怒りは損だが役に立つ 映画『アングリーバード』が教えてくれるもの

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2017.2.7
 (c) 2016 Rovio Animation Ltd. and Rovio Entertainment Ltd. Angry Birds and all related properties, titles, logos and  characters are trademarks of Rovio Entertainment Ltd and Rovio Animation Ltd and are used with permission. All Rights Reserved.

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怒りは損? それとも

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「短気は損気」ということわざがある。すぐにイライラしたり、怒ったりすると結局自分が損をするはめになる、という意味だ。実生活でも多くの人が実感したことがあるのではないだろうか。

映画『アングリーバード』の冒頭は、まさに「短気は損気」を地で行くエピソードだ。主人公のレッドは、誕生日ケーキのデリバリーのアルバイトをしている。ある日、時間ギリギリでとある宅にケーキを届けたところ、遅れたと言いがかりをつけられ、癇癪を起こし客を怒らせてしまう。そのせいでレッドは裁判所でアンガーマネジメント教室に通わなくてはならなくなる。

理不尽な扱いを受けても軽く受け流してしまったほうが良い時もある。冒頭のエピソードはまさにその典型的な例だろう。しかし、怒りは時に必要でもある。世の中の理不尽に対して怒りのエネルギーが何かを変える契機になることもある。本作は、その名の通り怒りを主題にした作品だ。怒りで損をすることもあるが、正しく怒り、行動しなければいけない時もまたあることを描いている。

豚は侵略者アメリカのメタファー、では鳥は?

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レッドは海辺に孤独に生きる癇癪持ちの鳥だ。他の鳥たちからも好かれておらず、それは多分に癇癪のせいであり、空気を読まずに意見をして場を乱す性格のせいだ。

このバードアイランドは平和な島だが、住んでいるのは飛べない鳥だけで、島の外にも世界があることを知らない。この島が世界の全てと皆が思っており、他の島との交流もない。非常に閉鎖的な村なのだが、こういう所ではレッドのような空気を読めないヤツは嫌われる。

ある日、この島に豚たちが侵略者としてやって来る。高度な文明を持ち、カウボーイを気取った豚たちはお人好しの鳥たちをだまし、卵をかっさらっていってしまう。カウボーイの恰好をしてこの豚たちは、侵略者としてのアメリカに重なる。欲望のままに他国に攻め入り蹂躙して、お宝を奪っていくのだ。

この理不尽な仕打ちに対して、どうすれば良いのかわからない鳥たちに対して、レッドが怒りを持って行動しよう、と呼びかける。悲しみに打ちひしがれて立ち上がれない鳥たちに、豚たちに立ち向かう勇気を呼び起こしたのは、怒りという感情だった。
映画冒頭では、損するものとして描かれていた怒りが、ここでは理不尽に立ち向かうエネルギーと勇気の源になっているのだ。

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先に豚は侵略者としてのアメリカと書いたが、では鳥たちは何のメタファーだろうか。鳥たちが神聖視しているハクトウワシをモデルにした「マイティ・イーグル」はネイティブアメリカンが聖なる生き物として崇めていた鳥でもある。鳥たちは侵略された側のアメリカと見ることもできるかもしれない。ハクトウワシは、現在のアメリカ合衆国の国章でもある。

あるいは、外の世界を知らない、平和な島国で空気を読めないヤツを疎んじるムラ社会、と書くとなんだか日本のように思えてくる。鳥たちの存在が描くものは多様な解釈を許容できる。観客が自分ごととして見られるように上手く工夫できている。

ちなみにアングリーバードはパチンコの原理を利用して、鳥たちを飛ばして敵を倒すゲームだが、突撃したきり、戻ってこられないゲームの特徴を指して、英語圏ではKamikaze Birdsなどと呼ぶ人も一部だがいる。

アメリカはダイナミックに変化していく国だ。奴隷解放、女性参政権、黒人解放運動などなど、社会の理不尽が変わる時には常に大きな怒りによるムーブメントがあった。翻って日本はどうだろう。日本人はアメリカほど怒りにまかせて行動しない。それは美徳でもあるが、社会をなかなか変えられない一因でもあるかもしれない。

ただの娯楽アニメーションではなく、とても教条的な面とアメリカに対するアイロニカルな視線を持った作品だ。怒りは損だが役に立つ。怒りの使い所が楽しく学べる良作だ。
 

 

文=杉本穂高

『アングリーバード』Blu-ray&DVD 2017年1月20日(金)発売、同日レンタル開始
※デジタルセル 2017年1月11日(水)先行配信

作品情報

『アングリーバード』

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Blu-ray&DVD 2017年1月20日(金)発売、同日レンタル開始
※デジタルセル 2017年1月11日(水)先行配信

■アングリーバード Blu-ray 4,743円+税
■アングリーバード DVD 3,800円+税
■アングリーバード IN 3D 5,695円+税
■アングリーバード 4K ULTRA HD & ブルーレイセット 6,800円+税

公式ホームページ:http://bd-dvd.sonypictures.jp/angrybird-movie/
発売元・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

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原題:The Angry Birds Movie

監督:ファーガル・ライリー、クレイ・ケイティス
製作:ジョン・コーエン『怪盗グルーの月泥棒3D』
日本語吹き替え版声優:坂上忍(レッド)、りんか&あんな(ベイビーバード)、前園真聖(ジョニー/ピッグセブン)

【ストーリー】
飛べない鳥たちが平和に暮らすバードアイランドが大ピンチ! 怒りんぼうのレッドは、仲間外れで、いつもひとりぼっち。ある日、ブタのピッグ軍団が島に上陸。次々にタマゴを盗み去り、一夜にして島はパニックに・・・。そんな中、「こんな時こそ助け合うのが仲間だろ!」と怒りを勇気に変えて、レッドが立ち上がる。大切なタマゴを取り戻すため、バードたちはパチンコを駆使しフライングバトルに挑む!今、彼らの“勇気”と“絆”が試される! 

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