三村奈々恵(マリンバ) 独自の選曲で人間の感情や崇高な“祈り”を表現

インタビュー
クラシック
2017.2.11
三村奈々恵 ©Yoshinori Kurosawa

三村奈々恵 ©Yoshinori Kurosawa


 三村奈々恵は、ジャンルを超えたレパートリー、卓越した技術と多彩な音色と表現によって、マリンバという楽器の可能性を飛躍的に広げた、日本を代表するマリンビストの一人。昨年末に10年ぶりとなる新譜『マリンバ・クリスタル—祈り—』を発表し、2月にはヤマハホールでリサイタルを開催する。

「いつも曲に寄り添うということに気を配って演奏していますので、マレット選びもその曲に一番合うように変えています。今回演奏するハツィスの作品のように、楽章ごとに変える場合もあり、コンサートの時にはマレットを30本くらいズラッと並べることもあります」

 昨年のアルバム、また2月のリサイタルではハツィスにゴリホフ、イグナトヴィチといったマリンバ奏者以外にはなじみが薄い作曲家も並んでいる。しかしその一方で、バッハや吉松隆、さらにはキース・ジャレットの作品も演奏される。

「3歳からクラシック音楽ベースの教育を受けてきましたが、小学校の頃から毎日ラジオで、ブリティッシュ、アメリカン・ポップやユーロビートなどを聴いてきました。そんな生活でしたので、自分の中ではジャンル間の壁がないのです。今回のリサイタルのプログラムもCDの収録曲も、一見それぞれの関わりは薄いように見えますが、作品のもつ空気感は非常に近いものがあります」

 その共通した空気感の根底にあるものは崇高な“祈り”だという。

「科学的なものは急速に発展し続けていますが、人間の本質や感覚、祈りといった崇高な想いなどは、縄文時代から変わっていないのではないでしょうか。吉松さんの『バードスケイプ』、イグナトヴィチの『トッカータ』、ゴリホフの『マリエル』といった作品ではそういうことを強く実感しています。曖昧だけどすごく強い感情を感じるんです」

 人間の感情や祈りへの意識は、特にエルガーの「ニムロッド」(「エニグマ変奏曲」第9変奏)の演奏に表れている。追悼の場面で淡々と演奏されることが多い作品だが、三村は神への感謝や晴れ晴れとしたものを感じ、敢えてかなり遅いテンポを設定したという。
「同じ曲を聴いても、人それぞれで捉え方や感じ方は違いますよね。今回のCDやリサイタルにつけたタイトルは、自分の発する音楽がクリスタルのように輝き、様々なお客様の感覚と呼応してプリズムのように輝くことをイメージしてつけました。聴いて下さる方には、ぜひ曲が“連れて行ってくれる”世界を自由に楽しんでいただきたいと思っています」

取材・文:長井進之介
(ぶらあぼ 2017年2月号から)


三村奈々恵 マリンバ・リサイタル
〜マリンバ・クリスタル〜
2/24(金)19:00 ヤマハホール
問:ヤマハ銀座ビルインフォメーション03-3572-3171
http://www.yamahaginza.com/hall/

CD
『マリンバ・クリスタル―祈り―』
オクタヴィア・レコード
OVCC-00133
(SACDハイブリッド盤)
¥3200+税

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