稲垣吾郎、二階堂ふみを称賛「僕にとってのミューズですね」 映画『ばるぼら』公開記念舞台あいさつで振り返る

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2020.11.21
左から、二階堂ふみ、稲垣吾郎、手塚眞監督

左から、二階堂ふみ、稲垣吾郎、手塚眞監督

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11月21日(土)、映画『ばるぼら』の公開記念舞台あいさつが都内で行われ、キャストの稲垣吾郎、二階堂ふみ、メガホンをとった手塚眞監督が登壇した。

『ばるぼら』は、1970年代に『ビッグコミック』(小学館)に連載されていた手塚治虫の漫画。愛とミステリー、芸術とエロス、スキャンダル、オカルティズムなどを描き、手塚作品の中でも大人向けの問題作とされてきたタイトルだ。手塚治虫生誕90周年を記念し、初めて実写映像化される。劇中では、耽美派の小説家・美倉洋介が自堕落な生活を送る少女・ばるぼらと出会い、彼女をミューズとして新たな作品を生み出しながら、堕ちていく姿を描く。メガホンをとったのは、原作者・手塚治虫の実子でもある手塚眞監督。撮影監督を、『ブエノスアイレス』などのウォン・カーウァイ作品で知られるクリストファー・ドイルが務めている。また、異常性欲に悩まされる小説家・美倉洋介を稲垣吾郎が、美倉のミューズとなるばるぼらを二階堂ふみがそれぞれ演じている。

 


舞台あいさつは、新型コロナウイルス感染拡大予防のため、無観客で行われた。イベントの模様は全国65の映画館にライブ・ビューイングで生中継。メディア・関係者が見守る中、司会の紹介で3名が登壇した。

稲垣:皆さま、こんにちは。稲垣吾郎です。今日はライブ・ビューイングという形で集まっていただいています。全国でこの映画を楽しみにしてくださっていた皆さんに会いに行きたかったのですが、今日はこういった配信という形で皆さんと楽しいひとときが過ごせられればなと思いますので、最後までお付き合いください。

二階堂:皆さま、こんにちは。二階堂ふみです。今日は観にきてくださってありがとうございます。全国の方々にこれが配信されているということで嬉しく思います。短い時間ですがよろしくお願いします。

手塚監督:監督をしました手塚眞です。2年前の11月、この3人で『ばるぼら』の映画の発表をさせていただきました。その時は手塚治虫生誕90周年のパーティーの席上だったんですね。それからだいぶ時間が経ちましたが、こうやって無事に皆様に観ていただける機会に恵まれました。奇跡的な人たちが集まって、つくり出した素晴らしい作品です。この後ゆっくりと楽しんでいただきたいと思います。今日は本当にありがとうございます。

稲垣吾郎

稲垣吾郎

――稲垣さんは今回、二階堂さんとは初共演ですが、共演されていかがでしたか? 撮影現場でのエピソードなどはありますでしょうか。

稲垣:嬉しかったですね。二階堂さんのデビュー作から映画をずっと観させていただいて、すごいなと思っていて、いつかご一緒させていただきたいなとずっと思っていました。この『ばるぼら』という作品の中でこの役を演じるのは難しかったと思うんですけど、二階堂さんが“ばるぼら”としてそのまま存在してくれていたおかげで僕も演じることができました。作品の中では、主人公の美倉洋介にとって、彼の才能がさらに開花していくのは、ばるぼらとの出会い、ばるぼらがミューズだったわけですが。この作品で僕が最後まで役をまっとうすることができたのは二階堂さんのおかげですので、この作品において二階堂さんは僕にとってのミューズですね。

――二階堂さんは稲垣さんとの初共演、いかがでしたか?

二階堂:私もたくさんの(稲垣さんの)作品を観させていただいてましたし、物心ついた時からスターといいいますか、トップで活躍されている方だったので。そういった面も含めて、稲垣さんのもつ聡明さであったり、博学な部分であったりが、このキャラクターにとっても魅力的になるだろうなと現場に入る前からすごく感じておりましたので、現場で学ばせていただいたことが数多くあって貴重な経験をさせていただけて、感謝の気持ちでいっぱいです。

二階堂ふみ

二階堂ふみ

――手塚監督、撮影現場でのお二人の印象はいかがでしたか?

手塚監督:内容的に非常に難しい場面もございましたが、二人ともプロフェッショナルで、全く躊躇なく様々な場面をこなしていただいて、監督としては感謝の気持ちしかありせん。稲垣さんが仰ったように二階堂さんの存在自体がこの映画のミューズとして現場に存在してくれていたなと思います。この二人がいなかったらこの映画はできあがっていなかったかもしれない、まさにこの映画の中心を成す二人でありましたし、現場で監督させていただけるという幸運に恵まれて、今日のような晴れやかな場所で二人と立てるということがとても嬉しいです。本当に二人には感謝しています。ありがとうございました。

――今回の撮影現場は日本・ドイツ・イギリスと海外スタッフも多かったと思いますが、海外の制作スタッフとの共同作業は稲垣さん、いかがでしたか?

稲垣:楽しかったですね、僕も初めての体験だったので。クリストファー・ドイルの映画は僕も大ファンで好きな作品もたくさんありますし、手塚監督の『白痴』も大好きで、20代の頃からずっとご一緒させていただきたいと思っていたのでその夢も叶ったんですけど。夢のような現場でしたね。

手塚監督:今回ドイルさんは英語と中国語を使っていて、他のスタッフとは英語で、自分が中国から一緒に連れてきたスタッフとは中国語。英語、中国語、日本語が飛び交う現場でしたね。

稲垣:ドイルさんは、良いか悪いかがすごくはっきりしているので、カットかかって本番撮り終わった時に、良い時と悪い時が分かりやすいので、彼が喜んでくれると僕らも手応えがありました。本当に嬉しかったです。撮影現場で夢のような時間を過ごすことができて。作品自体もちょっと非現実的なので、本当にあれは現実の出来事だったのかな、と不思議に思えるような(感じでした)。

二階堂:言語は違えど作っているものは一つで、同じ方向を目指して、色々な背景をもった人たちが集結して現場に集まって一つの作品を作っていけるということが本当に素晴らしいなと思いました。芸術のあるべき姿みたいなものを学ばせていただいたなというふうに感じていました。

手塚眞監督 

手塚眞監督 

――手塚監督もビジュアリストとして確固たるビジュアルのイメージを常にお持ちの芸術家だと思いますが、その点ドイルさんとの仕事はいかがでしたか?

手塚監督:非常に楽しかったです。本人はあくまでも監督のイメージを自分は忠実に再現するんだと仰っているんですけど、ドイルさんの感性も捨てがたいんですね。だから時々「ここはドイルさん、演出してみない?」と預けたり、セッション的にやったような場面もあります。映画の中では無理なく調和しているんじゃないかと思います。

稲垣:僕は、それがすごいなと思って。撮影監督とビジュアル監督のそのバランスがね、素晴らしかったですね。

手塚監督:ここに並んでいる3人だけでも相当個性的で強い3人なんですけど、ドイルさんも個性的だし、皆さん強い個性の集まりなんですね。へたすると無茶苦茶な映画になっちゃうんですね。ですが、これが本当に良い形で調和して、見事なバランスになっていました。

稲垣:信頼関係があったからできたんだなと僕も思います。

――美倉というキャラクターと自分と共通すると思うこと、あるいは全然自分とは違うな、などどういう形でアプローチされましたか?

稲垣:原作のイメージだと、精神的にも肉体的にもマッチョな男らしい印象が強かったんですけど、今のこの時代で、この作品でやるとしたら、そこまで男性的な強いものを出しすぎない方が作品全体としてよく見えるのではないかと思いましたね。でも、いいですよね、愛に溺れていく感じというか。そこまで振り切ることってなかなかできないじゃないですか。周りが見えなくなってしまって、二人で愛の逃避行をしたりという……少し憧れたりはしますけれども、実際の僕の方がもっと冷静だと思います。

――ばるぼらという少女は、漫画が発売された当時から「実在しない芸術のミューズなのではないか」と言われていました。二階堂さんがばるぼらを演じる時に気をつけたことは何かありますか?

二階堂:実態のないキャラクターなんだろうな、というのは原作からも脚本を読んでもそういう感じがしたので、あまり自意識を持たないように、「普通」とか、人だったらこうするというのがあまり通用しないキャラクターだなと感じて。あまり毎回現場で考えすぎないようにしなきゃなと思ってやらせていただいたんですが、いつも以上にあまり考えないでやっていました。

――手塚眞監督にお聞きします。父・手塚治虫さんに、この映画をお見せしたら、どんな言葉をかけてくださると思いますでしょうか?

手塚監督:まず父親は昔のヨーロッパの映画が好きだったので、主役の俳優に関しては絶対美しい人でないと、と思っていると思うんですね。完璧にこの二人だったら太鼓判をおす二人でございます。もちろん内容は、もし本人が観たらああだこうだと突っ込んでくるとは思うんですね。でも、今週イタリアのファンタ・フェスティバルという国際映画祭で最優秀作品賞という賞をいただきました。恐らくそのことを僕以上に喜んだのは父親だと思います。自分の原作の作品が世界に認められたというところでは、親子共々嬉しい気持ちでございます。今月は父親の誕生日月なんですけども、記念のときに父親に賞をプレゼントできて良かったと思います。

――ここで、香港で自主隔離中のクリストファー・ドイルからのメッセージ映像をサプライズで紹介。

稲垣:(メッセージを受けて)嬉しいですね。わずかな3週間の出来事だったんですけど、ずっと灯火みたいなものが僕の中に消えないであって。そういう意識があると、またどこかで再会してご一緒できるんじゃないかと思いますね。

二階堂:(ドイルさんは)すごく楽しい方で、いつまでもお元気で作品をつくる大先輩として映画界をこれからも引っ張っていただけたらと思います。

手塚監督:嬉しいです。クリスの愛を感じますね。映画や我々スタッフ、出演者全員に対する強い愛を感じますし、何よりも彼が映画という創作物を愛しているからなんだなと思います。本当にありがとうございます。

――ここで、監督から感謝の思いを込めて、二人の印象を色にした花束を贈呈。

稲垣:嬉しいです。僕は白いお花が好きでよくSNSに写真を投稿させていただくのですが、監督の愛を感じますね。

二階堂:ありがとうございます。現場に入らしていただく前に、稲垣さんがどういう方かあまり知らなかったので、稲垣さんのブログを拝見すると「今週のお花」というものが出ていて、現場に入ってからもお花の話をさせていただいたことを思い出したりしました。すごく素敵なお花でありがとうございました。

――最後に、これから映画をご覧になる中継先の劇場にいる観客にメッセージ。

稲垣:今日は全国の皆さま、劇場にお越しくださりありがとうございました。2年前に撮影して、そこから世界は激変してしまったんですけれど、こうして皆さんのおかげで無事に公開日を迎えることができて本当に嬉しく思っております。この作品は、一つ大きな答えの用意された娯楽作品とはちょっと違うところにある作品なんですけれども、映画のテーマでもある愛や幻想、そして狂気の果てで見えるような美しい景色、美しい芸術を皆さんに堪能いただける作品に仕上がっていると思います。こういった抽象的な作品ですから、観るときの気持ちや環境によって違った受けとめ方や感じ方ができる作品だと思いますので、何度でも観ていただけると嬉しく思います。

二階堂:本日はありがとうございました。稲垣さんも仰っていたように、アート性の高い作品になっていると思うんですけれども、そこからどんどん繋がりができていく作品だと感じています。全国に足を運べなかったのが残念でしたが、公開したタイミングでこうして全国に配信できてとても良かった思います。劇場で堪能していただいて、是非お友達や家族と共有していただけたらなと思います。

手塚監督:今回の作品は、稲垣さん、二階堂さんを始め素晴らしい出演者の皆さまと、力のある個性的なスタッフと集まって作り上げた渾身の作品でございます。映画をつくるのは私たちなんですが、映画を完成させるのは作品をご覧になる皆さんだと思っています。作品をご覧になって皆さん一人一人の『ばるぼら』をつくり上げていただければと思います。そしてお気に召したら知り合いやお友達にも是非推薦してください。これは本当に皆さん方の気持ちや心によって、どのような作品にもなっていくものでございますので、より素晴らしいもの作り上げて育て上げていってただきたいと思います。今日は本当にありがとうございました。

『ばるぼら』は公開中。

作品情報

映画『ばるぼら』
(2019年/100分/カラー)
稲垣吾郎 二階堂ふみ
渋川清彦 石橋静河 美波 大谷亮介 ISSAY  片山萌美 / 渡辺えり
監督・編集:手塚眞
撮影監督:クリストファー・ドイル/蔡高比
原作:手塚治虫 脚本:黒沢久子 プロデュース:古賀俊輔 プロデューサー:アダム・トレル 姫田伸也 
美術統括:磯見俊裕 扮装統括:柘植伊佐夫 
制作プロダクション:ザフール 
配給:イオンエンターテイメント
映倫区分:R15+  
(C)2019『ばるぼら』製作委員会
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