伝説の監禁劇をOperettaで上演『YAMA-INU』丸尾丸一郎&雷太&玉城裕規インタビュー 「必ずこれが今の自分の最高傑作になる」

インタビュー
舞台
2023.11.2
(左から)雷太、丸尾丸一郎、玉城裕規

(左から)雷太、丸尾丸一郎、玉城裕規

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これまで3度上演され、好評を博した“伝説の監禁劇”『山犬』(原作:入交星士【小説「山犬」】)が、丸尾丸一郎の新演出の元、OFFICE SHIKA PRODUCE Operetta『YAMA-INU』として、2023年11月8日(水)から上演される。
まっさらな暴力と歪な愛情が渦巻くコミュニティを描いた『山犬』に、今作では「バイオリンの生演奏」「歌唱」という新たな要素を追加。雷太、財木琢磨、横山結衣、玉城裕規といった豪華キャストが集結し、悲劇と愛憎をより一層高めたものに昇華させる。
脚色・演出、そしてコック役で出演する丸尾と、飯田誉(イイダ)役の雷太、テラニシカツヒコ役の玉城に作品への想いを聞いた。

ーー劇団鹿殺しでは2006年、2014年、2019年と3度に渡って上演されてきた『山犬』が新演出で上演されるという今回。どのような演出を考えているのですか?

丸尾:そもそも『山犬』は、僕が東京に来て初めて演出し、演出の楽しさを知った作品です。自分の中ではとても大切な作品で、『山犬』を上演するときは毎回、過去にとらわれず、何か新しいことができないかということにこだわってきました。そして今回、楽曲を入れたOperettaとしてもっとお客さんの想像に任せるような演出を試したいと思っています。今、再び演出し、上演できることにワクワクしています。

丸尾丸一郎

丸尾丸一郎

ーー雷太さんと玉城さんは、ご出演が決まった時のお気持ちはいかがでしたか? 雷太さんは『ダリとガラ』でOFFICE SHIKA PRODUCEの公演に出演されていますね。

雷太:『ダリとガラ』は、僕にとって人生のターニングポイントとなった作品のひとつだと感じています。丸尾さんとは、その時に初めてご一緒させていただいたのですが、自分の新たな姿を引き出してくださり、ワクワクしながら挑戦しました。僕はずっとダンスをやってきたのですが、丸尾さんの演出は演劇とダンスの掛け合わせがものすごく巧妙で。(『ダリとガラ』は)自分の中の新しいものが見えた、思い出深い作品になりました。なので、今回ご縁があって、こうして再び呼んでいただけてとても嬉しく思っています。丸尾さんの前では嘘がつけず、張りぼての自分ではいられないような感覚があって、それがまた気持ち良いので、今回も楽しみにしています。

ーー玉城さんは、劇団鹿殺しの作品は15周年記念・怒パンク時代劇『名なしの侍』以来ですか?

玉城:そうですね。ただ、『名なしの侍』は(菜月)チョビさんの演出だったので、丸さん(丸尾)の演出は初めてなんですよ。今回、丸さんの演出が受けられるということで、お話をいただいて、即答で出演させていただくことになりました。

丸尾:玉ちゃんが「テラニシ役をやってみたい」と言ってくれたと聞いて、僕もすごくうれしかったです。しかも、今、稽古をしていて、玉ちゃんがやりたいと言った言葉は嘘じゃなかったんだと実感していますから。

(左から)雷太、丸尾丸一郎、玉城裕規

(左から)雷太、丸尾丸一郎、玉城裕規

ーー玉城さんは、丸尾さんが思い描くテラニシにぴったりでしたか?

丸尾:それもありますが、玉ちゃんなりに、この役をやりたいと思った意図がすごく見えたんですよ。玉ちゃんは、こういうことをやりたかったんだなというのが稽古を見ていて分かったので、その挑戦心が嬉しかったんです。

ーー玉城さんは、実際に、初めて丸尾さんの演出を受けてみていかがですか?

玉城:楽しいです。(取材当時は)まだ稽古は序盤なので、ここからより良くするために詰めていく作業になりますが、それも絶対に楽しいだろうと期待しています。僕自身、まず自分でできることをやって、それを丸さんに見てもらってからのスタートだと思うので、まだまだやるべきことがあるなと今は思っています。

ーー雷太さんは、今回演じるイイダに対して、どのようなところを意識して演じたいと考えていますか?

雷太:僕自身が務めやすいと思うのは、前回演じたダリのような役柄だと思うんですよ。僕は真ん中に立つキャラの横で、すごく奇怪な人や悪い役を演じるのが性に合っていると思う部分もあるんです。今回のイイダを演じる上では、丸尾さんから「自分がないような人」というキーワードをいただいたので、昔の自分を思い出してヒントを探しています。僕自身のひとつの個性として、今、こんなファッションをしていたりして。いろいろな人がいる中で、埋もれている自分の没個性な部分を思い出すような役だと思っています。
それから、何気ない一言が人を傷つけていることを描いている作品だと思うので、昔の自分を思い返して作っていきたいと思いますし、監禁されることで生まれる他人への劣等感やコンプレックスを、どれだけリアルに引き出せるかは大事なところだなと思っています。

雷太

雷太

ーー丸尾さんは雷太さんにどんなことを期待してオファーされたのですか?

丸尾:『ダリとガラ』では、(雷太は)サルバドール・ダリという実在の人物を演じてもらったので、もっと素の雷太を見たいと思ったことが、理由のひとつです。イイダは、一見すると、よく笑う普通のキャラクターです。それを役者・雷太が演じるとどうなるのか見たかった。あとは、『ダリとガラ』のときに、雷太がアドリブでオペラのマネをして歌うシーンがあったんですが、それを見たときに、もっと歌わせたいと思ってもいました。そうしたこともあって、今回、イイダ役のキャストを考えるときに、雷太がすぐに浮かびました。どんどん壊れていくイイダをどう演じてくれるのか、すごく楽しみです。

ーーなるほど。では、玉城さんにテラニシを演じてもらいたいと思ったのはどんな理由からですか?

丸尾:僕は、出会ったときから玉ちゃんがめちゃくちゃ好きなんですよ。玉ちゃんにしか出せない空気感や雰囲気があって、役者としてもすごくスケールが大きい。嘘がなくて、お客さんに伝えるということも忘れない。舞台俳優としてあがいた結果、今、力を付けた玉城裕規という役者がいるというのが大好きなんです。実は、これまでにも何度かオファーをさせていただいているんですが、今回、やっとタイミングが合ってこの作品に出演してもらえるというのは、すごくラッキーだったと思います。玉ちゃんが出てくれることで、すごく層が厚くなった。テラニシカツヒコというキャラクターの物語も、玉ちゃんが演じてくれたらどこまでも深くなっていくのではないかなと楽しみにしています。玉ちゃんには、「今、玉ちゃんは俳優をやっているけれど、俳優をやっていなくて、ひとつ道を踏み外したときの玉ちゃんがテラニシカツヒコだ」と伝えました(笑)。僕は、玉ちゃんとテラニシは紙一重なんじゃないかと思っていて。そういうイメージがあったので、今回はテラニシカツヒコという役でオファーしました。

ーー紙一重という丸尾さんの分析がありましたが、玉城さんご自身はテラニシについてどのように感じていますか?

玉城:確かに、役者をしていなくて、一歩踏み外したら、テラニシどころじゃないのかなと思う瞬間は正直あったりしますが(笑)。ただ、僕はテラニシはすごく魅力的な人物に感じています。例えば、いじめられていて家庭も裕福ではない中でも、陰なだけの人物ではないんですよ。すごく人間臭いところもあったり、逆にポップさもあったり、いろいろな面が描かれている中で、寂しさが垣間見える。ポップさがあるからこそ、その寂しさが目立つのかなと思うので、そのバランスをこれから作っていきたいと思います。そうした様々な面が見えるというのが彼の魅力的な部分だと思うので、今は、彼に興味しかないです。

丸尾:テラニシというキャラクターはすごく難しいと思います。ですが、玉ちゃんは、見事に自分の中で筋が通っていて、それを演じてみせてくれるので、本当にこの役を演じたいと思ってくれたんだなと感じてます。

(左から)雷太、丸尾丸一郎、玉城裕規

(左から)雷太、丸尾丸一郎、玉城裕規

ーー演出面では「Operetta」であるということに加えて、振付を或る男役で出演もする大宮大奨さんが担当するというのも大きな点かなと思います。これは、ダンスや身体表現に重きを置くということでしょうか?

丸尾:そうですね。まず、新しい方とご一緒したいという思いがあり、色々な方から大ちゃん(大宮)の噂を聞いたんですよ。初対面だったんですが、チラシ撮影の時から立ち会ってくれて、ポージングや動きを一緒に考えてくれました。稽古場でのスタンスもそうですが、商業的というよりはひとつの表現活動として取り組んでくれているのを感じます。仕事よりも自分の好奇心の方が強い方なんだなと思います。僕は舞台役者は身体性を持っていたいと思っているので、それを大ちゃんとなら表現できるのではないかと思っています。例えば、監禁されたときの飢えた表情であったり、物を見るときにあごから入った方が良かったり、本当にちょっとしたことだと思うんですよ。役者がそうした動きを持ち合わせると、すごく表現力が広がる気がしているので、今、大ちゃんと話し合いながら作り上げているところです。

ーー必ずしも“踊る”のではなく、“表現”という意味での振付でもあるのですね。

丸尾:そうですね。大ちゃんの振付自体、カウントで付けられることは少ないのではないかなと感じる振付なので。それをキャラクターとして、どう消化するかが役者の表現になっていくのかなと思います。

ーー役者としては、芝居と歌唱だけでなく、身体表現を使った演技と高度な表現が必要になる作品だと思いますが、そうした表現への難しさ、または面白さについてはどのように感じていますか?

雷太:すごく面白いと思います。謳い文句では「監禁ホラー劇」と分かりやすく言っていますが、蓋を開けてみると、問題提起があって、愛を貫き通したテラニシの物語があって、僕らの3人の人間模様もある。ただの「怖いホラー」ではなく、その先にあるものを見せたいという作品の意図もすごく感じます。シリアスとコメディは紙一重だと思うので、それも僕らが作り上げていけたらとも思います。表現という意味では、僕自身は、これはストレートプレイ、これはミュージカル、という垣根を作らないタイプではないので、あくまでも要素として歌があったり、身体表現があったりするものだと考えています。お客様は様々な見方で楽しめると思うので、身体と物語をリンクさせていけたら、すごく良いものになるんじゃないかなと思っております。

玉城:難しさはどの作品でも必ずあるものだと思うので、この作品だからということではないですが……今回は、双子なので、それぞれの性格やお互いにどれくらい思い合っているのかといった演じ分けが必要だとは思います。そういう意味では、肉体的にも精神的にも疲労はあると思いますが、それがあるからこそ、より良い素敵な作品になるのだと思っています。自分を痛めつければつけるほど、よりこの作品の魅力が増すと思うので、自分を壊しにかかろうかなと(笑)。

玉城裕規

玉城裕規

ーー今回は、丸尾さんもコック役でご出演されますが、役者としてはどのようなお考えがありますか?

丸尾:僕はすごく自分に甘いので、演出助手に僕の稽古を付けてもらおうと思っています(笑)。演出家は、いつも役者の皆さんにああだ、こうだと言っているわけですが、きっとみんな「そう言いながら、自分ではできるのか?」と思っているんじゃないかなと思います(笑)。正直なところ、僕は2秒の演技はできるけど、長い尺ができないんですよ。ですが、今回は、せっかくキャストとして並べさせてもらっているので、みんなに負けないように。出番は少ないですが、その中でもインパクトを残さなければいけないなと思っています。

玉城:言ってること全然違うじゃないですか(笑)。

丸尾:あははは(笑)。本当だね。

ーー最後に改めて、公演への意気込みをお願いします。

玉城:身を削って輝くさまをぜひ目に焼き付けてほしいと思います。このキャストが集まってこの作品をやることは、もう二度とないと思うので、ここにしかないものをぜひ劇場で観ていただけたら嬉しいです。損はさせません。

雷太:何度も上演されている、この『YAMA-INU』という作品に出演できることを本当に嬉しく思っています。僕にとっては新たな挑戦となる作品ですが、お客様にも観て良かったと思っていただける作品にできますように。身を削って、ダイヤモンドのように輝きたいと思います、ね(笑)。

丸尾:稽古の段階で、すごく良い作品になるなとゾクゾクしています。「面白かった」だけじゃなく「すごい」と言わせるところまで仕上げていきたいなと思います。絶えず過去の自分は超えていきたいので、必ずこれが今の自分の最高傑作になると思いますし、そう自信を持って言える舞台にします。ぜひ、楽しみにしてください。

(左から)雷太、丸尾丸一郎、玉城裕規

(左から)雷太、丸尾丸一郎、玉城裕規

取材・文=嶋田真己     撮影=池上夢貢

公演情報

OFFICE SHIKA PRODUCE
Operetta『YAMA-INU』
 
■日程:2023年11月8日(水)〜12日(日)
■会場:あうるすぽっと
 
■原作:入交星士(小説「山犬」)
■脚色・演出:丸尾丸一郎(劇団鹿殺し)
  
■出演:
飯田 誉(イイダ)役 雷太
東 弘樹(ヒロキ)役 財木琢磨
友部由紀(ユキ)役 横山結衣
或る男 役 大宮大奨
コック 役 丸尾丸一郎
テラニシカツヒコ 役 玉城裕規 
 
【アフタートークイベント】
・11月9日(木)19:00の回 終演後
雷太  財木琢磨  丸尾丸一郎
・11月10日(金)14:00の回 終演後
財木琢磨  玉城裕規  丸尾丸一郎
・11月10日(金)19:00の回 終演後
雷太  横山結衣  大宮大奨
 
(全席指定・税込):
◎S席(特典付き)
前売 6,900円
パンフレット付き前売 8,800円
雷太プロデュース『YAMA-INU』Tシャツ付き前売 9,900円
 
◎A席
前売 5,900円
パンフレット付き前売 7,800円
雷太プロデュース『YAMA-INU』Tシャツ付き前売 8,900円
 
ヤング券(U-25)4,000円
高校生以下 1,000円
 
※S席特典は、「キービジュアルクリアファイル」になります。
会場ホワイエに引換所を設置いたします、ご来場時にお立ち寄りください。
※パンフレット、雷太プロデュース『YAMA-IN』Tシャツも、劇場でお渡しをさせていただきます。会場ホワイエの引換所にお立ち寄りください。
※ヤング券、高校生以下は各回枚数限定になります。
 
【配信概要】
日程:
11月11日(土)13:00 配信・全景
11月11日(土)18:00 配信・スイッチング
11月12日(日)11:30 配信・スイッチング
11月12日(日)16:00 配信・スイッチング
※各生配信終了後、1週間アーカイブ視聴が可能です。アーカイブ配信のみのご購入も可能です。

視聴券:¥3000
パンフレット付視聴券: ¥4900
Tシャツ付視聴券:¥6000

配信販売用URLhttps://eplus.jp/yama-inu-st/

主催:株式会社オフィス鹿
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