神奈川フィル創立50周年 県内10カ所の巡回公演と祝賀演奏会『千人の交響曲』を開催~記念事業会見レポート

ニュース
クラシック
2020.1.18
創立50年記念事業について会見した(写真左から)神奈川フィルの上野理事長と黒岩神奈川県知事、神奈川フィル常任指揮の川瀬

創立50年記念事業について会見した(写真左から)神奈川フィルの上野理事長と黒岩神奈川県知事、神奈川フィル常任指揮の川瀬

画像を全て表示(5件)

 

神奈川横浜市に拠点を置く、神奈川フィルハーモニー管弦楽団が2020年1月17日(金)、神奈川県庁新庁舎(横浜市中区)で、同県の黒岩祐治知事と合同記者会見を開いた。会見では今年2020年10月に創立50年を迎える楽団が主催する記念公演についての詳細を公表。2014年から常任指揮を務める川瀬賢太郎は「みなさまに支えられて50周年を迎えられることをうれしく思います。今年は外に目を向けるのではなく、支えてくださったみなさまへの感謝を込めて、神奈川の各地で演奏会を行っていきます。いろいろな方に、神奈川フィルを通じて、音楽がある生活の素晴らしさを感じてもらえたら」と思いを込めていた。

神奈川フィル常任指揮の川瀬

神奈川フィル常任指揮の川瀬

「未来つながる演奏会をしたい」と神奈川県内10カ所をめぐる巡回主催公演『神奈川フィルフューチャー・コンサート』では、地元の人に喜んでもらいたいと開催地に縁があるゲストを招き、また地元に愛される作品を選曲することを重視。初回は「海老名市文化会館 大ホール」で2020年5月9日(土)に行うコンサートで、ゲストにバリトン歌手として活動する川田直輝と、川田が率いる「海老名市民オペラ合唱団」を迎え、会場を1日だけの歌劇場へと変ぼうさせる。

指揮は1996年に神奈川フィルの常任指揮に就任し、2009年から名誉指揮を務めている現田茂夫。ドヴォルザーク「交響曲第9番ホ短調Op.95『新世界より』」などの名曲とともに、同楽団が1970年に「ロリエ管弦楽団」として発足した当時、初回のコンサートで演奏した「ルスランとリュドミラ」(ミハイル・グリンカ作曲)を披露する。

同シリーズの第2回目として、横須賀芸術劇場で2020年6月20日(土)に開くコンサートでは、2018年に川瀬が『第73回文化庁芸術祭賞音楽部門』で新人賞を受賞した際、共演していた横須賀芸術劇場少年少女合唱団との再共演が実現する。2018年10月にはシリアスな「子守歌」(権代敦彦作曲)を披露していたが、今回は遠足の一日を描いた児童合唱組曲の名曲「えんそく」(山本直純作曲)を選曲。川瀬は「素晴らしい表現力がある。再びの共演を幸せに思っています」と笑顔を見せた。ドヴォルザークの序曲「謝肉祭」で始まるこの日は、躍動感あふれるステージで聴衆を引き込んでいく。

巡回公演は、茅ヶ崎市民会館(茅ヶ崎市/2020年8月30日(日))、クアーズテック秦野カルチャーホール(秦野市/2020年9月12日(土))、ミューザ川崎シンフォニーホール(川崎市/2020年12月26日(土))、藤沢市民会館(藤沢市/12月27日(日))、小田原市民会館(小田原市/2021年1月30日(土))、相模女子大学グリーンホール(相模原市/2021年2月6日(土))、鎌倉芸術館(鎌倉市/2021年3月6日(土))、シリウス 芸術文化ホ-ル(大和市/2021年3月27日(土))に続く。

黒岩神奈川県知事

黒岩神奈川県知事

会見で黒岩知事は2011年4月に就任した当時、経営危機に陥っていた楽団の再建のために、コンサートホールのロビーで募金集めをしたことを吐露。「最初は誰も立ち止まってくれなかった。危機意識をあおるため『神奈川フィルがつぶれます!』と声をあげたら、少しずつお客さんが募金をしてくれるようになった」と苦労を告白。自らのことでありながら、最初は無関心だった楽団メンバーが、徐々にロビーに出てきて声かけをしてくれるようになったときは「うれしかった」と振り返った。

「地域に密着した音楽文化の創造」を掲げる活動について楽団理事長の上野孝は「毎回足を運んでくださる方が親しみを感じることができるような作品を取り上げるよう務めてきた」とコメント。黒岩知事も、「『あなたの好きな日本のオーケストラ』部門(音楽専門誌『音楽の友』が実施)で4位になったことがある」と評価。「団員の意識の変化と音楽のレベルは結びついている。演奏会を聴く度にレベルが上がっていると感じるし、地元はもちろん全国から愛される、素晴らしいオーケストラに成長した」と太鼓判を押した。

神奈川フィル理事の上野

神奈川フィル理事の上野

2020年11月21日(土)には、横浜みなとみらい 大ホールで100名を超えるオーケストラと、300名を超える合唱団らと祝賀記念演奏会『千人の交響曲』を開催。川瀬が幼稚園児だった頃、初めて魅了されたマーラー「交響曲第8番変ホ長調『千人の交響曲』」を演奏するといい、川瀬は「人生で一番最初に好きになったのが『第8番』。指揮者になることができたら、いつかやりたいと思っていた。楽団50年の節目に夢が叶ってうれしい」と目を輝かせていた。

取材・文・撮影=Ayano Nishimura 

公演情報

神奈川フィルフューチャー・コンサート 海老名公演
 
日程:2020年5月9日(土)14:00開演
会場:海老名市文化会館大ホール
指揮者:現田茂夫(名誉指揮者)
共演者:砂田愛梨(ソプラノ)川田直輝(バリトン)海老名市民オペラ合唱団(合唱)
 
主な演目:
グリンカ/歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲
ドニゼッティ/歌劇「愛の妙薬」よりBenedette queste carte!
ドニゼッティ/歌劇「愛の妙薬」よりCome paride vezzoso
ヴェルディ/歌劇「ナブッコ」より Va,pensiero
ドヴォルザーク/交響曲第9番ホ短調Op.95「新世界より」
料:全席指定 4,000円 ユース(25歳以下)2,000円
共催:海老名市

神奈川フィルフューチャー・コンサート横須賀公演
 
日程:2020年6月20日(土)14:00開演
会場:横須賀芸術劇場
指揮者:川瀬賢太郎(常任指揮者)
共演者:横須賀芸術劇場少年少女合唱団(児童合唱)
 
主な演目:
ドヴォルザーク/序曲「謝肉祭」
山本直純/児童合唱と管弦楽のための組曲「えんそく」
ブラームス/交響曲第2番ニ長調Op.73
料金:S席4,500円 A席3,500円 B席2,500円 ユース(25歳以下)全席種半額
共催:公益財団法人横須賀芸術文化財団
助成:特別協賛 株式会社横浜銀行
 
【そのほか巡回公演予定】
2020年8月30日(日) 茅ヶ崎市 茅ヶ崎市民文化会館
2020年9月12日(土) 秦野市 クアーズテック秦野カルチャーホール
2020年12月26日(土) 川崎市 ミューザ川崎シンフォニーホール
2020年12月27日(日) 藤沢市 藤沢市民会館
2021年1月30日(土) 小田原市 小田原市民会館
2021年2月6日(土) 相模原市 相模女子大学グリーンホール
2021年3月6日(土) 鎌倉市 鎌倉芸術館
2021年3月27日(土) 大和市 シリウス 芸術文化ホール

創立50 周年記念
祝賀演奏会 「千人の交響曲」
 
日程:2020年11月21日(土)14:00開演
会場:横浜みなとみらいホール
指揮者:川瀬賢太郎(常任指揮者)
共演者:
半田美和子(第1ソプラノ)
原田幸子(第2ソプラノ)
森麻季(第3ソプラノ)
清水華澄(第1アルト)
福原寿美枝(第2アルト)
福井敬(テノール) 妻屋秀和(バス)
バリトン調整中 神奈川フィル合唱団
慶應義塾ワグネルソサエティ男声合唱団(合唱) ほか
 
主な演目:マーラー/交響曲第8番変ホ長調「千人の交響曲」
シェア / 保存先を選択