ポーター・ロビンソンとマデオン 二人の天才が奏でた美しくエモーショナルな時間 ”切なさと共にある幸福論”

動画
レポート
音楽
アニメ/ゲーム
2017.2.24
Photo by Masanori Naruse

Photo by Masanori Naruse

画像を全て表示(8件)

PORTER ROBINSON & MADEON "Shelter" Live Tour in Tokyo
2017.2.21(Tue) Zepp DiverCity

天才二人の奏でる音楽はどこまでも伸びやかで、満員の観衆に突き刺さった。

エレクトロニック・ミュージック界を牽引する二人の天才。ポーター・ロビンソンとマデオンが昨年より行っている『シェルター・ライヴ・ツアー』の日本公演が先日2月21日、東京Zepp DiverCityで行われた。ヨーロッパ・北米ではソールドアウトを連発したこのライブ。アジアではこの日本が唯一の開催ということで、会場は超満員。アジア圏の人と思われるファンも沢山見受けられた。

2016年10月に二人のコラボレーション楽曲として発表された「Shelter」はそのMVのアニメーション制作を『アイドルマスター シンデレラガールズ』などを制作したアニメーション・スタジオ、A-1 Picturesが担当、ポーターが原案・原作として作り上げられたミュージック・ビデオはクラブ・ミュージックファンだけではなくアニメファンまでも巻き込んで、衝撃的な作品となった。

アニメーションファンを公言するポーターは、このMVである意味「アニメファンの夢」を叶えた一人となったわけだが、楽曲自体もマデオンの持つ美しい旋律、ポーターの特徴とも言えるエモーショナルを喚起させる展開が絡み合い、新しいエレクトロニック・ミュージックの地平を開くものとなっている。その二人がジョインして行われるこのツアーは、正にライブにおける“新しい体験”だった。

ステージは背面に巨大なLED,二人が立つであろう機材の後ろにも二枚のモノリスのようにそびえるLEDの壁。どことなく厳かな雰囲気を感じる中、大歓声に迎えられながらポーター・マデオンの二人が登場。

Photo by Masanori Naruse

Photo by Masanori Naruse

一曲目はツアータイトルにもある「Shelter」、イントロから爆発するフロアは狂乱というわけではなく、受け入れ、歓喜するように見えた。マイクに向かって歌う二人。そこから「Sad Machine」、「Finale」とお互いの持つビッグ・アンセムを次々と投下していく。

数え切れないほどの照明がフロアをきらびやかに照らし出し、LEDをはそのエモーショナルな楽曲たちを彩るように次々に展開していく。シンセパッドを叩きビートを刻んだと思えば、キーボードを操りメロディを奏でる。二人の息を受けるように完成された楽曲は更に進化し、優しく・強く降り注ぐ。

2015年のソニックマニアで僕はポーターとマデオン二人のパフォーマンスを見た。その時も足元から震え上がるような多幸感を感じたのを今も覚えている。あの時よりも低音を響かせるスピーカーは、少し肌寒かったこの日のための僕の上着をブルブルと震わせ、降り注ぐ光と音は時間を忘れさせてくれる。

Photo by Masanori Naruse

Photo by Masanori Naruse

エレクトロ・ミュージックが僕に教えてくれたことの一つとして、人は光と音に包まれる時、どうしようもないくらい幸福を感じる、ということだ。それは先述のソニックマニアのポーター・マデオンもそうだし、サマーソニックのマリンステージで見たZEDDもそうだし、秋葉原MOGRAで行われた『ピカチュ!』でのDJ WILDPARTYのプレイでも感じたことだ。

そしてポーターとマデオンの作る音にはどこかしら切なさを感じる。ポーター自身も「自分が作品を作る原動力は感動を感じさせること」というように、彼の作品には愛とその中に内包される寂しさのようなものがある。

Photo by Masanori Naruse

Photo by Masanori Naruse

切なくて、胸が締め付けられるような思いを誰しもしたことがあると思う、人は些細な事でそれを思い出す。夏の雨上がりの匂いだったり、夜の高速道路だったり、温かい夕食だったり、好きな人の笑顔だったり、そして音楽は思い出を加速させる。

でも、人は切なさをリフレインしている時、その思い出に浸っている時、どこか満ち足りているような気もしている。きっと2つは当価値で、切ない思い出を持てる人間は、幸福を享受することもできるのだと思う。

Photo by Masanori Naruse

Photo by Masanori Naruse

「アリガトウゴザイマス!」とマデオンが日本語で挨拶をし、「Divinity」では銀テープが舞い降りる。「僕が一番好きなマデオンの曲なんだ」とポーターが「Beings」をプレイ。どこか切なくて、とても美しい時間。永遠にこの時が続けばいいと思っていた時、本編ラストで流されたのは「Goodbye To A World」。背後のビジョンには歌詞が淡々と映し出されていく。

Thank you, I'll say goodbye soon
(ありがとう、もうすぐお別れだね。)

Photo by Masanori Naruse

Photo by Masanori Naruse

ああそうか、終わってしまうのか。どこか受け入れられなくも、それを止めることが出来ない事がわかるセットリスト。満面の笑みと日本への感謝を残してステージを去る二人。ここまできっかり1時間。こんなに潔いことがあるだろうか。

2500人の歓声を受けて再登場した二人が奏でたのは、ポーターのキーボードにあわせてマデオンが歌った「Shelter」、とても寂しくも愛に溢れたこの曲が最後に奏でられたことで、僕らはまた未来に少しだけ希望を持てる。そして、この日世界のここだけで生まれた奇跡の時間を思い出して、また幸福を感じるのだろう。

Photo by Masanori Naruse

Photo by Masanori Naruse

肩を組んで感謝の言葉を並べ、笑顔で去っていった二人をまた見ることが出来るのは、そう遠くない未来だと信じたい。

レポート・文:加東岳史

 

イベント情報
PORTER ROBINSON & MADEON "Shelter" Live Tour in Tokyo
2017.2.21(Tue) Zepp DiverCity

セットリストは非公開
 
シェア / 保存先を選択