新宿に恐竜たちが出現! ちょっと噛まれてきました 『ディノアライブの恐竜たち展』開幕レポート

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2020.12.16
『AMAZING DINOSAURS ART EXHIBITION ディノアライブの恐竜たち展』

『AMAZING DINOSAURS ART EXHIBITION ディノアライブの恐竜たち展』

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『DINO-A-LIVE(以下、ディノアライブ)』という名前を聞いたことはあるだろうか? それは「Dino alive!(恐竜が生きている!)」と「Dino ”A” Live!(恐竜の凄いライブ!)」、このふたつの意味を組みあわせた造語。恐竜がまるで生きているような世界観を体験できる、リアル恐竜ライブショーだ。動く恐竜たちは、着ぐるみなの? ロボットなの? と気になる方のために最初に言ってしまうと、その中間といったところ。独自開発された恐竜型メカニカルスーツ「DINO TECHNE(ディノテクニ)」にパイロットが乗り込み、彼らの技術とメカ機構を組み合わせることで躍動感ある動きを生み出しているのだ。

12月11日(金)から30日(水)まで開催される『AMAZING DINOSAURS ART EXHIBITION ディノアライブの恐竜たち展』では、ライブショーに登場する18頭の恐竜たちをアートとして展示し、併せてその開発の歴史なども知ることができる。開催に先駆けて実施されたオープニングイベントの様子を織り交ぜながら、その見どころを紹介していこう。

ユタラプトルに襲われるレンジャースタッフ、さらに背後からはティラノサウルスが狙う

ユタラプトルに襲われるレンジャースタッフ、さらに背後からはティラノサウルスが狙う

サイズ感の洗礼を受けて

舞台である新宿住友ビル三角広場へは、都庁前駅から直結でアクセスできる。ガラス張りの広大なアトリウムに足を踏み入れると……。何かがニョッキリ突き出ているのが、遠目にもわかる。

写真右手奥に、何か出ちゃってます

写真右手奥に、何か出ちゃってます

な、なんという大きさ! いきなり迎えてくれるのはブラキオサウルスの実物大バルーン。バルーンと侮るなかれ。全長は約25mあり、恐竜のはちゃめちゃなサイズ感を味わうことができる。

会場エントランス

会場エントランス

実物大のブラキオサウルスが入るなんて、新宿住友ビル三角広場おそるべし……。

会場全景

会場全景

観客が密集することを避けるため、恐竜たちは広い空間に散らして展示してある。大型ビジョンではリアル恐竜ライブショーの様子などが放映され、会場内のどこを向いても恐竜が目に入るような設えだ。

獲物に食らいつくアロサウルス5号(2015年)、4号(2014年)

獲物に食らいつくアロサウルス5号(2015年)、4号(2014年)

モノづくりの会社が魅せる、唯一無二の体験

いよいよオープニングイベントが開始。ディノアライブを開発・主催する株式会社ON-ARTの社長・金丸賀也氏がマイクを取り、開催にあたっての思いを語った。

「うちは8人の小さい会社なんですが……恐竜を作るところから、ショーの台本から音楽まで、あらゆるものを自分たちで作っています。できるだけリアルに、恐竜が生きていたらどんな感じがするんだろう? っていうことを表現したくて。ショー自体も単なるファンタジーではなくて、今も生きているサイとかキリンのように、この恐竜たちを “体験” できるものにしたい。それによって、生き物そのものに興味を持っていただけたらと。」

株式会社ON-ART 代表取締役 金丸賀也氏

株式会社ON-ART 代表取締役 金丸賀也氏

と、そこで金丸氏は足元に用意していたキノコの模型を掲げた。

左上:シロオニタケ(展示パネルより)

左上:シロオニタケ(展示パネルより)

「これはシロオニタケって言います。僕たちはもともと、博物館に展示するリアルな造形物を作って納める会社でした。でも実はキノコを作っていた時に、表皮構造とか、恐竜制作の基本的な技術は生まれていたんです。社内では『キノコが恐竜に化けた』って言っています。」

ゆくゆくは日本のモノづくりの技術を基盤として、シルク・ド・ソレイユのようなショーを創り上げたいと語る金丸氏。「これからどんどん成長して、世界の人に楽しんでいただけるような、恐竜体験ライブショーを展開していきたいと思っています」と締めくくった。

トリケラトプスへの想い

左:金丸氏、右:恐竜くん

左:金丸氏、右:恐竜くん

続いて、ディノアライブの学術アドバイザーである、サイエンスコミュニケーター・恐竜くんが登場。恐竜くんとディノアライブの恐竜たちは、これまで何度もショーの舞台で共演している。彼らを改めてアートとして見つめると、専門家目線でもワクワクすると熱く語った。中でも、特に思い入れがあるのは背後にセッティングされたトリケラトプスのよう。

トリケラトプスの話になると笑顔が止まらないふたり

トリケラトプスの話になると笑顔が止まらないふたり

「トリケラトプス自体はすごくメジャーな恐竜なんですが、それでも分かってなかったことってたくさんあって。最近、これまでで一番完全な、鱗の跡・皮膚の跡を残した化石が見つかったんですね。その情報をここに取り入れてもらいました。おそらく皆さんが一番気になるのは、背中のヤマアラシみたいなトゲトゲだと思うんですが。これも決して、造形的にちょっと遊んでみました〜というわけではなくて(笑)。本当にこういう化石が見つかったんです!」

トリケラトプス(2017年)、幼体のトリケラトプス(2019年)

トリケラトプス(2017年)、幼体のトリケラトプス(2019年)

その後、初めてのテスト歩行のことを振り返った恐竜くん。このトリケラトプスが巨大な頭を振りながら向かってきた瞬間には、感動や驚きを超えて、声を上げて笑い出してしまったという。

「骨格とかを見て、理屈では理解していたつもりなんですけど……なんてデタラメな生き物だろうって(笑)。これがまさにディノアライブの醍醐味だなって思ったんです。恐竜が本当に意志を持って歩いてきたらどうなるんだろう? っていう肌感覚ですね。僕はティラノサウルスの進化ぶりも凄まじいと思っていたんですが、実際に動いてるトリケラトプスを見て、すごく腑に落ちた。あぁ、これ(トリケラトプス)を仕留めなきゃならなかったからかって。理屈とか物証で考える科学と、人間の感覚・感性で作るモノづくりがクロスオーバーしたとき、単純な研究や単純な造形では得られない“納得”に近い感動が生まれると思うんです。」

会場に鳴り響くサイレン

と、ここで突然レンジャーと呼ばれるスタッフが駆け込んでくる。彼らは恐竜たちの牽制や、観客の保護を担当する頼もしい存在だ。続いて、羽毛に覆われた肉食恐竜ユタラプトルが実際に動いて、トーク中のふたりに向かって突っ込んで来た!

避難誘導するレンジャー

避難誘導するレンジャー

照明やBGMもショー仕様に変化していく。恐竜の鳴き声や息づかいは種族ごとに数十通りずつ作成されており、それらをリアルタイムで恐竜の動きにシンクロさせているという。重厚な足音とともに現れたのは、ティラノサウルスだ。並み居る取材陣(食べ物?)をひとしきり品定めするように眺め回してから動きを止め、はいこの顔!

ティラノサウルス4号(2017年)

ティラノサウルス4号(2017年)

うわぁもう完全にロックオンされている。この角度でティラノサウルスと目が合って生還した動物は少ないんじゃないだろうか。この1秒後、襲い掛かられて悲鳴をあげてしまい、シャッターを切り損ねた。

WHAT’S 行動展示?

本展中では、およそ1時間に一度のペースでこのように実際に恐竜が動き回る「行動展示」が実施される。展示されている恐竜たちも十分イキイキしているが、やっぱりこれは“メカニカル恐竜スーツ”である以上、どんな風に動くのかが気になるところ。行動展示の際には近くへ行ってよく観察してみてほしい。頭上をかすめていく尾っぽの裏まで精巧で、どの角度から見ても興奮を覚えることに驚くはずだ。

恐竜くんがティラノサウルスに襲われる凄惨な一コマ。レンジャーの救助により奇跡的に大事には至らなかった

恐竜くんがティラノサウルスに襲われる凄惨な一コマ。レンジャーの救助により奇跡的に大事には至らなかった

ブラキオサウルスの足元で行動展示を「出待ち」するカメラマン(死ぬ気か!)。 自然界ではありえない光景を思わずパシャリ

ブラキオサウルスの足元で行動展示を「出待ち」するカメラマン(死ぬ気か!)。 自然界ではありえない光景を思わずパシャリ

そして注目すべきはパイロットの技術だ。ディノアライブでは恐竜スーツで動くことを「操縦」ではなく「操演」と呼ぶのだそう。彼らは恐竜の骨格を頭に入れ、大型の鳥類の仕草を研究した上で恐竜を演じる。その動きにはしっかりと血が通っており、時に愛嬌も感じられる。恐竜も動物なのだ、という当たり前のことを思い出した。

すっかり仲直りした様子にほっこり

すっかり仲直りした様子にほっこり

眼の表情も操演の一部なのだろうか。恐竜くんが撫でると、ティラノサウルスは気持ち良さそうにまぶたを閉じるのだった。

初号機からの進化

会場内に置かれた18頭の恐竜たちは、入場口から出口に向かって制作年代順に配置されている。アロサウルス1号(2006年)とアロサウルス3号(2014年)を比べると、格段に存在感がアップしているのを見て取ることができるだろう。

手前から:アロサウルス1号、2号、3号

手前から:アロサウルス1号、2号、3号

恐竜も人も、年齢が出るポイントは首なのだろうか……。よく見ると1号と2号の段階では自力で前傾の姿勢を保てず、松葉杖のような支えが用意されている。旧来のいわゆる“ゴジラ型”(尻尾を引きずりながら歩く恐竜)から離れ、尾をピンと上げてバランスをとるためには、素材の軽量化など多くの課題を乗り越える必要があったのだ。

展示パネルより

展示パネルより

山あり谷ありのディノテクニ史には、開発者の情熱を感じて少し胸が熱くなった。

ユタラプトル1号、2号、3号(2018年)

ユタラプトル1号、2号、3号(2018年)

羽毛に覆われたユタラプトルは、現在も生きている大型の鳥類(ヒクイドリ、エミュー、ツメバケイ等)がビジュアルの参考となっているそう。前肢の羽や卵を守る仕草は、彼らが鳥類の祖先だということを強く意識させる。

スコミムス(2019年)

スコミムス(2019年)

最新作であるスコミムスは、全長およそ9m! リアルさだけでなく、大きさも進化し続けていることがわかる。

この展示、可食部たっぷり

実際に恐竜の姿を見た人間は誰もいないのだから、リアルだという感想はおかしいかもしれない。けれどここには、だいたいこんな感じでしょ、といった妥協は無い。興奮を煽るためのファンタジーも無い。これを生み出した人たちは、本当に本当に恐竜が好きなんだなと思った。彼らが極力自分たちでショーを制作するのも頷ける。恐竜を単なるエンタメの道具として消費することを良しとしないのだろう。

会場風景

会場風景

恐竜というと、博物館で出会う化石や骨、もしくはイラストで見かける平面のイメージしか持っていなかった。でも『ディノアライブの恐竜たち展』で出会う恐竜には、圧倒的な“お肉”を感じるのが印象的だった。触れ合うことで、知識や好奇心にも豊かに肉付けがされることだろう。本展は見どころも多く、恐竜について学ぶこともでき、大人も子供も楽しめる。『ディノアライブの恐竜たち展』は新宿住友ビル三角広場にて、12月30日(水)まで。恐竜好きの方もそうでなくても、お見逃しなく。


文・写真=小杉美香

展覧会情報

『AMAZING DINOSAURS ART EXHIBITION ディノアライブの恐竜たち展』
会場:新宿住友ビル三角広場(東京都新宿区西新宿2丁目6−1)
アクセス:東京メトロ 丸の内線「西新宿」駅徒歩4分、都営大江戸線「都庁前」駅直結、「新宿」駅 徒歩8分
会期:2020年12月11日(金)~30日(水)(20日間)
【平日】12:00~20:30(最終入場 20:00)
【土日・12月28日、29日】10:00~20:30(最終入場 20:00)
【12月30日】10:00~15:00(最終入場 14:30)
問い合わせ先:info.dinoten@on-art.jp
:11月10日(火)12:00発売
【WEB】大人1800円 / 子ども1200円
【窓口】大人2000円 / 子ども1400円 ※会期中のみ
料金は税込みとなります。
※入場時間指定券となります。
※大人は中学生以上、子どもは小学生以下となります。
※3歳未満は無料でご入場いただけます。
※団体割引、高齢者割引、障碍者割引はございません。
※混雑状況により、をお持ちでも入場をお待ちいただく場合がございます。
※当日券は、前売り券が完売している場合には販売はございません。事前に販売サイトにてご確認くださいませ。                  
公式サイト:http://dinoten.jp/
主催:株式会社ON-ART
特別協賛:株式会社セガトイズ
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