「知れば知るほど、ジュリエットの強さを感じます」ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』 ジュリエット役:生田絵梨花&木下晴香インタビュー

2017.1.10
インタビュー
舞台

(左から)木下晴香、生田絵梨花

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シェイクスピアが描いた『ロミオ&ジュリエット』は多くの人の涙を誘うラブ・ロマンスとして、舞台・映画・バレエなど数多くのジャンルで取り上げられてきた。

今回上演されるミュージカル『ロミオ&ジュリエット』は、2001年にフランスで初演され、その後スイス、ベルギー、ロンドン、モスクワ、ウィーンなど世界各国で上演され、500万人以上を動員、CD・DVDの総売り上げは700万枚以上を誇る傑作ミュージカル。豊かに彩る名曲の数々、両家の対立を表すアクロバティックなダンスなど見所も満載で、日本では、小池修一郎の演出により、2010年に宝塚歌劇団星組での初演から雪組、月組でも相次いで上演。2011年、2013年には日本オリジナル本格バージョンを上演し大好評を博した。

そしてこの度、新たにオーディションにより選ばれたキャストと、衣裳や装置などを刷新した新演出により、待望の再々演が行なわれる。その中でジュリエットを射止めたのは、『虹にプレリュード』『リボンの騎士』などでミュージカル主演経験を持つ乃木坂46第1期生の生田絵梨花と、全日本歌唱力選手権歌唱王(日本テレビ)の決勝に進出した佐賀県出身の高校3年生、木下晴香。SPICEでは、この二人から話を聞いた。


知れば知るほど、ジュリエットの強さを感じます(生田)
全てが初めての経験なので何もかもが新鮮です(木下)


――お二人はお互いのことをどう呼び合っていますか? 今回初共演となりますが、休憩時間にはどんなお話をしていますか?

木下:(生田さんのことを)いくちゃんって呼んでいます。

生田:(木下さんのことを)晴香ちゃんって呼んでいるのですが、晴香ちゃんは大きな舞台はこれが初めてだというのに堂々としてる。私の方が(年上でもあるのに)いつもあたふたしていて、晴香ちゃんが落ち着かせてくれたりするので、「どっちが年上なんだろう?」って思う時があります(笑)。いろいろと質問攻めにしているよね(笑)。(そこまで落ち着いている晴香ちゃんは)「今までどんな人生を歩いて来たの?」って。最初に会ったのはポスター撮影の時だったけど、その時も落ち着いていた印象があるな。

木下:緊張して心の中ではワーッとなったりしているんですけど、よく「大人っぽいね」って言われます。

生田:私だったら最初の撮影であんなに落ち着いていられないなと思いました。しかもあの時、1人で撮影するのかなと思ってスタジオに行ったら、ロミオと一緒に組みながら撮影することになったのでビックリしたよね(笑)。

木下:ビックリしましたね(笑)。私は撮影の時、初めていくちゃんに会って、「本物だ!」って思いました(笑)。ずっとテレビで見ていた方が目の前にいらして「夢みたいだなぁ」と思ったのですが、すごく優しく話しかけてくださったので安心しました。

生田:そう思ってくれたなら、嬉しいです(笑)。

――初対面でロミオとのツーショット撮影をしたのですね。 少し照れました?

生田:最初は少し恥ずかしかったけど、途中でそういう気持ちはなくなったかな。

木下:身体の向き、手の位置、顔の角度など全て指示してくださったので、それがあったから良かったのかもしれません。「自由にどうぞ」と言われたら困ったかも。

生田:そうそう。すごく細かく指示して教えてくださったから良かった。

木下:それで助けられましたよね。

(左から)木下晴香、生田絵梨花

――稽古が始まってしばらく経ち、少しずつジュリエット像が出来始めた頃かなと思いますが、今の段階でジュリエットという役をどのように捉えていらっしゃいますか?

生田:最初の頃はジュリエットのかわいらしさや切なさに目が行っていましたが、知れば知るほど、ジュリエットの強さを感じます。セリフとしては悲劇的なことも多いのですが、最近はそれも色々な解釈が出来るんじゃないかなって思うようになりました。自分一人でセリフを読んでいるだけでは分からないようなことも、小池先生に演出を付けていただくと、自分の中でそのシーン自体の雰囲気が違って見えてくるんです。演じ方は色々あるし、どんどん変えていけるんだなと思いました。今は、お芝居をすることの面白さを感じています。

木下:私も最初はおしとやかで清楚なお嬢様のイメージが強く、その方向で役作りをしようと思っていましたが、稽古場に入ってからは(ジュリエットの)芯の強さを大事にしなければいけないなと思うようになりました。

――少女から大人になる階段をのぼりはじめたジュリエットですが、共感するのはどんなところですか?

生田:「こうしたい」と決めたことに対して諦めずに突っ走るところに共感します。実はこのオーディションを受ける時、まず事務所の方に相談し、承諾してもらう必要があったのですが、履歴書も全部自分で準備して「自分がこれほど本気でこのオーディションを受けたいと思っている」ということを伝えて承諾してもらったので、そういう時の意志の強さはジュリエットに通じるような気がします。

木下:私もこれまで自分で決めたことは揺るがずに進んできたので、私が共感するのもそういう部分です。

――小池先生は「エネルギー溢れる作品を創りたい」とおっしゃっていましたが、稽古場ではどんなエネルギーを感じますか?

木下:私にとっては全てが初めての経験なので何もかもが新鮮で、「みなさんすごいな」と思います。具体的に何がと言うよりも全てに圧倒されて「やっぱりプロの舞台のパワーってすごいんだな」と、毎日思い知らされています。

生田:全てにおいてエネルギーが飛び交っていますよね。自分が出演していないシーンを見ていても、セットもないし衣裳も着ていないけどエネルギーに満ち溢れているので、これが実際舞台になったらどうなるんだろうと、私自身もすごく楽しみです。小池先生もすごいエネルギーで教えてくださるので、食らいついていくのに必死です。

生田絵梨花

――共演者の先輩方や小池先生から教わって印象に残っていることはありますか?

生田:私は小池先生から「階段を降りる時も相当意識しないといけない」とか、「振り向く時も一瞬スッと伸びてから動いて」とか、そういう立ち居振る舞いを注意されることが多いんです。綺麗に見せようと思ってもどうしたらいいのか分からなくて…。先輩方に聞いたところ「普段からヒールを履くといいよ」とアドバイスをいただきました。稽古着も役に近いような感じのものを着ていらっしゃる方が多いので、そういうところも意識してみようかなと思っています。

木下:私も小池先生に立ち居振る舞いのことをよく言われます。走る時も「突っかけ履いて走っているみたいだよ。もっとお腹に力を入れなさい」とか、「動きが美しくない。手先が中途半端」とか。最近は普段の生活から動きを意識するようになりました。私はまだ緊張してしまっていて“受け”の反応が少ないので「見て感じて動くということを意識してみたら」とか「肩に力が入りすぎているよ」とか、そういうことを香寿さんにアドバイスしていただきました。シルビアさんには「どうしたらそんなに深いところから声が出るのですか?」と聞いて、教えていただきました。周りの先輩方に助けていただきながら少しずつ頑張ろうと思っています。

――制作発表の時に生田さんは「いつかジュリエットの役をやりたいと思い続けてきた」とおっしゃっていましたが、ジュリエットのどんなところに魅力を感じてそう思われたのでしょうか。

生田:ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』を観た時に舞台上の熱量がすごくて、作品自体もそうですし、楽曲の素晴らしさや歌にこめられている魂のようなものを感じました。日々の生活の中でも楽曲が頭の中を流れたり、シーンを思い出したり。こんなに何カ月も観劇の余韻が続いた体験は初めてでした。この作品にいつか参加出来たらいいなと思いました。

――その時に頭の中を流れた楽曲は?

生田:やはり一番印象に残ったのは“エメ”ですね。

――木下さんはミュージカル『ロミオ&ジュリエット』という作品、その中のジュリエットのどういうところに魅力を感じますか。今回初めて長期にわたり親元を離れての生活ですが、故郷を離れて見えて来たことはありますか。

木下:私は生でこの舞台を観たことはなく、宝塚歌劇公演のDVDを観ました。自分が決めたことを曲げずに愛を貫くジュリエットの姿を見て、かっこいいなって思ったんです。ジュリエットとして生きる経験が出来たら楽しいだろうなと思いました。高校の同級生や家族と別れる時にはとても寂しい気持ちだったのですが、夢を叶える為に上京してきた訳ですし、お稽古場でみなさんと楽しく過ごしているので、まだそこまでホームシックにはなっていないです。でも、ちょっと気が早いですが、この公演が無事に終わった後「私はどうなってしまうのだろう」という不安はあります(笑)。

生田:絶対に寂しいよね。

木下:今からもう「終わりたくない!」と思いますね。みんなからもらった寄せ書きも今はまだ敢えて見ないようにしています。きっとそれを見てパワーに変えなくてはいけない時が来ると思うので。

木下晴香

――生田さんも乃木坂46のメンバーとして過ごす普段の活動とはまた違った生活が続いているのではないかと思いますが、今、感じているのはどのようなことですか?

生田:私はこの5年間、乃木坂46のメンバーとしていつも大人数の中で活動してきました。だからその分、普通の人以上に一人になった時、寂しさや不安を感じるんです。制作発表の時は緊張し、どうしていいのか分からないまま終わってしまいましたが、最近は稽古場でコミュニケーションも取れるようになってきて、少しずつ一人でも強く立っていられるようになってきたような気がします。このカンパニーの稽古場には、温かい方たちが近くにいてくださるので、そのお陰だなと思います。晴香ちゃんも言っていましたが、私にとっても全てが新鮮で、新人として挑む気持ちでやっています。

――この作品の中では親子の愛情も描かれていますが、出演が決まった時、ご家族はどんな反応でしたか?

生田:マネージャーさんから電話があった時、オーディションから既に3カ月位経っていたので、ダメだったんだなと思っていただけに驚きました。嬉しさがこみ上げる前に、ずっとあたふたしていましたね(笑)。母に電話した時も「どうしよう、どうしよう…」と連呼していたので、母は冷静に「落ち着きなさい!」って。それを聞いてやっと少し落ち着きました。

木下:私もオーディションのお話をいただいた時に、「ダメかもしれないけどやりたいことだから頑張る」と伝えたら両親は快く送り出してくれました。ジュリエットに決まった連絡が来た時も、両親は近くにいたのですが、私が大泣きして喜ぶ姿を見ながら「大変なことになったね。でも頑張ってね」と。すごく応援してくれているのでありがたいですね。

――まだ見ぬ世界に憧れているジュリエットを演じますが、お二人がこれからの夢に向かって、どう過ごしていきたいかを教えてください。

生田:私は知らず知らずのうちに小さくまとまってしまうようなところがあり、小池先生にも「稽古では大げさだと思う位やっていいから」と言われました。だから、セーブをかけずに色々と挑戦していきたいなと思っています。これから長い間舞台に立てる人になりたいなと思うので、今回の経験も活かし、歌など地道に学んでいかないといけないこともきちんと続けていきたいなと思います。

木下:私はまだ緊張が取れなくて自分の殻がまだ破れていないなと感じるので、まずは恥ずかしがらずに思い切って出来るようにしたいです。これからも大好きな舞台にずっと立ち続けられる女優さんになりたいので、次に繋がるジュリエットになるようにしたいです。その為にもまず、この舞台をひとつの大きなチャレンジとして頑張ります。

(左から)木下晴香、生田絵梨花


インタビュー・文=住川絵理 撮影=花井智子

【ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」キャストインタビュー
ロミオ役:古川雄大&大野拓朗
死のダンサー役:大貫勇輔&宮尾俊太郎
ベンヴォ―リオ役:馬場徹&矢崎広
ティボルト役:渡辺大輔&広瀬友祐
マーキューシオ役:平間壮一&小野賢章

公演情報
ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』

<東京公演>
日程:2017年1月15日(日)~2月14日(火)
会場:東京都 TBS赤坂ACTシアター
料金:S席13,000円/A席9,000円/B席5,000円[全席指定]
好評発売中

<大阪公演>
日程:2017年2月22日(水)~3月5日(日)
会場:大阪府 梅田芸術劇場 メインホール
料金:S席13,000円/A席9,000円/B席5,000円[全席指定]
好評発売中

<スタッフ>
原作:W.シェイクスピア
作・音楽:ジェラール・プレスギュルヴィック
潤色・演出:小池修一郎

<キャスト>
ロミオ:古川雄大 / 大野拓朗 ※Wキャスト
ジュリエット:生田絵梨花(乃木坂46) / 木下晴香 ※Wキャスト
ベンヴォーリオ:馬場徹 / 矢崎広 ※Wキャスト
マーキューシオ:平間壮一 / 小野賢章 ※Wキャスト
ティボルト:渡辺大輔 / 広瀬友祐 ※Wキャスト
死のダンサー:大貫勇輔 / 宮尾俊太郎 ※Wキャスト
キャピュレット夫人:香寿たつき
乳母:シルビア・グラブ
神父:坂元健児
モンタギュー卿:阿部裕
モンタギュー夫人:秋園美緒
パリス:川久保拓司
大公:岸祐二
キャピュレット卿:岡幸二郎
ほか