味園ユニバースの宇宙空間に湧出!TESTSET、LAUSBUB、そして高野寛への想いを胸に崎山蒼志が音を鳴らしたーー清水音泉 主催『Next To 湯(You)#3』レポート

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音楽
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『Next To 湯(You) #3』2025.2.8(SAT)大阪・味園ユニバース

2025年2月8日に大阪・味園ユニバースにて、関西の名物イベンターである清水音泉によるイベント『Next To 湯(You)#3』が開催された。出演者は高野寛 MVF UNIT with 白根賢一、TESTSET(砂原良徳×LEO今井×白根賢一×永井聖一)、LAUSBUBの3組。昨年3月には崎山蒼志、Helsinki Lambda Club、リーガルリリーが出演。昨年8月にはZAZEN BOYSとドレスコーズが出演し、同じく味園ユニバースで開催されてきたが、早くも第3弾となる。今回は、開催2日前に高野寛が体調不良で出演見合わせとなり、急きょ崎山蒼志が出演することが発表された。

開場中には、高野が昨年秋に5年ぶりに発表したアルバム「Modern Vintage Future」が流されている。高野の出演見合わせは残念であったが、この場に高野の音楽が流れているのは誠に粋であり、嬉しくもあった。テクノを感じさせるサウンドに合わせるかの如く、味園ユニバース特有の幾つもの宇宙をモチーフにしたオブジェが天井で周り続け、神秘的な照明も輝いている。まさに宇宙空間。

崎山蒼志

観客の大きな拍手と共に初めに舞台に現れたのは崎山蒼志。「高野さんの代打」という謙虚な言葉から、その高野が35年前に発表した名曲「虹の都へ」を。こちらもまた粋としか言いようがない。名曲は歌い継がれる。曲終わり、崎山は高野を地元静岡の大先輩で普段からお世話になっていることも明かして、素晴らしい人たちとの共演を頑張りますとも告げた。清水音泉のイベントは常にそうだが、出演座組に意味と意義があり、その想いを出演者も受け止めて、最初から最後まで繋げようとする誠実さがある。

自身の曲である「My Beautiful Life」は強くなっていくギターカッティングに荒々しさも感じられて、原曲とはまた違う魅力があった。急遽2日前に出演が決まった場に、ひとりで立ち向かっていく気概を改めて感じたし、アコギ1本で創り出される人力グルーヴに圧倒される。観客も一瞬で巻き込まれて惹き込まれているのが伝わってくる。

デビュー当時からの人気曲「Samidare」でも高速ギターカッティングが炸裂して、大江千里「MAN ON THE EARTH」カバーへ。奥多摩でワンカットにより撮影されたという大江のMVの感想など、何故カバーを演奏するかの理由を丁寧に話していく。このようなワンクッションがあるだけで、観客への届き方は全く変わってくる。続いて「新しい曲を」と紹介された「akuma」。個人的にも完全に初めて聴く楽曲であったが、語り掛ける様な歌にはすぐに惹きつけられた。序盤の力強さとはまた違う魅力が確かに存在していた。

終盤、i Padを使用してハンドマイクひとつで歌い出す。「eden」ではエレクトロニカサウンドが印象的であり、同期で流される崎山の歌に、崎山が生でコーラスを重ね合わせたり、それだけではなくてかもめ児童合唱団の歌声も重ね合わさり、脳も心もとろけてしまうような快感となる。「燈」では音も言葉も丹念に紡がれていき、とにかく<孤独 under crying>という言葉が印象に残った。ラストナンバーは「国」。演奏後、清水音泉スタッフに聴くと、いつもと違うアレンジで今日に臨んだとのこと。その真摯な姿勢に魅了されたライブであった。

LAUSBUB

2番手は。LAUSBUBのギターとシンセサイザーとマニピュレーションを務める岩井莉子と、ボーカルとベースを務める髙橋芽以による2人組であり、ニューウェーブを感じさせるテクノポップを鳴らす。北海道出身であり、まだ弱冠21歳という若さにも驚かされるが、1曲目「Telefon」は4年前に発表されていることに驚愕となる。初っ端の耳に残る電話のプッシュ音から繰り広げられるというまさにエレクトロニカな展開に度肝を抜かれてしまう。今聴いても凄いのに、4年前に既に創り出していたという凄み……。ふたりだけの佇まいもクールで格好良い。

「Dancer in the Snow」ではギターの音色がエレクトロをより際立たせて、もはや重厚感すらある。「yesey」での一定のビートは、ずばりテクノビートであり、心地良さしかない。「80+1 Hardy Ones」は、ふたりでポエトリーリーディングの様に言葉をつぶやいていき、反復するテクノビートには緩やかさも感じて気持ち良くなっていく。「TINGLING!」は日本語詞がはっきりと聴き取れて、今までのナンバーとの対比を感じられて、強い効果を生んでいたように思う。声にビートが絡まり、髙橋も軽く跳ねながら歌い、ビートがスピードアップしていき終わる。

髙橋は憧れの場所でライブをできることを夢みたいと語り、岩井は全角度から楽しいこととリスペクトしている方々との競演に感謝を述べる。ラストナンバーは、細野晴臣のカバー「Sports Men」。ゆったりとしたサウンドながら、メロディアスで、もしもチルアウトなんていう言葉を使うならば今なんだろうと想いながら、身を委ねて揺れる観客フロア全体……。柔らかくて優しいビートに、フロアからは思わず「吞みたくなる…」とどこからともなく漏れ聞こえてきた。激しく同意である。若き才能に驚かされた。

TESTSET

3番手はTESTSET。砂原良徳・LEO今井・白根賢一(GREAT3)・永井聖一(相対性理論)による鉄壁のグルーヴなんて言葉は陳腐過ぎて、そう書くのは恥ずかしくなってしまうが、もうそうとしか書きようがない程の素晴らしき鉄壁のグルーヴが1曲目「Interface」から存在していた。全ての楽器のビートが同時に耳に心に飛び込んで自然に突き刺さっていく感じ……。LEOの手による表現だけで吞み込まれていくし、続く「Over Yourself」でののっけから響くLEOのシャウトは迫力の凄みが桁違いすぎる……。どんどんグルーヴは強くなっていき、ファンクも感じられて、LEOも激しく歌い、激しく動いていく。「Crybaby Drop」のビートにもとりつかれたように聞き入る。LEOのシャウト〆にも痺れた……。

白根の一発一発のビートが重く響く「Tsetse」、シンセの音色が鮮やかな「Japanalog」。4人が横一列に並ぶフォーメーションも絵になる。「Sing City」は日本語詞ならではのセンチメンタル感、エモーショナル感があり、より情緒を感じたし、情景が思い浮かんだ。「Yume No Ato」はメロディックなナンバーであり、作曲者である永井が歌う。こちらも日本語詞であり、これまでとは違うポップさも感じ取れた。

MCでは砂原が味園ユニバースのCMをYouTubeでずっと観ていたことを明かして、さっき作ったというCMの音を再現する。今までもTESTSETのライブを観てきていたが、MCでしっかり喋るイメージがなかっただけに、4人がフランクに話す姿は新鮮な魅力であった。

高橋幸宏「Glass」のカバーでは音がうねりまくり絡みまくる模様に、曲終わり大満足な拍手を贈る観客。続くはMETAFIVE時代から鳴らしているLEO作の楽曲「The Paramedics」。よりテクノを感じるナンバーであり、LEOはカウベルを叩き鳴らす。硬派なダンスチューンで、ただただ我々は踊るのみ……。ラストナンバー「A Natural Life」。重たいビートなのに軽やかさがあり、たまらなく楽しく踊れた。

アンコールに応え、すぐに出てきたメンバーは少し喋った後に、「Bumrush」が鳴らされる。疾走感があり、そこに変わらず鉄壁感があり、鳴らされた瞬間に感じるサウンドの凄み。最初から最後まで圧倒されて呆気に取られた時間。高揚と興奮が静かに押し寄せてくる不思議な感覚で、伸びやかに踊らされていく……。MCによる効力もあったが、それだけではない人間味あるサウンド・ビート・メロディー全てに魅惑された。

「Next To 湯(You)」は、「#4」を4月6日(日)にQoodow、ゲシュタルト乙女、CheChe、DYGL、Helsinki Lambda Clubを迎えて、そして立て続けに、「#5」を4月29日(火祝)にa flood of circle、オレンジスパイニクラブ、PK shampooを迎えて、今までと同じく味園ユニバースで開催する。いつまで味園ユニバースが開館されているかも含めて、この『Next To 湯(You)』に注目をし続けて欲しい。

取材・文=鈴木淳史 写真=清水音泉 提供(撮影:渡邉一生)

イベント情報

『Next To 湯(You)#4』
日程:2025年4月6日(日)
時間:OPEN 15:30/START 16:00
会場:大阪・千日前ユニバース(味園ビルB1)
出演:Qoodow / ゲシュタルト乙女 / CheChe / DYGL / Helsinki Lambda Club
料金:(前売)
[入浴券<一般>] 4,500円(税込)
[入浴券<学割>] 3,500円(税込)

イベント情報

『Next To 湯(You)#5』
日程:2025年4月29日(祝)
時間:OPEN 17:15/START 18:00
会場:大阪・千日前ユニバース(味園ビルB1)
出演:a flood of circle / オレンジスパイニクラブ / PK shampoo
料金:前売
[入浴券<一般>] 4,500円(税込)
[入浴券<学割>] 3,500円(税込)
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