ACIDMANとは何か その答えが示された20周年イヤーに一度きりのプレミアムワンマン
ACIDMAN 撮影=藤井 拓
ACIDMAN 20th Anniversary Fan’s Best Selection Album“Your Song”リリース記念プレミアムワンマンライブ 2017.1.21 Zepp Tokyo
Zepp Tokyoのは、わずか数分でソールド・アウトした。『ACIDMAN 20th Anniversary Fan’s Best Selection Album“Your Song”リリース記念プレミアムワンマンライブ』。序盤のMCで大木伸夫(Vo/Gt)が、“武道館があいていればよかったのに”と軽口をたたいたが、たとえそうであっても、アニバーサリーを祝うファンの熱意で満員になっていただろう。が、この規模、このセットリスト、このテンションで体感できてこその、プレミアムライブ。その場を共有できたあなたには祝福を、そして、来られなかったあなたのためにこのレポートを書く。まったく、とんでもない3時間だった。ACIDMANというバンドの底力と、未来への可能性をまざまざと見せつける、素晴らしい音楽がそこにあった。
ACIDMAN 撮影=藤井 拓
18時30分過ぎ、暗転。歓声。「最後の国(Introduction)」。地鳴りのようなクラップ。位置につく3人。歓声。一瞬の静寂。いつも通りのオープニング。だが、大木の柔らかいカッティングに導かれ、1曲目「今、透明か」が始まっても、照明は暗いまま。ミドルテンポの穏やかな曲調がうねるように流れる。暗闇の中に言葉が浮かび上がる。このまま行くのか、と思った次の瞬間。<強い光溢れた、溢れた、溢れた>。その歌詞に合わせてまばゆい光が、そしてフロアが一気にはじけた。プレミアムにふさわしい、シンプルだがなんと劇的な演出。
ACIDMAN 撮影=藤井 拓
「Zepp Tokyo、最高の1日にするぞ!」
3人はいつも通りの普段着。代わりに「風、冴ゆる」は強烈なストロボ、「FREE STAR」はミラーボール、「リピート」は鮮やかなグリーンのバックライトで、シンプルなステージに色を添える。今日はベスト・アルバムから20曲すべてを演奏すると宣言し、「バラードが多いので覚悟してください」と言う大木に、望むところだという拍手と歓声が沸き上がる。「式日」のような曲は、ACIDMANにとってはゆったりした曲だろうし、「migration 1064」もミドルテンポのダンス・チューン、「静かなる嘘と調和」は、ピアニッシモからフォルテッシモまでドラマチックに上昇してゆく、ACIDMANらしいロック・バラード。と、じっくり聴かせる曲を並べたあとだけに、「酸化空」の激しいビートが劇的に際立つ。ファン投票の1~20位を並べたベストアルバムの曲順を、ライブで生きるために並べ替えた、見事なセットリスト。
ACIDMAN 撮影=藤井 拓
結成20周年、メジャーデビュー15周年。思い出を辿りながら、「一度も移籍していないのに、屋号(レーベルの名称)だけがどんどん変わる」と言って笑う大木。その年代のほぼすべてを、今回のファン投票ベスト・アルバムは網羅している。「stay on land」は4thアルバム、「イコール」は3rdアルバム、そして「赤橙」はインディーズ時代から歌い続ける絶対の名曲。浦山一悟(Dr)が淡々とビートを刻み、佐藤雅俊(Ba)がそっと寄り添い、大木が美しいメロディとシュールなイメージを静かに吐き出す。派手ではない、むしろ地味なこの曲が、15年聴き続けても未だに新鮮な理由は何だろう。音に込められた魔法。聴き入る人、揺れる人、はねる人。フロアの陶酔ぶりも様々だ。
この日、最初のハイライト。それは間違いなく「アルケミスト」だった。ファンタジーの衣装を借り、想像力の翼を広げ、宇宙と生命の奇跡を歌う壮大なロック・バラード。大木が足元のルーパーを巧みに操り、幾種類ものギターを重ね、広々とした空間を作り上げる。一悟とサトマのビートが鼓動を司る。大木が“光を!”と叫ぶ。スリーピースで可能な極限の音像に、フロアが包み込まれる。その手離さないで。遠くまで僕ら行こう。シンプルな言葉に心つかまれ、誰も身動きができない。
ACIDMAN 撮影=藤井 拓
ここで唐突に、一悟の脱線MCタイムをはさむのが、ACIDMAN流。緊張のあとには緩和が必要、これエンタメの基本なり。……とはいえあまりにも緩和が過ぎたため、サトマがひとこと「早く締めようよ」。すかさず大木が「こんな3人でやってます」。3人のバランスの良さは相変わらずだ。
そして再び、クライマックスはやってくる。「季節の灯」と「最期の景色」だ。大木伸夫が歌い続けているたったひとつのこと。人はいつか死ぬ。だからこそ、今を精一杯生きる。そのテーマを意識するきっかけになったのが「季節の灯」で、いつか自分が死ぬ時を思い浮かべて書いたのが「最期の景色」。ていねいな曲紹介のあと、心を込めた歌われた2曲の、なんというスケールの大きさ。莫大なエモーションに突き動かされ、大木の声が震えている。さらに、一悟の刻むビートをそのまま続けて「and world」へ。ここでも大木が“光在れ!”と叫ぶ。光とは何か。それは生命だと、ACIDMANは歌う。
ACIDMAN 撮影=藤井 拓
「僕たちにはまだまだやれることがあります。そう思わせてくれたのは、あなたたち一人一人の存在です」
壮大な深みを持つ空気を切り裂き、爆音と変拍子の高速ロック・チューン「ある証明」が始まった。ライブが終盤へと突入する合図だ。淡々と低音を刻んできたサトマが一気にはじけ、拳を突き上げてフロアを煽る。そしてインディーズ時代の若くパンキッシュな面影を強く刻み込んだ、猛烈にハードな「培養スマッシュパーティー」へ。この曲がベスト20にランクインする。ACIDMANのファンは最高だ。
「OVER」では、プレミアムならではの贅沢な演出があった。曲の半ば、おもむろにステージ後方の幕が上がり、四家卯大の率いるストリングス・オクテットが登場したのだ。ACIDMAN+ストリングスは、過去の武道館などで聴き覚えがあるが、ライブハウスで聴くダイレクトな弦の響きはまた格別だ。「世界が終わる夜」も、バンドの轟音に負けずストリングスの生々しい響きがまっすぐに響く。
ACIDMAN 撮影=藤井 拓
ついにこの日の20曲目、本編ラスト・チューン。ファン投票第1位に輝いた「ALMA」の荘厳なイントロが始まった。背後には無数の星が輝く。大木が星と宇宙に惹かれ続けるその理由。宇宙という究極の孤独の中で、またたく星のようにいとおしいもの。それが生命だと、ACIDMANは歌う。南米・チリのALMA望遠鏡が、宇宙と生命の真理を追い続けているように、ACIDMANは、ダイナミックな音と美しい言葉の力でそれを追い続けている。
アンコール。濃厚すぎた本編2時間半を振り返り、「大丈夫? でも(曲を)選んだのは俺らじゃないから」と笑わせる。大木は歌もトークも絶口調だ。次は新曲「愛を両手に」。最愛の祖母を亡くした時の思いを、大木らしい死生観と宇宙観へと昇華した、極めてシンプルなバラード。死んだ人に問いかけたい、たったひとつのこと。それは「幸せでしたか?」だと大木は言った。幸せだったのなら、それでいい。いつかまた会おう。思想と観念、現実の体験とが織り交ざった、これまで以上に穏やかで優しい、20周年にふさわしい究極の愛の歌。
ACIDMAN 撮影=藤井 拓
いよいよ終わりの時が近づく。「最後の星」は荘厳なロック・バラードだが、全身でエモーションを表現するサトマのアクションを見ていると、まるでバラードを感じさせない。ACIDMANのバラードはバラードじゃない。それはロックで、スピリチュアルで、シンフォニーで、一つの小宇宙だ。
「長い時間ありがとう。今年はこれから2マンツアー、さいたまスーパーアリーナ、最高の思い出作ろうな」
ラストはもちろん、この曲しかない。タイトルにもなったのに20位以内に入らなかった曲、と、大木が笑顔で曲紹介する。みんな大好きな曲、「Your Song」! シンプル&ストレート、希望溢れるパンキッシュなビートは15年前と変わらない。私は讃える。私は認める。あなたの運命を。あなたの戦いを。そして僕はここに立っている。英語詞なのにメッセージがはっきり伝わる、ACIDMANを愛するすべての人のためのアンセム。フロアは今、光に満ちている。
ACIDMAN 撮影=藤井 拓
2017年、たった一回のプレミアムワンマンライブ。すべてを出し切った、という以外に言葉がない、圧巻の23曲、約3時間。ノスタルジーではなく、今のサウンドですべてのキャリアを総括した、見事なバンド・ヒストリー。そして真に驚くべきは、15年聴き続けて、一番新しい曲が一番素晴らしいという事実だ。あの頃が良かったとは絶対に言えない、言わせないバンド。進化し続ける楽曲。
ACIDMANは過去であり、現在であり、そして未来だ。
取材・文=宮本英夫
ACIDMAN 撮影=藤井 拓
2. 風、冴ゆる
3. FREE STAR
4. リピート
5. 式日
6. migration 1064
7. 静かなる嘘と調和
8. 酸化空
9. stay on land
10. イコール
11. 赤橙
12. アルケミスト
13. 季節の灯
14. 最期の景色
15. and world
16. ある証明
17. 培養スマッシュパーティー
18. OVER
19. 世界が終る夜
20. ALMA
[ENCORE]
21. 愛を両手に
22. 最後の星
23. Your Song
2017/2/8 発売
「愛を両手に」
初回限定盤(CD+DVD)
TYCT-39049
<初回限定盤バンドルDVD>
ACIDMAN初ワンマンLIVE@下北沢ガレージ(2002年 5月25日)+活動最初期のLIVEシーンをダイジェストで編集 した超レア映像を20th Anniversaryの記念すべきこのタイミングに満を持してお蔵出し!
ファン垂涎のアイテムを付属DVDとしてリリース
(レーベル)VIRGIN
<収録曲>
M1.愛を両手に
M2. snow light
M3. 水の夜に
M4. Live Track From 2014.10.23 Zepp Tokyo
(『世界が終わる夜』リリース記念プレミアム・ワンマンライヴ)
風、冴ゆる/波、白く/スロウレイン
02月04日(土) 香川:高松オリーブホール w / the band apart
02月12日(日) 鹿児島:鹿児島CAPARVOHALL w / Crossfaith
02月18日(土) 広島:広島クラブクアトロ w / toe
02月26日(日) 福岡:drum logos w / SiM
03月03日(金) 石川:金沢EIGHTHALL w / The BONEZ
03月05日(日) 岡山:岡山CRAZYMAMA KINGDOM w / LOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERS
03月11日(土) 福島:いわき市文化センター w / THE BACK HORN
05月14日(日) 北海道:Zepp Sapporo
05月19日(金) 愛知:Zepp Nagoya
05月21日(日) 大阪:Zepp Osaka Bayside
05月27日(土) 東京:Zepp Tokyo
06月03日(土) 沖縄:桜坂セントラル
ACIDMAN主催『SAITAMA ROCK FESTIVAL “SAI”』
2017/11/23(木・祝)
故郷・埼玉県、さいたまスーパーアリーナにACIDMAN主催『 SAITAMA ROCK FESTIVAL “SAI”』開催決定!