GLIM SPANKY、plentyを迎えたツアーファイナルに見たさらなる飛躍の兆し
GLIM SPANKY Photo by HAJIME KAMIIISAKA
“ワイルド・サイドを行け”ツアー・ファイナル 2016.4.16 恵比寿LIQUIDROOM
今年１月にリリースした2ndミニアルバム『ワイルド・サイドを行け』を引っ提げたツアーのファイナル公演が、4月16日に東京・恵比寿LIQUIDROOMで行われた。今回のツアーは東名阪の3ヶ所とも2マンライヴ。名古屋と大阪はavengers in sci-fi、東京はplentyが参戦した。
18時20分。LIQUIDROOMを埋め尽くした観客の前に現れたのは、江沼郁弥（Vo/G）、新田紀彰（B）、中村一太（Dr）から成るスリーピースバンド・plenty。打ち込みのリズムをきっかけに始まった「スローモーションピクチャー」で徐々に３人は内に秘めた熱を高め、江沼のハイトーンヴォイスが幻想的なエコーのように場内に響き渡った。同期トラックとバンドサウンドが絡み合った「体温」、３人が作り出す絶妙なグルーヴが心地よい「シャララ」と続く中、観客たちの反応に変化が起こり始めた。１曲目こそ観客の多くはステージ上の３人をじっと見つめ、放たれる音と言葉に耳を傾けている人が多かったが、曲が進むに連れ、手を挙げたり身体を揺らしたりと、目に見える反応が次第に増えていった。2マンライヴとはいえ、フロアを埋め尽くした観客は主催であるGLIM SPANKY目当てが多かったはずだし、plentyがどんな音楽をやっているバンドなのかも知らなかった人、初めて彼らのライヴを観る人も多くいただろう。にもかかわらず、１曲終わるごとに、観客から沸き起こる拍手がどんどん大きくなり、その拍手は初めて彼らのライヴを見たであろう人たちが“plentyってスゴイじゃん！”“カッコいいバンドだね”という思いの表れに違いなかった。
plenty Photo by HAJIME KAMIIISAKA
また「待ち合わせの途中」「さよならより、優しいことば」のあとのＭＣで、江沼が「楽しいです！」と言うと、男性客から「こっちもだよ！」の声が飛び、３人が思わず笑顔になったシーンは観客とplentyの距離がより近くなった証拠だろう。「枠」「最近どうなの？」から、ラストの「蒼き日々」へ。繊細で強靭な高音域の声と共にスコーンと飛びこんでくる内省的な言葉と緻密に組み立てられた音にギュッと掴まれてしまう。約45分のステージで新旧を織り交ぜた8曲を演奏したplentyは、大きな余韻を残してステージを去った。
観客がplentyワールドへとぐいぐいと引き込まれていく。彼らもまたこの場所で演奏することを心から楽しんでいる。そして、以前から彼らの魅力を十分に承知していたファンが“ね？plentyってカッコいいでしょ！”と思わず自慢したくなる感じ。目の前で繰り広げられたそんな素晴らしい光景に、この会場にいる誰もが幸福感を覚えていたに違いない。
plenty Photo by HAJIME KAMIIISAKA
GLIM SPANKY Photo by HAJIME KAMIIISAKA
19時30分。薄暗いステージの中、GLIM SPANKYの松尾レミ、亀本寛貴、そしてサポートメンバーが登場するやいなや大歓声と拍手が起こった。次の瞬間、エレキギターを肩にかけた松尾レミがサッと上に掲げた右手を振り下ろすと、ドラムのカウントで「ワイルド・サイドを行け」が始まり、松尾レミの圧倒的な個性と迫力を持ったハスキーヴォイスと亀本寛貴のギターが鋭い切れ味で攻め込んでくる。曲終わりに松尾が「こんばんは！ GLIM SPANKYです」とクールにキメたあとに続いたシングルナンバー「褒めろよ」「リアル鬼ごっこ」では、観客の手拍子や掛け声が自然と生まれ、その熱い反応がライヴの醍醐味を作り出す。サポートメンバーの栗原大（B）、かどしゅんたろう（Dr）、ゴメス（Key）が、松尾＆亀本と一体となって痛快なロックを立て続けに放ったあとは、ミドルな「ダミーロックとブルース」と「夜明けのフォーク」を。
GLIM SPANKY Photo by HAJIME KAMIIISAKA
GLIM SPANKYは高い年齢層のファンも多く、音楽を長年愛し続けてきた人たちが多いと聞いていたが、GLIM SPANKYの２人が音楽を自由に楽しみ、音楽を愛する仲間と一緒に遊んでいるように、ファンもそれぞれが思い思いにGLIM SPANKYの音楽を楽しんでいる光景がそこにはあった。「BOYS&GIRLS」では“ヘイ ボーイ、ヘイ ガール”と観客から歌声が上がり、軽快なR&R「時代のヒーロー」では亀本がトーキングモジュレーターを披露する場面もあり、５月に配信される新曲にもかかわらず大きな盛り上がりを見せた。
GLIM SPANKY Photo by HAJIME KAMIIISAKA
それにしても、サイケデリックな柄のワンピース姿で、赤いリッケンバッカーを弾く松尾レミは惚れ惚れするほどカッコいい。「NEXT ONE」からフォーキーなロックナンバー「太陽を目指せ」へと続いたあとは、「いつもやっている曲です」と、本編の最後に「大人になったら」を選んだ。この曲をやる前、松尾は静かな口調でこんなことを話した。「デビューする前、お客さんが１人、２人、０人だったとき、電車を逃すと下北沢で始発待ちをする間に安い居酒屋に行ったり、シモキタを歩き続けていると、いろいろ思うことがあって…。でも、そんな時に自分はやっぱり音楽をやりたいと思った」と。そして、「いつまでもキッズの瞳を持った人間になりたい。この曲をみんなの曲にしてくれたら嬉しい」と。デビュー前からライヴで届けてきた歌は、一昨年メジャーデビューしてから慌しくも充実した月日を駆け抜けてきたGLIM SPANKYにとっても、みんなと自分たちをつなげてくれる大切な歌だ。
GLIM SPANKY Photo by HAJIME KAMIIISAKA
アンコールの最初に、松尾は学生時代から知っていたplentyのことを、「流行やミーハーなものに流されず、自分たちの流れを貫いているバンド」「いい歌と美メロ、独特な雰囲気を持っているバンド」と話し、亀本もこの日plentyという新たな“音楽仲間”が増えたことを心から喜んでいるように見えた。そこからＴＶアニメ「境界のＲＩＮＮE」第２シリーズエンディングテーマ曲としてオンエアされている「話をしよう」を人生初披露。そして、ラストに「Gypsy」を高らかに鳴らし、彼らはステージから去ったが、いつまでもアンコールの声は鳴り止まなかった。
GLIM SPANKY Photo by HAJIME KAMIIISAKA
さて、本編ＭＣではGLIM SPANKYの幻想的な楽曲、真夜中の世界を表現した楽曲を中心に披露するコンセプトライヴ『Velvet Theater Vol.2』を、7月9日に前回と同じく東京キネマ倶楽部で開催することが発表された。また、今年は何回かワンマンライヴをやる予定であることも、松尾本人から告げられた。どうやら2016年はこれまで以上に彼らの音楽に触れる機会が増えそうだ。
すでにGLIM SPANKYの虜になっている人たちは数多くいるが、王道ロックやヴィンテージロックなど、GLIM SPANKYの音楽はそう称されることも多い中、ミニアルバム『ワイルド・サイドを行け』収録曲で彼らの音楽表現がより広がったこと、ワンマンライヴ以外にも夏フェスやイベントなどへの出演機会が昨年よりも増えること、また「話をしよう」のようなポップさを纏った楽曲を放ったことによって、今後は急加速で彼らのファン数は増えていくだろう。２０１６年、GLIM SPANKYの快進撃が楽しみでしょうがない。
撮影＝KAMIIISAKA HAJIME レポート・文＝松浦靖恵
GLIM SPANKY Photo by HAJIME KAMIIISAKA
plenty
01. スローモーションピクチャー
02. 体温
03. シャララ
04. 待ち合わせの途中
05. さよならより、優しいことば
06. 枠
07. 最近どうなの？
08. 蒼き日々
01. ワイルド・サイドを行け
02. 褒めろよ
03. リアル鬼ごっこ
04. ダミーロックとブルース
05. 夜明けのフォーク
06. BOYS&GIRLS
07. 時代のヒーロー
08. NEXT ONE
09. 太陽を目指せ
10. 大人になったら
[ENCORE]
11. 話をしよう
12. Gypsy
「話をしよう/時代のヒーロー」
7月9日（土）17:00開場 / 18:00開演
