「ティボルトは、愛を語る上での犠牲者」ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』ティボルト役:渡辺大輔&広瀬友祐インタビュー

インタビュー
舞台
2016.12.27
(左から)広瀬友祐、渡辺大輔

(左から)広瀬友祐、渡辺大輔

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シェイクスピアが描いた『ロミオ&ジュリエット』は多くの人の涙を誘うラブ・ロマンスとして、舞台・映画・バレエなど数多くのジャンルで上演され続けてきた。今回上演されるミュージカル『ロミオ&ジュリエット』は、2001年にフランスで初演され、その後スイス、ベルギー、ロンドン、モスクワ、ウィーンなど世界各国で上演され、500万人以上を動員、CD・DVD総売り上げ700万枚以上を誇る傑作ミュージカル。

豊かに彩る名曲の数々、両家の対立を表すアクロバティックなダンスなど見所も満載で、日本では、小池修一郎の演出により、2010年に宝塚歌劇団星組での初演から雪組、月組でも相次いで上演。2011年、2013年には日本オリジナル本格バージョンを上演し大好評を博した。

そしてこの度、新たにオーディションによって選ばれたキャストと新演出により、3度目の公演が行なわれる。その中でティボルト(Wキャスト)を演じるのは、渡辺大輔と広瀬友祐。ミュージカル『テニスの王子様』や『1789 バスティーユの恋人たち』で共演した経験を持つお二人に話をうかがった。


リスペクトし合える仲でありたいと思います(渡辺)

ティボルトの死で涙を流してもらえたら(広瀬)


――SPICEというエンタメサイトに掲載します。よろしくお願い致します。

渡辺:じゃあトークにもスパイスを効かせないと!

広瀬:辛いのが苦手なのでよろしくお願いします(笑)。

渡辺:ちょっと辛いスパイシー位の感じでもいいんじゃない?

広瀬:いや、ピリ辛も苦手なので、そこのところよろしくお願いします。


――SPICE絡みのトークから始めていただきありがとうございます(笑)。お二人が初めて出会ったのはおいくつ位の時ですか?

広瀬:3歳だっけ?

渡辺:幼なじみかよ(笑)。

広瀬:精神年齢がね(笑)。

渡辺:あ、そういうことね(笑)。ミュージカル『テニスの王子様』(The Treasure Match 四天宝寺 feat.氷帝)の時だから、あれは何年だっけ?

広瀬: 2008年、僕が23歳くらい。

渡辺大輔

渡辺大輔

――ミュージカル『テニスの王子様』がきっかけなんですね。

広瀬:自分がミュージカル『テニスの王子様』に出演する前に、同じ事務所の(今回、ロミオを演じる)古川雄大が出演しているということで、『テニスの王子様』のDream Liveを観に行き、楽屋に寄ったら雄大の横に大ちゃん(渡辺大輔)がいました。その時に言葉を交わしたわけではないのですが、「かっけーな、クソ野郎だな(笑)」と思ったのを覚えています。

渡辺:それ、初耳だし、クソ野郎っていうのは余計だよ(笑)。その後、ミュージカル『テニスの王子様』で共演したんだよね。

広瀬:あの時は大ちゃんを筆頭に「日本にもかっこいい男がこんなにいるんだ」って思いました。

渡辺:僕も同じようなことを思っていたな。ヒロ(広瀬友祐)を始め、新たな対戦校のチームの人たちがイイ男揃いで、歌えるし、踊れるし。勢いがあって失うものがない強さを持っていたので、「これはすごい人たちが入って来たぞ」と、内心思っていたんだよね。

広瀬:そうだったんだ。

渡辺:その時、雄大も同じ気持ちだったと思うけど、僕たちは前からやってきたメンバーなので「新しい人たちに負けていられないぞ」っていう意識がありました。個人で突っ走るんじゃなく、チームワークで魅せるぞという気持ち。お互いが「圧倒させるようなものを創ってやる」という意気込みで挑んでいたので、あの公演はすごくいいものになったんじゃないかな。


――お二人は今年『1789 バスティーユの恋人たち』でも共演を重ね、今回ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』では同じ役、ティボルトでのWキャストですね。昔からよく知っているお二人が同じ役を演じることについてどう思われますか? 自分の中にある“ティボルトな部分”はどんなところですか?

渡辺:実は俺、昔より表に出さなくなりましたけど、負けず嫌いなんです。そして年々その向き合う対象が変わってきました。例えば自分にないものをヒロが持っていたとして、いくら自分がそれを体現しようとしても同じにはならない。だからヒロとはリスペクトし合える仲でありたいと思います。そういう気持ちが大前提にありつつ、ティボルトのようにライバル心をむき出しにする部分があってもいいのかなと思います。最近は、自分と向き合った上で相手と向き合わないといけないなと感じています。

広瀬:自分の意見をハッキリ言わなかったり我慢したりというのは、大人になるにつれて多くの人がそうなっていくものなのなんじゃないかなって思うんです。大ちゃんは自分で「実は負けず嫌いだけど、昔よりそれを表に出さなくなったと」と言いましたが、昔もたくさん我慢していたところがあるんじゃないかなって思う。僕も周りのことを考えて自分の意志を押し殺してしまう部分は、多少持ち合わせているのかなという気がするので、そういうところはティボルトに近いですね。でも、基本的に僕自身はティボルトに全然似ていないんじゃないかと思っているんです。

広瀬友祐

広瀬友祐

――意志を押し殺した時、秘めたまま終わりますか? それとも何かの形で爆発させますか? お互いを見て、「そういうところ、ティボルトっぽいよね」と思う部分は。

広瀬:役者としては、役にぶつけたいなと思っていますが、普段はあまり爆発させることはないですね。

渡辺:今、ヒロが言ったことはそのままティボルトに通じるよね。ヒロには誰にも見せないような部分があるんじゃないかなと思う。でも、自分とニ人だけになった時に見せる顔があるのを知ってるよ。

広瀬:(自分の頬に手をあてて)キャッ!(笑)

渡辺:『1789 バスティーユの恋人たち』の時、ヒロは王族側のフェルゼンで俺は革命家のデムーランという全く立場の異なる役だったのですが、楽屋が一緒だったんですよ。役が抜けたとき、自分もみんなに見せない顔を同じ楽屋のヒロには見せていただろうし、ヒロも普段見せないような顔を楽屋では見せていました。あと、僕が勝手に想像するイメージでは、ヒロは駆け引きがすごく上手な気がします。ヒロもサッカーをやっていたし、僕もスポーツをやっていたので分かるのですが、簡単に全部をさらけ出したら相手にばれちゃうって思って挑んでいるんだと思う。

広瀬:それはありますね。大ちゃんとは本当のところで仲良くなれないと思っているんです(笑)。

渡辺:えっ、何だって!?(手を叩いて爆笑)

広瀬:それにはちゃんとした理由があるんです。大ちゃんのことは大好きなんです(笑)。

渡辺:そんな話、聞いてないし!(笑)

広瀬:大ちゃんが言ったように、表現する上で常にいい意味で裏切りたい、驚かせたいという気持ちがあります。だから、特に同年代で尊敬する方には、全てをさらけ出すことが出来ないんです。器用に見られがちですが、実は不器用なんですよ。

広瀬友祐、渡辺大輔

広瀬友祐、渡辺大輔

――尊敬する人とはいい距離感を保ちたいのですね。

広瀬:そうなんです。自分が臆病なだけかもしれませんが(笑)、広瀬友祐の全てをさらけ出したくはないなって思っちゃうんです。

渡辺:なるほどね。

広瀬:大ちゃんは自分自身にもすごく厳しいし、たまに出すオーラがティボルトそのもの。自分でも言っていたけど、負けず嫌いなところもティボルトだなって思います。


――ティボルトはジュリエットを好意を持ちつつも、ジュリエットの母親であるキャピュレット夫人にも心通わせ密通しているという複雑な役ですが、男性としてどんなお気持ちで演じていますか?

渡辺:正直に言うと、ティボルトの本当の気持ちはこの公演が終わっても分からないんじゃないかなって思っています。でも、今感じている禁断の愛に向き合うティボルトの切なさや葛藤、そういう思いを出していきたいなって思っています。

広瀬:僕もティボルトの心理はまだ分かりませんが、このストーリーでは愛を語る上での犠牲者だと思うんです。身内に恋をしてしまったり、不倫をしていたり……。単純にティボルトのことだけを考えると、「幸せな時はあったのかな?」と思うほど、かわいそうな人生ですよね。幸せに育ってきた僕にとってそういう孤独感は想像することしか出来ませんが、この作品をご覧になったお客様にティボルトの死で涙を流してもらえたら、ティボルトの存在した意味が出て来ると思うので、そこのところを強く印象付けられるような表現が出来たらいいなと思っています。

広瀬友祐、渡辺大輔

広瀬友祐、渡辺大輔


インタビュー・文=住川絵理 撮影=岡崎雄昌

【ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」キャストインタビュー
ロミオ役:古川雄大&大野拓朗
死のダンサー役:大貫勇輔&宮尾俊太郎
ベンヴォ―リオ役:馬場徹&矢崎広
マーキューシオ役:平間壮一&小野賢章
ジュリエット役:生田絵梨花&木下晴香

公演情報
ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」

<東京公演>
日程:2017年1月15日(日)~2月14日(火)
会場:東京都 TBS赤坂ACTシアター
料金:S席13,000円/A席9,000円/B席5,000円[全席指定]
好評発売中


<大阪公演>
日程:2017年2月22日(水)~3月5日(日)
会場:大阪府 梅田芸術劇場 メインホール
料金:S席13,000円/A席9,000円/B席5,000円[全席指定]
好評発売中

<スタッフ>
原作:W.シェイクスピア
作・音楽:ジェラール・プレスギュルヴィック
潤色・演出:小池修一郎

<キャスト>
ロミオ:古川雄大 / 大野拓朗 ※Wキャスト
ジュリエット:生田絵梨花(乃木坂46) / 木下晴香 ※Wキャスト
ベンヴォーリオ:馬場徹 / 矢崎広 ※Wキャスト
マーキューシオ:平間壮一 / 小野賢章 ※Wキャスト
ティボルト:渡辺大輔 / 広瀬友祐 ※Wキャスト
死のダンサー:大貫勇輔 / 宮尾俊太郎 ※Wキャスト
キャピュレット夫人:香寿たつき
乳母:シルビア・グラブ
神父:坂元健児
モンタギュー卿:阿部裕
モンタギュー夫人:秋園美緒
パリス:川久保拓司
大公:岸祐二
キャピュレット卿:岡幸二郎
ほか

 
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