モネづくしの展覧会『モネ 連作の情景』記者発表会レポート ナビゲーター・芳根京子も登壇

レポート
アート
2023.9.21
『モネ 連作の情景』展 記者発表会

『モネ 連作の情景』展 記者発表会

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100%モネ。そんなキャッチコピーを最近目にしただろうか? この秋『モネ 連作の情景』が、上野の森美術館にて開催される。会期は2023年10月20日(金)から2024年1月28日(日)まで。印象派の旗手であり、圧倒的な知名度と人気を誇る画家クロード・モネ。この展覧会は「100%モネ。」のコピーに表れている通り、混じりっ気なし、展示されるすべてがモネ作品という、非常にレアな機会である。

2024年は第一回印象派展からちょうど150年の節目となる。そのアニバーサリーを記念して、世界中の美術館からモネ作品が日本に集結。中でも、今回はモネの「連作」に焦点を当てることで、画家が描き出す繊細な“季節や天候による風景の移ろい”を実感できる展覧会になるようだ。この記事では、記者発表会で紹介された見どころについて、ゲスト登壇した俳優の芳根京子からのメッセージとともにお伝えしていこう。

開催にあたっての喜びと興奮

『モネ 連作の情景』展 記者発表会

『モネ 連作の情景』展 記者発表会

主催者代表 産経新聞社取締役会長 飯塚浩彦氏より、「国内外で屈指の人気を誇るモネの生み出した革新的な表現の一つが、“連作”と言われる手法です 。同じ場所やテーマを異なる天候・時間・季節を通して取り上げ 、その一瞬の表情が移ろいゆく様をキャンバスに描いております。時間と光への飽くなき探究心が感じられる“連作”は、モネの芸術性を色濃く映し出していると言えるでしょう。この展覧会では、およそ60年の画業の軌跡を、代表的な作品とともに追ってまいります。今年、産経新聞は創刊90周年、フジテレビが開局65周年、そして関西テレビも開局65周年を迎えました。この節目の年にモネの貴重な作品を日本の皆様にご紹介できることは、主催者一同にとって大きな喜びでございます」

特別協賛 エクスコムグローバル株式会社代表取締役社長 西村誠司氏からは、「最初、“世界各地からモネを60作品以上集める”という企画のお話をいただいたとき、こんな企画は今までもこれからも、僕が生きてる間には絶対ないな! というワクワク感が止まりませんでした。モネの作品がひとつの場所でこれほど見られるなんて、言葉では表せないくらいの興奮です。さらに、今回は印象派としてスタートする前の作品も展示されます。こちらもなかなか日本で見られることはないので、ぜひ多くの方に見ていただきたいです。クロード・モネという天才の生み出した絵画を前にし、自分の感性を刺激するということは、これからの自分の創造性を大きく高めることに繋がると思います。もちろん全ての年代の方に見ていただきたいですが、特にお子様や若い方に、ぜひ足を運んでいただけると嬉しいですね!」

先生、どんな展示になるのでしょうか?

本展日本側監修の島田紀夫氏

本展日本側監修の島田紀夫氏

記者発表会冒頭の挨拶に続いて、本展日本側監修を務める実践女子大学名誉教授の島田紀夫氏から、展示内容についての簡単な解説が行われた。本展は第1章〜第5章から成り、ざっくりいうと印象派以前〜連作の確立〜晩年の「睡蓮シリーズ」、といった構成だ。

《昼食》1868-69年 油彩、カンヴァス 231.5×151.5cmシュテーデル美術館  (C) Städel Museum, Frankfurt am Main

《昼食》1868-69年 油彩、カンヴァス 231.5×151.5cmシュテーデル美術館 (C) Städel Museum, Frankfurt am Main

今回が初来日となる《昼食》はモネ28歳ごろの作品で、高さ230cm超えの大作だ。仕上げは滑らかで、言われなければモネ作品だとわからないような新鮮な印象を受ける。モネが黒色を使っている非常に珍しい作例でもあるので、私たちのモネ観を気持ちよく裏切ってくれることだろう。

『モネ 連作の情景』展 記者発表会

『モネ 連作の情景』展 記者発表会

それから数年後。印象派の旗手として、粗く大胆な筆遣い、明るくクリアな色彩を操るようになったモネ。印象派の画家たちがもっぱら屋外制作するのは有名だが、モネの場合は舟を浮かべて“水上制作”にまで及んでいたらしい。本展では《モネのアトリエ船》がクレラー=ミュラー美術館から来日! 自分のアトリエ船の姿をわざわざ描いておくあたり、モネもかなりこの船を気に入っていたんだろうな、と想像する。

『モネ 連作の情景』展 記者発表会

『モネ 連作の情景』展 記者発表会

解説では、参考としてマネによる《水上アトリエで制作するモネ》が紹介された(こちらは本展不出品)。上着を脱いで風に吹かれるモネは、ものすごく気持ちよさそうである。

《ヴェトゥイユの教会》1880年 油彩、カンヴァス 50.5×61.0cm サウサンプトン市立美術館  (C) Southampton City Art Gallery

《ヴェトゥイユの教会》1880年 油彩、カンヴァス 50.5×61.0cm サウサンプトン市立美術館 (C) Southampton City Art Gallery

そんなアトリエ船でどのような作品が描かれたのかも、併せて見ることができる。イギリス、サウサンプトン市立美術館からやって来る《ヴェトゥイユの教会》の水面の表現は、これぞ印象派といった趣だ。他にも印象派画家としてノリにノっているモネの風景画が多数見られるそうなのでお楽しみに。

連作というスタイル

『モネ 連作の情景』展 記者発表会

『モネ 連作の情景』展 記者発表会

展示の後半は、いよいよ「連作」に焦点が絞られる。積みわらや、橋のかかった都市風景……目の前の作品が「光の移ろいを描き留めた〇〇シリーズのうちの一作だ」と聞いても、実際に並べて見ない限り「へえ〜」で終わってしまうだろう。今回は、バリエーションによる変化を間近で観察することができる稀有なチャンスだ。

『モネ 連作の情景』展 記者発表会

『モネ 連作の情景』展 記者発表会

写真ならともかく、絵画で“その日その時その瞬間”を切り取るというのは無謀な試みのようにも思える。だからこそ、モネが探求した連作たちが会場でどんなふうに感覚を揺さぶってくれるのか、期待が高まる。

《睡蓮の池》1918年頃 油彩、カンヴァス 131.0×197.0cm ハッソ・プラットナー・コレクション  (C) Hasso Plattner Collection

《睡蓮の池》1918年頃 油彩、カンヴァス 131.0×197.0cm ハッソ・プラットナー・コレクション (C) Hasso Plattner Collection

そして最終章では、モネが後半生を過ごしたジヴェルニーの「睡蓮シリーズ」が登場。自作の池に浮かべた睡蓮を描いた300点以上の作品の中から、貴重な作品が国内外の美術館から集められる。例えば1918年ごろの《睡蓮の池》は、モネが視覚障害を患いながらも制作に打ち込んだ晩年の大作のひとつだ。ちなみに、東京展と大阪展で異なる「睡蓮」が出展されるため、そのためだけに両会場をハシゴしたくなるほどである。

ナビゲーター・芳根京子が語るモネへの想い

展覧会ナビゲーター・音声ガイドを務める芳根京子

展覧会ナビゲーター・音声ガイドを務める芳根京子

ーー本展のナビゲーターの話が来た時の率直なお気持ちは?

正直アートにそこまで詳しいわけではなかったのですが、私の母が美大出身ということもあって、これまで一緒に美術館に行く機会が何度かあり、アートをもっと知りたいっていう気持ちはずっとありましたね。私のように、詳しくないけど興味がある……っていう方にとって、今回のモネ展に足を運んでいただくきっかけの一つになれたら嬉しいな、と思っております。

『モネ 連作の情景』展 記者発表会

『モネ 連作の情景』展 記者発表会

ーーこの展覧会で、特に注目している作品は?

もちろんどれも楽しみなんですけど、やっぱり《睡蓮》ですね! 今回(特別番組の収録で)フランスでモネの人生をたどる旅をしてきたんですけど、モネが見てきた世界、モネが描いてきた景色をたくさん見させてもらって。その中で、モネが人生の後半で暮らしたジヴェルニーのお家や庭も拝見して……。一見すごく派手なわけではないんですけど「美しい」という、不思議な感動がありました。今回、国内外からモネの《睡蓮》が集められて、一度に日本で見られるっていうのはすごく楽しみです。

芳根京子がモネの足跡をたどる特別番組は、11月11日にフジテレビ(関東ローカル)で放送予定。

芳根京子がモネの足跡をたどる特別番組は、11月11日にフジテレビ(関東ローカル)で放送予定。

ーー本展に来場する方々へのメッセージをどうぞ!

これまで勝手に「アートって難しいのかな?」なんて思い込んでしまっていたんですけど、全然そんなことなくて。作品を前にして溢れてくる感情に正解や不正解なんてないし、それは誰にも否定できないものなんだって、今回のフランスの旅でそう思いました。モネの作品に触れて、なんだか人生が豊かになった気がしましたし、もっともっと豊かにしたいとすごく思いましたね。

今までモネに触れたことがなかった方も、音声ガイドで精一杯サポートさせてもらうので、安心して足を運んでいただけたらなと思います。今回は世界中からモネの作品だけが集められた展覧会ですので、モネが好きな方、 美術館が好きな方、アートが好きな方、皆さんに絶対に楽しんでもらえると思います! 私も一緒に楽しめたらいいなと思っていますし、これをきっかけに私ももっとモネやアートに触れていきたいと思っております。ぜひ皆さん、モネ展にお越しください 。

『モネ 連作の情景』展 記者発表会

『モネ 連作の情景』展 記者発表会

想像するだけで心が躍る、100%モネの展覧会。画家との濃密な対話に飛び込む心の準備はいいだろうか。

『モネ 連作の情景』は、上野の森美術館にて2023年10月20日(金)から2024年1月28日(日)まで開催。その後、2024年2月10日(土)から5月6日(月・休)まで、大阪中之島美術館へ巡回予定。


文・写真=小杉 美香 写真 (一部)=オフィシャル提供

展覧会情報

モネ 連作の情景
会期:2023年10月20日(金)~2024年1月28日(日)
会場:上野の森美術館(東京都台東区上野公園1-2)
開館時間:9:00~17:00(金・土・祝日は~19:00)※入館は閉館の30分前まで
休館日:2023年12月31日(日)、2024年1月1日(月・祝)
入館料(税込)※日時指定予約推奨
平日(月~金)
一般 2,800円/大学・専門学校・高校生 1,600円/中学・小学生 1,000円
土・日・祝日
一般 3,000円/大学・専門学校・高校生 1,800円/中学・小学生 1,200円
主催:産経新聞社、フジテレビジョン、ソニー・ミュージックエンタテインメント、上野の森美術館
企画:ハタインターナショナル
特別協賛:にしたんクリニック
協賛:第一生命グループ、NISSHA
協力:KLMオランダ航空、日本航空、ルフトハンザ カーゴ AG、ルフトハンザ ドイツ航空、ヤマト運輸
監修:ベンノ・テンペル(デン・ハーグ美術館館長)
監修協力:マイケル・クラーク(前スコットランド・ナショナル・ギャラリー館長)
日本側監修:島田紀夫(実践女子大学名誉教授)
巡回情報:2024年2月10日(土)~5月6日(月・休) 大阪中之島美術館に巡回予定
【モネ 連作の情景|公式サイト】
www.monet2023.jp
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