MOROHAの音楽と出会ったタイミングが、その人にとって出会うべきタイミングだと思うーー『MOROHA IV』への想い
MOROHA 撮影=森好弘
MOROHAと出会って2年が経った。2017年、初めてライブを観たあの日からライブに行く度に、ただただ心を掴まれたーー。そして、初めてMOROHAのライブを観たあの瞬間と同じ気持ちにさせてくれる。そんなMOROHAとの出会いは自分にとっても人生の財産だ。人生の岐路に立っていた時に出会ったタイミングも偶然でなく必然だと感じた。今でも、がむしゃらに頑張れば頑張るほど迷って、悩んで、悔しい想いをすることがある。そんな時にMOROHAの音楽を聴くと、より悔しさが込み上げてくる時がある。だけど、それと同時に立ち上がる強さ、優しさを感じさせてくれて「絶対に大丈夫だ」と常に寄り添ってくれる。二つの両極端の想いを感じさせる背景には何があるのか。今回、2年ぶりとなるインタビューではMOROHA2人の関係性、メジャーでの葛藤、『MOROHA IV』への想いを訊いた。
ーー前回のインタビューが今もすごく読まれていて、ちょうど2年前。その間、メジャーデビューがあったりと状況が変化しました。メジャーでやると決めた時、メジャーという世界でどうなるかを想像してたりしたんでしょうか。
アフロ:想像かぁ……、どんな想像してたっけな? あんまり覚えてないな。想像してた?
UK:想像してなかった。それが特別なものとも思ってなかったというのが、個人的にはあって。選択肢の中の一つであって、僕らのやることは変わらなかったので特に特別視はしてなかったです。でもユニバーサルにいく前はプロモーションとかやってこなかった活動だったので、そういう意味では広がりが多くなるのかなと想像はしてましたけど、別に予想通りというか。もちろんユニバーサルというところでやったおかげで広がったものも確実にあるだろうし、それがなければもう全然何もよくないねっていう。
アフロ:思い起こせば曲に対して「ああしろ、こうしろ」をひとつも言われなかったですね。もしかしたらこの歌詞使えないとか言われるんじゃないかなと思った部分はあったので、それがなかったというのは、会社だったり担当の人によると思うんですけど、そういう部分はすごく理解があって、ありがたかったというふうに思いますね。MOROHAの広がりという部分では、めちゃめちゃ頑張ってくれてるんだろうなというのは伝わってはくるんですけど、結果に満足できるかと言ったらそうではなくて。でも、それって単純に俺たちがもっともっとたくさんの人に知ってもらって興味をもってもらえるようになったら、そこのドアも開くと思うんです。そのドアの前に立つことはユニバーサルに入った時にできるけど、開くかどうかは自分たち次第であって。
ーー自分たちがたくさんの人たちに知ってもらって、興味を持ってもらったら、そこのドアも開くと。
アフロ:そうですね。ユニバーサルとの関わりで言うと、俺たちの力って1に満たない、0.いくつなんですよね。まだ俺らに本来のユニバーサルのレーベルパワーが発揮できるくらいのバリューが俺たちにないんですよね。俺たちが1になれば「メジャーレーベルってすごい!こんな仕事を繋いでくれるんだ」とかなると思うんです。でも、まだ0.いくつなんですよね。俺たちが大きくなったら、周りで一生懸命頑張ってる人たちも成果が上げやすくなるんだろうなと思ってます。
MOROHA 撮影=森好弘
ーーお二人の関係性も変わらず?
UK:変わらないですね。お互い同じ活動をやってるから。例えばアフロが成長して考え方が変われば、俺は同じ位置にいるから俺も考え方も変わると思いますね。
ーーそれぞれソロでのお仕事もあると思うのですが、それに対して何か意見を言ったりするんですか。
UK:言わないですね。俺が関わることができないこと、アフロのナレーションもそうですけど、その人の人生だから俺がとやかく言うことじゃないし。それで自分の人間としての器が大きくなったり、小さくなったりするのは自分の判断なので、俺が判断することじゃないと思ってますね。
アフロ:俺は逆で言われたいんですよ。俺はUKに「あれはやめたほうが良い」と言われたら「あ、MOROHAとしての存在の示し方や将来を考えてくれてるんだろうな」と思える。UKからの言葉だからこそ真摯に受け入れられるかなと思ったりします。ただそれを言わないのは彼の人生哲学でもあるので、それこそ俺がとやかく言えることではないとも思っています。それでもMOROHAは2人の看板だと思ってるので、俺はUKに対して意見を言っていくとも思うし、言ってくれて良いのになとも思いますけどね。UKの言ってることもすごくわかるんですけど。だから人は話し合うんでしょうけどね。
MOROHA 撮影=森好弘
ーーアフロさんがそこまで思える相手ってあまりいないと思っていて、私はアフロさんの連載を担当してるんですけど、まだまだ心を開いてもらえてないなと思うことがあって。
アフロ:ほんと? UKくんどう思う?
UK:そうだと思うよ。でもね、誰に対してもそうですよ。昔からそうで、性格的な問題もあるんじゃないかな。
アフロ:確かに「心開いてる風」だと言われた事あるなぁ。でも、そもそも開くってのがよくわからなかったりする。
UK:俺に対するものと、それ以外に対するものは全然違う。ここは下世話な話もできるし、お互いのことを分かってるからこそ何でも話せる。だけど、やっぱり音楽で繋がった人たちというのは大きいんじゃないかな。友達と会ってる時だとそんな空気はないし、音楽で繋がった人と会うと、やっぱり自分も音楽人間だからその意識が出るんじゃないかな。アフロはそういう空気はあるよ。例えばバンド同士だとマウントの取り合いみたいになったりするじゃないですか。対インタビュアーもそうだし、ラジオのパーソナリティーもそう。何も知らない状態から話をすることってなかなか難しかったりするしね。
アフロ:なんでそこでUKは開けるんだろうね。
UK:僕の場合は何も求めてないので。良くも悪くも。友達も音楽で繋がった人たちでも全く同じ感覚で会ってるので。
アフロ:話聞いててわかった。あのね、俺、友達じゃないんだけど、ただの仕事の関係でもない人と話すことが好きなんですよ。担当のユニバーサル矢部さんもそうだし、エリザベス宮地さんもそう。
ーー友達とも違う感覚ということでしょうか。
アフロ:うん。完全に友達って人はもうこれ以上いらないのかもしれない。仕事で一生懸命、自分たちのやってること、相手もやってることが切磋琢磨して、一つの結果に結びついて達成感を共有するということが俺にとって1番すごく大事なこと。そういう関係地を保ちたいから、友達にはなろうとしてないのかもしれないですね。
MOROHA 撮影=森好弘
ーーなるほど。
アフロ:もう友達は素敵な人たちが、すでにたくさんいるからかな。あと、すごく俺、音楽を頑張りたい。音楽、仕事、MOROHA。もっともっとみんなに知ってもらいたのよ。だから、頭がそっちにいってるかも。うまく言えないけど、それだけをやりたい。友達を作る時間がないとかじゃないけど、本当のただの友達というのは居場所としてあるから。両方すごく大事なんだけど、仕事で繋がって切磋琢磨できる関係性の人が増えていくことがすごく楽しい。だから、SUPER BEAVERの渋谷くんもそうだよ。すごく友達に近いけど、どこかで同業者というところもあるし、彼らが必死でやってる活動に対して俺らが必要で特別な存在でありたいし、向こうに対してもそれを求めるし。その緊張感が友達以上に強い絆に感じたりもする。それこそただの友達みたいな関係より、付き合いの長いライターが対談記事を書いてくれる中で俺の意志に応えてくれて(笑)がなくなっていったことの方が「あぁ、良い人生だな」って思うもん。それが俺にとって、時には友情よりも尊かったりする。そういう関係性でいたいと思うと、もしかしたら相手からすると心を開いてもらえてないと思われるのかもしれない。
ーーアルバムのお話も聞きたいのですが、メジャーでリリースするオリジナルアルバム『MOROHA IV』ですが、このアルバムを初めて聴いたとき、自分の中で悔しいなと思ってたことが、より悔しく感じて行き場のない感情がすごく込み上げてきて。だけど、それと同時に絶対に負けないでいよう、優しくいようとも思わせてくれたりして。両極端の感情があったんです。制作をする上で何かコンセプトとかって……あったり……。
アフロ:ないないないない、想像通りないよ。何?どういうアルバムですか?ってこと?
ーーいや、その質問の仕方はしないでいようと思って、心に決めて今日ここにきてます。
アフロ:でも、高野さんが言う「どういうアルバムですか?」はまた違う気がするの。それだから良いのよ。さっきの話に戻るけど、初めてのライターさんに同じ質問をされるのとは違うよ。それが友情を超える何かな気がする。俺が一生懸命作ったものに対して、この人がこういうふうにアルバムを聴いてきてる、どんな意味でその質問をするのか、というのが汲み取れるようになるのが嬉しい。それが俺にとっては友情に近いものでもあるし、そういうことに日々感動してる。
UK:オリジナルアルバムの4枚目で、その曲が溜まっていくごとにアルバムを出しているので、人として少しずつ成長なのかわからないけど、変化していきたいとは思ってます。
アフロ:それこそ両極端というか、矛盾したいと強く思ってるんですよね。こっちの曲ではこんなことを言ってるのに、こっちの曲ではこんなこと言ってるというのをもっともっと作りたい。で、どっちも本心なんですよ。俺たちは政治家じゃなく音楽家だから、矛盾してて良いんですよ。2個真実を持ってるだけだから。その時、感じた真実だけを歌ってたら良いだけの話だと思うんです。曲によって違うこと言ってるとか、大好きになったり大嫌いになったりするわけだから、そういうことがしたいなと思ってるので悔しさを感じてくれたり、優しさを感じてくれるのは恐れず矛盾していけたというか。それは自分の人生にも反映されてるんじゃないかなと思いますね。
MOROHA 撮影=森好弘
ーーその「矛盾」という意味では、アルバムに収録されてる「米」の中では 《拝啓 業界関係者各位 これを聴いているお偉いさんへ 名刺も飯の差し入れもいらねぇ 仕事をよこせ》と歌われていて、先ほどのお話の中で「俺たちの力がまだまだ足りない」とおっしゃっていたことも「矛盾」の一つなのかなと感じました。
アフロ:そうそう、まさにそうだと思う。「なんで、てめえら俺に仕事まわしてくれねえんだよ」って気持ちと、「まだまだ俺らが弱いから悪いんだ」って気持ちがあって。それは今までも同じように、そこを行ったり来たりして、怒ったり謙虚になったりというのを繰り返しているから、どっちも本当の気持ち。
ーー「ストロンガー」から始まって、「上京タワー」、「遠郷タワー」と続きますが、5月という時期って、迷ったり新しい環境で戸惑いが生まれやすくなる時期だからこそ、誰かの心に寄り添う、刺さるような感じがしました。
アフロ:そういう意図してないところかもしれないけど、そう思ってもらえるのは嬉しいですよね。リリースする時期とかは特に考えたとかではなくて、俺たちはアルバムを一過性のものだと思って出してないから。俺たちだったら別に真冬でも夏の曲を出して良いと思うし、周りは止めるだろうけど、それは結構自信の表れでもありますね。ずっと聴いてもらえるものだと思ってるから手にするタイミングはリリースタインミングだけではないしね。それこそ最初に言ってくれた2年前のインタビュー記事が今も読まれ続けてるというのも、その時期だけのものではなくて長く読まれてることも一緒だと思う。アルバムも今までもそうだけど、俺たちのアルバムはロングセールスだと思うから。瞬間的な流行りではないから。旬だから買おうとかではなくて、その人にとってMOROHAの音楽と出会ったタイミングが、その人にとって出会うべきタイミングだと思うから。
ーー初回限定盤にはMOROHAワンマンライブ『単独』@Zepp TokyoのDVDも収録されてます。
アフロ:まさかその日、搬出の写真を撮られるとは思ってなかったね〜。Zepp Tokyoはそれがハイライトじゃないですかね。ライブに関してはもう次に進んでるから特にないんだけど、本当に今では過去の話ですけど、2016年のLIQUIDROOMを売り切った時、「LIQUIDROOM売り切れたじゃん、売れたね!売れちゃって次、どうすんの?」というライターさんがたくさんいて。この人たちは何を言ってるんだろう?って。俺たちのハードルどれだけ低いの?って。これくらいしか売れないだろうと思ってるから、そういうことを言われるわけで。でも、それは全部曲の中で《誰も信じない それも構わない いつか「信じられない!」の声が聞きたい》と返せてるから。もちろん数字の上でもちゃんとアンサーしていかないと言葉の説得力もなくなっちゃうから、そういう意味ではZepp Tokyoは説得力になって良かったなという感じはありますね。
UK:俺もライブに関しては特にないですね。この前、アルバムに収録するから映像確認して、「こんなライブだったんだ〜」って、初めて客観的に観ましたね。こういう節目節目のライブとかって、あまり良いイメージがなくて。ライブでも達成感がなくて、「あ、終わったな〜」くらい。
ーー7月には日比谷公園野外大音楽堂での『単独』、7月からツアー、そして11月にはZepp DiverCityでのファイナルがあります。
アフロ:そうですねー。日比谷公園野外大音楽堂は暑いの嫌だなー……。いつも通りライブをするだけですね。野外とはいえ、今はフェスとか野外でやってるし、昔はフェスがあまりなかったから、野外でやれるという意味ですごく新鮮だったんだろうけど。あとは音作りを考えたりしなきゃなって。全然違うだろうし。それぐらいですかね。11月のZepp DiverCityに関しても、特になくて一生懸命やるだけですね。
MOROHA 撮影=森好弘
取材・文=高野有珠 撮影=森好弘
リリース情報
2019年5月29日(水)発売
初回限定盤(CD+DVD)¥4,800(税抜)UMCK-7010
通常盤(CD)¥2,800(税抜)UMCK-1620
YAVAY YAYVA RECORDS / UNIVERSAL SIGMA
日時:11/8(金)東京 Zepp DiverCity
01.ストロンガー
02.上京タワー
03.遠郷タワー(映画「アイスと雨音」主題歌)
04.米
05.拝啓、MCアフロ様(2017年12月度キャン有線お問合せ月間チャート1位)
06.スタミナ太郎
07.夜に数えて
08.いくつものいつもの(独立行政法人 勤労者退職金共済機構「財形制度認知・理解促進」キャンペーンソング)
09.うぬぼれ(「保育・人材・介護のライク」企業CMイメージソング)
10.五文銭
二文銭
奮い立つCDショップにて
一文銭
俺のがヤバイ
勝ち負けじゃないと思える所まで俺は勝ちにこだわるよ
三文銭
ハダ色の日々
スペシャル
革命
四文銭
tomorrow
バラ色の日々
恩学
ストロンガー
五文銭
ライブ情報
2019年7月13日(土)日比谷公園野外大音楽堂
代金:¥3,500(税込・ドリンク代別・未就学児入場不可)
7/15 (月・祝) 徳島 club GRINDHOUSE
7/17 (水) 松山 Double-u Studio
7/24 (水) 新潟 CLUB RIVERST
7/28 (日) 沼津 LIVE HOUSE Quars
8/3 (土) 心斎橋 BIGCAT
8/4 (日) 名古屋 CLUB QUATTRO
8/10 (土) 仙台 CLUB JUNK BOX
8/11 (日) 八戸 LIVE HOUSE FOR ME
8/12 (月・祝) 盛岡 the five morioka
8/21 (水) 前橋 DYVER
8/24 (土) 松江 AZTiC canova
8/25 (日) 神戸 BLUEPORT
9/1 (日) 松本 ALECX
9/7 (土) 高松 DIME
9/17 (火) 北海道 BESSIE HALL
9/21 (土) 岡山 CRAZYMAMA 2ndRoom
9/22 (日) 広島 LIVE VANQUISH
9/25 (水) 京都 LIVE HOUSE GATTACA
9/28 (土) 熊本 Django
9/29 (日) 福岡 BEAT STATION
10/5 (土) 福島 club SONIC iwaki
10/12 (土) 福島 OUTLINE
10/14 (月・祝) 酒田 *hope
10/19 (土) 大分 club SPOT
10/20 (日) 鹿児島 SR Hall
10/26 (土) 熊谷 HEAVEN'S ROCK KUMAGAYA VJ-1
10/27 (日) 長野 LIVE HOUSE J
10/31 (木) 沖縄 G-shelter
11/8(金)東京 Zepp DiverCity(一般発売の詳細は後報)