93歳の伝説的巨匠イヴリー・ギトリス(ヴァイオリン)にインタビュー

インタビュー
クラシック
2016.4.4
イヴリー・ギトリス(ヴァイオリン)とヴァハン・マルディロシアン(ピアノ)

イヴリー・ギトリス(ヴァイオリン)とヴァハン・マルディロシアン(ピアノ)


伝説的ヴァイオリニスト、イヴリー・ギトリス。1922年イスラエル・ハイファ生まれ。8歳の時ブロニスラフ・フーベルマンに認められ渡仏。パリ音楽院に学び12歳で首席卒業。ジョルジュ・エネスコ、ジャック・ティボー、カール・フレッシュといった超一流ヴァイオリニストたちに師事。ソリストとしてデビュー後は人気を博し世界中の名だたるオーケストラと共演した。また、1968年にジョン・レノン、エリック・クラプトン、ミッチ・ミッチェル、キース・リチャーズによって一度だけ結成されたスーパーバンド「ザ・ダーティー・マック」の、「ホール・ロッタ・ヨーコ」という曲に参加したこともある。さらに、フランソワ・トリュフォー監督の映画「アデルの恋の物語」(1975年)において催眠術師の役を演じるなど、クラシック音楽以外のフィールドでも幅広い活動を繰り広げて来た。
 
一方、ギトリスは親日家としても知られる。親しいマルタ・アルゲリッチの要請により、別府アルゲリッチ音楽祭にもたびたび登場してきた。2011年の東日本大震災が発生すると直後に自費で来日し被災地を慰問。その活動はほぼ毎年続けてきている。なお、2015年11月のパリのテロ事件に際しては、現場近くで追悼演奏を行ったことがニュースで報じられた。そんなギトリスが2016年も来日し、東京交響楽団との共演やリサイタルが予定されている。巨匠独特の、「ギトリス節」と呼ばれるアクの強い演奏を生で堪能できる貴重な機会だ。そんな折、ギトリスへのインタビューが届いたので、ここに紹介する。
 

--ここ最近は毎年日本に来ていただいてます。日本に対して、何か感じることはありますか?

ギトリス: 感じることと言えば…戻ってくる「家」だな。いつ訪れてもやはり、「家」に帰ってきたなぁと感じるよ。場所も人も大好きだし、なんというか、本当に「家」のようだね。

--今年93歳で来日するギトリスさんのそのパワーがどこからくるのか、教えてください。

ギトリス: そんなことは分からんよ。天にいる神に聞いてくれ。なんでこんなに元気なのか、私にも分からない(笑)

--オーディエンスはあなたの音楽性がとても大きくて深いものだと感じています。演奏前に特に意識していることは何ですか?

ギトリス: ステージに向かう前に技術的なことを育んでゆこうという考えは私にはない。調和のとれた演奏とは、常にステージの上で瞬間瞬間で感じ取られてゆくべきものだからね。しかも、私一人でステージを決めてゆくものでもない。私のパートナーはオーディエンスの皆さんであり、皆さんと様々な感覚を共有し、創造してゆくことが重要なのだ。その中で私という存在は、協力関係を進めるための、ほんのひとかけらにすぎない。その場にいる全員がアーティストだと思っている。

--最近の若い演奏家の演奏について何か感じられることはありますか。

ギトリス: とても才能のある若者が、今はたくさんいる。ただ、以前と比べて若い演奏家に対して求められることが変質した。残念ながら、今は演奏に対して、とかく完璧さを求められるようになった。機械のような完璧さを要求される。しかし、それは間違っている。演奏に求められるべきは人間性、あるいはフィーリングだ。フィーリングとはつまり…愛のようなものである。愛は幸福をもたらすだけとは限らない。演奏もまたしかりだ。音楽はただ人を幸福にさせるためだけにあるのではなく、深い気持ちや寂しい気持ちにもさせ、時には涙を流させることさえある。しかし、それこそが音楽の良いところなのだ。時としてラブ・ストーリーはあまりに辛かったりもするけれど、エンディングまで行って振り返れば、笑って終われることだってあるよね。そこに行き着くまでに「なぜ?」「ひどい!」と恋の痛みが嘆かれることがあっても、最後はハッピーになれるんだ。演奏の本質も、とどのつまりは、そういうことが求められるべきなのだ。

--日本の皆さんへメッセージをお願い致します。

ギトリス: (日本語で)「こんにちは、日本の皆さん」
全ての日本のファンと友人たちへ。私はあなたがたをとても愛しています。私のことも愛して欲しい…とは頼まないけれど。もし私があなたがたの好まない人物になってしまったとしても、それでも私はずっと、あなたがたと共にいるからね。

ギトリスと共演する東京交響楽団 (撮影:山口敦)

ギトリスと共演する東京交響楽団 (撮影:山口敦)

(インタビュー:テンポプリモ、構成:安藤光夫)
 


☆ヴァイオリニストのイヴリー・ギトリス氏が体調不良のため、来日が延期となりました。
 
●4/26の公演については、代わってヴァイオリニストの神尾真由子が出演し、公演の趣旨を「イヴリー・ギトリスを応援するコンサート」とし、プログラムを一部変更して開催します。指揮者・管弦楽は変更ありません。詳細は招聘元テンポプリモのサイト http://tempoprimo.co.jp/ にてご確認ください。
※変更内容について
【当初の予定プログラム】
チャイコフスキー/バレエ組曲「くるみ割り人形」
ショーソン/詩曲(ソロ:イヴリー・ギトリス)
J.S.バッハ/ヴァイオリン協奏曲第2番(ソロ:イヴリー・ギトリス)
***
ベートーヴェン/交響曲第5番「運命」

【変更後のプログラム】
チャイコフスキー/バレエ組曲「くるみ割り人形」より抜粋
チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲ニ長調(ソロ:神尾真由子)
***
クライスラー/美しきロスマリン(※録音…ソロ:イヴリー・ギトリス、2015年紀尾井ホールにて収録)
ベートーヴェン/交響曲第5番「運命」
管弦楽:東京交響楽団(指揮:ニコライ・ジャジューラ)…変更なし
 
●5/3の公演については、9/11(日)19:00に紀尾井ホールにて振替公演をおこないます。お手元のはそのまま9月の公演に同席種・同席番・同料金にてご利用いただけますので、大事に保管ください。なお、払い戻しご希望の方は、ご購入された各プレイガイドにお問い合わせください。詳細は招聘元テンポプリモのサイト http://tempoprimo.co.jp/ にてご確認ください。

 
公演情報
「イヴリー・ギトリスの協奏曲」 公演内容変更
共演:東京交響楽団(管弦楽)指揮:ニコライ・ジャジューラ

■日時:2016年4月26日(火)19:00開演(18:30開場)
■会場:東京芸術劇場コンサートホール
■予定プログラム:
チャイコフスキー/バレエ組曲「くるみ割り人形」
J.S.バッハ/ヴァイオリン協奏曲第2番ホ長調 ほか(予定)
ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調「運命」
■料金:S席8,500円 A席7,500円 B席6,500円 他 ※未就学児入場不可
公式サイト:http://tempoprimo.co.jp/contents/ticket/gitlis2016.html
問合せ:テンポプリモ 03-5810-7772

 
公演情報
「イヴリー・ギトリス ヴァイオリン リサイタル」 →公演延期
ピアノ:ヴァハン・マルディロシアン

■日時:2016年5月3日(火・祝)14:00開演 (13:30開場)
■会場:紀尾井ホール
■予定プログラム:
ベートーヴェン/ヴァイオリン・ソナタ第5番「春」
クライスラー/愛の悲しみ、美しきロスマリン
マスネ/タイスの瞑想曲
パラディス/シチリアーノ
ブラームス/F.A.E.ソナタ
ブロッホ/ニーグン ほか
※プログラムは当日発表
■料金:全席指定7,500円 他 ※未就学児入場不可
公式サイト:http://tempoprimo.co.jp/contents/ticket/gitlis2016.html
問合せ:テンポプリモ 03-5810-7772

シェア / 保存先を選択