“音楽”と“命”で繋がる――バンド・ダンサー・パフォーマーが集結した1.G.K主催イベント『Belief』をレポート
1.G.K集合写真 撮影=シモムラリュウイチ
1.G.K主催『Belief』 2017.2.11(SAT) 京都MUSE
結成10周年を迎え、2017年2月3日(金)に1stフルアルバム『Circle』を全国リリースした1.G.K。今回のアルバムリリースに伴い、活動の拠点でもある京都MUSEで、2017年2月11日(土)にリリースイベント『Belief』が開催された。“音楽”と“命”を共通項に集結した、バンド・ダンサー・パフォーマーなど、バラエティーにとんだ京都発のプロフェッショナルたちによって繰り広げられた、熱い一夜をレポートする。
■WAO!!&酒田しんご
(左から)酒田しんご、WAO!! 撮影=シモムラリュウイチ
会場のオープン前から会場外まで行列が続き、オープンと共に足早にステージ前に場所を確保する観客が目に入る。開演前からフロアが埋め尽くされていくなか、最初にステージに現れたのは大道芸パフォーマーのWAO!!だ。おもちゃ箱から飛び出したドタバタコメディーの主人公・WAO!!の不思議な世界に観客が引き込まれていき、どんどん会場が熱を帯びていく。
そして軽快な音楽と共にジャグラーの酒田しんごが登場した。WAO!!が投げたボールを酒田しんごが受け取るというジャグリングを繰り広げ、2人のコント調のやり取りに客席は笑いで包まれる。6つ、7つと次第に増えていくボールでのジャグリングで、笑いから歓声に変わるなかイベントがスタートした。
■colspan(MAI+MISAKI+YABUダンスコラボレート)
colspan 撮影=シモムラリュウイチ
バンド1組目はcolspanだ。異なるジャンルで活動していた梅田隆之(Pf)、楠川昌平(Gt)、秋山開(Ba)、森田諒(Dr)がお互いのプレイに触発されて結成されただけに、インストながらジャンルレスなサウンドで、1言では言い表せないサウンドの奥行きの深さがなんとも心地良く感じる。ジャジーな音色に揺れるなか、この日だけのスペシャルコラボレートでダンサーのMAI+MISAKI+YABUが登場した。
MAI+MISAKI+YABU 撮影=シモムラリュウイチ
客席からは「マイさんー!」「ミサキさんー!」「ヤブさんー!」と声援が飛び交い、鳴り響く手拍子。息の合ったロックダンスを披露して、『Belief』でしか見ることができないであろう貴重なコラボレートで会場を更に盛り上げた。
■橋本昌也
橋本昌也 撮影=シモムラリュウイチ
続いて26歳にしてマジック歴10年のマジシャン・橋本昌也が登場した。笑いを誘うトークと共に観客を巻き込んで行われるマジックショー。袋の中に入ったいろんな色の靴下の中から、観客2人にそれぞれ好きな色の靴下を引いて貰うのだが、観客が引いた2色の靴下が橋本自身が履いている靴下の色と一致しているというマジックを披露すると、客席からは悲鳴にも似た歓声が湧き上がる。そして観客が選んだ1枚のトランプの記号が、橋本がスケッチブックに描いたトランプの絵から飛び出すという摩訶不思議なマジックで会場は驚きに包まれ、橋本がステージを去った後も話題で持ちきりだった。
■渡辺あきら
渡辺あきら 撮影=シモムラリュウイチ
会場もすっかりあたたまり、次のパフォーマンスへの期待でワクワク感が高まるなか登場したのは、ジャグリングの渡辺あきらだ。クリスタルボールが手の中で生きているかの様に動き回る幻想的なパフォーマンスで観客を魅了し、大きなシルクハットやステッキも、渡辺の手にかかればまるで生きているかのよう。途中、1.G.Kのバンドメンバーが登場し、ジャグリングと1.G.Kメンバーの演奏によるコラボレートも披露された。
最後は四角い箱を使ったパフォーマンスで、掛け声と共に重ねた箱の表には「寿」の一文字。裏面には1.G.KボーカルのKATSUの似顔絵が描かれ、渡辺あきららしく1.G.Kのアルバムリリースを祝い、ステージを後にした。
■Body Carnival
Body Carnival 撮影=シモムラリュウイチ
続いて、ミリタリー調のカーキ色の衣装に身を包んだ個性豊かなブレイクダンスチーム・Body Carnivalメンバー12人がステージに登場した。京都を中心に活動しながらも、前年度のブレイクダンスの日本代表として世界でも活躍する彼らのダンスからは、チームの名にふさわしくカーニバルに参加しているかのような雰囲気を彷彿させてくれる。ステージ全体を使ったダイナミックでパワフルなダンスに、会場からの手拍子と拍手が鳴り止まなかった。
■Alphact
Alphact 撮影=シモムラリュウイチ
次に登場したのは1.G.KのKATSU(Vo)もメンバーとして活躍する、実験的アート集団・Alphact。「楽しめるアート」をテーマに、同じ音楽に合わせてバレエダンス、コンテンポラリーダンス、ブレイクダンスを披露する。他に類を見ないステージに、会場全体が一瞬も見逃すものかと釘付けになっていた姿が印象的だ。お笑い要素まで挟み込む贅沢なステージは、Alphactならではかもしれない。
■MIME+(岡村渉、谷啓吾)
MIME+(岡村渉、谷啓吾) 撮影=シモムラリュウイチ
オルゴールの音色と共に、首に赤いロープを巻いた2人の登場に息を飲む客席。WAO!!としてオープニングを飾った岡村渉率いるMIME+の演出に、会場全体が幻想世界へと誘われる。言葉は一切なく、自身がオルゴール人形になったかの様な演技や、目に見えない壁がどんどん迫ってくる演技、手に持ったトランクが急に重くなったり動かなくなったりと、言葉を使わずに身振りや表情だけで表現する黙劇が繰り広げられた。小道具も限られたアイテムしか使わず、見る者は自分もMIME+と共に旅をしているかの様な不思議な感覚にさせてくれる。“パントマイム”という独特の演劇の可能性を提示してくれたMIME+のステージは中毒性があり、新しい世界への扉を開いてくれた。
■壱劇屋
壱劇屋 撮影=シモムラリュウイチ
会場に「局部が魚肉ソーセージ男」と、耳を疑うアナウンスが流れ、ステージが明るく照らされる前から会場に笑いが起こる。劇団壱劇屋の登場だ。無人島に漂流してしまった男女2人物語なのだが、この演目の内容は下ネタ全開なので模様は想像にお任せしたい……。続く演目は『バリの神話』。オムツのみの男性が次々現れるステージに、壱劇屋が掲げるテーマ「世にも奇妙なエンターテインメント」に大きく納得してしまう。最初はオムツ姿の男性達を前に目のやり場に困ったが、気が付けば壱劇屋の独特な世界に引き込まれていた。
■私の思い出
私の思い出 撮影=シモムラリュウイチ
目の前で繰り広げられる多種多様なショーに、観客同士が今までの演目について熱く語る声が聞こえてくるなか、フロアの入り口からプロレス入場してきたのはアドベンチャーロックバンド“私の思い出”だ。ボーイスカウトのような衣装に身を包み、フロアを巻き込んでの登場に会場内の一体感が生まれる。
ライブを“キャンプ”と唱える“私の思い出”が繰り出すサウンドは、ファンクやカントリー、マーチング……時にはハードロック調もあったりと、様々な要素を取り入れた楽曲構成となっている。様々なジャンルで構成された楽曲に、分かりやすい歌詞に分かりやすいメロディーがのっているので、初めて見た観客も一緒に歌って楽しむことが出来る。メンバー全員が一丸となって会場を盛り上げ、トリの1.G.Kへ熱のこもったバトンを繋いだ。
■1.G.K(今貂子舞踏コラボレート)
1.G.K 撮影=シモムラリュウイチ
大トリを飾るのは『Belief』の主催でもある1.G.Kだ。アルバム『Ciecle』の2曲目に収録されている「Error」のイントロが聞こえると、少しでも前で観ようとステージ前へ押し寄せる人の波。“命の在り方”を音楽を通して奏でる1.G.Kの熱に会場全体がさらにヒートアップする。
1.G.K 撮影=シモムラリュウイチ
2曲目は「Gate Keeper」。KATSUの力強い歌声とボーカルMEの心地良い歌声が混ざり合い、唯一無二のハーモニーが会場に響き渡る。「The Most Beautiful Hands」「image」「Tearful Robots」と、見応え聴き応えのある楽曲で会場を盛り上げ、本サイトでのインタビュー(*インタビュー記事はこちら)でMEが、「私がピアノを弾くシルエットの影の前で、KATSUが踊るイメージで作った」と語った曲「cyan」では、暗く落された照明の中ピアノを弾くMEの前でKATSUが舞う。過去にブレイクダンス世界2位の実績を残しつつも、現在はブレイクダンスを原点にジャンルレスな“BODY ARTIST”として活動するKATSUの踊りは、言葉無くとしても“命の在り方”を彷彿とさせ感動を誘う。「生き様見てくれ!」KATSUの響き渡る声に息を飲む観客。KATSUの想い、願いが会場に伝わった瞬間だ。
そして「Moon Stone」「Heaven's Crow」と続き、会場の興奮も最高潮を迎えるなか「The Jacket」では、舞踏家の今貂子が圧倒的な存在感を放ちながら登場する。
今貂子 撮影=シモムラリュウイチ
“いのちの活性化の力”を土台とした、アバンギャルドな舞踏でステージを演出する今貂子に、息をする事も忘れ、世界観に引き込まれる。1.G.Kのロックミュージックに違和感も無くすっと入り込み、不思議な感覚にしてくれる。今貂子の舞踏に感性が研ぎ澄まされ、イベントはクライマックスをむかえる。宗教というテーマで“今伝えなければならない”という想いに、正直に世界と向き合ったという楽曲「Breaking the thought」で本編は終了した。
1.G.K 撮影=シモムラリュウイチ
そして、鳴り止まない拍手喝采とアンコールに応え、「Dragon」を演奏。“命”や“生きる意味”を考えさせられ、観るものすべての感情を揺さぶるステージでイベントは幕を下ろした。
■ジャンケン大会
ジャン賢太郎(右) 撮影=シモムラリュウイチ
イベント終了後、ライブイベントではあまり見かけない企画、ジャンケン大会が始まった。来場者参加型のこの企画は、1.G.Kから来場者へのプレゼントで、来場者のなかで最後まで勝ち残った勝者に現金3万円が贈られるというもの。ジャンルレスなプロフェッショナルたちによって繰り広げられた、豪華過ぎるステージを終えた後も来場者が楽しめるスペシャルな企画に、一同ご満悦の様子。
普段、一度に見ることが出来ない多ジャンルなコラボ――“命”と“音楽”をキーワードに集結したパフォーマーたちのステージで、“自分の存在”や“生きる事”を考えるきっかけとなったのではないだろうか。『Belief』で観たもの、得た感情は来場者の財産となったに違いない。
レポート・文=Lily 撮影=シモムラリュウイチ
日時:2017年2月25日(土)
場所:渋谷club asia (東京都)
時間:OPEN 16:00/START 16:30
前売り:3,500円
出演者:1.G.K/KAZHA / 嘘とカメレオン / WAO!! / MIME+(岡村渉,谷啓吾) / 渡辺あきら / 山下翔吾 / 群青 + BAN + KENTA / Body Carnival / Alphact / KNOXX