入野自由にインタビュー「ETERNAL CHIKAMATSU」
入野自由 ETERNAL CHIKAMATSU
「何としてでもルヴォーさんのオーディションを受けたい、受けたなら絶対役を手にしたい」
デヴィッド・ルヴォー演出×深津絵里、中村七之助出演! 2016年の日本に近松がよみがえる!遊女・小春と、治兵衛、その妻・おさんの三角関係を見事に描いた近松門左衛門の代表作「心中天網島」をベースに“究極の愛”を描く舞台『ETERNAL CHIKAMATSU -近松門左衛門「心中天網島」より-』が2016年2月29日から梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて、3月10日(木)からBunkamura シアターコクーンにて上演される。
本作の演出を務めるのは、『日陰者に照る月』でウエストエンド演劇賞を受賞、その後、様々な作品でトニー賞を受賞・ノミネートされ、世界の演劇界に衝撃を与え続けている演出家・デヴィッド・ルヴォー。彼のオリジナルアイデアに基づき、作家・谷 賢一が書き下ろす最新戯曲となる。
主演を務めるのは、女優・深津絵里とこれからの歌舞伎界を担う中村七之助。このほかTEAN NACSの音尾琢真はじめそうそうたる顔ぶれが共演する。出演者の一人に、俳優・声優として活躍する入野自由(いりの・みゆ)の姿がある。年の瀬の声が聞こえる中、彼に本作について話を伺ってきた。
――本作の出演が決まるまでに、どんないきさつがあったのでしょうか?
入野自由 ETERNAL CHIKAMATSU
入野:去年日生劇場でやったルヴォーさんの公開ワークショップを受けたんです。そのとき、すごい短い時間でしたが、いろいろ感じるものや収穫があって、またいつか、ルヴォーさんのワークショップを、いちばんの願いはルヴォーさんの演出を受けてみたい、という思いがありました。ただそこからこんなに早いタイミングでオーディションがあるとは思っていませんでした。なんとしてでもオーディションを受けたいし、受けたなら絶対役を手にしたい、そして作品に参加したいと思っていました。
――ルヴォーさん、日本の演出家の方々とはまた違う角度の演出をされそうですね。
入野:そうですよね。ルヴォーさんは、僕たちより日本のことを大切に、より深いところまで見ている気がします。作品に対する知識もはるかにあると思いますし、海外から見た日本のエッセンスも少なからず入ってくると思います。
――さて、オーディションに合格した後、出演者の顔ぶれを見てどう思いましたか?
入野:驚きました。本番はもちろん楽しみなんですが、その前に稽古場がどんなことになるのか、どんなやりとりが繰り広げられるのか、それがいちばん楽しみなんです。
共演する矢崎(広)さんと、中島(歩)さんと僕は、ほぼ同学年なんです。矢崎さんとは高校のころに共演したことがあり、そこからしばらく間があいて、日生のワークショップをやり、「タイタニック」でご一緒して…。知っている顔がいると安心しますね。
――そもそもこれまで近松作品と接点はありましたか?
入野:学校の教科書で「近松門左衛門の作品」とか「心中もの」というキーワードに触れてはきたのですが、それを読むほどのことはなくて。今回出演が決まったあとで、作品のあらすじを読んでみたりしましたが、実際の本は注釈が多く、読むのが大変!時間ばかりが過ぎていきます(笑)
――本作のキーワードの一つに「15分で恋に落ちる」つまり、「一目惚れ」ということがあるのですが…突然ですが、入野さんは一目惚れする派ですか!?
入野自由 ETERNAL CHIKAMATSU
入野:一目惚れですか!?(笑)この作品のように15分で恋に落ちるということはありませんが、舞台作品でいうと開演してからの15分ってすごく大事な時間じゃないですか。15分で心を掴まれたりしますね。
――入野さんは俳優とともに声の仕事でも大活躍されていらっしゃいます。今後どちらにより力を…ということなど考えたりしますか?
入野:あまりどちらに軸足を、とは考えたことがないんです。声の仕事は自分が20数年確立してきたことであり、やりたいことをその場で自由に表現できるように…限りなくその状態に近いことができるようになってきたと思いますが、舞台だとまだまだそこの域にたどりつけていなくて。今、舞台でいろいろな人や演出家と出会うことで、俳優としても声優としてもより深まりスキルアップしていけるんじゃないかと思っています。
――活躍する場が増えるとファンの方も喜ばれるんじゃないですか?
入野:アニメが好きな方々は、舞台など観たことがないという人も多いと思います。僕自身は小さい頃から舞台を見る機会が多かったのですが、実際僕の同級生たちは「今回初めて舞台を見るよ」とか「まだ2,3回しか観たことがない」という人も多いので、そういう人たちにこういう作品を観ていただけるような「架け橋」になれればと思います。
――キャリアもかなり長い入野さんですが、自分の人生の中でのターニングポイントはいつ、どんなときでしたか?
入野自由 ETERNAL CHIKAMATSU
入野:4歳から劇団に入って。初めは習い事のひとつでした。それから声の仕事をするようになって。これを仕事にしていくんだ、と思ったのは大学卒業をする頃でした。それまでは”仕事”と強く意識していませんでした。「日常の中の一つ」だったんです。就職活動とかみんなが考えていく頃に「はっ!」として、自分はこれからどうするんだろうって。それを期に考え、改めて芝居が好きだと実感し、役者を続けることを決めました。大学卒業こそがターニングポイントだったように思いますね。
――そろそろ30歳の声が聞こえる年齢になってきましたね。何か心境に変化はありますか?
入野:25歳を過ぎた頃から徐々にと30代が迫っていることを感じて、少し焦っていたんですが、昨年の夏、一か月くらいお休みをいただいて、NYやロンドンで演劇を観たり、歌や演技のレッスンを受けてきました。そこでいろいろ新しい出会いをしつつ、いろいろなものを観て、感じていたら、その焦りがいつしかなくなっていたんです。焦らなくて大丈夫、今あるものをじっくり一つでも何かつかんで先に進めば理想とする役者像みたいなものに近づけるんじゃないかと思い始めました。
憧れの役者さんといえば、子役のころに市村正親さんと共演させていただいたことがあり、しばらく間があいて再び「屋根の上のヴァイオリン弾き」で市村さんと共演できて。市村さんは、どんどんパワフルになられていますよね。子どものころに感じていた印象と、「屋根」で感じた印象が全然違っていて、常に向上していく姿を間近で感じ、市村さんのようなパワフルな役者になれたら…と思いました。
――ちなみに海外ではどんな作品をご覧になったんですか?
入野:「戦火の馬」「ビリー・エリオット」「ウィキッド」…割と王道の作品をたくさん観ました。イディナ・メンゼルさんの「If Then …(イフゼン)」、そして「アラジン」も「レ・ミゼラブル」も!
とにかく海外では観れる限りのものを観ていました。観た作品もそうですが、人との出会いも大きかったですね。これからの役者生活に少しずつ活かしていけたらと思います。
入野自由 ETERNAL CHIKAMATSU
ヘアメイク:横山雷志郎
■日時・会場:
2016/2/29(月)~2016/3/6(日) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
2016/3/10(木)~2016/3/27(日) Bunkamura シアターコクーン
■作:谷賢一
■演出:デヴィッド・ルヴォー
■出演:
深津絵里、中村七之助
伊藤歩
中島歩、入野自由、矢崎広、澤村國久、山岡弘征、朝山知彦、宮菜穂子、森川由樹
中嶋しゅう、音尾琢真 他
■公式サイト:http://www.umegei.com/schedule/514/