デトロイト市民の想いがつまった絵画たちが来日 『デトロイト美術館展』が大阪で開幕

レポート
アート
2016.8.8
デトロイト美術館展

デトロイト美術館展

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7月9日(土)~9月25日(日)まで、大阪市立美術館にて『デトロイト美術館展』が開催されている。アメリカ・ミシガン州にあるデトロイト美術館は、古代エジプト美術から現代美術まで約65,000 点以上の作品を所蔵する、アメリカを代表する美術館のひとつとだ。

デトロイト美術館は、かつて自動車産業で築き上げたデトロイト市の富の象徴ともいえる、"奇跡のコレクション"を所蔵している。本展では、そのコレクションの中から、モネ、ドガ、ルノワール、ゴッホ、ゴーギャン、セザンヌ、マティス、モディリアーニ、ピカソなど、近代ヨーロッパ絵画の”顔”ともいうべき作家たちの選りすぐりの名画52点が来日している。

実はデトロイト美術館は、2013年にデトロイト市が財政破綻した際に、財源確保のために所蔵品を売却しなければならないという窮地に立たされた。しかし、デトロイト市民たちは、自分たちの財産でもある美術品を守るために結束。国内外からの援助もあり、デトロイト美術館は1点も作品を売却せずに危機を乗り越えることができた。

そんな『デトロイト美術館展』では、7月16日(土)、17日(日)、20日(水)に閉館後に、各日限定人数でゆっくりと鑑賞できるイープラスによる貸切特別公開が行われた。今回は当日の様子とあわせて、本展のみどころを紹介していく。



まず、大阪市立美術館のエントランスに再現された壁画(タペストリー)、ディエゴ・リベラ《デトロイトの産業》に注目したい。デトロイト美術館の四方の壁には、ディエゴ・リベラによって、自動車をはじめとするデトロイトの代表的な産業が描かれているのだが、その一部をタペストリーに再現し、雰囲気を盛り上げている。

ディエゴ・リベラ《デトロイトの産業》

ディエゴ・リベラ《デトロイトの産業》

正面のタペストリーを鑑賞後、いよいよ展示室へ。展示室入口では、女優・鈴木京香がナレーションをつとめる音声ガイド(有料音声ガイド)が貸し出されている。美術館の静かな空間のなかで、優しい声で作品の解説を楽しむ……。とても贅沢で優雅に絵画鑑賞をすることができるだろう。

 

第1章 印象派

展覧会は4章から構成されており、それぞれのテーマに沿った名画が堪能できる。

第1章は、西洋絵画の中でも特に日本で人気の高いジャンル、印象派。この時代はヨーロッパを中心に、オリエンタリズムやジャポニズムが流行していたこともあり、ルノワール、モネ、ドガ、ピサロら印象派の画家たちの多くは、日本の浮世絵に影響を受け、自らの作品にそのエッセンスを取り入れたことが、印象派が日本で高い人気を誇る理由の一つと言われている。

ピエール・オーギュスト・ルノワール《座る浴女》1903年〜1906年

ピエール・オーギュスト・ルノワール《座る浴女》1903年〜1906年

 

第2章 ポスト印象派

ゴッホ、ゴーギャン、セザンヌ……。誰しも聞いたことのある名前が続く第2章。アメリカの公共美術館に初めて収められた最初のゴッホの作品である「自画像」の隣には、日本初公開のゴッホ作《オワーズ川の岸辺、オーヴェールにて》が展示されている。貸切特別公開のこの日は、これだけの名画であるにもかかわらず、限られた人数のみでゆっくりと、ひとつひとつの作品を楽しむ事ができた。

フィンセント・ファン・ゴッホ《オワーズ川の岸辺、オーヴェールにて》 1890年

フィンセント・ファン・ゴッホ《オワーズ川の岸辺、オーヴェールにて》 1890年


 

第3章 20世紀のドイツ絵画

ヘッケル、ココシュカ、ベックマン、カンディンスキーら、ドイツ絵画の代表的な作家たちを総覧する第3章。人間の内面を激しい色使いで表現した画家たちは、ナチス・ドイツによって「退廃芸術」と弾劾された。デトロイト美術館が購入したことで、ナチス・ドイツによる没収や破壊を逃れた作品も……。ここでは、モネの作品に影響を受け、法律研究を放棄して絵画修行し、のちに抽象画の巨匠として名を馳せるカンディンスキーの作品にも注目して欲しい。

ワシリー・カンディンスキー《白いフォルムのある習作》1913年

ワシリー・カンディンスキー《白いフォルムのある習作》1913年

 

第4章 20世紀のフランス絵画

マティス、モディリアーニ、ピカソら、個性的な画家たちの作品が最後の部屋を彩っている。ピカソ作、日本初公開となる《読書する女》や、マティスがキュビスムの影響を受けた頃に発表した《窓》など、20世紀のアメリカ美術界にセンセーションを巻き起こした作品が並ぶ。

 

アンリ・マティス《窓》1916年

アンリ・マティス《窓》1916年

 

なお、会場内には子供達のために、気に入った作品の絵と感想が書ける「デトロイト美術館展鑑賞ノート」が設置されている。子供も楽しめるような工夫がなされているのも本展の魅力の一つ。中学生以下は入場無料なので、子供たちにもぜひ、大阪市立美術館で有意義な夏休みを過ごして欲しい。

kidsノート

kidsノート

 

本展に出品されているすべての作品が、デトロイト美術館とデトロイト市、アメリカにとって大きな財産だ。日本初公開となる15点もの作品を含めて、余すところなくまるごと楽しんでいただきたい。『デトロイト美術館展』大阪会場は9月25日(日)まで開催。

 

イベント情報
大阪市立美術館 開館80周年記念
デトロイト美術館展 ~大西洋を渡ったヨーロッパの名画たち~


日時:2016年7月9日(土) ~9月25日(日)
会場:大阪市立美術館 〒543-0063 大阪市天王寺区茶臼山町1-82

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