会見で今井翼がフラメンコを披露し、拍手喝采! 名匠・山田洋次が作・演出を手掛けた音楽劇『マリウス』
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山田洋次、瀧本美織、林家正蔵、柄本明
『男はつらいよ』シリーズで有名な山田洋次が脚本・演出をてがける音楽劇『マリウス』が、3月6日(月)日生劇場にて開幕する。その初日前の時間に公開ゲネプロが行われ、主演の今井翼(タッキー&翼)、瀧本美織、柄本明、林家正蔵らが作品を披露。また、囲み会見では、山田監督共々出演者たちがマスコミからのインタビューに答えた。
1931年。地中海の爽やかな風が吹きぬける港町。
セザール(柄本明)が経営するカフェは、暇をもてあました男たちが集まる町のサロンだった。一人息子のマリウス(今井翼)は、船乗りになって海に出ることを夢見ている。幼なじみのファニー(瀧本美織)とは相思相愛の仲なのに、なかなかお互いの思いを打ち明けられず、周りの大人たちをやきもきさせていたが、ある夜ついに結ばれる。
しかし幸せもつかの間、マリウスは船に乗るチャンスをつかみ、ファニーは彼の夢を叶えるために身を引き、長い船旅に送り出してしまう。
しかしその後、ファニーは妊娠したことを知る。もちろん父親はマリウスだ――。
山田は本作について「初めて触れたのは60数年前。こんなに面白い作品にいつか携わりたいと思っていた。ようやく実現して夢みたいですね。(『男はつらいよ』シリーズのもとになった物語なので)渥美清さんが観て『おもしろいよ』と言ってくれる作品になればと。今でも作品を作るときにいつも思っています」と語る。
主人公・マリウス役の今井は「このようなすばらしい役者の方々の胸を借りることができ、大船にのった気分」と作品のテーマでもある「船」に絡めて挨拶。本作では、長年今井が取り組んでいるフラメンコ(ファンの間では“ツバメンコ”と呼ばれている模様)を劇中で披露する場面があり、「山田監督がこれまでの僕の踊りを観てくださって、それを作品に活かしてくださった。感謝しています」と喜びを口にした。
一方、山田は『さらば八月の大地』(2013年)以来のタッグとなる今井について「最初の読み合わせの頃と比べて、別人のように変わった。稽古を経てこんなにも成長するとは予想もしていなかった。すばらしい『マリウス』を作ってくださった」と太鼓判。
マリウスの恋人ファニー役の瀧本は、「稽古でやってきたことや自分を信じて、ファニーとしてこのマルセイユで生きたい」と語る。また、今井と共にフラメンコを踊る場面もあるが「これまでやってきたダンスの中でいちばん難しい。でも翼さんがリードしてくれたので、楽しく踊っている」と今井に全幅の信頼を寄せていた。本作の製作発表時に瀧本と今井で新たな「タッキー&翼」を結成!?という話も飛び出したが、今回もその話になると「あのタッキー(滝沢秀明)も舞台を観に来てくれるんじゃないかな?」と今井。相方の来場を心待ちにしているようだった。
マリウスの父セザールを演じる柄本に話が振られると「山田監督の『男はつらいよ』シリーズに出演させていただきましたが、あの頃と髪の毛の量が全然変わらないのがすごい」と予想外のコメントが飛び出し、キャストはもちろん、詰めかけたマスコミが一斉に笑い出す。「フォトセッションのときに(前列で座っている)翼くんと山田監督を上から見ていたんですが、毛の量が変わらないのですごいなーって」この言葉には山田も「あの時に比べたら真っ白になりましたよ」と笑顔。ひとしきり笑ったあとで柄本は「『マリウス』は普遍的な物語。監督は映画なので、舞台の演出家の方よりも一層丁寧な作り方をされているなと感じた。『脚本』というのが我々にとって『船』みたいなものならば、山田監督は船長さん、我々が乗組員で。今日からいい船旅ができればいいなと思います」と演劇人らしくまとめた。
「私は、若い頃から柄本さんのファンで、客席からずっと柄本さんの舞台を観てきた。今回そばにいられるのがすごく嬉しいですね」と語るのはパリス役の林家正蔵。その言葉に照れ隠しなのか柄本が正蔵を軽くこづく。「(柄本は)稽古場ではすごい汚いジャージ姿ですが(笑)でも芝居がすごくうまくて!本当に勉強になります」そして落語家として『マリウス』は船にまつわる物語なのですが、今、すごくいい飛行機に乗っている気分です。その心は、(今井)翼の良さが!』といいオチを付ける。「弟(二代目林家三平)に負けないようにしないとね!」と口にする正蔵に今井が「僕が座布団を持っていきますから!」と自ら志願していた。
会見の最後にはインタビュアーからのリクエストで、今井と瀧本がその場でフラメンコを披露する一幕も。力強く床を踏み鳴らす今井と瀧本の姿に大きな拍手が沸き起こっていた。
父と息子の愛、母と娘の愛、男と女の情愛、市井の人々の躍動感…舞台はマルセイユだが、どこか落語の世界や浪花節など日本の人情ものに通じる物語。ときどき涙を誘われてしまうのは、人間のあたたかさを描かせたら右に出るものがいない山田洋次作品だからかもしれない。
取材・文・撮影:こむらさき
■会場:日生劇場
■原作:マルセル・パニョル(「マリウス」「ファニー」より)
■出演
エスカルトフィグ:有薗芳記
クロディーヌ:田中利花
ピコアゾー:阿南健治
トト:松野太紀
郵便配達:北山雅康
火夫:七五三掛龍也
パニス:林家正蔵
ほか
■公式サイト:http://www.shochiku.co.jp/play/others/schedule/2017/3/post_310.php