平野 良×今立 進(エレキコミック)が語る「もしも親友の恋人を好きになったら……?」 舞台『それから』インタビュー
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(左から)平野 良、今立 進(エレキコミック)
明治・大正・昭和を彩る華麗な文豪たち。その作品群に興味はあるけど何だか難しそうで敷居が高い……と腰が引けている人も少なくないはず。そんな文学に、演劇ならではの面白さを融合させ、気軽に誰もが楽しめる作品として世に送り出すのが、この【文劇喫茶】シリーズ。記念すべき第1弾には、夏目漱石原作の『それから』が選ばれた。1985年に松田優作主演で映画化もされた傑作を、平野 良×帆風成海×今立 進(エレキコミック)の3人芝居で紡ぎ上げる。
「高等遊民」と称し、無職ながらも自由気ままな生活を送っていた主人公・長井代助。彼が心を寄せたのは、親友の妻だったーー。
明治の文豪が綴る「秘めたる恋」の世界とは。演じる平野 良と今立 進(エレキコミック)に話を聞いた。
役づくりでやるべきことは、メンズエステに通うこと!?
ーーおふたりの共演は今回が初めてですか?
平野:厳密に言うと一度だけ、(宮下)雄也のバースデーライブの時にご一緒させてもらったことがあって。
今立:僕も平野くんも雄也と仲が良くて。よく雄也から平野くんの話は聞いていました。今回も一緒に舞台をやるって言ったら、雄也から「アイツは人見知りだけど、いいやつなんでよろしくお願いします」って言われて(笑)。
平野:なんか俺、雄也の子どもみたい(笑)。
今立:ガンガン親の感じを出してきてましたね。まあ、雄也も変わったやつなんで、そんな雄也と上手くやれてるんだから、きっと僕と平野くんの相性もバッチリだろう、と(笑)。
ーーしかも、題材は夏目漱石の『それから』です。ちなみにおふたりの夏目漱石レベルは……?
平野:いや、本当にぶちスライムレベルです。
今立:ぶちなんだ(笑)。普通のよりはちょっといいんだ(笑)。
平野:『それから』もまだ読んだことはなくて。そろそろ時間をつくって読んでみようと思います。
今立:そうですね。僕も『それから』ではなく、「これから」です(笑)。
平野 良
ーー3人芝居というのが何とも贅沢ですね。
平野:台詞の量を考えると、今から怖いです(苦笑)。
今立:僕は、極力平野くんに台詞が行くように仕向けていきたいと思います。芸歴20年の力をフルに使って「ここはちょっと平野くんひとりでも成立するんじゃないですか?」とか言って(笑)。
ーー少人数の芝居は久しぶりですか?
平野:3人芝居は、『源氏物語~夢浮橋~』(2014年)以来、2回目ですね。その時も今回と同じ男2人と女1人のお芝居で。ただし今回と違うのは、その時は男性キャストは公演期間の前半と後半で配役を入れ替えるという演出だったんですよ。だから、台本を全部覚えなきゃいけなくて……。あれはなかなか大変でしたね(苦笑)。
今立:僕はエレキコミックでステージに立つ時はいつも2人だし、「エレ片」と言ってラーメンズの片桐仁くんと3人でユニットもやっているので、少人数の舞台は比較的慣れている方なんです。ただ、今回は笑いがメインのお芝居ではなさそうですからね……。僕としては、両翼をもがれた状態です(笑)。稽古に入ったら、「今までやってきたものは何だったんだ!?」って鬱になるんじゃないかと怯えています。
ーー芸歴20年で培った武器が活かせない、と(笑)。
今立:そうです! しかも稽古場では何かやるたびに演出の方から「それから?」「それから?」って言われるわけでしょ? ザキヤマ(山崎弘也)の地獄のフリくらいキツいですよ! あと、平野くんと同級生という設定なんですけど、実際にはほぼ10歳違いなんですよね。並んだ時に、ちゃんと同い年に見えるのかっていう不安もあります。なので、僕がまずやるべきことはメンズエステに通うことですね。
ーーまずは若返りからなんですね(笑)。
今立 だから本番ではチラシのビジュアルとはまったく違う感じになっているかもしれません(笑)。何なら協賛がついて、チラシの裏にエステの広告が入っているかもしれないです。「Before」「After」って僕の写真が並んで。まさに『(エステして)それから』だな、と。
三角関係でいちばん大切なのは、間に挟まれた女性の気持ち。
ーーちなみに今回のように親友の妻を好きになってしまったら、どうします?
平野:相手が結婚してたらそこはもう一切ないですね。好きになる、という気持ちにさえならないと思う。
ーー確かに結婚しているとブレーキがかかりますよね。じゃあ、親友の彼女くらいなら?
平野:たぶん奪う奪わない、という話ではないのかなって。言ってしまえばこの世なんて万物すべてひとつなわけですから。
今立:話のスケールがデカいね。地球規模だね。そのうちガイアとか呼びそうだね。
平野:(笑)。相手を出し抜こうと悪しき心を持って策略を練るというのは嫌なので。たとえどういうシチュエーションであっても、お互いが純粋に想い合っているのであれば、自然といちばんいいかたちにおさまるんじゃないかなというのが僕の考えです。
今立 進(エレキコミック)
ーー本作の主人公のように、友人に対して「お前の彼女のことが好きになってしまった。譲ってくれないか」と正面から打ち明けたりはしますか?
平野:当事者である女性を差し置いて、男同士で話をつけるのも、何だか女性のことを物扱いしているみたいで違う気がするんですよね。こういう三角関係でいちばん大切なのは、間に挟まれた女性の気持ち。彼女が僕を選んでくれるならそれは幸せだし、友人を選んだのならそれも仕方のないことかなって。
今立:僕、一度だけ似たようなシチュエーションになったことがあるんですよ。
平野:え、そうなんですか?
今立:そう。20代の頃に好きになった女の子に彼氏がいて。でも、いろいろ話を聞いたら、付き合いは長いけどもう気持ちは冷めてしまっているっていう感じだったので、「どう? じゃあ俺と付き合わない?」ってグイグイ攻めました。ただこれは相手側の男性が自分の知り合いではなかったからできたことなんですけど。
平野:知り合いじゃなかったら、僕も迷わないです。ブリブリ行きます!(笑)
今立:やっぱり彼氏が知り合いだとね、いろいろと想像ができちゃうわけじゃないですか(笑)。その想像をものともしないくらい魅力的な女性には、残念ながら出会ったことはないですね。
平野 良
ーーこういう秘めたる恋に燃え上がることができるのも、時代背景は関連しているのかもしれませんね。
今立:今ほど自由じゃないからこそ、禁断の恋に燃え上がっちゃうんでしょうね。
平野:人って、たぶん「知りたい欲」で動くと思うんです。恋愛にしたって、相手のことをもっと知りたいと思う気持ちこそが、恋の始まり。でも今はSNSで自分の日常をどんどんアップする時代ですからね。相手のことが筒抜けすぎるのも、恋愛の面では考えものかも。
今立:ただ逆に今の若い人たちは、初めて会った人がSNSをやっていないと不安に思うらしいですよ。この人、変わっているなって。だから僕たちとはまた感覚が違うのかもしれない。いっそ舞台上にパソコン3台置いて、SNSでやりとりする3人バージョンをやっても面白いんじゃないですか。『それから2017』って(笑)。
今立 進(エレキコミック)
ーーそういう若い世代のみなさんの目に、この明治の恋がどう映るのか非常に楽しみなところです。ぜひ読者のみなさんに、おふたりからメッセージをいただければ。
平野:文学は、言葉の美しさを味わうというか、言葉でここまで表現できるんだということを楽しむ学問だと思っています。難しいようで、実はストーリーだけ見れば、どの文学作品も単純明快で。それを言葉の力で奥行きを持たせているところが文学の面白さ。そんな文学を演劇でやることで、どんなふうに膨らませていけるのかが見どころだと思います。難しい内容をそのまま難しく伝えるつもりは全然なくて。一見難しく見える文学を、ここまで楽しく膨らませられるんだということに、僕はこの【文劇喫茶】で挑戦してみたい。だからみなさんも昼ドラを観に来るような感覚で来てもらえれば。
今立:たぶんみなさんも本を読まれる時、自分の頭の中に心地良いリズムがあると思うんです。演劇にする上でも、そういう万人に通じるリズムをきちんと大事に表現できればと思っています。【喫茶】と名のつく通り、気楽な気持ちで楽しんでいただくのがいちばん! ぜひティータイムがてらに劇場へお越しください。
(左から)平野 良、今立 進(エレキコミック)
インタビュー・文・撮影=横川良明
1984年5月20日生まれ。神奈川県出身。ミュージカル『テニスの王子様』で脚光を浴び、以降、舞台を中心に活躍。『ふしぎ遊戯』シリーズや『メサイア』シリーズなど人気作品に多数出演する。近年の出演作に『熱闘!!飛龍小学校☆パワード』『インフェルノ』『お気に召すまま』などがある。
今立 進(いまだち・すすむ)
1975年9月27日生まれ。東京都出身。97年、大学の先輩であったやついいちろうと「エレキコミック」を結成。『エンタの神様』や『爆笑オンエアバトル』などに出演し、頭角を現す。その後もバラエティ番組の他、ライブ活動も積極的に展開。また、俳優としても舞台『ネバーランド☆A GO! GO!』『ピラミッドだぁ!』などに出演している。
チラシ
<会場>東京都 俳優座劇場
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<原作>夏目漱石
<脚本>田中洋子
<演出>山田佳奈(□字ック)
<出演者>長井代助:平野 良、平岡三千代:帆風成海、平岡常次郎:今立 進(エレキコミック)
◆公式サイト
http://www.clie.asia/sorekara/