愛おしいキャラクターたちと冒険の旅に出よう! spi、福田えりら『シュレック・ザ・ミュージカル』フルバージョン公演が開幕
2023年7月8日(土)日本青年館ホールにて『シュレック・ザ・ミュージカル』フルバージョン公演が開幕する。初日に先駆け、公開抜き稽古ならびに初日前会見が行われた。会見には応援サポーターの近藤春菜(ハリセンボン)も駆けつけ、七夕&シュレックに合わせた緑ベースの浴衣姿で登場。キャスト一同が願い事を書いた短冊が飾られた笹を前に、フルバージョン公演成功を祈願した。
まずは、公開抜き稽古の模様からお伝えしよう。
『シュレック』は、『マダガスカル』『カンフー・パンダ』など数多くの子供向けアニメ映画を手掛けてきたドリームワークスが2001年に制作し、史上初のアカデミー長編アニメ映画賞を受賞した大ヒットアドベンチャーコメディ映画。2008年にブロードウェイにてミュージカル化され、2022年8月に90分短縮バージョンがトライアウト公演として日本初上陸した。
今回のフルバージョン公演では、主人公・シュレック役のspi、ヒロイン・フィオナ役の福田えり、喋るロバ・ドンキー役の吉田純也、ファークアード卿役の泉見洋平をはじめ、前回大好評を博したメインキャスト陣が続投。今回メディアに公開されたのは一幕のみだが、アンサンブルキャストを含めパワフルさを増すシュレック・カンパニーの熱量を全身に浴び、笑いと少しの切なさと、愛おしいキャラクターたちに、爽快な気持ちで帰路についた。
シュレック役のspiは、さすがの安定感でのびのびとしたパフォーマンスを披露。オープニング「♪でかく明るく美しい世界」では一人の生活を満喫する様を高らかに歌い上げ、一気に『シュレック』の世界へと引き込んでいく。今回、冒頭でシュレックサイドに加えてフィオナサイドの幼少期もリンクして描かれていることで、ふたりのつながりがぐんと増して感じ取れ、『シュレック』の世界への入りがスムーズになっているように感じた。いわゆるツッコミとしての機能が多いシュレックは、周りとの温度差が面白味のエッセンスに。
ヒロイン・フィオナ役を務めるのは福田えり。SPICEでは独自連載『ミュージカル・リレイヤーズ』の配信イベント(2022年12月開催)にて同作のナンバーを一曲披露してもらったが、今回もコメディエンヌっぷりを遺憾なく発揮。”お姫様ってこういうもの”と幼いころに塔に閉じ込められ、”ストーリー通り”の救出劇を待ち望むフィオナが歌う「♪今日こそだと信じて」は、ヤングフィオナ、ティーンフィオナと三人で歌うナンバー。期待に胸膨らませるヤングフィオナから、徐々に諦めや不安が滲むティーン時代、フィオナの孤独な年月は、彼女自身の人間味溢れる性格に助けられ笑いとともにじんわりと胸に広がる。シュレックが現れたときのフィオナの興奮っぷりが、なんとも可愛らしい。プリンセス然と優雅で高貴に姿勢を整えるさまと、感情が溢れ出し抑えきれない少女らしさの共存が魅力的だ。
吉田純也は、素直でお気楽、その場しのぎ的な軽快なドンキーを好演。普段のゆるーい雰囲気と、カッコつける場面での声のトーンや動きの切り替えが楽しい。シュレックが思わず警戒心を解き、素直な自分を見せてしまうのも納得の脱力感だ。コミカルな喋りと確かな歌声で物語を盛り上げる。
ファークアード卿役の泉見洋平は、なんとも憎らしい表情が魅力。その眉どうやって動かしてるの?!と笑ってしまう。領地・デュロックの素晴らしさ(もとい、自身の素晴らしさ)を歌う「♪どうだいデュロック」は、人形のようなコーラス・ダンサーたちと一体となって舞台を華やかに彩る。ファークアード卿は物語では敵役でもあり、登場する場面では物々しい兵士たちも引き連れ緊迫したシーン……のはずなのに、それすらコミカルに見えてしまうのは『シュレック』の魅力か。
フルバージョン公演となり、各キャラクターたちのストーリーや感情の動きがわかりやすくなっていた。シュレックの沼に追いやられたおとぎの国の住人たちを含め、キャラクター皆が個性的であるのと同時に、ある種”お決まり”の安心感も心地よく、ところどころに盛り込まれる笑える仕掛けも注目。歌詞やセリフには、日本で馴染みある物語などがちりばめられているので、よくよく聞くと一層楽しいだろう。ちなみに、フィオナがいるドラゴンの塔に向かう道すがらシュレックとドンキーが歌う「♪トラベルソング」では、某ミュージカルを模した一節が登場し思わず噴き出した。
「オーガって嫌われるもの」と”オーガらしく”沼地に引きこもるシュレック。”プリンセスらしく”塔の上で待ち続けたフィオナ。心の奥底の願いを歌う「♪誰かになれたら」に幕を閉じた第一幕に続き、「そういうもの」で構成される物語が、第二幕にてどう変わっていくのか。
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