日本一の売れっ子字幕翻訳家・松浦美奈氏が語る「優れた映画は台詞に共通点」

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2017.2.23
松浦美奈氏

松浦美奈氏

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2月22日、東京・アキバシアターにて映画『光をくれた人』のトークイベントが開催され、同作の字幕翻訳を手がけた字幕翻訳家・松浦美奈氏が登壇した。

『光をくれた人』は、全世界で200万部超の売り上げを記録したベストセラー小説『海を照らす光』を、『ブルーバレンタイン』のデレク・シアンフランス監督が映画化したもの。オーストラリア西部の孤島で暮らす灯台守・トム(マイケル・ファスベンダー)と妻・イザベル(アリシア・ヴィキャンデル)が漂着した赤ん坊を娘として育てるが、母親・ハナ(レイチェル・ワイズ)が二人の前に現れたことで、一家の日常が大きく変化していく。

 

映画『光をくれた人』 (C)2016 STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC

映画『光をくれた人』 (C)2016 STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC


松浦氏は、5歳までベイルートとロンドンで育ち、小学校から高校までを日本で過ごし、18歳から22歳までフランスで生活。大学で英仏語を学び、映画の輸入会社の宣伝担当を経て、字幕翻訳家となった人物だ。手がけた作品は、『ロスト・イン・トランスレーション』『ドッグヴィル』『インファナル・アフェア』『アナと雪の女王』『アメリカン・スナイパー』『ゴーン・ガール』『キャロル』『ハドソン川の奇跡』など、数えきれないほど。今、日本で最も売れっ子の字幕翻訳家と言っても過言ではない。

松浦氏は、映画上映後のトークショーに登場。本来、字幕翻訳は裏方のため、人前でトークショーを実施することは滅多にないそうで、今回が長いキャリアの中でも2回目の登壇とのこと。翻訳のために初めて本作を見た印象を尋ねられると、松浦氏は「最初は翻訳のために台詞ごとにシーンを区切る作業をしていたけど、最近のこじんまりした映画とは全然違う、まるで昔の大作のような、ものすごく雄大な景色・風景・カメラそして音楽の美しさに圧倒されて、仕事をそっちのけで映画に没頭してしまった」とコメント。また、「同じシーンを何度見ても飽きないし、台詞がない箇所は普段は見ずに飛ばすのですが、この映画は全部見てしまうほど映像に力がある」と同作の映像美を絶賛した。

 

映画『光をくれた人』 (C)2016 STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC

映画『光をくれた人』 (C)2016 STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC


さらに、松浦氏は「優れた映画は台詞に共通点があって、単語が簡単だとか難しいとかではなく、どんどん台詞が生まれてきて、物語が進んでいくのです」と解説。「“これは何を言ってるのだろう?”、“同じ台詞がまた出たから違う言葉に変えなきゃ”と、途中で悩むことがなく、映画の流れが切れないことが特徴なのです」と語った。

また松浦氏は「台詞が、単純だったり量が少ない映画の場合、普通の映画の半分ぐらいで訳せるかなと思っても、意外と言葉が出てこなかったり、台詞がない箇所に字幕をつけるのに悩むことがあり、かえって時間がかかることがある」と、字幕翻訳家ならではのこまかなエピソードを披露。「アクション映画なんて特にそうで、なんでも『カモン』って言うなよって思って」と、冗談交じりに笑わせた。さらに「けれど、この映画は違っていて、とても訳がしやすかった」と、『光をくれた人』が “訳しやすい映画“だったことを明かしている。続けて松浦氏は「原作があることを知らなければ、まさに夫婦を演じた二人のために、台詞があて書きされたと思えるほど素晴らしい脚本」とデレク・シアンフランス監督が脚色を務めた台詞にも触れている。

 

映画『光をくれた人』 (C)2016 STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC

映画『光をくれた人』 (C)2016 STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC


松浦氏は、同作に「デヴィッド・リーンの『ライアンの娘』を思い出させる風格ある圧倒的な映像!! 」とコメントを寄せている。『アラビアのロレンス』『ドクトル・ジバゴ』で知られる名匠デヴィット・リーンの一作に、同作を重ねた理由については「近年多い、半径3メートル以内の出来事を描いた身近な物語の映画に対して、この映画は、美しく壮大な映像と、アレクサンドル・デスプラの素晴らしい音楽、主演2人をはじめ脇を固めるキャストの演技、シアンフランス監督の演出、全ての要素が合わさった、雄大で近年の映画に中々見られない風格を備えた映画です。キャラクターたちが誰一人として責めない、今の時代だとすぐ人に対して怒るし責めるし不寛容だなと思うのですが、そういう意味でも今の時代ではめったに出会えない名作だと思います」と語り、イベントを締めくくった。

 


映画『光をくれた人』は3月31日(金)TOHOシネマズ シャンテ 他全国ロードショー。

作品情報

映画『光をくれた人』​

(C)2016 STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC

(C)2016 STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC



原題:THE LIGHT BETWEEN OCEANS
(2016/アメリカ・オーストラリア・ニュージーランド/133分/スコープサイズ/5.1ch)
【G区分】
監督:デレク・シアンフランス(『ブルーバレンタイン』、『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』)
原作:『海を照らす光』(M・L・ステッドマン/古屋美登里訳/早川書房)
出演:マイケル・ファスベンダー、アリシア・ヴィキャンデル、レイチェル・ワイズ
配給:ファントム・フィルム
提供:ファントム・フィルム/KADOKAWA/朝日新聞社 

公式サイト:http://hikariwokuretahito.com/  
(C)2016 STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC 

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