SUPER BEAVER、アルバム『アイラヴユー』に込められた想いーー有言実行して姿勢でも語れるバンドであり続けたい
SUPER BEAVER 撮影=森好弘
SUPER BEAVERが、2018年の6月にリリースされたアルバム『歓声前夜』から2年7ヶ月ぶりのニューアルバム『アイラヴユー』を2月3日(水)にリリースする。そこで、2月1日のFM802『UPBEAT!』(月〜木11:00〜14:00 DJ加藤真樹子)では、そのアルバムリリースを記念した特別企画として「SUPER BEAVERのラジオ講座」を開講。1限目は柳沢亮太による「SUPER BEAVERの楽曲『アイラヴユー』深掘り講座」、2限目には「渋谷龍太先生のアイラヴユー講座」が行われた。今回SPICEでは、前回に引き続き『UPBEAT!』とのコラボ企画として、番組収録の直後にSUPER BEAVERへの取材を敢行。DJ加藤真樹子とともに「SUPER BEAVERのラジオ講座」のアフタートークから、『アイラヴユー』の作品に対する想いまでたっぷりと語ってくれた模様をお届けする。
SUPER BEAVER
ーー「SUPER BEAVERのラジオ講座」ありがとうございました。授業はどうでした?
上杉:やっぱ渋谷先生上手でしたよね。
ーー先生としての評価の話になってる!(笑)
上杉:そこのスキルにグッときましたね。
全員:ハハハ!(笑)
上杉:で、柳沢先生は1限目だったのでちょっとかわいそうだなと思いつつ、でも両先生とても良いこと言ってましたよね。結構「アイラヴユー」の深いところまで、知れた良い授業でした。
ーー上杉さんが一番冷静で先生っぽい感じ!(笑) 藤原さんどうでした?
藤原:柳沢にはもうちょっと頑張ってほしかった。
渋谷:呼び捨て?!(笑)
上杉:やっぱ藤原くんはグレてるから!
藤原:違うわ違うわ(笑)。立ち位置が難しいですね。
●誰かの前で歌が歌えるということの大切さ、生きがいみたいなものを再認識しました●
SUPER BEAVER
ーーそうですね!(笑)リモートでやってくださってありがとうございました! ここからはバンドのお話、アルバム『アイラヴユー』についてもお聞きしたいのですが、SUPER BEAVERとして2020年のトピックをあげるとするならば?
柳沢:そもそも結成15周年でしたね。あとはメジャー再契約を発表しようと決めていたのも2020年の最初の頃だったし、自分たちにとって2020年の上半期はバンドとしても大きなトピックが多い時期でした。
ーー東京・日比谷野外大音楽堂で開催された『SUPER BEAVER 15th Anniversary 都会のラクダSP〜ラクダビルディング&ビルディング〜』でお客さんの前にいる4人が、今まで見たことないぐらい嬉しそうな良い表情をしていて。大事なシーンだったかなと思います。
渋谷:バンドの歴史から考えても、8ヶ月間、ライブがないのも初めてで……。2020年はオンステージできることの有難さ、誰かの前で歌が歌えるということの大切さ、生きがいみたいなものを再認識しましたし、自分たちの根幹にそれがあるんだということに気付けました。そういう感情って、おそらく長年活動すればするほど、感じにくくなる部分だと思うので、15周年という節目でもう一度再認識できたのは、今後の財産になる大事なことだと思います。
SUPER BEAVER
ーーそんな中、ニューアルバム『アイラヴユー』がリリースになります。出来上がった時の率直な感想を教えてください。
柳沢:メンバーといろんな会話を重ねながら、良いものができそうだなと思いながら作っていて。実際マスタリングが終わって、みんなで出来立てホヤホヤのアルバムを1曲目から11曲目まで聴いた時に、「すごい良いアルバムだな」というのを実感しました。自分たちでもグッときましたね。
上杉:「音楽」と「バンド」の可能性を、自分自身が改めて感じることができるようなアルバムになったと思います。こういう時だからこそ、「音楽」と「バンド」が希望であり、光であってほしいという認識が自分のなかにあって。それを追いかけて、ずっと音楽やってる気もするし、本望だなとも思う。いろいろあった2020年を経て、こういう最高傑作と言えるものが作れたという実感と、このタイミングで作品を世の中にリリースできたことを嬉しく思います。
藤原:久々のアルバムで、当たり前に良いものを作りたいと思っていたので、出来上がった時は、単純に嬉しかったし、これは本当に良いアルバムになったなと思っています。
渋谷:作ってる最中から、初めて聴き手の自分がいる感覚になりました。基本的に自分たちの作品は、出来上がったものに対して、あまり客観視ができなかったりするんですが、今作は「このアルバムめっちゃ良い」と客観的に思えていました。なので作った側の人間として、このアルバムをオススメしたい気持ちと、リスナーとしての自分が純粋に「これ良い盤だよ」と、人に勧めたいものができた感覚があるんです。これが何によってもたらされる感情なのかは正直わからないですけど、今まで作品を制作する過程でこういう気持ちはなかったので、できあがったものを早く聴きたいという感覚は不思議でしたし、できあがった充足感がすごく強かったです。
●感情に影響するいろんな音色は聴きどころのひとつで、今作のポイント●
柳沢亮太(Gt)
ーー1曲1曲がシングル曲も含めて強い意味を持ってここにあって、全曲それぞれが影響しあって高め合っていくような感じがしました。最初の<ああ、もう、何してるんだろ>という言葉からアルバムが始まるじゃないですか。これを1曲目にした理由は?
柳沢:これはぶーやん(渋谷)が1曲目にしたいと最初に言ってて。
渋谷:そう、この曲はSUPER BEAVERには珍しく、前にも進んでないし、後ろにもいってない曲。あとこの曲はめちゃくちゃ短くて、人間臭さみたいなものをすごく感じられて、この曲から始まると後の曲が全部いけるんじゃないかなと思ったんです。
ーー2020年はみんな頑張ったし、ネガティブなことだって考えた年。全然進んでないという錯覚に陥った人もたくさんいたと思うんですよね。だけどネガティブな感情はやっぱりパワーにもなったりすると思うんです。
渋谷:そうですね。ネガティブな感情自体を変えなきゃいけないという考えってあると思うんですけど、僕はわりとネガティブはネガティブのままで良いと思ってます。パワーとして共存させることができる力だと思っているので、捨てたり変えたりしなくて良いのかなと。そういう気持ちを込めた「今夜だけ」という曲でアルバムがはじまることによって、それぞれ曲が持ってるパワーがもっと上がった感じがしました。
ーーアルバムの愛すべき曲たちの中で、個人的に演奏していて、歌っていて、ここはグッとくるなという聴きどころはどこでしょうか。
柳沢:結構いろんなところにポイントはあるとは思うので、その中でも1曲というのは難しいですけど、今作は音色も拘ったので、歌だけじゃなく楽器が感情を揺さぶってくれる瞬間が結構あるなと思っています。それは必ずしも綺麗なだけじゃなくて、例えば「さよなら絶望」という曲はかなりライブ感があって、グッとくる瞬間が何度もありました。なので、感情に影響するいろんな音色は聴きどころのひとつで、今作のポイントかなと思いますね。
●いつも以上にバンドの設計図のイメージをすり合わせました●
上杉研太 (Ba)
ーーリズムというところでは、どうでしょうか?
藤原:歌をよりよく届けるための音色作りやアレンジみたいなものは4人でとことん話し合いました。いつも話し合うんですけど、今回はライブもなかったので、今まで以上に細かい打ち合わせもたくさんやりましたし、個人的に曲と向き合う時間もありましたね。
上杉:時間があっても会えない1年間でしたし、バンドで音を合わせることもできなかったので、会話もいっぱいした気がします。あと、自宅でいろいろデータでやりとりできるようにしたりとか、いつも以上にバンドの設計図のイメージをすり合わせました。ベースに関してはベースダビングというのをやったりとか、普通に1本しかベースが鳴ってないのが当たり前だとしたら、それにエフェクティブなベースも一緒に打ち込んで、ギターがやるようなことをベースでやったり。そういうディスカッションも事前にしていたので、現場でもいろいろ試せましたし、ベースに関してはいつも以上に面白いことができたのかなと思います。
藤原”32才”広明(Dr)
ーーなるほど。そういうのが柳沢さんがおっしゃっていた「感情に影響する音色」にも繋がっていくのかなと思います。渋谷さんには先日802の『UPBEAT!』で「渋谷龍太先生のアイラヴユー講座」を行なっていただきましたが、実際「アイラヴユー」を歌ってみた時の時の印象はいかがでしたか。
渋谷:「アイラヴユー」はすべてを内包している言葉だと思うので、この楽曲で言ってるのは「頑張れ」「ありがとう」「よろしく」だと思うし、「愛してる」だとも思う。そういう気持ちは自分たちの歩みの中で、すごくたくさんの方たちから感じてきたことでもありましたし、これを伝えたい人がたくさんいることに対する喜びもすごく感じていました。タイトルも『アイラヴユー』だし、ここまでアルバムタイトルが全曲に影響してるというのは過去一番なんじゃないのかなと思っています。なので負い目なく堂々と自信満々に歌えました。
ーー確かに今回のアルバムはどこかですべての曲がスピリットとして繋がっている感じがします。
渋谷:個別で聴いた時にはわからない、アルバムだからこその繋がりというのを、曲順にしてもそうだし、「アイラヴユー」という言葉に関してもそうだし、自分たちだから作れた作品だと思いましたね。
●ずっと大事にしてきた気持ちを、アルバムの締めとして入れた●
渋谷龍太(Vo)
ーーちなみにアルバムの最後のピースはどの曲だったんですか?
柳沢:「さよなら絶望」ですね。結構、ギリギリまでどの曲をどうしようというのは話していて。いろんな楽曲はあったのですが、「さよなら絶望」は曲が短いというのもありますけど、一番バンド然としてるというか。すごくSUPER BEAVERらしくもあり、それ以上にロックバンド的と言うか。そういった楽曲ができあがったというのは不思議でもあり、ちょっと必然的な気もしました。最後にすごくいい曲ができて良かったなと思える1曲ですね。
ーー歌詞の中に<口にして本当にしよう>とあるじゃないですか。言葉にしていたら意識も変わるし、言霊ってあると思うんですよ。2021年、まだこれからどうなっていくのか不透明ですし、単純に、こういうことがなくても将来不安な人はいると思うんです。SUPER BEAVERは、口にしていたら本当になったということがたくさんありそうだし、説得力があると思うんです。
柳沢:「さよなら絶望」に限らず「パラドックス」でも、「本当」という言葉がたくさん使われていて、SUPER BEAVERはそういうことをずっと歌ってきたバンドだと思います。事実、自分たちもライブだったら「あそこの会場でやってみたい」、「こういうことやっていこう」と口にしてきたバンドだと思うんです。なので今作では、「とは言え、口にするのは難しい時だってあるよね」という側面もしっかり歌ってこれたバンドだからこそ、全部を踏まえて、「口にして本当にしよう」という希望みたいなものを、SUPER BEAVERとして、ずっと大事にしてきた気持ちを、アルバムの締めとして入れたのは、良いなと思ってます。
SUPER BEAVER
ーー「時代」を聴いた時にSUPER BEAVERにとって自慢でいられるファンでいたいなと素直に思いました。<未来は選べるよ>という言葉も、すごく希望になる言葉だなと思いました。
渋谷:今、言っていただいた言葉がとても響くなと思って。そういうふうに思ってくださる方がいてくださるのであれば、自分たちもファンの方にとって自慢でいたいと思うんですよね。自分たちが歌ってる歌というのは、通り過ぎてきたものばっかりじゃなく、未来の展望や、自分たちの願望もそこにはちゃんと入ってると思っていて。なので、こういうことを口にしたからには、ちゃんとやりたいし、しっかり考えるバンドでありたいですね。有言実行して姿勢でも語れるバンドであり続けるべきかなと思ってます。この責任感みたいなものを4人で気持ちよく感じながら、楽しいなと思いながら、これからも活動していきたいですね。
取材=加藤真樹子 文=高野有珠 撮影=森好弘
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