連続企画『アニメソングの可能性』第二回 DJ和の視点から見た ”J-POP / アニメソング” 両音楽ジャンルの接点

インタビュー
アニメ/ゲーム
2022.7.26

■独自進化を続けるアニメソングDJカルチャーの魅力

――2000年代のお話を伺ってきましたが、その頃からアニメソングオンリーDJする機会が増えていったのでしょうか?

いえ、当時はまだアニメソングオンリーDJを主戦場としている方との接点もなくて、なかなかそういう機会は訪れませんでしたね。アニメソングオンリーDJをする機会が増えたのは2012年に『J-アニソン神曲祭り [DJ和 in No.1 胸熱 MIX]』をリリースしてから。

――CDがリリースされて、アニメソングでDJをしている人のもとに名前が知れ渡ったんですね。

そうかもしれません。それこそCDをリリースしてからmograさんでやっているアニソンインデックスにゲストで呼んでいただいたりしたんです。あれがCDのリリースと同年のことでしたね。それまでは全くmograさんとも縁がなかったですから。

――mograさんではじめてDJをした時の印象はいかがでしたか?

びっくりしました(笑)。アニメソングやJ-POPが流れるDJイベントは当時あちこちで見かけるようになっていたんですが、会場自体がそういったことに特化している場所はなかった。すごい所があるんだな、そう思いましたね。加えて、mograさんでアニメソングのDJをした時はアニソンクラブイベント独特のルールに驚かされたと言いますか……。

――独特のルール、とはどういったものだったのでしょうか?

アニメソングでDJをする時に、アニメの主題歌として使われない二番をかけちゃいけない、というルールがあるじゃないですか? あれに初めて出会ったのがmograさんに出演した時だったんですよ。あれを知った時は焦ったな……。「選曲が間に合わない!」って思って(笑)。

――確かにあれはアニメソングDJの世界にしかないルールですね。他の音楽ジャンルでは一番で曲を変える必然性はありませんから。

そういう意味ではアニメソングDJってすごく独自進化しているカルチャー、それが本当に素晴らしいと思うんですよ。自分達でルール作って、それをお客さんと共有して一緒に楽しんでいる。これってすごくクリエイティブなことだと思うんです。

――アニメソングDJということで、特殊なルールだったり、独自の文化ができあがっている。

僕なんかはDJでアニメソングを使いますけど、そのルールには割と則っていない。普通に二番までかけたりしますから。そういう意味で自分を”アニメソングDJ”だと言っていいのかは迷う時があります。

■DJが何をしている人なのか、それを多くの人に知ってもらいたい

――DJ和さん自身、今後のDJカルチャーがこうなってほしい、というものはありますか? 

まずはもっと多くの人に、DJって何をしているのかを知ってほしいと思います。僕は最近クラブ以外でDJをすることが多いのですが、そういう時には決まって「初めてDJを聴きました!」って誰かからは言われるんですよ。DJというものが日本入ってきてかなり年月が経っているはずなんですけど、まだまだDJを見たことがない人も多い……。

――思った以上に浸透していないと言いますか……。

DJを見たことはあっても、何やっているのか理解していない人はもっともっといますからね。ピアノニストやギタリストってほとんどの人が何をやっているか理解しているじゃないですか。それに対してDJはまだ全然理解されていない。やっと、DJって怖い人じゃないってことがみんなに伝わったかな、ぐらいの肌感覚ですからね。

――DJの面白さを伝えるための手段として、DJ和さんの中で思い浮かぶ方法はあるのでしょうか? 

クラブ以外の場所でDJをするということだと思います。クラブって行き慣れている僕らからすればすごく楽しい場所。でも、いまだに怖い場所だと思っている人は多いと思うんですよね。そういう人にもDJに触れてもらう機会は積極的に作るべきなんじゃないかな、と。例えば屋外だったり、カフェだったりバーだったり、そういうところにBGM係としてDJをする人が増えるともっとDJって身近なものになると思うんですよ。

――街中のいたる所にDJがいて、街ゆく人は簡単にDJに触れることができる。そういうイメージですね。

そうですね。そういうところでDJカルチャーに触れて、DJって面白そうじゃん、そう思ってくれる人が増えればDJカルチャー全体も盛り上がる。結果的にはそこからクラブに行く人も増えるんじゃないかな、僕はそう思っています。

――その結果、DJ和さんのようにプロとして活動しているDJの方も増えるかもしれませんね。

そうなると僕のライバルが増えることになっちゃいますけどね。でもその盛り上がりに乗じて僕の仕事も増えてくれるのかな? そうなってくれると嬉しいですね(笑)。

インタビュー・文=一野大悟 撮影=岩間辰徳


普段クラブに行くことに慣れている人にとって、今やクラブで邦楽を聴けるのは当たり前のことになっている。さらに言えば、今やクラブでアニメソングを聴けることすら驚くことですらない。しかし、その”当たり前”も誰かが少しづつ作り上げた先に出来上がったカルチャーの上に成り立っている。そんな先人たちが作り上げたものからカルチャーというものができあがってくる、ということを今回のインタビューでそれを大いに感じさせられた。

同時に、誰かの築いた”当たり前”を堪能する我々にも、自分たちのため、そして次なる世代に向けて”当たり前”を築く責務がある。果たして我々が築くべき”当たり前”はどんな形なのだろうか? もしかしたらそれは、DJに触れることが”当たり前”になっている社会の想像なのかもしれない。

クリエイター情報

DJ和

ソニー・ミュージック発のJ-POP DJプロ第1号。その場にいる人を笑顔に変える抜群のスキルと斬新な選曲。2008年「J-ポッパー伝説」のリリース以降、一貫してJ-POPにこだわり続け、今までにリリースしたCDの累計が198万枚を突破した邦楽DJ No.1。
国内はRock In Japan Fes、ANIMAX MUSIX等々、海外ではアメリカ、イタリア、インドネシア、シンガポール、タイ、中国、韓国、台湾、ベトナム、サウジアラビア等々での大型フェスイベントに出演。
日本の音楽を世界に伝道するJ-POP DJの第1人者。代表作は、「J-ポッパー伝説」、「A GIRL↑↑」、「J-アニソン神曲祭り」、「ラブとポップ」、「ミリオンデイズ」があり、2018年5月発売の関ジャニ∞のBEST ALBUM 「GR8TEST」をはじめ、数多くのアーティストのMIX CD制作も手掛けている。
 

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7 765PRO ALLSTARS(天海春香(CV:中村繪里子)、高槻やよい(CV:仁後真耶子)、星井美希(CV:長谷川明子)、萩原雪歩 (CV:浅倉杏美)、菊地 真(CV:平田宏美)、如月千早(CV:今井麻美)、双海亜美/真美(CV:下田麻美)、三浦あずさ(CV:たかはし智秋)、水瀬伊織(CV:釘宮理恵)、秋月律子(CV:若林直美)、我那覇 響(CV:沼倉愛美)、四条貴音(CV:原 由実))「The world is all one !!(M@STER VERSION)」
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10 ハムちゃんず「ハム太郎とっとこうた」
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12 Keno「おはよう。」
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15 dream「Get Over」
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18 eufonius「リフレクティア」
19 彩菜「風の辿り着く場所」
20 Lia「時を刻む唄」
21 栗林みな実「Precious Memories」
22 Girls Dead Monster「Alchemy」
23 いとうかなこ「Hacking to the Gate」
24 タイナカサチ「disillusion」
25 川田まみ「緋色の空」
26 ALI PROJECT「聖少女領域」
27 MELL「Red fraction」
28 FLOW「COLORS」
29 THEATRE BROOK「裏切りの夕焼け」
30 m.o.v.e「Gamble Rumble」
31 T.M.Revolution「INVOKE -インヴォーク-」
32 ポルノグラフィティ「メリッサ」
33 陰陽座「甲賀忍法帖」
34 DOES「曇天」
35 中川翔子「空色デイズ」
36 ClariS「コネクト」
37 涼宮ハルヒ(C.V.平野 綾)「Lost my music」
38 supercell「君の知らない物語」
39 奥 華子「変わらないもの」
40 本間芽衣子(茅野愛衣)、安城鳴子(戸松 遥)、鶴見知利子(早見沙織)「secret base ~君がくれたもの~ (10 years after Ver.)」
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