珠城りょう、『マヌエラ』で第二次世界大戦直前の上海に生きた実在のダンサー役に挑戦

インタビュー
舞台
2022.11.4

――気に入っている場面やセリフはありますか?

たくさんありますね。ていねいに演じていきたいなと思ったのは、ずっと強がっていた彼女が、後半、渡辺大さんが演じられる海軍中尉に徐々に心を開いていって、ちょっとやわらかさが出る面があるんです。派手な言葉のやりとりはないんですが、だからこそ、観ている方に、心情の変化であったりとか、彼女の中で何かが変わっていった瞬間がより明確に伝わるんじゃないかなと思ったので、そこは大切に演じていきたいなと思いました。

――共演者についてはいかがですか。

皆さんはじめましての方ばかりで、私からするとテレビで観ていた方々という印象なんですね。渡辺大さんは現代劇はもちろん、時代物をなさってもいつもぴたっとはまるというか、大人の落ち着いた男性という印象です。包容力みたいなものをいつも感じていたので、今回の時代背景の中でこの役を演じられたらどのような感じになられるんだろうと非常に楽しみです。パックンさんはインタビューを拝読して、俳優として芝居をされることに非常に夢を持っていらして、それが今回念願かなって初めて舞台に立たれるということを知りました。とても前向きないいエネルギーでこの世界観に飛び込んできてくださるんじゃないかなと思っています。おふたりとも、ご一緒できるのが楽しみです。

――演出の千葉さんについてはいかがですか。

劇団☆新感線の舞台に俳優として立たれているのを拝見したことがありますし、最近では演出された『ライフ・イン・ザ・シアター』を拝見しました。俳優でもある千葉さんが、どういう演出方法で、どういった形でお稽古を進めていかれるのか、とても楽しみです。

――ヴィジュアル撮影はいかがでしたか。

こういうドレスを着て撮影するのが初めてだったので、非常にソワソワしました。男役のときは身体がだいたい布に覆われているので(笑)。ドレスの雰囲気や照明等、いろいろなものに助けてもらって、世界観を体感することができました。あの赤いドレスを着たときに、マヌエラ像みたいなものがどんと湧き上がってくる感じがして、とても楽しかったです。役のイメージなど、こういう感じの方だったのかなとか、想像できてよかったなと。

公演ビジュアル

公演ビジュアル

――ダンスで物語や感情を表現することをどうとらえていらっしゃいますか。

踊りはもともと感情表現が原点だと思うんですよね。宝塚時代も、歌がない中でも何を伝えたいのか、どういう心情をこの動きで伝えたいのか、そういったことを考えながら踊っていたんです。マヌエラさんはそういうところにより重きをおいて踊っていた方だと思うので、そのあたり、お芝居と織り交ぜながら、より濃く作っていけたらいいなと思っています。言葉がない中で踊るときには、音楽の力をより強く感じます。音楽が盛り上がるのと一緒に、振りや感情も上がっていったりと、リンクするところがとてもあると思うので、まずは楽曲、音、使われている楽器等をちゃんと聞きながら動きとつなげていって、感情を燃やしていけたらいいなと思いますね。

――ストレートプレイに挑戦したいと思われた理由は?

私は本当にお芝居が好きで、下級生のころから、東京に公演に来るたび、いろいろな演出家さんの舞台を一人で観に行っていました。ストレートプレイは、やはりすごくリアリズムを追求していると感じます。宝塚ってある意味真逆というか、華やかな夢の世界を一つのエンターテインメントとしてお届けするというところに重きをおいているんですね。でも、ストレートプレイだと、より人々の心情や葛藤、醜い部分など、いろいろなものがリアルに表現されているのが非常におもしろいなと思って、芝居やストレートプレイにのめり込んでいきました。お芝居やエンターテインメントって、嘘の世界ということを観客もわかっていて、舞台に立つ方もわかって作っているんですけれども、ストレートプレイだとそれがより嘘じゃなくて現実のように、リアルに感じられる部分があって、そこがまた興味深いなと思いながら観に行っていました。なので、いつか挑戦したいとずっと思っていました。

――ストレートプレイで醜い部分等よりリアルにさらけ出すことについて恐怖心はないですか。

ないですね。実際、自分自身ではなく、役を演じているということもありますし。私は、役柄=自分以外の人物の人生を歩んで、自分の知らなかった感情に出会ったりすることが非常におもしろいなと思っている人間なので、いろいろなものをさらけ出すことに関する恐怖心は特にありません。

>(NEXT)2023年の幕開けに。模索しながら新たな自分を

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