パリ・オペラ座バレエ団が来日記者会見/古典とコンテンポラリーの「オペラ座らしいプログラム」

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2017.3.2
パリ・オペラ座バレエ団 撮影:西原朋未

パリ・オペラ座バレエ団 撮影:西原朋未


パリ・オペラ座バレエ団が3月2日(水)~12日(日)まで、東京文化会館で15回目の来日公演を行う。このほど行われた来日記者会見ではパリ・オペラ座のリスナー総裁も出席。公演プログラムの内容と、新たにオレリー・デュポン芸術監督を迎えてのパリ・オペラ座バレエ団の展望について語られたほか、ダンサー達からは「ラ・シルフィード」の見どころも含めた来日コメントが寄せられた。

■オレリー・デュポン、芸術監督としての初来日公演

リスナー総裁 今回の来日公演はパリ・オペラ座バレエ団の元エトワール、オレリー・デュポンが2016年2月に芸術監督に就任して初めての来日公演になります。

プログラムは1つ目が「ラ・シルフィード」。ピエール・ラコットが復元、振り付けた作品で東京フィルハーモニー交響楽団の演奏によるシュナイツホーファーの音楽も美しいものです。

2つ目の演目は「グラン・ガラ」としてバランシンの「テーマとヴァリエーション」、ミルピエ「ダフニスとクロエ」、ロビンス「アザー・ダンス」を上演します。とくに「ダフニスとクロエ」は1年前につくられた新しい作品で、舞台美術は現代アーティストのダニエル・ビュランによるという点も注目してください。

ステファン・リスナー総裁 (撮影:西原朋未)

ステファン・リスナー総裁 (撮影:西原朋未)

■ダンサーが語る「ラ・シルフィード」と公演への思い

アマンディーヌ・アルビッソン タイトルロールをユーゴ・マルシャンと共に踊ります。彼と踊るのは初めてなのでとても楽しみにしています。

シルフィードの役には繊細なトゥワークが必要です。妖精ですから軽い、マジカルな存在でなければなりません。トゥと床との接触をいかに軽くするかという難しい練習をしてきましたので、この点もぜひ見てください。

アマンディーヌ・アルビッソン(エトワール) (撮影:西原朋未)

アマンディーヌ・アルビッソン(エトワール) (撮影:西原朋未)

ユーゴ・マルシャン 今回の来日は私にとっては日本での初主演に加え、パリ以外での初主演という、とても重要な機会です。

ジェームスは妖精と恋をし妖精の次元へ行ってしまうが、同時に人間の娘とも恋をしている、ある意味地に足の着いたところもある。こういう多面的な人物を解釈するのは実に興味深いものがありました。

ユーゴ・マルシャン(プルミエ・ダンスール) (撮影:西原朋未)

ユーゴ・マルシャン(プルミエ・ダンスール) (撮影:西原朋未)

ジョシュア・オファルト この作品はロマンティックバレエの代表作であり、一つの様式美を示していると思います。男性ダンサーにとって女性の持ちあげ方、体重のかけ方など、いろいろな様式美を、いい意味で際立たせていきたいです。

ジョシュア・オファルト(エトワール) (撮影:西原朋未)

ジョシュア・オファルト(エトワール) (撮影:西原朋未)

リュドミラ・パリエロ 「ラ・シルフィード」の準備をするにあたり、旧エトワールでこの作品の初演イレーヌ・テスマールと準備をする機会があったのは光栄でした。
今回エトワールとして初めて日本で踊ります。日本のファンの方々と映像ではなく、自分の生のパフォーマンスを直接見てもらえるのはとても重要なこと。舞台空間という特別な場をシェアすることで、皆さんとよりよく知り合うことができるでしょう。

リュドミラ・パリエロ(エトワール) (撮影:西原朋未)

リュドミラ・パリエロ(エトワール) (撮影:西原朋未)

マチアス・エイマン ロマンティックバレエの代表作で、パリ・オペラ座バレエ団のレパートリー中のレパートリーです。この役を踊るのは2回目ですが、パートナーが変わることでさらに役を再解釈できるでしょう。

またこの演目は感情の幅が広く、様々なニュアンスを表現しなければならない難しい作品です。特に私が踊るジェームスはパがとても難しく、テクニックの難しさがまず語られがちですが、この作品をよく掘り下げると、難しい技術がちりばめられた踊りのすべては物語によって流れがつくられています。音楽や美しい衣装など、全てが融合して特別な雰囲気を醸し、むしろテクニックは二次的なものなのです。ぜひ物語世界に目を向けてご覧になってください。

マチアス・エイマン(エトワール) (撮影:西原朋未)

マチアス・エイマン(エトワール) (撮影:西原朋未)

レオノール・ボラック 2016年12月31日にエトワールに任命された時のパートナーがマチアス・エイマン。彼がジェームスというキャスティングの中でエフィを踊ることができ、また「ダフニスとクロエ」で新エトワールのジェルマン・ルーヴェ、尊敬するオレリー・デュポンと仕事ができるのはうれしいことです。

私が「ラ・シルフィード」で演じるエフィはストーリーを語らなければならない役です。エフィがいるからこそ、なぜジェームスがシルフィードに思いを寄せ、彼女のもとに行ってしまうのかが語られるからです。

この公演はエトワールに昇格して初めての舞台ですが、エトワールになったということを考えすぎると緊張、恐怖に繋がるので、プルミエール・ダンスーズの延長にあると心掛けています。

レオノール・ボラック(エトワール) (撮影:西原朋未)

レオノール・ボラック(エトワール) (撮影:西原朋未)

■バレエ・ミストレスが語る「ラ・シルフィード」「グラン・ガラ」の見どころ

クロティルド・ヴァイエ 今回の2つの公演はそれぞれの演目に素晴らしいキャスティングがなされていると思います。

「ラ・シルフィード」はロマンティック・バレエの最高峰で、構成や技術の高さも楽しめます。この作品を復元したラコットはリハーサルに非常に厳しい目で立ち会い、それこそミリ単位でディテールの細かさ、正確さを要求してきました。公演ではその成果が再現されるでしょう。

「グラン・ガラ」の演目「テーマとヴァリエーション」はバランシンの作品では一番有名なもの。ロビンス「アザー・ダンス」はマカロワとバリシニコフのために振り付けられた作品ですが、ダンサー達はそのオリジナル・カップルに負けず劣らず質の高い踊りを見せてくれるでしょう。ミルピエ「ダフニスとクロエ」は新作として楽しんでもらえると思います。

バレエ・ミストレス クロティルド・ヴァイエ (撮影:西原朋未)

バレエ・ミストレス クロティルド・ヴァイエ (撮影:西原朋未)

■ミルピエの退任からデュポンの就任。歴史と伝統、古典とコンテンポラリーの両軸

リスナー総裁 パリ・オペラ座のような特殊なバレエ団における芸術監督の任命は、非常に複雑なものがあります。ご存知のようにパリ・オペラ座はルイ14世の時代から350年以上の歴史を有する伝統あるバレエ団です。さらにプラテル校長率いるパリ・オペラ座バレエ学校があり、バレエ団の大半のダンサーがここの出身という特別な環境があります。パリ・オペラ座はこの特有の歴史を維持していかなければなりません。

また今回の日本公演では古典作品と若い振付家も含めた現代作品という、今のパリ・オペラ座の特徴がよく表れているプログラムとなっています。

古典が新しいバレエに影響を与え、新しいバレエが古典に刺激を与えるのです。これはパリ・オペラ座はすべてのバレエをレパートリーにする能力があるということで、ゆえに芸術監督には歴史と現代性の双方に対する理解が求められます。

先任のミルピエの在任は1年半でしたが、退任の理由は自分自身の芸術活動、創作に集中したいということでした。また彼はアメリカから来ましたが、やはりアメリカとフランスのバレエの伝統、文化はかなり違うことも一つの要因かと思います。

これまでお話してきたことから、なぜ私がオレリー・デュポンに芸術監督を頼んだかがお分かりいただけるでしょう。
ただミルピエの就任前にブリジット・ルフェーブルの長い在任期間がありましたから、1年半でも外からの視線を当てることはとても重要なことでした。

さらにデュポン芸術監督の実現は、ミルピエの就任があったからこそ。彼の在任した1年半は様々な物事を動かしたという意味で、バレエ団にとって必要なことだったと申し上げておきます。

なお2017/18シーズンのプログラムはデュポン芸術監督が行いました。伝統的な作品のみならず、ジェームズ・ティエレ、イヴァン・ペレツなど若い現代の振付家に可能性を与える意欲的なブログラムになっています。
来シーズンの会員登録を始めて1カ月になりますが、対前年比30%増で伸びています。


この後かつてダンサー時代を共にしたマチアス・エイマンやリュドミラ・パリエロからは「彼女の経験が芸術監督として発揮されていくだろう」「信頼してともに前進していく」という信頼のコメントが寄せられた。

パリ・オペラ座の公演はいよいよ3月2日「ラ・シルフィード」で幕を開ける。古典とコンテンポラリー双方を軸としたデュポン監督率いるオペラ座の新たなる伝統を、ぜひ見ておきたい。

取材・文・撮影:西原朋未

公演情報
パリ・オペラ座バレエ団
■演目・日程:
<グラン・ガラ>2017/3/9(木)~3/12(日)
「ラ・シルフィード」2017/3/2(木)~5(日)
■会場:東京文化会館大ホール
■問合せ:NBS/公益財団法人日本舞台芸術振興会 03-3791-8888
■公式サイト:http://www.nbs.or.jp/stages/2016/parisopera/index.html

 
■出演者変更内容

「ラ・シルフィード」
●3月3日(金)18:30
ジェイムズ:マチュー・ガニオ → ユーゴ・マルシャン
パ・ド・ドゥ:マリーヌ・ガニオ、マルク・モロー → マリーヌ・ガニオ、アルチュ・ラヴォー
●3月4日(土)13:30
パ・ド・ドゥ:ジェニファー・ヴィソッチ、パブロ・レガサ → ジェニファー・ヴィソッチ、マルク・モロー
●3月5日(日)15:00
ジェイムズ:マチュー・ガニオ → ユーゴ・マルシャン
パ・ド・ドゥ:マリーヌ・ガニオ、マルク・モロー → マリーヌ・ガニオ、アルチュ・ラヴォー

 
〈グラン・ガラ〉
●3月9日(木)18:30
「テーマとヴァリエーション」ドロテ・ジルベール、マチュー・ガニオ → ミリアム・ウルド=ブラーム、マチアス・エイマン
「ダフニスとクロエ」ダフニス:エルヴェ・モロー → ジェルマン・ルーヴェ
「アザー・ダンス」マチアス・エイマン → ジョシュア・オファルト
●3月
10日(金)18:30
「ダフニスとクロエ」ダフニス:ジェルマン・ルーヴェ → マルク・モロー
●3月11日(土)13:30
「テーマとヴァリエーション」ヴァランティーヌ・コラサント、ジョシュア・オファルト → ヴァランティーヌ・コラサント、フランソワ・アリュー
「ダフニスとクロエ」ダフニス:エルヴェ・モロー → ジェルマン・ルーヴェ
●3月11日(土)18:30
「テーマとヴァリエーション」ドロテ・ジルベール、マチュー・ガニオ → ドロテ・ジルベール、ジョシュア・オファルト
「ダフニスとクロエ」ダフニス:エルヴェ・モロー → ジェルマン・ルーヴェ ドルコン:マルク・モロー → ジェレミー=ルー・ケール
●3月12日(日)15:00
「ダフニスとクロエ」ダフニス:ジェルマン・ルーヴェ → マルク・モロー

 
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