新たなスタイルと劇的なパフォーマンスによって到達した、ハルカトミユキの新次元

レポート
2017.3.6
ハルカトミユキ 撮影=Aki Ishii

ハルカトミユキ 撮影=Aki Ishii

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ハルカトミユキ +5th ANNIVERSARY TOUR 2017 2017.2.25 東京・赤坂BLITZ

ハルカ(Vo/Gt)とミユキ(Key/Cho)からなる二人組・ハルカトミユキは、2017年を大々的に“デビュー5周年”と銘打って活動していくことを宣言した。そのスタートであるツアーのファイナルということで、まずは彼女たちが5年間で歩んできた道のりを簡単に振り返ってみる。

心にある闇や矛盾と向き合ったうえで、未来に光を当てるような生々しい歌詞とメロディー、オルタナティブなサウンドが混然一体となって世を切り裂く。2012年11月、ハルカトミユキはEP『虚言者が夜明けを告げる。僕たちが、いつまでも黙っていると思うな。』でセンセーショナルなレコードデビューを飾った。翌2013年にはアルバム『シアノタイプ』でメジャーデビュー。その流れだけを見れば、ミュージシャンのキャリアとしてはひとつの理想的なものだ。しかし2014年に入り、とりわけハルカが”生みの苦しみ”に悩まされる。曲が書けない、歌えない、自らの心を丸裸にした歌に、自らが潰れされてしまったのかもしれない。一時はバンド存続の危機にまで立たされたという。それでも2人は諦めなかった。届けたい歌があるから、届けたい人がいるから。

ハルカトミユキ 撮影=Aki Ishii

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2015年は毎月新曲を発表し、『世界』と『LIFE』、2枚のミニアルバムをリース。同年秋の日比谷野外大音楽堂をゴールに据え、東名阪ワンマンツアーも行った。2016年に入ってからはさらに加速。44道府県をアコースティックセットで回り、1年越しの日比谷野音も含め、東名阪では2度のバンド編成によるワンマンツアーを、その間にはセカンドアルバム『LOVELESS/ARTLESS』を完成させる。“飾らない”“可愛げがない”という意味が込められたタイトルが示す通り、ここ2年のハルカトミユキは、そのメッセージを伝えるために、これまで極端に言えば表のキャラクターを“作り込んでいた”ところから、感情も音楽も、あらゆる面を開放させたように思う。一言で言えば“素直になった”表現者は、急速にピッチを上げた制作と全国行脚の旅から何を得たのだろうか。

ハルカトミユキ 撮影=Aki Ishii

ハルカトミユキ 撮影=Aki Ishii

ライブはアルバム『LOVELESS/ARTLESS』でも冒頭を飾った「光れ」で幕開け。メジャースケールのコード運びと柔らくも強いメロディーラインが共鳴するポップソングだ。『シアノタイプ』を想起させる深い青から黄色い光へと転じる照明を重ね合わせ、まずは観客の心に浮かぶ景色をパッと明るく照らすかのよう。そこから一気に高速ギアチェンジ。ミユキがライブで盛り上がる光景を想像して作曲した「DRAG & HUG」に場内が沸く。この明快な流れは、かつては静寂やどこかダークでヒリヒリするような緊張感の中で感情を燃やすことが表現の核であったハルカトミユキが、2015年以降手に入れた新しい機軸だ。続く「Hate You」は、軽快なモータウンビートと、“君の嫌いなところ”を綴ったサディスティックな歌詞のコントラストが面白い1曲。バンドアンサンブルとメロディーに乗った言葉の威力が明らかに増しているのは、ライブハウスからカフェまで、日本全国大小様々なステージを踏むことで鍛えられた力の賜物だろう。MVでは無表情であることが肝になっていた不思議なダンスを、ちょと恥ずかしそうではあるが、満面の笑みで踊るミユキの姿からも、厳しいツアーを通じて伝えることに目覚めたアティチュードの変化を感じ取ることができる。

ハルカトミユキ 撮影=Aki Ishii

ハルカトミユキ 撮影=Aki Ishii

「デビューしてから気が付けば5年。私たちだけでは来られなかった。皆さんのおかげで5周年です」とハルカが感謝の言葉述べ「時間が経つと、いろんなことが変わってしまったり、見失ってしまったり、それは仕方のないことだと思います。でもひとつだけ変わらないことがあります。それは希望の歌を歌いたいということです。デビューからずっと歌っている希望の歌」と話し「ドライアイス」を、次いで先述した“生みの苦しみ”に苛まれている2014年にリリースした『そんなことどうだっていい、この歌を君が好きだと言ってくれたら。』から、ここ2年一度もセットリストに入らなかったリード曲「その日がきたら」を演奏。あえて封印していたのかどうかは分からないが、”希望の歌”と言うにふさわしく、過去を受け入れ今のモードで歌い上げ、未来を指しているような気がした。

そしてハルカが先立ってTwitterで“新兵器”と呟いていたグレッチを肩にかけ、新曲「終わりの始まり」が鳴り響く。なぜグレッチなのか、その意味をダイレクトに感じさせるブルージーでスモーキンなロック。特に2015年以降のハルカトミユキは音楽性の幅をどんどん広げてはいたが、それでも驚きを隠せない新たな挑戦であると同時に、初めて挑むスタイルだとは思えないほど板に付いている。この曲が音源として世に落とされてからどうロールしていくのか、2017年の動きに大きな期待を抱かせてくれた。

ハルカトミユキ 撮影=Aki Ishii

ハルカトミユキ 撮影=Aki Ishii

ライブは中盤へ。ハルカがギターを置いてハンドマイクで歌った「春の雨」は、ダウンテンポで浮遊感のあるトラックの中に響く澄んだ声と、残像が見えるほどのしなやかな舞いが実に美しい。2016年には女優としても稽古を積み、舞台を踏んだハルカの経験(実際に舞台で踊っていたわけではないが、見せ方として)が活きていることを感じているうち、今度は壇上に運ばれた椅子にハルカがそっと座り、詩の朗読を始める。「どうしても苦しくなったらたまに思い出してください。幸せなときは、忘れていてください(一部抜粋)」と丁寧に紡がれる言葉に寄り添うような、ミユキが奏でるアンビエントも一言ひとことの表情を際立たせていた。静かなる一大パフォーマンスと呼ぶべき前振りから「夜明けの月」へ。”一人じゃない”と強く感じさせてくれる曲が、ライブだからこその熱を発する。「奇跡を祈ることはもうしない」は、ファルセットから一気に最も低いところまでいくサビ前からサビに象徴されるように、ボーカリストにとっては技術的にも表現的にも相当難しく特異な展開を持った曲だが、それだけにインパクトが強大。はまったときのポップな威力が凄まじい。

ハルカトミユキ 撮影=Aki Ishii

ハルカトミユキ 撮影=Aki Ishii

後半はアッパーなゾーンへ。ミラーボールが回り、「ワン、ツー」とカウントアップしながら高揚感を煽る「Are you ready?」から「見る前に踊れ」のダンスチューンがフロアを揺らす。ハルカがタオルを首にかけてボクサーのようなアクションを見せ、敵と見立てたミユキとマイクを奪い合う「トーキョー・ユートピア」から「伝言ゲーム」と、ニューウェーブの香り漂うアップテンポな曲を放ち、とどめはトランシーでアグレシッヴな「ニュートンの林檎」と「バッドエンドの続きを」を連発。会場のフィジカルなボルテージを最高潮にまで持っていき、最後は繊細なアルペジオと歌メロから、サビでラウドなギターと共に一気に感情を爆発させる「Vanilla」で会場にカオティックな渦を巻き起こした。

ハルカトミユキ 撮影=Aki Ishii

ハルカトミユキ 撮影=Aki Ishii

鳴りやまないアンコールの中メンバーが再登場。ハルカがサポートドラムの城戸紘志、ベースの砂山淳一、最新アルバム『LOVELESS / ARTLESS』をプロデュース、唯一2人以外のソングライターとして「夜明けの月」を作曲したギターの野村陽一郎、ミユキを紹介。ミユキがハルカを紹介し、新曲「嵐の舟」が披露される。タイトルの如く劇的なメロディーに息を飲むように静まり返る場内。どこか昭和の個性派歌手のような古風な風情も持った、「奇跡を祈ることはもうしない」に負けず劣らずの個性に溢れていた。そして前半にハルカが述べていた希望を鮮明に映し出すように、2015年に生まれたアンセム「世界」が放たれ、清々しい締めを迎えた。大きな拍手の中、二人はこれ以上ないくらいに深々と頭を下げ、ステージを去った。

アーティストが挑戦し続けるプロセス追い掛けることも、音楽を楽しむ醍醐味のひとつだ。しかし、それはライブにせよ音源にせよ、その都度何かしらのポジティブな結果があってこそ。頑張ったからOKなんてことはない。そういう意味では、これまでやったことのない要素を多分に盛り込みながら、総合的に見ればパフォーマンスをネクストレベル……いや、自らが思うポップを再定義するかのように叩きつけ別次元にまで持っていくことに成功した、キャリアの重要なポイントとして語るべき夜だったと思う。6月には前作から1年経たずにニューアルバムをリリースすること、9月2日には再び日比谷野音のステージに立つことも発表された。この先、ハルカトミユキが歩む道はどんなものになるのか。期待に胸を膨らませながら、筆者は帰路に就いた。


取材・文=TAISHI IWAMI 撮影=Aki Ishii

ハルカトミユキ 撮影=Aki Ishii

ハルカトミユキ 撮影=Aki Ishii

セットリスト情報
ハルカトミユキ +5th ANNIVERSARY TOUR 2017 2017.2.25 赤坂BLITZ
1. 光れ
2. DRAG & HUG
3. Hate you
4. ドライアイス
5. その日がきたら
6. Pain
7. 終わりの始まり(新曲)
8. 絶望ごっこ
9. 春の雨
10. 夜明けの月
11. 奇跡を祈ることはもうしない
12. Are you ready?
13. 見る前に踊れ
14. トーキョー・ユートピア
15. 伝言ゲーム
16. ニュートンの林檎
17. バッドエンドの続きを
18. Vanilla
[ENCORE]
19. 嵐の舟(新曲)
20. 世界

 

ライブ情報
+5th Anniversary SPECIAL
9.2(土) 日比谷野外大音楽堂
open 17:15 / start 18:00
info:DISK GARAGE 050-5533-0888
チケット一般発売:6月17日(土)
 
■メモリアルチケット限定指定席(特典付) 3,500円(税込)
*特典:ケース入オリジナルチケット/当日引換
*限定指定席は規定枚数に達し次第販売終了いたします。
 
■自由席 3,000円(税込)
*小学生以下入場無料。ただし、指定席でお席が必要な場合はチケットが必要となります。
 
【最優先!ハルカトミユキ モバイル会員先行】
3/1(水)18:00~3/12(日)23:59
▼スマートフォンからアクセス
 
【オフィシャルサイト先行受付】
3/1(水)18:00~3/12(日)23:59

 
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