『オーケストラ モチーフ』北欧をテーマに5回目の演奏会

インタビュー
クラシック
2016.3.13
コンミスの大澤愛衣子さん(左)代表の日置駿さん(右)

コンミスの大澤愛衣子さん(左)代表の日置駿さん(右)

たった一度の演奏会で164万円の寄付金を集めることができたオーケストラをご存知だろうか。そんなとんでもないことをやってのけたのがオーケストラ モチーフだ。現在、オーケストラの代表を務める日置駿さんが中心となり、2012年の9月に慶應義塾大学や東京芸術大学、桐朋学園大学の1年生によって設立された。現在もメンバーは大学生中心であるものの、日本音楽コンクールの入賞者や、すでにソロリサイタルを多く開催している実力者が多数在籍しており、昨年のラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンにも出演した。また、twitterでは「これ学生なのか。すんばらしいクオリティ!」とツイートされるなど注目を集めている。

日置さんは幼少の頃からヴァイオリン奏者として数々のコンクールで入賞を果たしてきた。そんな彼は、大学進学時に3つの目標を決めたという。その1つが「オーケストラを作る」というものだった。当初はただ単に、オーケストラを作ろうと思っていた日置さん。しかし、NPO法人ジャパンハート学生チームで当時代表を務めていた松村一希さん(慶応義塾大学医学部)に会い、彼から聞いたある言葉で日置さんの気持ちは大きく変わった。その言葉とは「HIVや人身売買が社会問題となっているミャンマーの子供達をそうした犯罪から守るためにジャパンハートは養育施設を運営しているが、身を守ろうとすべく都市部から隔離された場所に子どもたちはいるため、夢は何か?と尋ねても驚くほど選択肢が少ない事を知った。なんとかならないだろうか」というものだった。この言葉がきっかけとなり、日置さんは音楽こそ子どもたちの夢の選択肢になりうるのではないかと思い立ち、ミャンマーに音楽を届けることを決めた。そして信頼できる7人の仲間と共にオーケストラ モチーフを立ち上げた。

その後、何百という数の企業に協賛のお願いをして、最終的に2社から協力をしてもらえることが決まり、2013年9月に第1回の演奏会を行った。1200席がほぼ完売、寄付金(売り上げ)は164万円となり大成功を収めたのと同時に、ミャンマーに行くことが現実的になった瞬間ともなった。

「ミャンマーに音楽を届けたい!」と考えてから1年半が経った2014年3月、ついにミャンマーに到着。「ミャンマーの子どもたちはクラシック音楽を勉強することはもちろん、聴くこともないため、受け入れてもらえるか不安」だったそうだが、ヴァイオリン、チェロなどの弦楽器をはじめ、トライアングルやタンバリンなどの小型打楽器、電子ピアノ、鍵盤ハーモニカなど12種類を持って行き、現地の子どもたちに体験をしてもらった。すると彼らは興味を示し、自然と笑みがこぼれたという。そんな子どもたちを見て、日置さんをはじめとるオーケストラのメンバーは「音楽の原点を見つめ直すきかっけ」にもなったと振り返る。その後、2度にわたるミャンマー訪問や福島県相馬市での指導ボランティアを通して、多くの子どもたちと音楽で関わりを持ってきた。

その経験が演奏会にも生かされていく。2014年5月に行われた第2回の演奏会ではファミリーコンサートと題して、子どもも聴きやすき楽曲を演奏。また、指揮者体験ができるコーナーを設けたり、舞台裏ツアーを実施し、こちらも大成功を収めた。

そして、この3月にはオーケストラ モチーフにとって節目となる5回目の演奏会が行われる。「今回のメインに選んだシベリウスの交響曲2番はオーケストラ モチーフの音にとても合う曲だと思う」とコンミスを務める大澤愛衣子さんはいう。

メンバーの多くが大学4年となり大学の卒業を迎え、今までと同じように活動を続けていくのは難しくはなるが、「今後は活動の基盤を築くために自分たちできちんと黒字化を目指し、事業として自立させたい。そして、演奏家が職業として憧れられるものにしていきたい」と日置さん。

「音楽で人の心をふるわせたい!」が彼らのモットーだ。これだけの熱い想いと行動力がある彼らだからこそ、伝えられる音楽がきっとある。

イベント情報
第5回 Orchestra MOTIF "Anniversary Concert"

■日時:2016年3月22日(火) 19:00開演
■会場:杉並公会堂 大ホール
■料金:2000円(全席指定)
■曲目:
J.シベリウス/フィンランディア
E.グリーグ/ペール・ギュント第1組曲・第2組曲
J.シベリウス/交響曲第2番 ニ長調 op.43
■公式サイト:http://orchestra-motif.com/​
 
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