ホロリもあるよ! 人間、ゾンビ、ヴァンパイアが異星人に挑む『フリークス・シティ』#野水映画“俺たちスーパーウォッチメン”第十八回

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2017.1.25
  (C)2015 Columbia Pictures Industries, Inc. and LSC Film Corporation. All Rights Reserved.

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TVアニメ『デート・ア・ライブ  DATE A LIVE』シリーズや、『艦隊これくしょん -艦これ-』への出演で知られる声優・野水伊織。女優・歌手としても活躍中の才人だが、彼女の映画フリークとしての顔をご存じだろうか?『ロンドンゾンビ紀行』から『ムカデ人間』シリーズ、スマッシュヒットした『マッドマックス  怒りのデス・ロード』まで……野水は寝る間を惜しんで映画を鑑賞し、その本数は劇場・DVDあわせて年間200本にのぼるという。この企画は、映画に対する尋常ならざる情熱を持つ野水が、独自の観点で今オススメの作品を語るコーナーである。

昨今ガチホラーからコメディまで、ゾンビが跋扈する映画は(ゾンビだけに)腐るほどある。ヴァンパイア映画もラブロマンスまで作られたし、異星人侵略モノも手を替え品を替え作られている。みんなそーゆーの好きでしょ?だったら全部まとめちゃおうぜ! というのが、今回紹介する『フリークス・シティ』だ。

物語の舞台は、ヴァンパイア、人間、ゾンビが生活する街・ディルフォード。三つの種族は均衡を保ちつつも、争うことなく共存していた。しかし、そんな平和な街の日常は、ある夜突然現れたエイリアンの侵攻により一変する。街を救うため立ちがったのは、同じ高校に通う人間のダグ、ヴァンパイアのペトラ、ゾンビのネッド。果たして彼らはエイリアンに打ち勝つことが出来るのか!?

まさかの青春ドラマ!? カースト下位の主人公たち

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怪物と人間の共存する世界観について、一見無理があるんじゃ?と思う方も多いかもしれない。しかし、本作はいわゆる“スクールカースト”をそれぞれの種族に当てはめることで、不思議と人間の学校生活と変わらない説得力を生み出している。上層のヴァンパイアは女子にモテモテ、真ん中の人間はヴァンパイアにいじめられ、人間の脳みそを食べることしか考えられないゾンビは最下層といった具合に。そして、エイリアンの登場によって、ヒエラルキーはあれど絶妙に均衡を保っていた三種族の大人たちは、真っ先に内輪揉めを起こしてしまうのだ。あー、こういうところも人間同士っぽいなぁ……っていやいやいや!そこでケンカしてる場合じゃないでしょ! そんなツッコミをよそに、ヴァンパイアと人間は「お前らのせいだ」と罵り合い、ゾンビはその騒ぎに乗じて人間を食い荒らす。「俺のボウリング用の腕が~~」と嘆くおじさんは腕をバリバリ食べられ、ヴァンパイアは胸を貫かれ景気良く血飛沫をまき散らしながら死ぬ。これはまさに、異種族のバトルロワイアルや~!

 

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でもまぁそんなもんずっと観ていたら、あれ?ゾンビってヴァンパイアは食べないんだっけ?? なんて、こっちのIQも下がっていくってもんです。そこで街を救うため立ち上がるのが、訳あって疎遠になっていた主人公たち三人だ。主人公のダグは、ホラー・コメディのお約束・童貞君で、憧れの女の子(しかもビ〇チ)を振り向かせたいのに上手くいかない毎日を過ごしている。ダグの友達・ネッドは頭の良いギーク少年だったのだが、現実に絶望して自らゾンビになる道を選ぶ。そしてヒロインのペトラは、イケメンヴァンパイアに騙され、自分もヴァンパイアになってしまう。そんな彼らが、皮肉にもエイリアンの登場によって距離を縮め、協力し合っていく。過去のわだかまりでギスギスしつつも、徐々に互いを認め合ってゆく三人の姿はとても甘酸っぱく、ホラー・コメディの枠をブチ抜いて、まさかの青春ドラマを見ているようだぞ!

 

ホロリもあるよ! 緻密に練られた脚本とおバカ要素のバランス

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日光に当たって灰になりかけたペトラ(ヴァンパイアだからね)を助けるためのダグの行動が対エイリアンのヒントになるなど、伏線をきちんと回収する脚本も光る。2010年に映画化されていない優秀な脚本を選ぶブラックリスト賞で “最も好きな脚本”に選ばれていただけあって、本作の緻密に練られた展開にも唸らされるはず。そこにおバカ要素がたっぷり肉付けされているので、そんな脚本の妙には気づかないかもしれない。だが、それでいいのだ!考えるな、感じろ! と言わんばかりで大好きなのが、「USA!USA!」と全種族が一致団結してUSAコールをぶちかます謎の感動シーン(※個人の主観です)。あとは、シャム双生児のカルト映画『バスケット・ケース』(82)の奇形お兄ちゃん(みたいなヤツ)が出てきてカバディをするシーンも可愛くて好きだ(※本当に個人の主観です)。これだけ意味不明なトンデモ映画感満載なくせに、最後はなんとなくホロリ……としてしまうという、もう説明してて私も何言ってんのかわかんなくなってきたけど!面白いからとにかく観ろ!これに尽きる!!おしまい!! 「brain~(脳みそ)」とうろつくゾンビのネッドを“brain(知的指導者)”にして立ち向かう三人は、街を救うことが出来るのか!?

 


『フリークス・シティ』はヒューマントラストシネマ渋谷「未体験ゾーンの映画たち2017」ほかで公開中。

作品情報
『フリークス・シティ』
 
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(アメリカ/2015年/シネマスコープ/92分)

製作総指揮:ジョナ・ヒル
製作:マシュー・トルマック
監督:ロビー・ピカリング
編集:クレイグ・アルパート    
脚本:オーレン・ウジエル    
出演:ニコラス・ブラウン、マッケンジー・デイヴィス    、ジョーン・キューザック、ヴァネッサ・ハジェンズ

PG-12指定

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