ミュージカル・コメディ『パジャマゲーム』主演の北翔海莉と演出のトム・サザーランドが大阪で語った!
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ミュージカル・コメディ『パジャマゲーム』取材会にて(撮影/石橋法子)
1954年の初演から幾度となく上演が繰り返されているトニー賞受賞作品、ミュージカル・コメディ『パジャマ・ゲーム』が、トム・サザーランド演出により日本で上演される。昨年、宝塚歌劇団を退団した元星組トップスターの北翔海莉の女優デビュー作。パジャマ工場で働く勝ち気なヒロイン、ベイブが賃上げ交渉で対立する新任の工場主任シド(新納慎也)とひょんなことから恋に落ちる姿を描く。57年にはジョン・レイドとドリス・デイ主演で映画化され、ボブ・フォッシーが代名詞となる「スチーム・ヒート」を創作するなど、初めて振付を行った作品でも知られるミュージカル・コメディだ。耳馴染みのある楽曲や軽快なダンスに彩られた話題作が、トム・サザーランドの演出でどう現代によみがえるのか。主演の北翔海莉とトム・サザーランドが大阪の合同取材会で見所を語った。
「恋愛の場面で、新納さんをリードしないように気を付けます(笑)」(北翔)
『パジャマゲーム』は初演当時、とても革新的な作品だったと話すトム・サザーランド。
トム・サザーランド(以下、トム) これまで上演されてきた作品のような、日常とかけ離れたドラマチックな物語ではなく、観客も登場人物のような気持ちで共感して観られるミュージカルで、日常のことが語られたはじめての作品でした。強いストーリー性をポップな音楽でお届けするような、現代のミュージカルに通じる作品だと思います。日本公演に向けて考えたのは、誰がボブ・フォッシーの代わりを務めるのかということでしたが、ニック・ウィンストンさんに決まってとても良かったと思っています。ニックは英国で5本の指に入る振付家であると同時に、ミュージカルビュー『フォッシー』のウエストエンドオリジナルキャストでもあったので、フォッシーへのオマージュと共に全く新しいものを作り上げてくれるはずです。60年以上の前の作品ですが、昨日起こった出来事のように楽しんでいただけると思います。
北翔海莉とトム・サザーランド
北翔海莉(以下、北翔) 本当に日常ですぐ隣のひとに起こってもおかしくないような内容になっています。お互いがそれぞれの立場で一生懸命生きていく中で、対立することもありますが、それでいてハッピーエンドになるというのが、この作品の一番訴えたいところだと思います。
ベイブというヒロインについて、「今の自分にぴったり」と話す北翔。
北翔 今回の役は、仕事に命をかけて男性と対等に闘えるような男勝りな女性。それでいて工場の仲間を守る責任感や正義感に溢れ、母のような温かさも持っている。仲間を守るという意味では、宝塚時代にトップとして組子を率いた心境とも重なります。また、恋愛に対して不器用な部分は、中学卒業から21年間”男性”として生きてきた自分にとって、ちょうど女性に変わろうとする今の自分のギクシャクした感じが、うまくベイブの不器用さにつなげられるのではないかなと思います。私服ではまだ一枚もスカートを買えていないのですが、相手役の新納さんが「自分の方が女性役に詳しいので、色々教えてあげる」と言ってくださっていますし、元相手役の妃海風さんにもこれから電話でいろいろと聞いてみたいなと思います。自分が新納さんをリードしないようにだけは、気を付けたいですね(笑)。
北翔海莉
「革新的な初演同様、皆さまを驚かせることをお約束します!」(トム)
毎回来日のたびに宝塚歌劇団の公演を観劇するというトム。今回も北翔の魅力に惚れ込んでのタッグとなった。
トム すばらしい歌声やダンスのテクニック、何より舞台上の姿を見ていて分かるのは、観客とのつながりを持てる方ということ。それらの才能がすべて詰め込まれた女性という印象なので、パーフェクトなベイブになるのではないかと思いました。というのも、映画版でドリス・デイが演じたベイブはフェミニンな感じで、僕としては、それは少し違う印象を受けていました。ベイブは男性と対等に戦う女性というキャラクターなので、世界中で北翔さんほどぴったりな方はいらっしゃらないんじゃないでしょうか。
北翔海莉とトム・サザーランド
北翔 なんともお恥ずかしい限りですが(笑)。お客様を楽しませるというエンターテイナーという点では、21年間修行して育てていただいた宝塚の舞台と変わらず、女優としてもまっとうできることを大変光栄に思っています。今まで以上に毎公演で進化したステージをお届けできるように精進して参ります。また、自分では気づかない新たな一面をトムさんを始め、共演者の方々が引き出して下さると思うので、新しい北翔を作ってもらうような気持ちでいきたいなと思います。
初演から60年を経て、今なお上演が繰り返される作品の魅力については、
北翔 一度は耳にしたことのあるようなメロディや有名な楽曲が何曲も出て来ますし、映画でも有名なピクニックの場面では、衝撃を受けるよなダンスシーンもあります。こんなにも歌って踊って、それでいて日常に起こるようなストーリーであり、最後はハッピーエンドに包まれる。元気、勇気がたくさん詰まった作品なので、ブロードウェイ・ミュージカルファンは一番憧れる作品なんじゃないかな。ファンも観たいけど、ステージに立つ役者も「出たい!」と思わされる作品のひとつだと思います。
北翔海莉
トム 演出家としては、語り継がれている作品を伝承していくのが好きですし、もともとの視点とはちがう角度で上演するというのが好きなんです。初演当時にこの作品が持っていた革新的な部分は、今の時代には普通のことですが、でも当時の人が感じた衝撃と同じぐらい、今回のリバイバルでも観客の皆さまを驚かせることをお約束します。僕は観客の想像力ほど強いものはないと思っていますので、それにより「こんなの観たことない!」というようなものをお見せします。それぞれのイマジネーションのままに、お持ち帰りください。
トム・サザーランド
最後に北翔からメッセージが。
北翔 『パジャマゲーム』で女優としてデビューさせていただきます。ミュージカルファンなら誰もが憧れる作品をトムさんが演出して下さるということに、自分の女優デビュー以上に喜びとワクワクを感じています。また、キャストのみなさんとは製作発表に向けた稽古で数日ご一緒しただけですが、常に稽古場が笑いで溢れていて明るく楽しい方ばかり。役者のパワーで、より一層明るくハッピーな作品になると思います。2017年の日本のこのカンパニーならではの『パジャマゲーム』として、世界からも注目していただけるような作品をお届けしたい。新しい北翔海莉をお見せしますので、よろしくお願い致します!
北翔海莉とトム・サザーランド
取材・文・写真:石橋法子
■演出:トム・サザーランド
■振付:ニック・ウィンストン
■出演:北翔海莉、新納慎也、大塚千弘、上口耕平、広瀬友祐、阿知波悟美、佐山陽規、栗原英雄ほか
◎5月27日(土)一般発売開始
<東京公演>
2017年9月25日(月)~10月15日(日)
会場:日本青年館ホール
<大阪公演>
2017年10月19日(木)~29日(日)
会場:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ