海外でも活躍 美しい舞踏を魅せる注目カンパニー・とりふね舞踏舎へインタビュー

インタビュー
舞台
2016.4.22
とりふね舞踏舎『SAI』

とりふね舞踏舎『SAI』

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とりふね舞踏舎は、舞踏研究家の三上賀代、および作家・三上宥起夫によって創立された舞踏カンパニーだ。国内はもとより国外13ヶ国、27都市においても公演を行った実績をもつ。1994年には、傘下団体として湘南地方在住の10代〜70代の一般市民からなる「湘南舞踏派」を立ち上げた。加えて、とりふね舞踏舎の関西拠点として「平安舞踏派」を組織し、育成にあたっている。そんな、日本の舞踏界にて精力的な活動を続ける『とりふね舞踏舎』に、次回公演について伺った。


--とりふね舞踏舎結成までの経緯を教えてください。

土方巽に師事した三上賀代によって解明された「土方巽暗黒舞踏技法」(お茶の水女子大学修士論文)をもとに、元・天井桟敷の三上宥起夫が1992年に結成しました。旗揚げ公演『献花』(1993年)。1996年、一般シロート市民中高年(平均年齢50代)と共に『私が生まれた日』を発表し、「舞踏公演の新たな展開」と評価されました。

同公演を期に「湘南舞踏派」を傘下に組織。三上賀代のソロ作品と同派を中核とした作品を2年に一作を発表(全七作)し、活動展開をはかっています。アヴィニョン祭(1993年) ロシア、ペルミ国際フリンジ演劇祭1994年)、ニューヨーク「ラ・ママ」(同)、イタリア、スポーレット演劇祭(1995年)、英国、エジンバラ演劇祭(1995年)、アイルランド、サミエル・ベケット劇場(2004年)への出演経験があります。また他にも、スペイン、ギリシャなど海外公演を行っています。1999年には、チェコ・プラハ市<世界民族音楽祭”Respect”>オープニングセレモニーに特別招待され、プラハ城城内「スペインの間」にて公演を行いました。この公演は、各国新聞批評で絶賛を受けました。

2004年には神奈川県の茅ヶ崎から大磯に拠点を移し、大磯山中に野外劇場「黒金閣」建設しました。夏季には10日間の舞踏ワークショップを行い舞踏家養成を行っています。
 

三上賀代 ミラノ『Sai』(‘15) 於・Teatro dell’Arte

三上賀代 ミラノ『Sai』(‘15) 於・Teatro dell’Arte


 

--とりふね舞踏舎の作品の特徴や雰囲気、作風を教えてください。

三上賀代の土方巽の暗黒舞踏技法解釈による身体づくりを徹底的に行って公演展開を図っています。以下に海外批評によって特徴、雰囲気、作風を伝えています。

●「素晴らしい、実に美しいイメージ・・・これこそが舞踏である」(1993年、フランス)。

●「舞台で繰り広げられる動きは、驚かせ、楽しませ、感動させ、仰天させた。これらはすべて同時に押し寄せた。伝統的なロシアの古典派ではぐくまれている観客には、舞踏のパントマイムは異様である。しかし、好奇心をそそる。…このワザと崩した動きのなかに、大変古くからある公理が隠されている。見慣れているものを見入ると予期しないものが見え、単純なものに見入ると複雑なものが見え、小さいものに見入ると、大きなものが見えてくるこの<芸術の黄金公式>…・東方のエレガントな身振りで表現されている人生哲学の舞踏を見ました」(1994年、ロシア)。

●「内容は個人の生涯に限定されることはなく,時は民族の先祖たちの世界であり、地上の俗世であり、さらには精神界である。…崩れ落ちそうになりながら歩いてゆく、その腰の振り方は奇怪なまでに蠱惑的、たとえて言えば、魚であることを夢見ているゾウの姿」(1994年、米「Village Voice」紙)。

●「三上賀代は確かに非常に強く激情と救済という感覚を創出する。あまねく部分に鮮烈なイメージがあった。…明らかに誠実な作品である」(1994年、米「New York Times」)。

●「見える者の背後に潜む、霊、魂、あるいは情感などと呼ぶところの無形のものを表出させることは、何時の時代であっても芸術の挑戦であり、使命であった。その見えざる目標を求める人は稀有でありまた尊重に値する。とはいえ、時々は束の間であるけれどそれをつかむ人もいる。(いつも束の間なのだ)…・ボルヘスが『エル・アレフ』で獲得したのと同じ方法(有限の言葉の内に存在する無限性を表現する)で賀代は本質を暴くのに成功している・・・」(1996年、スペイン「EL CORREO」)。

●「ここにあるのは、完璧な調和の元におかれた動作であり、無身体的反応と情感と思考の三位一体化である。それは演技を超えた、存在そのものであるとしか言いようのない、ある特権的な状態である」(1999年、英国・エジンバラ演劇祭「Herald」紙)。

●「滅び行く亡骸の無限の悲しみー舞踏が作り出す驚異の風景」(2004年、アイルランド「トリニティ。ニュース」)。 
 

本番前の円陣

本番前の円陣


 

--次回公演『とりふね舞踏舎 SAI』について、作品のあらすじを教えてください。

舞踏は一切の作品の解説、説明もないところから始まっています。従って、ストーリーらしきものはありません。しかし本作品は、2011年の東北大震災時に間接被災したことが背景にあり、その影響下に作舞したものです。「どんな時代にあっても歌うべき人は歌い、無踊るべき人は踊るべき」、そんな気概で作品化しました。

2012年に東京にて初演、2014年には神奈川芸術劇場で再演を行いました。また、2015年にはイタリア、ミラノ市のトリエンナーレ・デザイン美術館内の劇場、Teatro dell’Arteで再々演し絶賛された作品でもあります。結果的に東北大震災に被災した方たちへのエールになっていると思います。それは、今回の熊本震災被災者に対しても共通したものです。
 

ミラノの出演者

ミラノの出演者


 

--次回公演『とりふね舞踏舎 SAI』の見どころを教えてください。

とりふねには珍しく男子が集まりました。京都造形大生、京都大生、京都精華大生をはじめとする6人のとりふね男子は注目株です。京都で2か月、大磯でほぼ3か月、みっちり鍛えました。また、とりふね女子の乱舞はゲスト出演する「頭脳警察」のドラマー・石塚俊明を「燃える」と言わしめさせた逸品です。壮絶なバトルが展開されることとなります。加えて優美さももちろん持ち合わせています。

勿論、湘南舞踏派の面々の20数年の舞踏キャリアも並ではありません。19歳から81歳という年齢幅が舞台に玄妙不思議な彩り展開します。新演出、振付となります。
 

劇場入り口での記念撮影

劇場入り口での記念撮影


 

 --とりふね舞踏舎さんの今後の展望・野望があれば教えてください。

1980年代、暗黒舞踏は「戦後日本に生まれたオリジナルな現代舞踊」として欧米において評価、今日その舞踊形式はButohの名称で世界に定着しています。今回の公演は、三上賀代の「増補改訂 器としての身體―土方巽・暗黒舞踏技法へのアプローチ」(2015年、春風社既刊)と英国Ozaru Booksからの出版を記念した公演となります。本書は1993年の「器としての身體」(あんず堂出版)以来長く英訳を待たれていたもので、舞踏家にとっては「バイブル」といわれ、この本によって、観客の舞踏を見る見方が変わった」との評価がある。今回の出版、公演によってコンテンポラリー化した舞踏の現状に一石を投じるものでありたいと考えています。

劇場内スタッフ

劇場内スタッフ


 

--とりふね舞踏舎さんに関心を持たれた方に、メッセージをお願いいたします!

 何を言っても見ないことには始まらない。是非足を運んでいただきたい。これまで、とりふね舞踏舎の代表作は『献花』と言われてきましたが、『Sai」を最高作とする声もあります。また、舞踏をやってみたいという方にはワークショップにご参加ください。

 


 KBS (2014年) 『色・四つの欲望 「白」』より
(停止画で写っている二人は『ひのもと』(2001年)  三上賀代と玉野黄市)

 

【公演歴】:詳細
【批評〈国内外〉】:詳細
 

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公演情報
とりふね舞踏舎『SAI』

日程:2016/05/20(金)~2016/05/22(日)
5/20(金)19:30
5/21(土)15:00
5/22(日)15:00

会場:座・高円寺1

出演者:三上賀代、小川あつ子、ひかり、平井紫乃、内田征代
村上皇太后、多屋民、中川亜美、青山由佳、貞森裕児
ほし☆さぶろう、吉田祐、正學居士、松永将典、畑中良太
埜口敏博、村松佳紀
ドラム=石塚俊明(頭脳警察)

スタッフ:構成・演出・振付=三上宥起夫
舞台美術=小林芳雄
照明=三枝淳
音響=新明就太
衣裳デザイン=北上亜矢
染色=辛島廣子
和ロゴ=山内清城
英ロゴ=榎本了壱
衣裳制作=湘南舞踏派
舞台監督=川西修
宣伝美術=森崎偏陸
写真=宮原夢画
制作=とりふね舞踏舎
制作補=佐藤雄司, 相馬満男
協賛 =春風社
京都精華大学木野会関東支部
協力=湘南舞踏派(青山竜樹、長野良美、大滝欣也、今古今(大磯町))
主催:NPO法人Butohpia

 

書籍情報
日英同時発売
『増補改訂 器としての身體-土方巽・暗黒舞踏技法へのアプローチ』
The Body as a vesselApproaching the Methodology of Hijikata Tatsumi’s Ankoku Butō
 
英国Ozaru Books版(2016年4月12日発売)

英国Ozaru Books版(2016年4月12日発売)


本書は、著名な舞踊評論家、市川雅氏が「特に4章(舞踏技法)以降は我々外部の者には立ち入ることが出来ない領域」と評価した一冊。
舞踏家・長岡ゆり氏は「これまで舞踏家の著書や、写真集,舞踏評論などはあったが、本書のように稽古ノートなどの現場資料を駆使して、いかに舞踏は生まれたかを探ろうとするものはなかった。
その意味でも本書は画期的な資料価値があり、また私たち舞踏家にとっては、より緻密な身体訓練をする上で格好のテキストとなりうる」(『自由時間』(1993年)と記し、ダンス批評の山家誠一氏は『TOKYO ARTSCENE』誌(1993年)に、三上賀代が、土方の下にいた足掛け4年間の体験と、その時記した膨大な稽古ノートをもとに、暗黒舞踏を踊るための技法を言語化することを試みたとし、「…本書で知ることは,観客である我々に、舞踏に対する全く別の視線を与える」と評価,『週刊文春』は「推理小説のような謎解きの面白さ」があると新刊紹介、来国内外で活躍した舞踏家・室伏鴻は「『器としての身体』は、土方について書かれたものの中で一番信頼のおけるもの」と評価している。
 
春風社版(2015年8月既刊)

春風社版(2015年8月既刊)

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