『また明日も観てくれるかな?〜So see you again tomorrow, too?〜 』 もっとオリンピックに夢もってもいいんじゃない?と思った午後
今回の訪問に際し、Chim↑Pom卯城竜太氏がいくつかのインタビューに答えてくれた。
――このビルと出会ったきっかけを教えて下さい。
ビルの1階に「TOCAKOCAN」という歌舞伎町の文化や社会的なトーク番組を発信するスタジオがあるんですけど、それをやっていたのが、手塚マキ(※)さんという歌舞伎町の元有名ホストの方なんです。その彼がChim↑Pomメンバーのエリイのご主人だったっていうのが出会ったきっかけですね。
※歌舞伎町で4店舗のホストクラブを経営するグループの創業者。歌舞伎町を中心としたボランティア活動や社会活動家でもある。ビルの解体が決まった際、建て壊しまでの1年間限定で歌舞伎町のためになる事をやってくれないかと組合から依頼を受ける。建て壊し直前も、ホスト、キャバクラ、ゴールデン街、新宿縁のアーティスト、著名人等を集め、トーク番組を配信した。
――このビルの好きなところは?
このビルが完成したのが1964年の東京オリンピックの5ヶ月前なんですけど、それとこのビルだけじゃなく東京のあちこちで新たに「2020年のオリンピックまでに」ってスローガンのもとScrap and Buildされているっていう、時代背景と建物の歴史がループするところが面白いと思いました。それと、交番も雀荘も、トイレもセクシャルなバーも振興組合も、みんなこの同じ建物に入っていたんです。このビル自体が歌舞伎町を象徴しているような点に興味をそそられましたね。あとは、歌舞伎町商店街振興組合です。歌舞伎町っていろんな商売や人がいて、でも組合はそれを善悪で判断をしない。物事を善悪だけで捉えない立場の組合自体の存在もいいなと思いました。
――今回の展覧会で伝えたいことはなんでしょうか。
このビルが建った1964年頃って戦後からの復興で、グラウンド0の状態からインフラを整えていい街を作って行こうとか、オリンピックやって人を呼ぼう、景気を良くしてこう、とか前向きな雰囲気がちゃんとみんなの中にあったと思うんですよね。一方、2020年のオリンピックって、20世紀の夢の再生産のような面もある。当時の人たちがゼロから描きだした夢をもう一度見ようっていう。けど、僕たちは全員21世紀の住人ですよね。20世紀の夢しか見れないんだとしたら、「21世紀のアイデンティティって一体何なんだろう?」とは思います。
今回の作品は会期終了後にも撤去されず、ほぼ「全壊する展覧会」 としてビルの建て壊しに伴って破壊されるという。その後、それらの残骸に、同じく建て壊し物件である渋谷PARCO のネオンサインなどが加わって再構築される予定だ。その再構築作業の結果うまれる作品は「プロジェクト第2弾」として、来年初頭に個展でお披露目されるとのこと。『明日も観てくれるかな?〜So see you again tomorrow, too?〜 』は、今後も終わることなくScrap and Buildされていくのである。
日時:2016年10月15日〜2016年10月31日
会場:歌舞伎町振興組合ビル 東京都新宿区歌舞伎町1-19-3
主催:Chim↑Pom
イベント公式サイト:http://chimpomparty.com/