“命”について問いかける——1.G.Kの結成10周年の軌跡とこれから
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DIGITAL GROOVE ROCKというカテゴリーを掲げ、“命の在り方”を音楽を通して思うがまま奏でることをコンセプトとしている京都のロックバンド・1.G.K。結成10周年を迎えた1.G.Kが、2017年2月3日(金)1stフルアルバム『Circle』を全国リリースした。それに伴い、京都MUSE、渋谷club asiaにてアルバムリリースイベント『Beleaf』を開催することが決定。こちらのイベントでは、ライブだけで無くパントマイム・ジャグリング・マジック・劇団・舞踏・ダンス・ジャンケン大会といった、盛り沢山な内容となっている。ブレイクダンスで世界2位の実力を誇るダンサーでもあるボーカルのKATSU(Vo)と、元twenty4-7というユニットでボーカルをつとめていたME(Vo)に、アルバムに込めた想いと、他に類を見ないイベントを企画したきっかけや熱い意気込みを語ってもらった。
ーー結成10年ということで、この10年間について聞かせてください。
KATSU:元々俺はブレイクダンスのダンサーで、ジェームス・ブラウンのようなソウルミュージックが好きだったので、その手のジャンルの音楽で踊っていて。ある日、ロックで踊ってもいいんじゃないか?と思うようになり、先輩からは「伝統を壊すな」っていうバッシングもあったんですけど、ロックな曲をバックに踊り始めたんです。そして、やっているうちに曲を作っている人たちに興味をもち、自分で作った曲で踊りたいという思いがだんだん強くなり、バンドを結成することになりました。それからiTunesのみでシングルは何枚か出したりしたんですが、途中メンバーチェンジがあったりと、足並みが揃わなくなり、一度活動休止することになってしまって……。ですが、その一ヶ月後にギターのHIROKIに声をかけて再結成しようってなった時に、初代メンバーだったベースのN.KOITABASHIと、ドラムのRIKIが帰ってきてくれたんです。そしてその一週間後にMEと会い、一緒にバンドをやることになりました。
ーーMEさんとは元々繫がりがあったんですか?
KATSU:そうなんです。俺が所属するダンスグループ『一撃』の舞台等で何回も一緒になってました。
ME:私自身はあまり認識が無くて、その時は挨拶するくらいの関係でした。
KATSU:MEが入ってから3ヵ月でミニアルバムを出しました。その後もコンスタントにシングルを出して、バンド的には活動休止したり、上手いこといかなかった時期もありましたが、今やっとここに辿り着いたという感じです。
ーーなるほど。その過程で表現したいことや本質的な部分は変わらなかったんですか?
KATSU:基本は変わってないですね。最初はやはりダンストラックがメインでしたが、ロックバンドとして良い音楽を出したいっていう思いがどんどん強くなってきたので、音楽性は少し変わりましたが、芯となる部分は変わってないと思います。オリジナルのバンドでオリジナル曲を作って、歌もダンスも表現のひとつとして捉えている部分があるので、自分も歌うし、やっぱり踊りたいし、音楽という枠の中で色々と違った方法で表現したいんです。
ーー今回、ジャケットが天野弓彦さんが描いてますが、こちらも縁があったんで、しょうか?
KATSU:そうですね。俺が所属している団体で、バレーダンサーや、コンテンポラリーダンス、ストリートダンスといった、色んなジャンルの人が集まって定期的に公演をしている『アルファクト』のメンバーに天野さんが入っていて、そこで知り合いました。
ーーなるほど。逆にこの10年間で変わった部分はありますか?
KATSU:ありますね。正直に言うと、Pay money To my Pain(以下、PTP)に出会い、言葉では言い表せない衝撃がありました。音楽を正直に出しているロックバンドの凄さを再認識して、そして意味のある歌詞を作ろうと思ったのもPTPの影響ですね。自分達にとっても意味のある音楽を出そうと。そして、書く歌詞も自分の経験してきた事を書こう、と思ったきっかけを与えてくれました。そうして出来上がった曲で、自分の人生に当てはめてもらえる人が居たら最大にハッピーですね。
ME:私から見ていたら、今までのKATSUの目線は、“自分が表現したいこと”という部分に重点を置いていたけど、だんだん一緒にやっていく中で“人に届けたい”って気持ちの方が強くなってきているなって思います。私も何で音楽をやってるかというと、「人の為に音楽をやってる!」って言い切れるくらい、誰かの救いになるのならって思ってやっています。私も誰かを救いたい。KATSUも誰かを救いたい。でも方法が二人とも違っていて、私は手を差し伸べるタイプですが、KATSUは「俺の生き方を見ろ」「俺は表現したいことを全面的に出しているんだ」って自分の芯にあるものがどんどんブラッシュアップされてきて、前に出てくるようになったなと、見ていて感じます。
ME(左)・KATSU(右)
ーーMEさんはバンドで音楽をするのは初めてなんでしょうか?
ME:初めてですね。いままでやった事も無かったので、最初はどうしていいのか全然分からなかったんです。KATSUの顔を見て歌うのも恥ずかしかったし、他のメンバーを見て歌うのもとても恥ずかしくて照れました。何を合わせたら良いのか分からないままやっていく中で、私の息継ぎに合わせてくれたり、気持ちを読み取るという事に初めて気が付いて。それにKATSUが、バンドのメンバーは家族だってことを教えてくれました。墓まで一緒に入れるくらいのものなんだって最初から教えてくれたので、「なるほど。バンドメンバーって自分の中でもそれだけ大事なものなんだな」と、そこはすごく大事に思ってきましたね。自分もソロでバンドを組んで活動をした時にバンドをすごく大切に思えたし。やっぱり生バンドは楽しいです……心強くて100人力みたいな感じ。「みんなが居るから大丈夫」と安心感があります。
ーーそこを分かって貰えたのはKATSUさんからしても嬉しいですよね。
ME:どちらかと言うと私も素直で真っ直ぐな方なんですが、KATSUは私よりもさらに真っ直ぐなんです。ある意味純粋なところって傷付きやすかったり壊れやすかったりするので、私はそれを壊して欲しくないですね。そういう想いがこのアルバムジャケットの絵に反映されているんだと思います。
KATSU:天野くんは曲や俺達と触れるようになって、そう見えたことを描かれるんですよ。何も注文はしていないのですが、「カツくんは支えられていると思って」と、このジャケットを作成してくれました。この絵を描かれる前に、俺がMEとバンドの話をしていて、「何で音楽しているの?」と俺がMEに聞いた時に、間髪入れずにMEが「人を救う為」と言い切ったんです。俺は今まで、音楽に対して「俺を出すだけだ!」という考えだったので、凄いなと思いました。でも俺が「あなたを救います」と言っても腑に落ちなかったので、俺は“俺なり”を全面に出して、それを見てくれた人が帰り道に「あんな人もいるんだから、明日も仕事を頑張ろう」って思ってもらえたら嬉しいなって、気持ちに変えてくれたのはMEでした。
ME:“救い方”は違うけれど、KATSUはそういう部分のを持って生まれてきているので。
KATSU:普通ツインボーカルだと、どっちも目立ちたいという感情があるじゃないですか?でもMEはそうじゃなくて、「俺を引き立たせるために生まれてきたのかもしれない」と言ったんです。俺は、“俺を見ろ!”というのが良くも悪くも強すぎるので、そういう考えを直させてくれました。「何故音楽をやっているのか?」を、もう一度定義してくれたんです。そこから沢山考えて、最後は“命の事”だって辿り着いてきました。音楽をやっているのもダンスをやっているのも、「明日死んだら終わりだと思っていて、死ぬ時にいかに“あれをしとけば良かった”という後悔が無いように」という生き様を、ちょっとでも多く見て貰えたらと思います。「みんな今生きている意味を何か考えてくれたらな」って、そういう気持ちで曲を書いてきたのはだいぶ強いですね。
ーーその気持ちは歌詞に反映されてますね。俯瞰で捉えたものを曲に落とし込んだ内容が多かったように思えます。
ME:お互いに色々話をしていて「自分に真っ直ぐ生きよう。正直に生きよう」と言っています。死ぬ時に“ああ生きていて良かったな。自分で良かったな”って、思える様に生きていこうと。“もしも、もう一度生まれ変わるならまた私の人生で生まれ変わりたい”って、後悔もなにもなく死んでいきたいんです。
KATSU:何かどうしようかと悩んでいても“明日もし死ぬって考えたらコッチだな”と、最後の判断のキーワードがそこなんですね。
ーー意識が変わったところって、そういった部分なのかもしれませんね。
ME:私も最初は、自分たちの為に音楽をやっていました。でもtwenty4-7時代の経験を経て、たくさんの人の人生の岐路にも関わってきたので、自分たちが背負っているものが自分たちだけではなく、聞いているみんなの人生やスタッフを含めて、夢や想いを全部背負っていると気付いて。自分がステージに立つ時に“自分の為じゃなくてここにいる人達の為に”と変わっていったので、KATSUにもそう感じられる要素がすごくあるから、“そう思えたら曲の書き方や表現の仕方が変わる”ということが分かっていたので、KATSUにはやく気付いて欲しかったんです。
KATSU:舞台に立つ前は、“よし! 俺を今日も出すぞ”としか考えていなかったのですが、今はその気持ちも変わらずありますが“俺を出すぞ! で、その理由は?”と考えるようになりました。今は自分を出した事によって、みんなが「嫌な事でも良い事でも考えてくれたら良いな」と思うようになったので、終わってからファンの1人1人と喋る時間がとても長くなりましたね(笑)。
KATSU
ーーそういわれると、そういった気持ちの緩急が音にも反映されてると感じます。特に「cyan」と「Circle」はインストの曲だったのが気になりました。
KATSU:そうなんです。「Circle」が実は一番好きなんです。全曲聴いた後にもう一回聞くと“こうありたい”という気持ちがすごく入ってくるんです。
ーーなかなか気付きにくそうですが、一回通して聴いてからこの曲を聞くことにアルバムの着地点があるんですね。
KATSU:説明は難しいのですが、俺がこんな性格なので、周りからみたら“太陽みたい”と、いいふうに言って貰えるんですね。でも本当になりたいのは月なんです。でも、両立しているから成り立っているのもわかっているので、その絶妙な深層の葛藤が毎日とても苦しかったりもしますが、その葛藤が舞台に立つ時だけ許される気がするんです。舞台はそういった葛藤を出してもいい場所だと思うので、そういう想いから出来た曲なんです。
ーー「cyan」は?
ME:「cyan」のピアノは私が弾いてるんですけど、実は作曲でピアノを弾くのは初めてなんです。「私こういう感じが好きやねんな〜」と弾きながら遊んでいた時に「私の好きな響きだけで作ってみようか」というと、KATSUは「じゃあ俺そこで踊るわ」という感じで出来た曲なんです。
ーーでは「cyan」は、ライブでは曲中にKATSUさんが踊るんですか?
ME:そうです。イメージでは、私が弾いているシルエットの影だけで踊るっていうのがいいですね。
ーーアルバム自体もライブを意識していて面白いアプローチです。では、今回のそのアルバムのリリースイベントに関して聞きたいのですが、京都編ではバンドが3バンドとパントマイム、ジャグリング、マジック、劇団、舞踏にダンスとジャンケン協会……。ジャンケン協会はずっと気になってしょうがなかったんですけど(笑)。
KATSU:これが一番楽しみなんです(笑)。ジャン賢太郎って、俺のダンスチーム『一撃』の副リーダーなんです。イベントの話をしている時に何か「面白い事しよう」って言っていて、どんなゲームをしていても結局最後に返ってくるのはジャンケン。一番シンプルで一番燃える。これをイベントの最後に持ってきて賞金3万円にしようとなりました。勝っただけで3万円って聞いた事が無いからやってみようかっていうノリです(笑)。1.G.Kからのお客さんへのプレゼントですね。ライブが終わってから、最後の1人になるまでジャンケンします。最後の1人になったらあらかじめみんなに振っていた番号から選ばれた人が敗者復活で戻り、その残った1人とジャンケンして勝ったら3万円です。
ーージャン賢太郎は?
KATSU:ジャン賢太郎っていうのは、ずっと司会をしてるだけです(笑)。
ーージャンケンがめっちゃ強いとかじゃないんですね(笑)。
KATSU:全然違いますね。ジャンケン協会とかも実在しないです(笑)、……多分。
ーーなるほど(笑)。今回出演者が大変バラエティーにとんでますが、出演者との関係性を聞かせてください。
KATSU:パントマイム、ジャグリング、劇団、マジックは、全員が劇団『ギア-GEAR-』の人たちなんです。表現方法は違いますが、みんな『音楽』を使ってという部分が共通していて「こんな人たちもいるんだぞ」っていうのをみんなに見てもらいたいのでオファーしました。パントマイムの人たちは普段はライブに行ったりしないですし、みんなこうやってやっているっていうのを発表しあえれば、次にそういう人たちを見るときに見る目が変わってくるんじゃないかと。ジャンルが違うとどこか壁がある気がしますが「音楽は共通しているし、そんな壁必要じゃないんじゃないかな?」と、ずっとイベントをしていく中で感じていたので。
ーー今までのイベントでも劇団『ギア-GEAR-』の人たちは出ていたんですか?
KATSU:劇団『ギア-GEAR-』の人たちは今回が初めてです。実は俺も劇団『ギア-GEAR-』のメンバーなんですね。ブレイクダンスで黄色役で出ているんですが、そこで出会って、俺自身もこんなジャンルの人と関わるのがそのときが初めてでした。「何を表現したいか」っていう部分が違うだけで、みんな同じことを思っているんだと気付けたんです。ちょっとでも世の中を良くしたいとか命の話をしていて、想いが同じなら出て欲しいし、それを皆んなに見てもらいたいなっていうすごい単純な理由です。
ーー劇団『ギア-GEAR-』は人気公演だし見応えありそうですね。バンドは京都のバンドですか?
KATSU:そうです。基本的にみんな京都の人たちです。
ーー今回は東京でもリリースイベントがありますが、そちらに出演する人たちもみんな劇団『ギア-GEAR-』の人たちなんでしょうか?
KATSU:東京編は、マジックだけ出演者が変わりますが基本は劇団『ギア-GEAR-』人たちです。ダンスは昔から仲良しの東京のダンサーたちに集まってもらいました。両方出て貰えるBodyCarnivalは、前年度のブレイクダンスの日本代表の人たちで京都出身なんです。
ーーでは、今回のこのリリースイベントを終えて、これからのビジョンとかはありますか?。
KATSU:バンド的には世界へ行きたいですね。イベントに関しては、こんなイベントは誰もやっていないんじゃないかなと思っていてるので、来年あたりには京都の野外でやってみたいですね。
ME:お寺でしたい! 東寺とかいいですよね。
ーー京都に縁のある人たちで出来ているイベントだし、面白そうですね。
KATSU:そうですね。“世界の京都”と言われているくらいだし、“京都から世界へ”っていうのがやりたい事ですかね。そこに自分たちの音源やライブを絡めて盛りあげていきたいです。
ME:だから、衣装も最初は普通の服を着ていたのですが、和モノを意識した方がいいなと思って着物を着てるんです。
ーーこれだけ一流の人たちが集まって、そういうビジョンがハッキリみえていたら実現も夢じゃ無さそうですね。では最後にこのイベント、アルバムを通して伝えたいことをどうぞ。
ME:私自身がバンドをやった事がなかったので、こういうイベントっていままでの自分に無かったので未知数なんです。でもこんなにジャンルの違う人が沢山出ているので、私が学ぶ事もきっと多いと思うので絶対楽しい。私もお客さんの一員となって一緒に楽しめたらなって思います。アルバムに関しては、私の今までの音楽人生の中で一番地に足を付けたって感じてます。昔は色んな大人が関わる環境の中で音楽をやっていたので、自分自身が若かったというのもありますが、やはり色んな葛藤もあったので、そこを乗り越えたからこそこのアルバムはすごく楽しく作れました。見えた世界があったからこそ、全部自分の気持ちを吐き出してもいいんだなって思えました。
KATSU:アルバムに関しては、やはりテーマは“命”。今生きているってことにすごい感謝をして欲しい。俺も含めてですけど、それが一番大きいですね。イベントに関しては、出演者みんなの生き様を見てほしいです。“この1分にみんながどれだけかけているか。1秒を楽しむかどうかは自分次第だぞ”っていう部分を感じてもらいたいです。抱えている悩みって人それぞれ違うと思うんですけど、このイベントに来て貰えたらその帰りに何かもって帰ってもらって絶対にハッピーになってる思います。「あんな人がいるんだ。一生懸命って悪い事じゃないな」と、自分が今抱えている悩みと向き合える自信にもなると思います。そして、その帰り道にアルバムを聴いて貰えると嬉しいですね。みんなの人生にちょっとでも、一秒でも関われればと思います。
インタビュー・撮影=K兄 文=Lily
2017年2月3日(金)発売
PRBM-0001 / 2800円(税抜)
収録曲
01.Circle
02.Error
03.Breaking the thought
04.Gate Keeper
05.The Most Beautiful Hands
06.image
07.Moon Stone
08.Walk alone
09.cyan
10.Stay gold
11.ZERO
12.The Jacket
13.Heaven's crow
14.Dragon
日時:2017年2月11日(土)
場所:京都MUSE
時間:OPEN 17:00 / START 17:30
前売:3,500円 *ソールドアウト
出演者:with 私の思い出 / colspan / WAO!! / MIME+(岡村渉,谷啓吾) / 渡辺あきら / 酒田しんご / 橋本昌也 / 壱劇屋 / 今貂子 / Body Carnival / Alphact / MAI + MISAKI + YABU / ジャン賢太郎(PRINCE 一撃)
日時:2017年2月25日(土)
場所:渋谷club asia (東京都)
時間:OPEN 16:00/START 16:30
前売り:3,500円
出演者:1.G.K/KAZHA / 嘘とカメレオン / WAO!! / MIME+(岡村渉,谷啓吾) / 渡辺あきら / 山下翔吾 / 群青 + BAN + KENTA / Body Carnival / Alphact / KNOXX