ゲルギエフ+マリインスキー劇場による『春の祭典』復刻版を5月22日深夜に放送
『春の祭典』1913年初演時のダンサー達
1913年5月29日木曜日午後8時45分(日本時間5月30日午前3時45分)、パリのシャンゼリゼ劇場(Théâtre des Champs Elysées)で、セルゲイ・ディアギレフ率いるバレエ・リュス(ロシア・バレエ団)による『春の祭典』初演が行われた。作曲:イーゴリ・ストラヴィンスキー。振付:ヴァーツラフ・ニジンスキー。指揮:ピエール・モントゥー。客席には、ジャン・コクトー、クロード・ドビュッシー、モーリス・ラヴェル、カミーユ・サン=サーンスら名だたる芸術家が顔を揃えていた。
この日の二か月前の3月30日に、シャンゼリゼ劇場(設計はフランス近代建築の父オーギュスト・ペレ)は杮落としされたばかりだった。ジャーナリストにして興行師であった劇場主のガブリエル・アストゥリュクは、当時における“現代的作品”を上演すべく、劇場のオープニング・シリーズとしてドビュッシーの『遊戯』を5月15日から、そして件の『春の祭典』を5月29日から上演したのである。しかし……
<曲が始まると、嘲笑の声が上がり始めた。野次がひどくなるにつれ、賛成派と反対派の観客達がお互いを罵り合い、殴り合りあい、野次や足踏みなどで音楽がほとんど聞こえなくなり、ついにはニジンスキー自らが舞台袖から拍子を数えてダンサーたちに合図しなければならないほどであった。ディアギレフは照明の点滅を指示し、劇場オーナーのアストゥリュクが観客に対して「とにかく最後まで聴いて下さい」と叫んだほどだった>(ウィキペディアより引用)
バレエ史上、そしてクラシック音楽史上、もっとも有名なこの事件から、もうすぐ103年目を迎える。そんな時期、NHK BSプレミアムが、5月22日(日)深夜(5月23日午前)放送の「プレミアムシアター」で、このニジンスキー振付『春の祭典』オリジナル復刻上演を含む「サンクトペテルブルク白夜祭2008」を放送する(午前2時すぎから放送予定)。プログラムは『春の祭典』に加え、『火の鳥』と『結婚』。『火の鳥』はオリジナル振付ミハイル・フォーキン版をイザベル・フォーキンとアンドリス・リエパが改訂したヴァージョン。1926年時点で『結婚』はブロニスラワ・ニジンスカ(ニジンスキーの妹)によるオリジナル振付版。
サンクトペテルブルク白夜祭は、ワレリー・ゲルギエフがホームグラウンドであるサンクトペテルブルク・マリインスキー劇場にて自ら創設した芸術祭である。2008年はストラヴィンスキーのバレエが連続上演された。ゲルギエフはストラヴィンスキーのバレエ音楽を非常に得意とし、オーケストラコンサートで『春の祭典』や『火の鳥』をさかんに取り上げ、独自の解釈による圧倒的な演奏で聴衆を熱狂させてきた。しかしこれらを本来のバレエ音楽として鑑賞することも、楽曲理解のうえでは重要である。しかも、ここでのプログラムは、いずれもオリジナル振付版を尊重したもの。すなわち初演の原点に立ち返って、作曲家や当時の観客たちの気持ちを理解する試みとしても、たいへん貴重な機会といえるだろう。
なお、同日放送の「プレミアムシアター」前半では、ウィーン国立歌劇場バレエ団の公演「海賊」(振付:マニュアル・ルグリ)も放送される。こちらもバレエ・ファン垂涎のプログラム。
<演 目>
バレエ「海賊」(全3幕)
原振付:マリウス・プティパ ほか
振付:マニュエル・ルグリ
音楽:アドルフ・アダン ほか
台本:マニュエル・ルグリ、ジャン・フランソワ・ヴァゼル
コンラッド(海賊の首領):ロバート・ガブドゥーリン
メドーラ(ギリシャの娘):マリア・ヤコヴレワ
ギュリナーラ(メドーラの友人):リュドミラ・コノヴァロワ
ランケデム(バザールの主、奴隷商人):キリル・クラーエフ
ビルバント(コンラッドの友人):ダヴィデ・ダート
ズルメア(ビルバントの恋人):アリーチェ・フィレンツェ
セイード・パシャ(トルコの総督):ミハイル・ソスノフスキー
ウィーン国立バレエ団
ウィーン国立歌劇場バレエ学校
<指 揮>ワレリー・オブジャニコフ
<照 明>マリオン・ヒューレット
ワレリー・ゲルギエフ指揮
バレエ「火の鳥」「春の祭典」「結婚」
<演 目>
「火の鳥」
<音 楽>イーゴリ・ストラヴィンスキー
<台本/振付>ミハイル・フォーキン
<改訂振付>
イザベル・フォーキン
アンドリス・リエパ
<美 術>
アレクサンドル・ゴロヴィン
レオン・バクスト
ミハイル・フォーキン
<音楽・台本>
イーゴリ・ストラヴィンスキー
ニコライ・レーリヒ
<美 術>ニコライ・レーリヒ
<原振付>ワツラフ・ニジンスキー
<振付復元>ミリセント・ホドソン
<音楽・台本>イーゴリ・ストラヴィンスキー
<美 術>ナターリャ・ゴンチャロワ
<振 付>ブロニスラワ・ニジンスカ
マリインスキー劇場バレエ団
管弦楽:マリインスキー劇場管弦楽団
指 揮:ワレリー・ゲルギエフ