨深いですね。

あと、「わたしのマーガレット」は映像に合わせて曲を作る形だったので、“何秒ぐらいからこういう展開を入れてください”というお話があって。そこはなかなか大変でしたけど、できあがったものに嬉しい反応をいただけたんですよ。ただ、それをいざ収録するときに“もうちょっと女の子の恋愛っぽい雰囲気にならないでしょうか?”というオーダーがあって。

──確かに、この曲かなりロマンティックですよね。

ええ。自分にはあまりない記憶を無理やりほじくり回してやってみました(笑)。

──甘酸っぱい記憶をかき集めたと。「Sogna」「KARIN」「Mille」といった、まらしぃさんが好きなゲームのキャラクターを基に作った曲もありますよね。

曲を作るときって何かに影響をされて作ることがやっぱり多くて。その中でもゲームのキャラクターから作るというのは、結構やりやすかったりするんですよ。というのも、ヴィジュアルもあるし、ある程度の動きや性格もなんとなくわかるし、ゲームの中でこういうふうに出てきたという、もうすでに出来上がっているものがあるわけですから。もちろん自分が好きというのはあるんですけど、決まっているものがあると作りやすいというのはありますね。

──あと、今作は全曲グランドピアノで再録されているそうですが、やっぱりグランドピアノで録ると気分が全然違います?

そうですね。やっぱり嬉しいですよ。なんか、出張のときに取ってもらった宿がいいところだったら、めっちゃやる気出ません?

──はははは(笑)。出ますね。めちゃくちゃ出ます。

そういう感覚に近いのかな。やっぱりピアノを弾くのが好きなので、そういうピアノに触れられるのは嬉しいし、そういうところが演奏にちょっとでも反映されていたらいいなと思いますね。

──それこそモチベーションあがると。

そうですね。今回使わせていただいたピアノは結構繊細というか。僕は突っ込むときはわりと突っ込むので、一生懸命弾いているとすぐにチューニングがずれちゃうんですよ。だから、2曲弾くと調律が狂ってしまうときもあって。僕はあまり気にしていないんですけど、やっぱり商品として世に出るものですから、一番良い状態にしたいということで、急遽調律師の方に入ってもらうこともありましたね。あと、本当はあともう一曲ぐらい録りたいなと思っていたんですけど、調律がおかしいから今日はレコーディング中止とか(笑)。僕、お酒はあまり飲めないんですけど、好きではあるんですよ。でも、飲むと次の日に手がむくむので、ピアノを弾く前とかレコーディング前日は飲まないようにしてるんですけど、その日で終わる予定だったのに、次の日に持ち越しになったから飲めなかった……っていうことはありましたね(笑)。

天井から水滴が落ちて普通にピアノとか照明にかかっちゃってたんですよ

まらしぃ

まらしぃ

──(笑)。ぜひすべて録り終えたあとにゆっくり楽しんでください。あと、今作には新曲も収録されますが、こちらはまだ制作中という感じでしょうか。

曲自体はできあがってます。あとは録るのみという感じなので、楽しみにしていただければと。

──わかりました。そして、3月からは初のアジアツアーが決定しています。

そうですね。アジアツアーと言いつつ、中国に行ってきます。

──香港、広州、上海、北京、深圳の5カ所という。2017年に初の海外公演として台湾でライブをされていましたが、そちらはいかがでしたか? 

日本語も結構通じましたし、来てくださっている人も僕とバックグラウンドが近いというか。アニメやゲームが好きな人とか、あとは日本から来てくださった方もいて、すごく和気藹々として楽しい時間だったんですけど、めっちゃくちゃ雨が降っていて(笑)。湿気もすごかったから、天井から水滴が落ちて普通にピアノとか照明にかかっちゃってたんですよ。鍵盤も濡れちゃってツルツルしちゃって。なかなか経験できないことではあったんですけど、あのピアノは大丈夫だったのかな……って。

──無事なことを祈ってます。まらしぃさんのライブって、いわゆるピアニストの方がされるコンサートとは違っていて、かなり賑やかというか。フランクですよね。演出も毎回凝っていておもしろいなと思うんですが、自分のライブはこういうものにしたいと考えているものはありますか?

おっしゃってもらった通りに、“手は膝の上に置いてお行儀よく”というコンサートは、昔も僕は親に連れて行かれたり、勉強のためにいくつか行かせてもらいましたけど、まあ、楽しかったかというよりは、お勉強になりましたという感じだったんですよね。でも、みなさんは僕のことを動画サイトで知ってくださったわけですから、そのノリというか、あの香りを残したものにしたいなと思っていて。僕としても“とにかく自分の演奏を聴いてほしい!”という感じではなく、ピアノを使って、来てくださったみなさんと楽しむ場所にしたいんですよ。それで手元の映像を映したり、映像でキャラクターが出てきたり、照明に凝ってもらったりして。

──小さいお子さんも楽しめる内容になっていますよね。

それは嬉しいですね。売りにしていこうかな(笑)。

──そこは本当にそうだと思いますよ。たとえば、ピアノプロジェクションを使った演出とか。あれはどういうところから始まったんですか?

あのプログラムを開発された方が動画を投稿されていて、いろいろご縁があってお会いする機会があったんですよね。そのときに、ライブでお借りできないですか?という相談をさせてもらったら、その楽曲用にプログラムを作りましょうというお話になって。そのプログラマーの方も動画サイトで出会った方なので、そういった意味でも自分のバックボーンというか、自分のホームグラウンドで知り合った方ではあるんですよ。

──それこそ空気感を理解してもらえる方という。あと、昨年ライブを拝見させていただいたときに、それこそ今日のお話に出た「Love Piano」で、小さい子がまらしぃさんの演奏にあわせてエアピアノを一生懸命してたんですよ。その光景にめちゃくちゃ感動しちゃって。

親の影響なのか自分でやりたいと言い出したいのかわからないんですけど、小さい子が“動画を見て一生懸命練習してるんです”とか“僕も弾けるようになりたいです”とか言ってくれると、やっぱり嬉しくなりますよね。10年とか、10何年とか経って、その子が活躍できるようになったときに、“昔、聴いていたんです”って言ってもらえるようになったら、もっと幸せだなと思います。それまで僕が頑張っていかなきゃいけないというところはありますけどね。

レーザーをビュンビュン飛ばそうと思ってます

まらしぃ

まらしぃ

──そして、アジアツアーのファイナルを、6月8日(土)に幕張メッセ国際展示場7・8ホールで開催されます。

最初にお話をしたように、ちょっと一歩引いて見ているので、“えっ、まらしぃさん、幕張メッセ……?”って、最初は思いました(笑)。でも、『ニコニコ超会議』も幕張メッセでやられていたり、『JAEPO』(ジャパンアミューズメントエキスポ)のブースで演奏させていただいたこともありましたし、ライブをやってみたいという話は……もう2年前ぐらいになるのかな。初音ミクさんの『マジカルミライ』のときに、別のブースで出演したことがあって、ライブ本編に招待していただいたんですけど、素敵な場所だなと思ったんですよね。演出もすごく凝っていたので、“すごいですね! 僕もこういうのやってみたいです!”って。“透過スクリーンとか使いたい!”って言ってたら、すごく苦笑いされましたけど(笑)。

──(笑)。でも、まらしぃさんのライブもすごく凝っているから、どんなライブになるんだろうっていう期待は高まりますけど。

ピアノのライブではありますけど、レーザーをビュンビュン飛ばそうと思ってます。生ピアノを置かれてライブされている大きなアーティストさんがレーザーを飛ばすことはあるかもしれないですけど、ピアノ一台しかなくてレーザーが飛ぶというのは、あんまりないなと思っていて。僕が言い出しっぺではあるんですけど、どんな感じになるのか若干ワクワクでもあり、どうなるんだろうという気持ちもあり。あとは、kors kさんも出演してくださるんですよ。

──となると、ダンスミュージック仕様な場面も?

そうですね。わかりやすく盛り上がるところもありつつ、ピアノを聴いてもらうところもありつつ、普段の僕のライブみたいに、みなさんと一緒に盛り上がるところもあってという。だから、結構メリハリのついたものというか。自分のやりたいことをやりますというライブが、おかげさまでできるんじゃないかなと思っています。

 

取材・文=山口哲生

ツアー情報

marasy Piano Live Asia Tour 2019 Final
2019/6/8(土)
幕張メッセ国際展示場 7・8ホール
出演:marasy/まらしぃ
 
new スペシャルゲスト:kors k(feat.maras k)
new レーザー演出:MIU
 
OPEN16:00 START17:00
前売¥6,800 / 当日¥7,300 ※全席指定 tax in
3歳以下は入場不可。4歳以上必要。
 
主催:サンライズプロモーション東京
企画/制作:Subcul-rise Record/World apart ltd.
協力:株式会社フジパシフィックミュージック/ローランド株式会社/ヤマハ株式会社
後援:TOKYO MX/東海テレビ放送
お問合せ:サンライズプロモーション 0570-00-3337
 
marasy Piano Live Asia Tour 2019
3/21 (木) 香港 荃湾大会堂 (Tsuen Wan Town Hall)
3/22 (金) 広州 星海音楽庁 (Xinghai Concert Hall)
3/24 (日) 上海 東方芸術中心 音楽庁 (Shanghai Oriental Art Center)
3/26 (火) 北京 北京中山音楽堂 (Beijing Forbidden City Concert Hall)
3/28 (木) 深圳 深セン音楽庁 (Shenzhen Concert Hall)
中国公演お問合せ:MUGENクリエイションズ 06-6133-5637
6/8 (土) 幕張メッセ国際展示場

リリース情報

marasy collection
marasy original songs best & new

ついに、まらしぃ初のオリジナルソングベストアルバム発売。ALLまらしぃSONG、全曲グランドピアノ新REC。DISC1まらしぃオリジナルソングベスト、DISC2自身提供楽曲、新曲他。 ソロピアノ豪華2枚組アルバム。

Jacket illustration: 徳田有希 Art Works: ISAMYU 
CD2枚組 [SCGA-00083/84]
価格 ¥2,593+税
2019.4.24 Release

 

【TRACK LIST】
DISC1

アマツキツネ
Sogna
金剛
空想少女への恋手紙
楓神
PiaNoFace
他、全13曲収録予定

DISC2

Iris (TVドラマ「いつまでも白い羽根」BGM)
Love Piano 「LovePiano presents みんなのピアノ発表会」イメージソング
ひかりのやくそく 劇場アニメ「コラショの海底わくわく大冒険!」主題歌 piano ver.
Messier
Mille
他、全13曲収録予定

*順不同、収録曲は予告なく変更する場合がありますので予めご了承ください。

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