尾高忠明(指揮) 東京シティ・フィル 絶妙なシベリウス・プログラム

2015.9.2
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クラシック

記念イヤーに光を放つ絶妙なシベリウス・プログラム

 シベリウスの音楽には、誇張された表現や華美な音が似合わない独特の空気感がある。現在の日本で、そうした抑制の美学をもって雄弁に語り得る“シベリウス指揮者”の代表格といえば、尾高忠明であろう。それは東京でも聴かせた札響の交響曲シリーズ等で証明されている。

 その尾高が、9月の東京シティ・フィル定期でシベリウスを指揮する。これは見どころの多い注目のコンサートだ。

 まずは、組曲「恋人たち」、ヴァイオリン協奏曲、交響詩「4つの伝説曲」という演目が、生誕150年の今年数多いシベリウス・プログラムの中でも稀少。「恋人たち」は、繊細な弦楽の調べによる切なくも美しい名品で、札響でも取り上げた尾高が、やはり十八番の英国音楽にも似た清澄な感銘を与えてくれる。

 民俗叙事詩「カレワラ」に基づく「4つの伝説曲」は、有名な「トゥオネラの白鳥」のイングリッシュ・ホルンを軸とした瞑想的な情趣、「レンミンカイネンの帰郷」の弾んだリズムや迫力など、起伏に富んだ聴き応え充分の音楽。尾高は、2010年に札響、14年にN響でも取り上げて絶賛されただけに、自在の名演が期待される。

 稀代の名曲・ヴァイオリン協奏曲の独奏は、パリを拠点に活躍する韓国の名手、ドン=スク・カン。この共演は尾高の希望によって実現したというから、息の合った演奏が展開されること必至だ。

 そして、高関健の常任指揮者就任披露の「わが祖国」で濃密な快演を聴かせるなど、シティ・フィルはいま意気軒昂。手の内に入った尾高と共に奏でるシベリウス傑作集は、記念イヤーにひと際輝く充実の公演となるに違いない。

文:柴田克彦
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年8月号から)

公演情報
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団第291回定期演奏会​

日時:2015/9/12(土)14:00
会場:東京オペラシティ コンサートホール
指揮:尾高 忠明
ヴァイオリン:ドン=スク・カン
曲目:
シベリウス:組曲「恋人たち」作品14
シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47
シベリウス:交響詩「4つの伝説曲」作品22
問合せ:東京シティ・フィル サービス 03-5624-4002
公式サイト:http://www.cityphil.jp/