アルルカンとペンタゴンによる盛りだくさんの新年イベント『ごえもん福袋まつり』ライブレポート

GOEMON RECORDS Presents ごえもん福袋まつり
2017.1.21(SAT)SHIBUYA REX

GOEMON RECORDSのお正月恒例『ごえもん福袋まつり』が今年も開催。所属バンドのアルルカンとペンタゴン、そしてレーベル名のごえもんと、3種の福袋に封入された所持者だけが入場できる3部制の企画盛りだくさんなイベントで、2017年を熱く幕開けた。

第1部はペンタゴンによる『新年！リクエストアワーLIVE～ペンタの衣装決めたって～や！～』。タイトル通りファンのアンケートでメンバーそれぞれの衣装が決まるライブということで、メンバーが登場するなり普段とは種類の違う歓声が湧く。中世貴族風の千吊(Vo)と拓（G）は「Jesus phobia」(2015年9月発売Sg「ひじきとカラアゲ」収録）の、ミリタリーなゆとり（G）と篤輝（Ds）は「少年ワルツ」（2015年4月発売Sg)の、真っ白な妖精のように可憐な眠花（B）は『WELCOME TO GHOST HOTEL』（2016年1月発売AL）の衣装で、千吊の「腹の底から声出して来いよ！」という号令からライブは開幕。

3拍子が誘う「Jesus phobia」のロマンティックなムードは、まさしく千吊の耽美な出で立ちにピッタリで、さらにミステリアスな「アネモネ」、ダンサブルにクラシカルな要素を混ぜた「少年ワルツ」と、ファンタジック世界をヘヴィなプレイで表現してゆく。

MCでは今回の投票結果について語り、ゆとりは「懐かしい気持ちになりますね」と1stシングルの衣装に感慨深げ。この1月に結成2周年を迎えるということで、千吊いわく「今まで歩んできたものを振り返りつつ、もっと先に進んでいこうという想い」から生まれた今回のライブでは、EDMやラップに歌舞伎の見得まで取り入れた最新曲「CRAZY TRIBE」も披露された。さらにゴシックな「WELCOME TO GHOST HOTEL」からはゆとりの動きもどんどん荒ぶり、フロアの全員に正座ヘドバンさせた「人喰テディベア」では上手の鉄骨によじ登る場面も！ ラストはオーディエンスが手を繋いでスキップする「ポップコーンモンスター」で温かく、そして激しく締めくくり、「音楽で何か感じてもらえたんじゃないかと思います」と千吊も真摯に語った。

第2部はアルルカンによる『セレクト オブ ダメ人間』。つまりは演奏曲を全てファンからのリクエストで決めるというレアな企画で、特別なのはヴィジュアルも同様だった。幕が開くと全員Tシャツというラフなスタイルに、暁（Vo）に至ってはトレードマークのツノまで封印！ しっとりと歌を聴かせる「ナミダノアト」での始まりといい、このライブは音楽以外の要因を排して純粋に曲を聴かせることが目的なのだと理解させる。事実、叙情的なメロディが爽やかな2曲目「似非林檎」以降、オーディエンスのジャンプに床がしなる5曲目「SynonyM」まで休みなく、怒涛の勢いでプレイ。「今日はみんなが選んだ曲を可能な限りやりたいのでノンストップです。1時間だけど14曲突っ込んだんで」という暁の言葉に、場内からも「えーっ！」と驚きの声があがった。

その後も“ダメ人間（アルルカンのファンの呼称）”たちの熱望するナンバーが大盤振る舞い。祥平（B）のランニングベースと奈緒（G）のソロがジャジーに絡む「エンヴィー」に、「Utopia」の演奏前には「自分の中でまだキチンと届けられていないという想いがあって、なかなかやれなくて。この票が集まったのはとても嬉しいと同時に、ゴメンねという気持ちもあります」という暁の言葉も。そして歩き出す決意を歌い上げる彼には、大きな拍手が湧いた。さらに「リビドー」に「imp」で極限まで暴れさせ、頭の中が空っぽになったところで「blind bud」が持つ痛いほどの切なさを叩き込まれて知るのは、彼らのアグレッションは単に肉体的な快感だけを求めているわけではないということ。フロント陣がセンターに集う「DROPLET」で胸熱くさせ、「アルルカンの曲を愛してくれて本当にありがとうございました。また生きてるうちに会いましょう」と終演した1時間は、ファンセレクトだからこそ、より奥底に秘められた彼らの想いに触れられたものとなった。

第3部はアルルカンとペンタゴンで、なんとボーカリストを交換しての『ごえもんボーカルシャッフル対決っ！』。まずはアルルカンの楽器隊が「PARANOIA」（2016年3月発売Sg）の衣装で登場すると、突然SEがアニメ『北斗の拳』の主題歌に。続いて千吊が現れるが、なるほど、スッキリとした短髪に、喉元までキチンと閉める暁とは真逆に胸元を大きく開けた姿は確かにケンシロウ風。よく見ると胸には傷まで描かれている（笑）。しかし「この回、楽しむことしかないからな！」と叩きつけられた「エンヴィー」からは、その堂々たる佇まいに力強いボーカル、そして痛快なシャウトに場内は沸騰。

千吊いわく「兄さんたちの粋な計らい」で、暁のツノに似たネコ耳付きでペンタゴンの「どうでもええけど」まで披露し、ラストは「お前たちはもう死んでいる」とケンシロウのキメ台詞から「像」へ。ステージに向かい礼拝するフロアを見下ろして「俺、ここで見てみたかったんねん」と満足そうに呟き、ループの最後には全員に正座ヘドバンさせて「メッチャおもろかった！」と破顔した。

後半はペンタゴンの楽器隊に暁を迎えてのライブに。全員が『絶叫！』（2016年8月発売Mini AL）の衣装を身に纏い、1曲目「Fatima」の冒頭台詞を暁が口にすると大歓声が湧いて、「前に来い、テツキッズ！」の煽りに場内は狂乱。それでいて「17」では想い込めて歌う暁に、ゆとりがラップをしながらグイグイと迫って、場内を笑わせる。

MCでは「皆さん、絶叫してますか？」という恒例の煽りについて、ゆとりから暁がレクチャーを受ける場面も。この二人の絡みは以降も続き、「ドラマ」でコーラスするゆとりを暁が引き寄せれば「愛してる」と囁き返され、「ポップコーンモンスター」では手を繋いで合唱。一方、暁の上向きで繰り出す容赦ないヘドバンに、曲中の台詞をよりリアルなものにアレンジして語る素晴らしく張りのある声は、さすが一日の長ありと感じるほど鬼気迫るものだった。ラストの「オムカエ」でも「全部置いてって！」と叫んでヘドバン三昧。

スペシャルな企画で年に一度のハメ外しを楽しんだ一夜から始まるGOEMON RECORDSの2017年に注目していきたい。

取材・文＝清水素子　撮影＝鈴木恵