odolとPELICAN FANCLUBによる前代未聞のシームレスな2マン『凄い日』は実際、凄かった

レポート
2017.3.8
odol / PELICAN FANCLUB 撮影=Daisuke Miyashita

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odol×PELICAN FANCLUB『凄い日』 2017.3.3 新代田FEVER

odolPELICAN FANCLUBが表面的な音楽性を超えて互いにシンパシーを抱いていることは事前の対談でも明確だったが、その名も『凄い日』は、単なる2マンライブでもコラボレーションでもなかった。お互いを認め合うからこそのバンド対バンドのガチの勝負、一方、相手のメロディやアンサンブルの中に入り込むという試みや寛容という対極の演奏と精神状態がある一編のライブ、という前代未聞の一夜を、彼らは作り出した。

odol / PELICAN FANCLUB 撮影=Daisuke Miyashita

odol / PELICAN FANCLUB 撮影=Daisuke Miyashita

まず、ステージには全員分の楽器が並んでいる。ギター×3、ベース×2、ドラム×2、キーボード1、そしてギター&ボーカル×2。転換なしでライブを進めるためなのか?と思いきや、冒頭からワラワラと10人全員が登場した時のフロアの一瞬の驚きと直後の歓声はもっともだ。オープナーはペリカンの「記憶について」。odolのミゾベリョウ(Vo、Gt)がインタビューでペリカンが新たな領域に入ったことを実感した曲だと話していた曲でもある。楽器隊8人という音圧の中でも特にツインドラムがダイナミズムを生み、エンドウアンリ(Vo、Gt)とミゾベがユニゾンで歌う場面では、この曲がもつアンセミックな部分にフォーカスが当たった印象も。思えば2バンドとも時間に関する事柄――記憶や成長、変化といったテーマは共通しているなと改めて思う。2曲目はodolの「飾りすぎていた」が、森山公稀(Pf、Syn)のピアノから滑らかに始まったのだが、サビはギター3本が作る洪水めいた音の壁が、意識を吹き飛ばす勢いで迫る。odol単体で表現される場合の特徴であるミゾベの孤独感は、エンドウの絶唱を得てエモーショナルな色合いを濃くしつつ、それでもお互い一人きりのように見えた。それは彼らが譲り合うわけでも、寄りかかるわけでもなく一つの曲を歌っていたからだろう。

odol 撮影=Daisuke Miyashita

odol 撮影=Daisuke Miyashita

全員が登場したとき以上に驚いたのは、森山と井上拓哉(Gt)、早川知輝(Gt)のフレーズを止めずに、ペリカンの4人がはけ、odolのステージが始まったこと。しかも流れを止めずに一人ずつ音を抜いていく感じなのだ。そこにShaikh Sofianのうねる五弦ベースが加わると海のようなグルーヴが生まれ、「あの頃」へ突入。エンディングからそのまま垣守翔真(Dr)がビートを刻み続けて「グッド・バイ」、そして訥々とした語り口のボーカル、物語を編み上げる力強い間奏が迫る「years」と、一気にフロアを集中力の塊にするodolの世界観で埋め尽くした。そこに大袈裟な紹介もなく、エンドウが加わり「退屈」を奏でる。思うにエンドウはこの緊張感こそを求めていたのではないだろうか。

odol 撮影=Daisuke Miyashita

odol 撮影=Daisuke Miyashita

1曲だけ歌い、すぐエンドウが下がると、今度はodolが、ペリカンの初期ナンバーから彼らの曲の良さを最初に認識した曲だとミゾベが話していた「Capsule Hotel」を披露。ノイジーなギターと、テクノ的にミニマルに反復するピアノ・リフが、odolにしかできないアレンジとなって、個性が際立つ。かつ、こうしたピアノの使い方はodolの楽曲ではほぼ聴けない。この演奏は『凄い日』ならではの貴重な切り口だった。終盤はodolのポストロック・バンドとしての緩急を実感する「愛してる」、切ないという言葉ではとても足りない気持ちを、澄んだピアノ、押し寄せるギターの渦、泣き出しそうなミゾベの歌で堂々と鳴らしきった「生活」でodolのステージは終了。なのだが、ここもまたビートを残して、ペリカンのメンバーが加わり、odolのメンバーが下がり、演奏を切らさずにバトンタッチしていく。

odol 撮影=Daisuke Miyashita

odol 撮影=Daisuke Miyashita

グッと4ピースのロックバンドらしくギアアップしたペリカンのアンサンブルとエンドウの佇まいに、フロアから自然とクラップが起こり、1曲目から新曲を投入。続いてネオアコもしくはザ・スミス的なメロディとクルマダヤスフミ(Gt)のアルペジオが透き通る「Dancing Queen」、一転してニューウェーヴ / ポストパンク的なギターと、トライバルなビートにエンドウのモノローグ的なボーカルで景色を変える新曲を演奏。精神的な意味で80s、90sのUKロックに通じる尖った部分やインセンスを持つペリカンの世界観だが、曲調は幅広い。しかも冒頭からいきなり新曲を2曲投じてくるあたりも、『凄い日』は単なるお祭り騒ぎとは対極のスタンスにある。

PELICAN FANCLUB 撮影=Daisuke Miyashita

PELICAN FANCLUB 撮影=Daisuke Miyashita

いい緊張感に包まれながら、「odolとこの日を迎えられて、嬉しいです。嬉しいです」と、「嬉しいです」を2回言ったカミヤマリョウタツ(Ba)は満面の笑顔。「あの手この手でみなさんを楽しませます」と宣言して、odolのミゾベと森山を招き入れる。何と言ってもペリカンに鍵盤が加わるのが面白い。何を演奏するのかステージを凝視していると、ペリカンのレパートリーの中でも現状最もメロウでミニマムなファンクである「M.U.T.E」だ。ミゾベの声がハマっているだけでなく、弾きすぎない森山のシンセが、いわゆるアーバンなシティポップとは違う、彼らなりの都会の夜感を醸し出して素晴らしかった。この組み合わせでのもう1曲はギターにピアノも重ねたイントロでイメージが更新された「1992」。そしてodolの二人が下がると、ペリカンからの“返歌”は「綺麗な人」のカバーだ。odolの中ではBPMが早く、ストレートなロックのアレンジだが、ペリカンが出す疾走感はまた違う。そして蒼き日々への願望的な部分では互いに共振するものを感じ取った。そう、ともにステージに立つ以上にカバーでそのことを顕著に感じたのだ。

PELICAN FANCLUB 撮影=Daisuke Miyashita

PELICAN FANCLUB 撮影=Daisuke Miyashita

odolの曲、めっちゃ好きすぎて(どの曲をカバーするか)悩んだんだけど」とカミヤマが言えば、エンドウは「”お父さんとお母さんどっちが好き?”って言われるようなもの」と返す。「結局、お母さんっていうんだけど。てことはodolはお母さんか」と、もはやカミヤマの言ってることが混乱してるのも微笑ましい。そして終盤には再び新曲を投入。8曲のセットリストに新曲3曲という、ペリカンの今を見せる意味もこの日には確かにあったようだ。ラストは爽快で光に満ちたギターサウンドから始まる「Karasuzoku」がセットされ、潔くエンディングを迎える……のが通例だが、ワウギターに合わせてクラップが起こり、再びodolのメンバーがステージ現れる。

PELICAN FANCLUB 撮影=Daisuke Miyashita

PELICAN FANCLUB 撮影=Daisuke Miyashita

四分キックに輝度の高いギターが重なり、どこかUSインディっぽいムードを醸す「Dali」につながった。さすがにツインドラムのダイナミズム。トライバル感を増す演奏のエンジン部と言えるビートは曲が進行するにつれてさらにタフになりシミズヒロフミ(Dr)はフロアタムを思い切り叩く。楽器隊のソロ回しも控えめに行いながら、この日一番のチアフルな空気を作り出した。そしてラストはodolの「夜を抜ければ」。森山の弾くモールス信号のようなピアノから、ポストロックで奏でる架空の街のサウンドトラックのようで重層的なアンサンブルが凄まじい迫力だ。

何か一編の映画を見終わったような感慨に浸った『凄い日』。アンコールの声にも、終了のアナウンスで潔く計画を遂行して終了したのも大正解だと思う。この共演を説明するようなMCもほぼなく、言葉で煽ることもなかった。演奏と選曲の流れに特化した両バンド。ライブとはそもそも何か、そしてライブはどう新しい体験となりうるのか?という投げかけも残してくれたのだ。


取材・文=石角友香 撮影=Daisuke Miyashita

odol / PELICAN FANCLUB 撮影=Daisuke Miyashita

odol / PELICAN FANCLUB 撮影=Daisuke Miyashita

セットリスト
odol×PELICAN FANCLUB『凄い日』 2017.3.3 新代田FEVER
<odol×PELICAN FANCLUB>
1. 記憶について
2. 飾りすぎていた
<odol>
1. あの頃
2. グッド・バイ
3. years
4. 退屈(with エンドウアンリ)
5. Capsule Hotel(PELICAN FANCLUB COVER)
6. 愛している
7. 生活
<PELICAN FANCLUB>
1. 新曲
2. Dancing Queen
3. 新曲
4. M.U.T.E(with ミゾベリョウ&森山公稀)
5. 1992(with ミゾベリョウ&森山公稀)
6. 綺麗な人(odol COVER)
7. 新曲
8. Karasuzoku
<odol×PELICAN FANCLUB>
3. Dali
4. 夜を抜ければ

 

odol情報
『gpdd』
2017年7月8日(土)青山月見ル君想フ
odol
Guest Artist
OPEN 18:00 / START 18:30
前売 ¥3,000 / 当日 ¥3,500 (+1drink)

<チケット最速先行>
3月3日(金) 22:00~3月9日(木)18:00まで

 

PELICAN FANCLUB情報
PELICAN FANCLUB TOUR 2017 “Electronic Store”
【ワンマン公演】
6/09(金) 名古屋・APPOLO BASE 
6/18(日) 大阪・阿倍野ロックタウン 
6/25(日) 東京・代官山UNIT
※ワンマンチケット先行受付
期間:3/9(木)19:00~3/21(火)23:00
URL:http://pelicanfanclub.com/
【対バン公演】
6/30(金) 福岡・graf
7/02(日) 広島・BACK BEAT
7/03(月) 高松・DIME
7/12(水) 金沢・vanvanV4
7/13(木) 仙台・enn 3rd
7/14(金) 千葉・LOOK
チケット一般発売日4/8(土)~
【ワンマン公演】 ¥3,000(+1D) 当日¥3,500(+1D)
【対バン公演】 ¥2,500(+1D) 当日¥3,000(+1D)
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