osage×なきごと 要注目バンド同士のスプリットツアー・ファイナルにみた両者の在り方

レポート
音楽
2019.7.25
osage / なきごと 撮影=清水舞 / 酒井ダイスケ

osage / なきごと 撮影=清水舞 / 酒井ダイスケ

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osage 「ニュートラル e.p」RELEASE TOUR 2019』&『なきごと「nakigao」Release Tour 2019
2019.7.14  shibuya eggman

音楽レーベル&マネジメント・murffin discsによる新人オーディション『murffin discs audition 2018』でグランプリ&準グランプリを獲得したosageなきごとosageは今年4月に『ニュートラルe.p』を、そしてなきごとも同じく4月に『nakigao』をリリース――とそれぞれ新作を発表した2組がスプリットツアーを開催。そのファイナルとなるツーマンライブがshibuya eggmanで行われた。

なきごと 撮影=酒井ダイスケ

なきごと 撮影=酒井ダイスケ

最初にステージに立ったのは、なきごとなきごとは水上えみり(Vo/Gt)、岡田安未(Gt/Cho)の2人組のバンドだが、ベーシスト、ドラマーをサポートに迎え4ピース編成でライブを行っている。ステージに4人が揃い、ジャーンと音を合わせたのと同時に明転。それぞれが激しく鳴らしまくり、重厚な音の層を生み出すオープニングで観る者の意表を突くと、バラード「癖」からスタートした。次の曲のイントロの最中、「これからどんどん楽しくなってくので楽しみに待っててね」と水上が軽く挨拶。そして「新曲やります」と軽やかに「さよならシャンプー」へ繋げる。そして「合鍵」のあとは「まだ誰も知らない新しい曲をやります。片思いの歌」と「連れ去って、サラブレッド」。またもや新曲である。

なきごと 撮影=酒井ダイスケ

なきごと 撮影=酒井ダイスケ

ここで水上のMC。今回のツアーに対する(ツアータイトル通りの)「長いようで短かった」という実感、そして初の全国流通盤『nakigao』をリリースしたことがいろいろな人と出会うきっかけになった喜びについて語った。曲間のタイミングで「今日から新しい機材入れたんですよ」「リスク高いよね(笑)」と話していたのも印象に残っている。確かにリスクは高いけども、この日のライブをそれだけ楽しみにしていたということなのだろう。

なきごと 撮影=酒井ダイスケ

なきごと 撮影=酒井ダイスケ

「負の感情を抱えてた時に作った曲を」と紹介された「忘却炉」は、音源よりもささくれ立った音をしていた。なきごとの曲は基本的に王道のギターロックサウンドなのだが、人の心を刺すような鋭い言葉や、歪な展開のメロやコードがそこに潜んでいる。例えば「メトロポリタン」は言葉遊びがユニークでポップな曲だが、失恋と報復をテーマにした曲だという。ライブだと、王道を行くサウンドに純粋に熱狂している人と、棘にやられて身動きが取れなくなっている人、両方いるのが興味深い。

なきごと 撮影=酒井ダイスケ

なきごと 撮影=酒井ダイスケ

歪んだギターから始まる「ユーモラル討論会」は本日3つ目の新曲で、この曲を機に、4ピースのグルーヴがさらに大きく波打つようになる。ラスト1曲を控えたところでの「ドリー」は、<これで最後だから>がリフレインするなか、互いが互いを飛び越えようと、4人の音が火花を散らしていた。ライブ序盤を大きく上回るその迫力に、わずか10曲前後のライブ中に、バンドがひとつ化けたことを思い知る。

なきごと 撮影=酒井ダイスケ

なきごと 撮影=酒井ダイスケ

水上がギターをポロポロ爪弾きながら、「最初はosageと比べられるのが嫌だった」「だけどツアーをまわり、一緒にライブをしているうちに、比べるものじゃないのだと気づいた」という趣旨の話をし、「なきごともそうですが、osageもよろしくお願いします。2バンドで一緒に大きくなりたいと思ってます」と観客に挨拶したあと、「Oyasumi Tokyo」で終了。

なきごと 撮影=酒井ダイスケ

なきごと 撮影=酒井ダイスケ

なきごとからのバトンを受け取ったosageは、山口ケンタ(Vo/Ba)、金廣洸輝(Gt/Cho)、松永祐太朗(Gt)、田中優希(Dr)による4ピースバンド。まず山口が「300人のために唄いにきました。東京渋谷、osage。よろしく!」と挨拶し、「セトモノ」からライブをスタートさせた。バンドサウンドが軽やかな滑り出しを見せるなか、山口は「歌ってくれ!」「楽しんでこうぜ!」などフロアに言葉を積極的に投げかけている。タイトルコールや一言の曲紹介を挟むのみ、あとは黙々と曲を演奏するのみ、という職人気質っぽさが感じられたなきごととはまた異なるスタイルだ。

osage 撮影=清水舞

osage 撮影=清水舞

osageの曲を聴き、「ノスタルジック」という印象を抱いていた身としては、山口のそういう振る舞いはやや意外だったが、逆に言うと、それはライブならではの魅力とも言えるだろう。実際この日のライブでは、彼の人間味みたいなものに引っ張られながら観客がどんどんオープンになっていっていた印象。「セトモノ」演奏後には早速、曲が終わり拍手をする観客に山口が「そのまま欲しいな」と伝え、手拍子とともに次の曲に突入する場面が見受けられた。

osage 撮影=清水舞

osage 撮影=清水舞

最初の4曲を終えると、「せっかく時間がいっぱいあるから懐かしい曲もやろうと思います。今日がかけがえのない1日になりますように」という紹介からデモ音源に収録されている「1046」へ。その後アッパーな新曲「Greenback」を披露。さらに「僕がずっと大切にしてきた曲があります、みんなもずっと大切にしてくれたらいいなって思います」と語った「スープ」を、始まりは歌とギターのみ、数フレーズ歌い終えたところでバンドイン、というアレンジで丁寧に届け、もうひとつの新曲「アナログ」を披露した。山口曰く、「アナログ」は「変われない僕と、それでも変わらないでいてくれたあなたの歌」とのこと。

osage 撮影=清水舞

osage 撮影=清水舞

そして「絶対に誰にも負けたくない、この4人で鳴らす音楽を止めたくない」「人との出会いが結構苦手で。この曲自分で書いて救われたなっていう曲を持ってます。だからそんじょそこらのバンドには負けないって言える」と熱い一面を覗かせたMCのあと、「vega」「ウーロンハイと春に」を、いずれもこの日ならではの歌詞替えを行ったうえで演奏した。本編最後の曲となった「ウーロンハイと春に」での、曲が進むにつれてバンドサウンドの熱量が上昇していく光景には感じ入るものがあった。フロアから上がる拳の数はライブ序盤よりも格段に多い。なきごともそうだったが、osageもまた、わずか10曲前後の間での成長が垣間見えるようなライブをしてみせたのだ。

osage 撮影=清水舞

osage 撮影=清水舞

アンコールの声に応えて「移ろう季節に花束を」を演奏する前、全国をともに廻ってきたなきごとのことを「ツアーまわってるうちにここ(心)削って歌ってるんだなって思いました。すげえ曲書くよね」と語っていた山口。なきごとosageも現段階ではパフォーマンスの“型”を確立しているわけではなく、言い換えると、様々な可能性を持った原石のようなものだと思うが、レーベルメイトとツアーをまわる経験は、自分や相手を顧みるという意味で重要だったのではないだろうか。

osage 撮影=清水舞

osage 撮影=清水舞

この日のMCで発表されたように、osageは10月9日に初の全国流通盤『October.』をリリース。なきごとは[NOiD]の所属となり、9月18日にミニアルバム『夜のつくり方』をリリースし、それぞれリリース後には全国ツアーを開催するという。2組がここからどう変化していくのか、次なる展開に注目していたい。


取材・文=蜂須賀ちなみ  撮影=酒井ダイスケ

セットリスト

osage 「ニュートラル e.p」RELEASE TOUR 2019』&『なきごと「nakigao」Release Tour 2019
2019.7.14  shibuya eggman
 
・なきごと
1.癖
2.さよならシャンプー
3.合鍵
4.連れ去って、サラブレッド
5.忘却炉
6.メトロポリタン
7.ユーモラル討論会
8.のらりくらり
9.深夜2時とハイボール
10.ドリー
11.Oyasumi Tokyo
 
・osage
1.セトモノ
2.エンドロール
3.追憶
4.スニーカー
5.1046
6.Greenback(新曲)
7.スープ
8.アナログ(新曲)
9.vega
10.ウーロンハイと春に
[ENCORE]
11.移ろう季節に花束を

なきごと 情報

1st mini Album『夜のつくり方』
2019.09.18 Release
品番:NOID-0032
価格:1,500yen(+tax)
発売元:[NOiD] / murffin discs
販売元:Japan Music System
1. 合鍵
2. メトロポリタン
3. ユーモラル討論会
4. のらりくらり
5. 深夜2時とハイボール
6. ドリー
『なきごと「夜のつくり方」Release Tour 2019 
2019年10月4日(金) 東京 下北沢Daisy Bar
2019年10月14日(月/祝) 新潟GOLDEN PIGS BLACK STAGE
2019年10月21日(月) 福岡Queblick
2019年10月22日(火/祝) 広島Cave-Be
2019年10月31日(木) 宮城 仙台enn 3rd
2019年11月8日(金) 大阪 福島LIVE SQUARE 2nd LINE
2019年11月10日(日) 愛知 名古屋RAD SEVEN
2019年11月24日(日) 東京 新代田FEVER
先行(イープラス)
7月14日(日) 21:00~7月31日(水) 23:00

osage 情報

『October.』(オクトーバー)
2019年10月9日(水)発売
品番:MDLB-0003
価格:1,500円(税別)
発売元:murffin Lab. / murffin discs
販売元:Japan Music System
収録曲 (全6曲)
01.アナログ
02.Greenback (グリーンバック)
03.1954 (イチ・キュー・ゴー・ヨン)
04.ginger air (ジンジャー・エール)
05.セトモノ
06.スープ

osage『October.』Release Tour    
2019年
10月20日(日)下北沢 近松
10月22日(火)広島 CAVE-BE
10月31日(木)仙台 enn 3rd
11月30日(土)心斎橋Anima
12月 1日(日)名古屋ROCk’N’ROLL
2020年
1月 18日(土)shibuya eggman(ワンマン)
全公演:2,500円
一次先行 2019/07/14(日)21:00~2019/07/31(水)23:00
一般発売 2019/08/17(土)~   
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